週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
「さて」
「クロアチアは、いかにして最後の失点を防ぐべきだったか、ということやな」 「それを考えるために、下の三枚の写真を眺めてみたい」 「ふむ」 「鍵は、二枚目の写真で、この時、青い2人のディフェンダーは、片足が下がりつつあることがわかる」 「三枚目で、確かに足が後ろに出てるな」 「これは、守備として非常に基本的な部分を間違えている」 「ふむ」 「常識として、ディフェンスは、ボールがどこに飛ぶかわからない状況では、あらゆる方向にすばやく動くことのできる体勢をとらなければならない」 「ある方向に動いていたのでは、そこから外れた部分に対応できないからやな」 「それは、沈み込みや、準備動作と呼ばれるもので、両足に均等に体重をかけ、膝を軽く曲げて重心を沈ませる」 「テニスの選手がレシーブの時によく行う」 「バドミントンでも重要になる」 「サッカーでは、それを実現するために、軽くジャンプする姿がよく見られる」 「マケレレなんかがそうやな」 「ちょっと飛びすぎぐらい飛ぶこともあるけどな」 「それで、その技術がもっとも多く使われる場面というのは、空中で二人の選手がボールを競り合う時になる」 「斜め前後左右、どこにボールが飛ぶかわからないことが理由としてある」 「まさに、この状況がそれにあたる」 「ここで準備動作をしていなかったことが致命傷になったわけか」 「実は、2人のディフェンダーは、ここから二歩半も下がる」 「それがなければ、確実にクリアできていた」 「クリアをしていれば、そこで笛が鳴り、クロアチアが勝っていた」 「運命の分かれ道かね」 「ここで、ミスをした選手の1人は、ロベルト・コバック」 「うむ」 「そして、ミスをした内容は、2人の選手が空中で競り合う時に周囲は準備体勢を取るという非常に基本的なことだった」 「数学でいえば、技師が九九を間違えるようなもんやな」 「よくわからん例えやな」 「そのくらい基本ということや」 「コバックほどの経験を積んだディフェンダーがこれを間違えるというのは、状況を抜いては理解できない」 「延長ロスタイム、残りワンプレーで得点をとられなければ終わり」 「それが、彼をゴール方向へゴール方向へと引っ張ったとしか考えられない」 「ボールを近づけたくないから、ゴールのすぐ前で守ろうという意識が働くのかね」 「ロベルト・コバックがこのようなミスをおかすとしたら、地球上のほとんどの人間は同じ間違いをおかすと思っていい」 「いきなり話が広がったな」 「なんにしても、沈み込み、準備動作というのは非常に大切だから、選手も監督も日々の練習でこれをおろそかにしてはいけないということやな」 「そういう結論か」 「事実だからしょうがない」 「あと、この失点を防ぐという意味で、クロアチアとしては、オフサイドで相手にきっかけとなるフリーキックを与えたのがまずかった」 「下の形か」 「ラキティッチがボールを奪い、トルコの選手をひらりひらりと2人かわす」 「縦に走るフォワードにパス」 「センターサークル付近でオフサイドを取られ、トルコにハーフラインに近い位置で間接フリーキックが与えられる」 「クロアチアのゴールに近い位置だったからこそ、いいボールがエリア前に入った」 「やはり、ここでは下のように出したい」 「コーナー方向か」 「ここでボールをキープすれば、クロアチアの勝ちだった可能性は非常に高い」 「しかし、オフサイドを取られたら結局一緒ちゃうかね」 「フォワードは、間に合わないと思ったら止まればよくて、そうすればオフサイドは取られない。キーパーがボールに追いつくのは深い位置だから、ロングボールの脅威としては薄らぐ」 「あの状況で止まるのは無理やろ」 「それに、もし、サイドの奥に蹴ってオフサイドを取られれば、ボールを蹴る地点に動かすために時間がかかる。あの場合は、中央に蹴ってキーパーに直接取られたから、すぐに蹴られてディフェンスを整える時間が少なかった」 「それはあるかもわからんな」 「これも基本やけど、やっぱり世の中最後は基本が大切やから、普段の練習からそれを意識してやらなあかんと痛感する次第や」 「反省しきりやな」 「まさに」 「では、最後に、前の文の一番最初の方ででてきたクロアチアの見事なプレーを分析して終わるか」 「ええで」 「続きは」 「こちら」
「さて」
