週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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*以下の考察は不完全な部分があります。こちらを合わせてお読み下さい。


これまで、サッカーの技術において、正対が中心をなす概念であることを見た。

正対からは、常に左右の選択肢が存在する。

ボールを動かして抜くものをパスと呼ぶ。



自ら抜くものをドリブルと呼ぶ。



正対の利点を最大限に活用するためには、この4つのプレーが必要になる。

実行にあたっては、パス、ドリブルともに、なるべく守備者の近くを抜く方が良い。



これにより、より狭いスペースでプレーすることができる。

近くを抜くためには、守備者を受身に回す必要がある。
受身に回すとは、半身にさせる、重心を後ろにかけさせる、後方へ移動させる等が具体例である。

これを実現するためには、プレーベクトルを守備者に向ける必要がある。



体の正面を相手に向ける、守備者に対して踏み込む、守備者の正面へボールを動かす等が具体例である。

一旦受身に回せば、パス、ドリブルともに、守備者の近くを抜きやすい。



正対後に重要なのは、見合いの概念である。

見合いとは、一つの動作から、同時に止めることのできない二つ以上の動作が実現可能である状態をさす。

見合いを前にした相手は、一つのプレーに的を絞ることが出来ない。
このため、守備者の受身に回る度合いが強くなる。

正対から、二つのプレーが見合いになる候補として、次の八つが存在する。

1,2 軸足側へのパス、蹴り足側へのパス


3,4 軸足側へのパス、蹴り足側へのドリブル


5,6 軸足側へのドリブル、蹴り足側へのパス


7,8 軸足側へのドリブル、蹴り足側へのドリブル


これらに、単純な左右へのパス、ドリブルの4つを加えたものが、正対からの技術ミニマム候補である。

この中から、自分に合ったものを選び出せばよい。

サッカーが上手くなるとは、それをいかに極めるかということである。

正対できない選手は、どんなに足元が器用で、どんなに肉体的な素質に恵まれていようと、本質的には下手でしかない。

これは、今までに見た通りである。

上達において重要なのは、正対と見合いという原理である。

その原理さえ外れなければ、実際のプレーはどのようなものでも良い。

例えば、パスとパスの見合いにおいては、インサイドとインサイドを見合いにすることが一般的である。



正しいインサイドキックとは」で見た、インサイドの表と裏を使えば、この見合いは簡単に達成される。

しかし、例えば、股関節が非常に硬く、インサイドの裏を蹴ることが難しい選手は、蹴り足方向のパスをアウトサイドにせざるを得ないかもしれない。



正対と見合いという原理を満たし、十分な精度でパスが出るのであれば、これでもまったく問題はない。

ドリブルとパスの見合いにおいても同様である。



状況によって、インサイドのドリブルとインサイドのパスの見合いが有効なこともあれば、インサイドとアウトサイドの組み合わせが有効になることもある。

それは、使う本人が、能力と状況に合わせて決定すればよい。

自分の持つ素質と条件にあわせて技術を改良し、習得することが練習である。

その時に重要なのは、重箱の隅をつつくような「詳細な」技術論や動作論ではない。

原理こそが重要であり、それは正対と見合いの二つに集約される。

次に、どのような形で正対から見合いを組み立てるか、具体例を見る


前回は、以下のプレーの全体図を見た。

ここでは、その拡大図を見る。
(画像出典:Maradona Goal V England 1986

最初の部分では、進入正対が行われている。

そこから、軸足側へのドリブルと蹴り足側へのドリブルが見合いになったプレーが行われる。






















正対から相手を受身に回すことで、守備者の近くを抜けている。



これは、後ろから追う守備者の前に出るために非常に重要である。



もし、スラロームを行い、一番近い守備者とサイドラインの間を走る方向から、中央へ大きな切り返しを行った場合、中央の守備者に追いつかれる可能性が高い。



この点に関する実例は、以前に見た。

次に、2人目を抜く場面を見る。

ここでも、進入正対が行われている。



