週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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「さて」

「ハンドに関する話やな」

「前回にも触れたように、歴史上有名なハンド事件というのは、ほぼ同じ理由で起きている」

「ふむ」

「有名なハンドといえば、マラドーナ、アグエロ、メシといったところが思い浮かぶ」

「全部アルゼンチンやな」

「それらに共通するのは、下のメカニズムであり、副審の配置に対し、審判はその逆へと斜めに動く」



「これが基本で、講習でそう教わるらしいな」

「しかし、そう動くと、下の場所が死角になりやすい」



「下の感じか」



「主審からは、選手の影になって見づらい場面が多く、副審からは距離が遠すぎて正確な判断ができない」

「間に敵が入ることも多い」

「そうなると益々見づらくなる」

「当たり前やな」

「例えば、メシのハンドゴールなどが典型になる」


映像元

「ふむ」

「インパクトの瞬間だが、後ろから見ると手か頭かわからない」

「審判の位置からだと、もっとわかりにくいやろな」

「角度を変えて見るとこうなる」



「頭からずいぶんと距離がある」

「裁くとすれば、副審の仕事だが、いかんせん、元々距離がありすぎるため、正確な判断ができない」

「アグエロはこう」


映像元

「主審からは絶対に見えない」

「副審からも無理やな」

「角度を変えるとこう」



「見事なハンド」

「これ、思いっきりパンチしたゴールやったしな」

「ちなみに、上の”goles con la mano(ハンドによるゴール)”という動画を一つ一つ見ると次のようになる」

「まずは、5位」

「サイドからクロス」



「ピンクの矢印の先、青いジャージが審判」



「下も同様」



「手でシュート」



「審判は、矢印の先におり、まず見えない」

「4位は、審判の位置がわからないので割愛」

「3位は上のアグエロ」

「2位は下」

「キーパーがボールを弾く」



「審判は、画面右、ピンクの矢印の先にいる」

「選手が詰めてきて手でシュート」



「審判は丁度真後ろにいて、まず見えない」

「例によって、副審からも遠すぎて、自信を持った判定はできない」

「そして1位」

「神様登場やな」

「浮いたボールが裏に抜ける」



「ピンクの矢印の先、審判の位置に注目」

「マラドーナが抜け出して」



「手でシュート」



「審判は矢印の後ろにおり、頭か手かわからない」

「副審からも遠い」

「よってゴールが認められた」

「以上のように、ハンドによるゴールというのは、いつも同じ理屈で起こっていることがわかる」

「まあ、その形で起こりやすいというのは確かやな」

「いつも起こる間違いを正さないことを馬鹿といい、もうこのような騒動は終わりにすべきであると思わんかね」

「それでどうせよと」

「アグエロが手で決めた時にも出てきたように、せめて下の位置に審判を増やせばよい」



「そう来たか」

「これで死角の大部分が解消される」

「これは、人件費が増えるから主催者が喜ばんやろ」

「そーゆー問題じゃないやろ」

「おまけに、ビデオ判定を嫌う連中が、審判三人はサッカーの伝統だから云々とかで反対しよるで」

「怪我人や死人が出ても同じことが言えたら立派やけどな」

「どういう意味や」

「ピケのハンドの見逃しや、ハンドゴールの見逃をやっていたら、いつか審判が暴行に合い、悪くすれば死ぬ事態も起きうる」

「殺害はないとしても、暴行は起こるかもしれんな」

「その時、ルールを決める人間が家族に対して、あなたの夫はサッカーの美学と伝統のために犠牲になられたのです、それは立派な行為であり、加害者は相応の報いを受けることになるでしょう、と自信を持って言ったとしたら、立派な偽善者であり阿呆やで」

「そうかね」

「ファールでチャンスを潰すというのがアンチフットボールで、手でプレーをねじまげるというのがさらにアンチフットボールだとしたら、誤審で結果を左右するというのは、最もアンチフットボールなわけで、それを減らす努力もせずにやれ伝統だなんだというのは意味がない」