「ユーロ2008トルコ対クロアチアにおける、19分のクロアチアのプレーを分析すると」 「まあ、そういうわけやな」 「まず、このプレーでは、ターンパスという技が重要な役割を果たしていた」 「ターンパスというのは、下のようにあらわされる」 「これは、イニエスタが非常に得意で、まず、ディフェンスを背負ってボールを受ける場合に、近いサイドラインの方向へターンするフェイントを入れる」 「この場合、左やな」 「そこから、きゅっと内側にターンしてディフェンスを振り切り、斜め前方を向く」 「そこから中央やサイドへパスを出すフェイクを入れる」 「ディフェンスを中に釣った後、ターンしてきた方向にパスを戻す」 「ゾーンディフェンスに対して、最も簡単に裏を取る方法の一つやな」 「簡単といっても、最初のターンが難しいねんけどな」 「この技が決まれば、最後にパスを受ける選手は動く必要がなく、ディフェンスの方が勝手に遠ざかってくれる」 「動きの部分だけを取り出せば、下のようになる」 「左右両方か」 「これを、右利きが右サイドで行う場合、最後のパスはアウトサイドで出すことになる」 「これは、スルーパスを出す時によく使われる」 「下の形やな」 「中央にターンして、アウトで縦に出すと、高確率でチャンスになる」 「ドイツ対ポーランドの一点目なんかが、その典型やな」 「ゴメスがクローゼに出したパスがまさにそれにあたる」 「下準備はこれくらいにして、プレー鑑賞に移るか」 「まず、クロアチアの攻撃は、下の形からはじまった」 「青がクロアチアで、上方向に攻めている」 「センターサークル下でのドリブルの後、下がってきたクラニチャルにボールがわたる」 「それを前に短く出す」 「受けたのはモドリッチ」 「それを素早くクラニチャルに戻す」 「ここからダイレクトでサイドチェンジ」 「右のスルナにわたる」 「ここでは、”3本の短いパスと1本の長いパス”という手筋が使われている」 「短いパスをつなぐと、そこに守備が集まってくる、集めたところで大きく展開すれば、当然チャンスになる」 「これを実現するために、3本パスをつないだら1本長いパスを考えろ、といわれる」 「見事にそうなっている」 「同じ図で、前線の選手の動きも重要で、一番前の選手が裏に抜ける動きをすることでサイドのディフェンダーを後ろに引っ張り、長いボールを受ける選手をフリーにした」 「ラインの裏を狙うことでスペースを作る実例やな」 「サイドにボールが渡った後は、下のように進行する」 「ボールを持ったスルナに対して、その外からサイドバックが追い越しをかける」 「これで、中のディフェンダーがサイドにつられる」 「スルナは、縦に行くそぶりを見せながら、相手の中盤が下がったところで中に切り返す」 「切り返した後は、弧を描くように中央に入る」 「これがターンパスのターンに相当する」 「アウトサイドでディフェンスの裏へパス」 「ターンパスの完成やな」 「そこにモドリッチが大きく斜めに走り込む」 「いわゆるダイアゴナル・ランというもので、相手を崩すきっかけになることが多い」 「チェコ戦でのアルトゥントップなんかが同じような行動を取っている」 「ボールを受けたモドリッチは、斜めにドリブル」 「これにあわせて、中央のフォワードはニア方向に走り込む」 「下の状態になる」 「ここで、モドリッチは、どのようなパスを出すのでしょうか、というのが問題なわけだが」 「いきなり問題か」 「下のように出す」 「単純なクロスといえばクロスだが、ファーポストの手前に止めるというか、置く感じで出す」 「フォワードの足元に合わせようと思うと難しいので、点で囲まれたゾーンに置くようにするとやりやすい」 「これは、サイドの選手がラインの裏に抜けてペナルティーエリアの横付近に出た時の手筋の一つやな」 「そのような状況では、多くの場合、ファーポスト側に選手が1人余っているので、シュートフェイクから、その前のスペースに置くように出すと簡単に決まる」 「この場合、モドリッチは外方向に走っていたので、シュートフェイクを使えなかった」 「中に戻されたボールに対して、ニア方向に走ったフォワードが、開きながら反応する」 「消える動きその1、ニアからファーへ逃げる、というやつやな」 「ダイレクトでシュート」 「完全に決まったと思いきや」 「ボールはバーを叩いた」 「実に惜しいシーンだった」 