週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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これまで、楔型と弓型の動作の違いを見た。
動作の違いは、性質の違いを生む。
以下にそれぞれの良い面を見る。

弓型の特性

弓型は、楔型に比べ、モーションが大きい。
これは、以下の長所を生む。

小さな最大の力で強いボールを蹴ることができる
フェイント動作に適している
動作のコントロールに向く

それぞれについて理由を見る。

モーションが大きいということは、踏み込みからインパクトまで長い時間がかかることを意味する。
つまり、足を長い時間加速させることができる。
このため、筋肉の発揮する最大の力が小さくても、インパクト時の足の速さを増すことが可能となる。
この点のやや詳しい内容は、本文末を参照されたい。

フェイントに関しては、以下の通りである。

・フェイントとインステップキック

弓型のインステップは、モーションが大きい。
このため、相手に対応されやすい。
対応されやすいということは、相手を本来の意図とは別方向に釣りやすいということでもある。
この特徴は、フェイントにおいて有利である。

インステップでフェイントをかけ、インサイドで逆に蹴る、いわゆるステップサイドの典型的なフォームは以下のようになる。








軸足側へのキックを見せた後、蹴り足を返して逆を取る。
最後の図において、キーパーは反対方向に倒れている。
後ろにそりながらの踏み込みは、最初のモーションが弓型であることを示唆している。

また、この点に関して、以下のエウゼビオのプレーは示唆的である。

シュートフェイクからドリブル

















以上において、キックを見せるため、手を大きく動かしている。
楔型では近い距離においてこのような動きを必要としない。
モーションの大きな弓型へ入る構えをフェイントとして使用している。
続いて、以下のように進行する。

ドリブルから楔型インステップへ

























以上において、一度沈み込んで跳ね上がる、楔形の特徴が見られる。

フェイントを弓型で見せ、実際には楔型で打つ。
これは、モーションの大きい弓型の方が、相手を釣りやすい性質を利用したものであると考えられる。

弓型は、インパクトまでに時間がかかる。
時間がかかるということは、その間に細工をすることが可能になる。

また、時間的に余裕があることは、制御においても有利であると考えられる。
力加減を合わせるなどの目的には、弓型の方が楔型よりも優れていると予想される。

以上が、弓型の特性を以下のように規定する理由である。

小さな最大の力で強いボールを蹴ることができる
フェイント動作に適している
動作のコントロールに向く

次に楔形の長所を見る。


補足:
以下は、弓型において、筋肉の発揮する最大の力が小さくても、インパクト時の足の速さを増すことが可能であるとする理由である。

・力とキック

インステップキックについて、理想化された状態で考える。
以降のグラフは、時間による力の変化を表しているとする。



ある時間に力が加わり始め、ある点で最大値を示した後に落ちる。

ボールを強く蹴るためには、蹴る直前の足の速さが速ければ速いほど良い。
足の速さは、線で囲まれる面積で決まる。



影の部分が広ければ広いほど、インパクト直前の足は速く動く。
逆に、狭いことは、遅く動くことを示す。



赤い線と緑の線では、赤い線の方が強いキックを蹴ることができる。
緑の線と同じ最大値で、速さを増そうと思えば、かける時間を延ばせばよい。



紫の線は、最大値は緑の線と同じで、より長時間力を加えたことをあらわしている。



上の二つの曲線で囲まれる面積はほぼ等しい。
理想化された状況において、この二つの曲線は、ほぼ同じ強さのキックをあらわす。

瞬間的に大きな力を出すためには、筋肉の瞬発力が必要である。



その意味において、赤い線は、瞬発力に恵まれた選手であり、緑の線は、それに恵まれない選手を表しているといえる。

弓型のインステップは、瞬発力に恵まれない選手に、強いキックを蹴る道を開く型であるとも言える。

以上は、初等的かつ理想化された状態での話である。



しかし、楔型が、赤の特性曲線に属し、弓型が、紫の特性曲線に属する、とみなして安全であろうと思われる。

以上は、実証のともなわない話である。現実には、あらゆる状況において、楔型が最も強くボールを蹴る方法である、もしくはその逆である、という結論に至る可能性を完全に否定することはできない。