そこから、蹴り足側へのドリブルと軸足側へのドリブルが見合いになったプレーが行われる。



























これは、進入正対がドリブルと相性が良いことを端的にあらわしている。

最初、守備者は保持者の正面で止まる動作に入ろうとしている。



そこで、ボールを小さくアウト方向に動かす。



守備者はそれに反応する。



止まる動作に別の動作を強要されたため、この状態ですでに傾いている。

左足のインサイドで、逆へ切り返す。




守備者は、完全にバランスを崩している。
この状態では、ファールを行うことすら難しい。





正対からのドリブルが、原理的にファールを受けにくいことは、これまでにも見た通りである。

続いて、キーパーを抜く場面を見る。

ここでは、抑止正対が行われている。



そこから、蹴り足側へのパスと軸足側へのドリブルが見合いになったプレーが行われる。
技術ミニマムの図では以下のようにあらわされる。























以上のプレーは、下のようにあらわされる。



このプレーは、キーパーを抜いた後のプロテクションなど、他の要素を含むものの、主要な部分は正対と技術ミニマムを通して達成されている。

技術的頂点とは正対を極めることであることを示唆する例と言える。

以前、正対から技術ミニマムを構築することを見た。

ここでは、それらを用いた実際のプレーを見る。

最初に、全体像を見る。
(画像出典:The Best of Diego Maradona












やや中央方向へコースを変える。







コース上で止まろうとする相手に対し、縦への踏み込みから中へ切り返す。
これは、以前に見た進入正対である。












コース上で止まろうとする相手に対し、小さくアウト方向へボールを動かす。
これも、典型的な進入正対である。



守備者はそれに反応する。



インサイドで逆を取る。










体の正面をキーパーに向ける。



右足をキーパーに向かって踏み込む。
前に出る相手にプレーベクトルを向けて行動を抑止する、抑止正対である。



インサイドで縦へ切り返し。












3回の正対が行われていることがわかる。

次に、このプレーの拡大図を見る。

前回は、前進正対とその一部である進入正対を見た。



ここでは、主導正対を見る。

・主導正対

主導正対とは、守備者と正面から向かい合い、そのまま押し下げる正対を指す。



具体的には、次のようなプレーを指す









以上において、前に出る保持者に対し、守備者が後ろに下がっている。
この状態を作ることができれば、前方へのパスを通しやすい。

守備者は、足を横にそろえ、やや沈み込んだ体勢を取る時、もっともパスカットの範囲が広くなる。



これに対し、後ろに下がる姿勢では、横の動きは制限され、パスカット範囲は極めて小さくなる。



守備者の横の動きを制限することは、ドリブルにおいても重要な意味を持つ。




前に出る保持者に対し、守備者は後ろへ下がる。
保持者は、守備者に向けてボールを突く。









守備者は、非常に苦しい体勢にある。
これは、最初に後ろに下がる状態で抜かれたためである。
このため、横への対応が遅れる。








正対から相手を押し込み、そこから縦に抜いている。
パスでも見たように、後ろに下がると、横の動きに対して反応しづらい。
また、後ろに下がるということは、ボール保持者との距離を空けるということであり、切り返された後、再び詰めるのに時間がかかる。



正対により押し込むことで、守備者に不利な体勢を余儀なくさせ、そこから抜く。

本当のドリブルとは、横の動きで相手をかわすことではない。
前進から押し込み、そこから抜くことのできる選手を真のドリブラーと言う。

以上、正対がパスにもドリブルにも本質的に重要であることを見た。

正対が本質であるということは、正対から使うことができる技術を身につけることが、プレーを向上させる最適な道であることを意味する。

これまでも見たように、正対からは、前方へ常に4つの選択肢が存在する。
左右を抜くパスとドリブルである。

最低限、この4つのプレーができれば、試合で役に立たない選手になることはない。

その意味で、技術ミニマムと呼ぶべきものである。

次回はこれを見る




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