「使われている手筋、チームでスペースを作る動き、それをいかす技術、それらが見事に融合したプレーだっただけに、決まらなかったのが悔やまれる」 「決まってたら、ベストゴールに推薦したいところやけどな」 「ちなみに、上の流れをサッカー用語で表現すると、3本のショートパスから長い展開でフォワードがフリーランで空けた右サイドのスペースを使い、サイドバックのオーバーラップを背景にターンパスからダイアゴナル・ランでラインの裏へ抜ける中盤にパスを合わせ、ファーポストへの置いておくクロスに対してニアからファーに動きを変えたフォワードが反応してシュートを打ったがバーを叩いた、ということになる」 「またもじゅげむじゅげむか」 「そんなこんなで」 「実に様々な教訓に満ちた試合だったというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」
「さて」
「ヌーノ・ゴメスのシュートに関してやな」 「この得点は、クリスティアーノ・ロナウドが左からボールを持ちこみ、そのシュートをキーパが弾いて、中央に跳ね返ったことから始まった」 「こぼれ球を、メルテザッカーが追いかける」 「ヌーノ・ゴメスがダイレクトでシュート」 「この時、メルテザッカーは、なぜか気をつけをしている」 「これはいかなる理由によるものかというと、下のようになる」 「横から来たボールを、逆サイドネットにシュートするというのはシュートを決める基本的な技術の一つである」 「そこで、ディフェンスは黄色い線のように足を出していきたいのだが、あわてて出すと、その下を通して決められる」 「これまた基本的な手筋の一つやな」 「メルテザッカーは、それを嫌って足を揃えた」 「ところが、ヌーノ・ゴメスは、その軸足の内側を抜かず、外側を通した」 「裏側から見た図はこちら」 「一番右に、ちらりと顔が見えるのがキーパーやな」 「一瞬の読み合いに勝つところが素晴らしい」 「この状態でニア側にシュートを打つと、戻ってくるキーパーが気になるところやけど、目の前のディフェンスの足のすぐ外を通せば、キーパーに対して一番遠い位置に打つことができる」 「よいシュートであったと」 「ちなみに、股と軸足については、こちらにもありますので」 「ご一読いただければと」 「これで、スコアは1-2」 「ポルトガル追い上げムード」 「ではあったが」 「60分にまたもセットプレーから失点する」 「チェコ戦で、ポルトガルの弱点として、セットプレーに弱いこと、テクニックに溺れること、ペペの裏がハイボールに弱いこと、以上の3点があったわけだが、見事に1番目でやられてしまった」 「次はその辺りを見てみようかと」 「こちらにてどうぞ」
「さて」
「下の流れで、プレーの間というものに関して、面白い場面があったという話やな」 「サイドから、中央に入る選手の拡大写真は、次のようになる」 「問題は、ここや」 「どこや」 「どういう状態かというと、下のようにあらわされる」 「体の正面が相手に向いて、軸がほぼ真っ直ぐな状態やな」 「これは、次のプレーで、左、つまりゴールライン方向へドリブルをすることもできるし、右、つまり中央へパスを出すこともできる」 「要するに、どっちかに傾いてないから、どっちにでも行けるということやろ」 「こうなると、正面のディフェンダーは、一度止まらざるをえないし、周囲をカバーしているディフェンダーも次にどう動くかを注目せざるをえない」 「その一瞬が間なわけか」 「瞬間的な溜めともいえる」 「そこで、ディフェンスの死角で動いたりして相手の裏を取るわけやな」 「攻撃側としては、この一瞬の間があると、動きを合わせやすい」 「この次の動きが、じゃんけんぽんのぽんになる」 「この場合は、中央にパスを出す」 「一瞬ボールを見てしまうディフェンスは、これへの対応が遅れると」 「そういうことになる」 「それにひっかからないと、バレージのような変態的なディフェンスに近づけるわけやな」 「多分な」 「なんにしても、一番近いディフェンスに正対する、ということがここでも重要なわけやな」 「ドイツワールドカップのまとめでも出てきた通りや」 「最後にちょっと、守備組織の話をしておきたいんやけどな」 「ええで」 「ロシアの中盤というのは、1-3の形になっていて、左中央が凹んでいる」 「そうやな」 「そうなると、綺麗な4人のラインと比較して、下のパスが通りやすい」 「下の1人を他の3人と同じ高さまで上げれば、そのコースは消すことができるしな」 