次に、楔形の特性について見る。
ロングシュートにおける、弓型と楔型の動作特徴を比較する。


・手の動き

-弓型の手の動き
腕を伸ばし、大きく回す

クリスティアーノ・ロナウド




バラガン




-楔型、手の動き
エウゼビオは、手を大きく回す。
バルボについては不明。

エウゼビオ、バルボ







・踏み込み、姿勢

-弓型の踏み込み、姿勢
体をそる
軸足はやや飛ぶように踏み込む

クリスティアーノ・ロナウド






バラガン




-楔型の踏み込み、姿勢
上体をそらない。
上からかぶせるように踏み込む
背筋は立ったまま、胸から頭はやや前傾

エウゼビオ、バルボ







・フォロースルー

-弓型のフォロースルー
蹴り足は軸に巻きつくように動く
上に伸びない

クリスティアーノ・ロナウド









バラガン









-楔型のフォロースルー
足を前に抜く
全体として上に伸びる、跳ねる

エウゼビオ、バルボ









以上において、類似性は、ロングシュートの手の動きにのみ見られる。
弓型、楔型は、同じインステップと呼ばれるキックであるが、いわゆる、フォーム、モーションは、大きく異なる。
その動作の違いは、性質の違いを生むはずである。
次回は、その点を見る
これは、弓型、楔型のインステップキックの続きである。
ここでは、それぞれの動作の特徴を比較する。
最初に、エリア付近からのシュートを見る。


・手の動き

-弓型の手の動き
腕を伸ばし、やや斜め上側から大きく回す

モイセス






カカー






-楔型の手の動き
走る(歩く)動作から、そのまま引く。肘は肩より下。

クリスティアーノ・ロナウド








エウゼビオ









・踏み込み、姿勢

-弓型の踏み込み、姿勢
体をそる
軸足はやや飛ぶように踏み込む

モイセス





カカー





-楔型の踏み込み、姿勢
上体をそらない。
全体的に、落ちるように、上からかぶせるように踏み込む
背筋は立ったまま、胸から頭はやや前傾

クリスティアーノ・ロナウド






エウゼビオ










・フォロースルー

-弓型のフォロースルー
蹴り足は軸に巻きつくように動く
上に伸びない

モイセス







カカー








-楔型のフォロースルー
足を前に抜く
全体として上に伸びる、跳ねる

クリスティアーノ・ロナウド







エウゼビオ







次に、ロングシュートにおける、両者の特徴を比較する。
・楔型を用いたロングシュート
(エウゼビオ、画像出典:Eusebio, The King

-シュート地点



位置を示す線は見えない。以下の図から推察して、ゴールまで30m以上の距離だと考えられる。

-モーション




























上体をまったく後ろに反らぬこと。


シュート後の姿勢


ともに楔形のインステップであることを示している。

モーションの中で、特にシュート後の姿勢は特徴的である。



蹴り足と上体がほとんど地面に平行になる。
独特であり、エウゼビオのポーズとでも名づけるべきものである。

エウゼビオのモーションを、バルボと比較する。























踏み込み時の上体の立ち方


シュート後の姿勢


類似性が高い。
バルボ、エウゼビオともに楔形を用いている。
このことは、楔形が遠距離においても有効であることを示している。

次回は、楔形と弓形の特徴について見る

遠距離からのインステップキック実例先頭に戻る
楔型


弓型


楔型インステップキックによるロングキックについて、アベル・バルボ、エウゼビオ・ダ・シウバを例として見る。
この2人を取り上げる理由は後に述べる。


・楔型を用いたロングシュート
(アベル・バルボ、画像出典:Abel Balbo goal

-シュート地点



-モーション

ボールを追う、赤い選手がバルボである。



































以上のキックが、楔型であるか否かを見るため、弓型を用いたクリスティアーノ・ロナウドのものと比較する。

軸足の踏み込み




蹴り足踵の最高点



フォロースルー





以下、両者の差を見る。

踏み込み時の姿勢


クリスティアーノ・ロナウドは大きく後方にそっている。
バルボにそのような動きは見られない。



右のクリスティアーノ・ロナウドは軸足から肩にかけて全体に斜めになっている。
これに対し、左のバルボは上半身は鉛直方向に伸びている。

フォロースルー





右のクリスティアーノ・ロナウドは、体が横に流れている。
左のバルボは、体が縦に閉じている。

以上は、バルボのキックが楔型であることを示している。
楔型のインステップキックでも、十分遠距離からシュートを決めることができる。

次に、別の選手の楔型によるロングシュートを見る。


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