「選手にハンドをしないように教育せよ、という話もあるのではないかね」

「そういうことを言う人間こそ信用ならんやろ」

「どうやろ」

「人間、一億円を拾ってネコババしてもばれないかもしれない、もしばれたとしてもイエローカードですむ、という状況になればほとんどの人が持って帰るに決まっている」

「それは極めて魅惑的やな」

「選手にとって、チャンピオンズリーグの決勝に進むか否かというのは、一億ではとうてい間に合わない価値があるのだから、当然、手でピンチを防げる、ゴールを決めれるとなれば、やるに決まっている」

「フォワードなんか、反射で手が出るもんやしな」

「それを教育でどうこうとか言うのは、自分は一億を取らないと勘違いしている人間か、真に高潔な人のどちらかやで」

「真に高潔な人やったらどうする」

「そんな人は、本当に稀やって」

「まあ、この試合の結果は興醒めするものではあった」

「バルサは、駄目だとわかっている作戦をとって本当に駄目で、きちんとサッカーをしたチームが、アンチフットボールの塊のような形で敗れた」

「なんか今日はアンチフットボール大好きやな」

「最近、流行みたいやしやな」

「特に流行ってるようには思えんけどな」

「とにかく、ピケのハンドにしても、マラドーナやアグエロのゴールにしても、下の配置の審判から見れば、明らかに手であることがわかる」



「アグエロのは絶対にわかるかね」

「おまけに、バーに当たったボールがラインを割ったか割らないかの判定についても、ここに審判がいれば非常に都合が良い」

「ジェフ・ハーストの疑惑のゴールか」

「結局、一番もめるのは、PKかどうか、シュートがラインをわったかどうかだから、それ専門の審判がいるのは当たり前やで」

「それか、ビデオ判定やな」

「チェルシーにとって、バルサが11人でも余裕で守れてたんだから、退場なんかより、PKの方がずっと意味があった」

「それはあるかもわからん」

「とにかく、この、システムとして誤審を生み出している、良くない状況が早く改善されることを願いつつ」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」