「ここで、サイドから中央に入るパスは、ぜひ止めたい」 「それを入れられると、守備は非常にしんどい」 「そうすると、フォワードを使って遮断する、というのが思い浮かぶ」 「まあ、そうなるやろな」 「ここが問題なわけや」 「なにがや」 「中盤の構成として、一つ通りやすいパスコースが残る、これを意図的に使うことで、相手のプレーをある程度操作できるのではないか、ということや」 「具体的に頼む」 「こうしておけば、相手としては右サイドにパスを出しやすいから、そちらにボールが流れる」 「その可能性はあるな」 「ところが、相手のサイドを比較して、右の選手の方が下手だとしたら、守備側にとって都合のいい状態を作り出すことができる」 「トラップディフェンスの一種か」 「いつか試してみたいとろこではあるな」 「そんなこんなで」 「また次回」 「ご機嫌よう」 付録:ロシアの得点、サイドからのボールを逆サイドに打つ
「さて」
「トーレスとビジャのコンビネーションについてやな」 「まず、二人の選手のコンビネーションが良い悪いを考える時に、もっとも単純な発想としては、どのくらいパスを交換したかを調べればいい、というのが浮かぶ」 「そこで、質問にあったスペイン対ロシアでの両者のパス交換を調べてみる」 「トーレスからビジャへが2本、ビジャからトーレスへは1本」 「ソースはUEFA」 「まあ、少ないと言っていい」 「最小限の交換という感じか」 「ただ、ここで考えるべきは、逆にパスの交換が多いからといって、コンビネーションが良いという証明にはならないということやな」 「例えば、下の図やな」 「相手がプレシャーをかけてこない状態で、前にパスコースがないと、センターバックの間で何本でもパスをつなげることができる」 「具体的な例は、ギリシャ対スウェーデンでのギリシャのバックスやな」 「攻めあぐねて、後ろでずっとパスを交換してブーイングを浴びていた」 「後半はデラスの位置を変化させることで、どうにかそれを打開しようとしていたけどな」 「上の例では、確かに二人の選手の間のパス本数は増えるが、これをもってコンビネーションがいいとはいえない」 「当たり前といえば当たり前やな」 「となると、コンビネーションとはなんだ、コンビネーションがいいとはなんだ、という話になる」 「定義で悩むというやつか」 「そこで、あれはいいコンビだ、と言われる条件を考えてみると、互いの考えが言葉を介さずに理解される、という要素が必須であることは間違いない」 「以心伝心というやつやな」 「じゃあ、サッカーにおいて何を理解するのかと考えると、いくつかの選択肢がある状況において、共通のものを選び出してそれに向けて協調して動く、という状態が互いを理解した状態であるということができる」 「プレーイメージの共有とその実行ということやな」 「例えば、上のセンターバックのパス交換は、この2人の間では一つのパスコースしか存在しないため、上の話で出てきたいくつかの選択肢から共通のものを選び出すという要素が抜ける。だから、これはコンビネーションが良いか悪いかの結論に対して証拠とすることができない」 「当たり前のパスやからコンビもなにもないということやな」 「すると、下の状態でのパスもコンビネーションが良い悪いという話とは無関係になる」 「これは、ロシア戦でビジャが決めたときにトーレスからパスが出た場面やな」 「この状態で、ビジャが走りこむ場所はディフェンスの間、エリア中央しかなく、これはビジャを世界中どのフォワードに代えてもこう走る」 「他の動きは考えられへんしな」 「上のように動く選手がいたら、それはフォワード廃業というより、サッカー選手廃業に近いものがある」 「別に廃業せんでもええと思うけどな」 「ビジャの走るコースが一本だと、それにあわせるトーレスのパスコースも一本になる」 「すると、選択の余地というものがなくなるわけか」 「だから、上のパスは2人の選手のコンビネーションがいいかどうかの議論に対しては有効性を持たない」 「要するに、当たり前のパスということかね」 「そこで、どんな動きやパスが良いコンビネーションといえるのか、その具体例を考えてみる」 「下の図か」 「青いチームは右に攻めている」 「今、右サイドから中央にボールが出て、それをワントラップした選手が左サイドを向いた状態をあらわしている」 「ここで、ボールを持っているのがグティ、1と書かれた選手をラウールであるとする」 「この2人の間にスルーパスが通ります。そのパスコースと、1番の選手の動きはどのようなものでしょう、というのが第一問になる」 「もっとも普通のコースは下のようにあらわされる」 「センターバックの間やな」 「しかし、グティとラウールの場合、こうはならない」 「ほぼ間違いなく、下のようになる」 「ラウールはバックステップを踏み、グティはサイドにパスを出すフェイクを入れた後、体の向きから90度を越えるような角度でスルーパスを出す」 「普通、こんな角度でパスは出せないし、出したとしても上手く通らない」 「ところが、グティはこれが非常に得意で、ラウールはそれを十分に知っている」 「この辺りについては、こちらが詳しく、こちらにも関係記事がありますので、それを読みいただくとして」 「この状態で、グティの方も、上のパスにラウールが合わせてくれることを知っている」 「ラウールはグティが出すと信じ、グティはラウールが受けると信じ、同じ選択肢を選んでいる。これが実現された場合、この2人は、コンビネーションが良いといっていい」 「まあそうやわな」 「次に、別の例も考えてみたい」 「下の図か」 「速攻から、サイドをうまく崩した状態で、ボールが移動した後の状態を、矢印の選手だけを動かしてあらわすと下のようになる」 「ふむ」 「上の流れで、ボールを持った選手を代表にも選ばれているセルヒオ・ガルシア、1のついた選手をディエゴ・ミリートとしてどのようなパスが出るか、1はどのような動きをするのか、というのが第二問なわけや」 「おそらく、もっとも普通のアイディアは下の流れやな」 「フリーのサイドに渡してクロスか」 「サイドでドリブルが入るか入らないかは別として、クロスが来る可能性が高いから、とりあえずファー方向に動きながら中に入るか、それをフェイントにして裏を取るか、どちらかを狙う」 「動きとクロスが合えば一点の場面やな」 「ところが、セルヒオ・ガルシアは必ずしもそうのような選択肢を選ばない」 「どうするかというと、下のように体を捻りながらヒールかなにかで無理やり中に入れる」 「これはどのような狙いかというと、1の選手がファーからニアに入って、ディフェンスが遅れればそのままシュート」 「シュートブロックに飛び込んでくれば、切り返してシュート」 「このような筋を狙っている」 「一度サイドに返さず、より直接的にゴールを狙っていくわけやな」 「フォワードらしいアイディアと言える」 「しかし、これは、1の選手が反応してくれないとすごいことになる」 「例えば、クロスが来ると思った場合の動きと重ねると、次のようになる」 「なんやねん、そのパスは、という感じになる」 「セルヒオ・ガルシアは、この手のちょっと人とは違うアイディアが持ち味なのだが、なかなか理解されない」 「ところが、ディエゴ・ミリートはこれがわかる」 「びっくりするくらいによくわかる」 「このような2人は、コンビネーションがいいと言える」 「ちなみに、上のような意思疎通が見られたのは、2シーズン前、ツートップを組んでいた時で、今年はセルヒオ・ガルシアが主にサイドでプレーした関係であまり見られなかった」 「こういう、阿吽の呼吸でプレーが完成した瞬間というのは、実に気持ちがええな」 「必ずしもプレーが完成しなくても、アイディアが通じただけで気持ちいいもんやで」 「そうなんか」 「例えば、フットサルでやな」 「いきなりフットサルか」 「下のようなプレーがあったわけや」 「これはなんだ」 「ペナルティーエリアを、フットサルの丸っこいやつに変換して見て頂きたい」 「上のは、フォワードが下がってボールを受ける場面なのか?」 「そういうことで、この場面で、パスを出す方は、下がる選手の左足ぎりぎりのところにスペースで止まるような遅いパスを通した」 「ふむ」 「それは、下がる選手に合わずに抜けてしまったが、それは、下がる方は足元にもらって、ディフェンスを背負った後、下のようなプレーを考えていたからなわけや」 「ワンツーか、それをフェイクにして逆ターンからシュートか」 「これは一般的なアイディアといえる」 「そうやな」 「出した方は、なぜそうしなかったかというと、下の筋を狙っていたからなんや」 「これはどういうことや」 「下がりながらボールを受けると見せかけて途中で止まり、背中でディフェンスに当たった後、それを軸にターンしながら裏に抜けてそのままシュートを打つ、という狙いやな」 