「さて」

「色々と問題になった、主審のトム・ヘニンク・エブレベに関するお話やな」

「まず、アビダルがアネルカを倒したシーンについて」

「青いアネルカが左に攻めていて、アビダルは裏を取られている」



「青い選手の左足が後方へ、黄色い選手の左足が前方へ伸びる」




「その2つが接触する」



「黄色い選手の足は、青い選手の足の側面に軽く触れている」



「その結果、青い選手の足に横向きの力が加わる」

「それにより、踏み出す足の軌道が内側にずれる」



「軌道がずれるとどうなるかというと」



「軸足を蹴ることになる」



「下図で軸足を蹴り」



「左足を踏み出せなくなり」




「結果として転ぶ」






「これはファールである」

「当たり前やな」

「一見ダイブにも見えるし、接触が小さいので見逃してもいいのではないかという話にもなるが、これは絶対にファールを取らないといけない」

「これの名人が、カンナバーロとかマスチェラーノとかやからな」

「カンナバーロは、裏を取られた時、万歳をしながらそっと足を出し、上とまったく同じ形でフォワードを転ばせる」

「一見自然に見えるから、笛も鳴らない」

「めでたしめでたし」

「となってはいけない」

「これを認めると、サッカーで最も興奮する場面の一つである、フォワードとキーパーの一対一を不正な方法で潰すことを認めることになる」

「よって、厳しく取り締まる必要がある」

「そうじゃないと、サッカーがつまらなくなる」

「いわゆるアンチフットボール的行為が蔓延するわけやな」

「よって、この場面で、ファールを取った主審は正解である」

「ただ、退場かどうかはわからんけどな」

「アネルカがボールコントロールした状態なら退場でもいいが、そうでなければイエローでよいようにも思える」

「レッドの対象になる、”明確なゴールチャンスを潰す”の明確というのが、主審の判断しだいやから、なんともいえへんところやな」

「いつも一番揉めるとこやしな」

「しかし、この試合ではもっと揉める場所があった」

「ペナルティーを吹くべきか否か」

「それについては、”all possible chelsea penalties vs barca”という動画がありますので、まずはそちらをご覧いただければと」

「以下、ハンドに関するものを、そちらからの画像でご覧頂こうかと」

「まずは、動画の2分から始まるピケのハンド」



「これはハンドやな」

「他にいいようも解釈のしようもない」

「これを取らないなら、サッカーは手を使ってプレーしていいことになる」

「それなら、わざわざサッカーをする必要はないわな」

「何がアンチフットボールかと言って、キーパー以外が手を使って利益を得ることほどアンチフットボールなことはない」

「その意味でも、最悪の見逃しであった」

「次に、2分35秒から始まるエトーのハンド」

「バラックのボレーが来て」



「エトーは手を伸ばしながら反転し、ボールが当たる」







「これは、下のピンクの矢印の先、すなわち袖口の部分に当たっており、完全にハンドである」



「バラックが怒ったのも無理はない」

「この反則も絶対に認めてはいけない」

「流れ的に、手で顔をかばったように見えなくもない」

「しかし、反転する人間が手を開いたまま回るというのは、自然に反する行動である」

「もし、顔や体の正面を守るために、早く回転したいのなら、手は閉じて体についていなければならない」

「スケートで手を横に伸ばして飛ぶ人がいないのと同じ理屈やな」

「上に伸ばして飛ぶ人はおったけどな」

「ボイタノか」

「古いわな」

「2人のブライアンという選手がいてだな」

「エトーの行為は、反転しながら手を残し、自然にボールが手に当たることを狙っている」

「同じことを、エリアの外でクロスを止めるためにやる選手は多い」

「身を翻しながら、手と足を横に突き出し、コの字になりながらクロスを防ぐ」

「審判と逆サイドであれば、特に見づらいので、手に当たってもわりと流される」

「これまたアンチフットボール的行為で、絶対に放置してはいけない」

「この見逃しも非常に良くない」

「ただ、この場面では、審判にある程度の言い訳が成り立つ」



「審判の角度から見ると、脇か腕かの区別はつけにくい」

「これは吹けない」

「ただ、そんなことを言い出したら、ピケのハンドも吹けない」



「ピケが手で触った時の審判の位置は、図の一番左」

「視線を追うと下のようになる」



「まず見えない」

「しかしあれやな」

「なにゃ」

「もう、この手の反則の見逃しというのは飽き飽きやな」

「飽き飽きかね」

「歴史的に有名なハンド事件というのは、ほとんど全部同じ理由で起きてんねん」

「そうなんか」

「ほんまにそうで、これ以上放置して死人が出る前に、解決を試みるた方がええって」