「ほほう」 「なぜこれが有効かというと、デイフェンスのポジションが図の上側にずれていて、背中で当たった後のターンに対抗する手段がないからなんや」 「だからスペースに止まるパスを出したわけか」 「ところが、理解されなかったものだから、後で受けようとした選手からからパスを出した選手に苦情が出た」 「そりゃそうなるわな」 「そこで、パスを出した選手は、指で当たってターンをする軌道を描いたわけや」 「それで」 「すると、受ける方の選手は、ああ、わかったという顔をしてプレーに戻っていった」 「それは中々やな」 「その場ではわからなくても、ほんのちょっとの説明でアイディアが通じた時というのは、それはそれで気持ちがいい」 「コミュニケーションの大切さ、ということやな」 「それは、さておき、トーレスとビジャに話を戻すと、彼らの間で、例えば上のラウールとグティ、セルヒオ・ガルシアとディエゴ・ミリートの間のようなコンビネーションがあったかというと、残念ながら記憶にない」 「それは証明しないのか」 「ある、ということはわりと証明しやすいんやけど、ない、というこはなかなか証明しづらくて、2人がコンビを組んだ全試合のビデオでプレーを逐一見て、ほら、ほとんどないでしょう、というしかないような気がする」 「非存在の証明というやつか」 「そうなんかね」 「まあ、あるかないかでいえば、日本では産出しないと思われていたダイヤモンドが見つかった例もあるしな」 「もし、こんなコンビネーションの実例がある、ということをご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお教え願えればと」 「確かに、ダイヤモンドの例でも、あるという証明はしやすいな」 「石に光をあてて、ほらダイヤのところに山がでるでしょ、といえばいいから納得しやすい」 「それがいつでもどこでもできれば証明になるな」 「ついでに、他の人が同じ実験を行って、確かに同じことがおこらなあかんけどな」 「再現性と追試可能性というやつやな」 「その二つは、サッカーでも重要やな」 「ほうかね」 「スペインはロシアに4-1で勝ったけど、その試合を誉める時に、それが再現可能であるかどうかという点は非常に重要になる」 「スペインのマスコミは、ドイツワールドカップの苦い思い出があるから、馬鹿騒ぎの中にも保留の姿勢があった」 「個人の選手の評価でもそうで、なにかを言うためには、その再現性が大切になる」 「選手寸評でも、一試合か二試合見ただけで書いてるやろ、というのは大体外れている」 「そして、追試可能性というのは、サッカーのプレーよりも、書かれるものに関して重要になる」 「書く方か」 「例えば、このチームは、アタッキングゾーンで前を向いて勝負する選手がいない、という文を書いたとする」 「ふむ」 「これに追試可能性を持たせるためには、そのようなパスについて、なるべく具体的なデータを出すしかない」 「当たり前やな」 「それが前のワールドカップの日本代表まとめであったわけだ」 「それがどうした」 「こういったデータを出すのはなかなか面倒くさい」 「ひたすら数えなあかんからな」 「ただ、サッカーの文章は安全な場所から石を投げつけているだけのものになりがちで、それをさけるもっとも有効な方法は、誰もがその内容を検証可能な方法で出すこと、つまり追試可能性をできるだけ高めて出すことやと思うんや」 「要するに、何かを言うなら誰でも確認できる証拠をきちんと添えて出せ、ということか」 「蹴球計画は、その辺を意図してつくられているんだけど、なかなか十分にできない反省を込めてここに記しておこうかと」 「良いサッカー批評かそうでないかを、追試可能かどうかで判断してみるのは面白いかもしれんな」 「時間がある方は試していただければと」 「そんなこんなで」 「今回はこの辺で」 「質問などございましたら、コメント、メール問わずお送りいただければ、できる限り答えて行きますので」 「よろしくお願いします」 「あと、最近、原稿の依頼が絶えて困っておりますので」 「もし何かありましたらこちらからお送りいただきたいというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」 |
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