「どうすんねん」

「その辺りは、こちらからというところで」

「よろしければどうぞ」

「さてさて」

「後半やな」

「まずは、48分28秒、右サイドからパスが渡り、ブスケツがフリーになる」



「ラインの前で前を向いたいい形だが、裏を狙った浮き球はクリアされる」

「53分30秒、縦へのスルーパスからアウベスが抜けてクロス」



「中には合わず、クリアされる」



「このプレーにおける、パスとアウベスの同期は非常に良かった」

「56分16秒、イニエスタがエリア内でドリブル」



「縦へ切り返し」




「アレックスがギリギリで足を伸ばす」



「これがもとでボールはラインを割る」




「ギリギリとはいえ、イニエスタの切り返しについていったアレックスは見事かと」

「第1戦では、ミケルがイニエスタのアウトに綺麗に合わせて、クロスをブロックしたシーンもあった」

「チェルシーはやはり、いい選手を揃えている」

「58分04秒、メシがライン2つを抜くスルーパス」




「クリアされる」




「60分9秒、イニエスタが中へ切れ込み、メシへパス」



「縦へ折り返し」



「クリアされる」



「63分12秒、イニエスタがサイドから中に切れ込む」



「縦に抜けるエトーにパスを送るが、キーパーに回収される」



「64分53秒、メシが切れ込んでシュート」



「枠をそれる」



「65分までのバルサのチャンスは以上」

「一言で言えば、まったく攻めることができていない」

「概念的には、下のようになる」



「ゾーンを、上のように①~③に分ける」

「②はもうちょっと細かく分けないかん気もするが」

「バルサは、基本的に③のゾーンでボールを回しているだけで、チェルシーとしてはまったく恐くない」

「これまでに見たバルサのチャンスというのは、たまに②を崩しかけたという程度で、本命である①は手付かずだった」

「チェルシーにとっては、①を必死で守っていた第1戦に比べると、まったくの余裕だったと言っていい」

「城で言えば、ほとんど三の丸で防いで、たまに二の丸まで攻められたけど、本丸はまったく手付かずだったということになる」

「なんで城で言う必要があるねん」

「いや、なんとなく図がそんな感じやからやな」

「そして、66分にアビダルが退場する」

「裏に抜けるアネルカを引っ掛けてレッドカード」

「引っ掛けるというよりは、後ろに蹴り出された足に横から触り、その影響で、アネルカの踏み出す足が軸足を蹴ったから倒れたんやな」

「リードを奪われ、まったく攻め手を欠いた中での数的不利」

「バルサ大ピンチ」

「実際、その後も鳴かず飛ばず」

「しかし、結果は1-1で勝ち抜け」

「それには、審判の助けが重要な役割を果たした」

「という点について、次にみてみようかと」

こちらから」

「どうぞ」

「さて」

「注目の第2戦は、1対1の引き分け」

「アウェーゴールの差でバルサが決勝進出」

「実にめでたい」

「めでたいのかね?」

「めでたくないのかね?」

「今回はその辺りを見ていこうかと」

「うむ」

「まず、先発はこう」



「ふむ」

「中々興味深い」

「チェルシーは右にアネルカとボジングワ」

「バルサの特徴は下のようになる」



「エトーが左でメシが中」

「トゥレが下がって、中盤の底にブスケツ」

「なんだか意味深な感じがする」

「エトーが左というのは、受けを考えた配置と見ていい」

「右サイドを押さえたい時に良くこれを使う」

「ところが、後ろはトゥレをわざわざセンターバックにして、中盤にブスケツを入れている」

「これだと、守備的に薄くなる」

「その一つの理由が下に見られる」

「下の図では、左に動くボールを、青いドログバと黄色いブスケツが追う」




「ブスケツは素直にボールを追うのに対し、ドログバは体を当てに行く」





「その結果はというと」





「ドログバの1人勝ち」

「トゥレとブスケツの一つの差は、体を当てることに対する強さで、守備ラインの前をカバーする選手には、この要素が必須になる」

「マウロ・シウバ、マケレレ、ガットゥーゾなどなどやな」

「マウロとか聞くとマジーニョを思い出すな」

「古きよきガリシアかね」

「それはともかく、試合開始時点でのバルサは、前は受けを考え、後ろは攻めを考えたような布陣になっている」



「前回、バルサは引いて守るべきであり、それ以外は勝つ確率を減らすだけだという話が出た」

「少なくとも、使った選手を見ると、引いて守る配置ではない」

「サイドは守るものの、やはり、フットボール美学とやらを追求して、後方からきちんと組み立てて攻めるつもりの配置に見える」

「では、果たして、本当に攻めることができたのか」

「その辺りが問題になる」

「まず、ボールポゼッションは、大体、バルサが2/3、チェルシーが1/3で推移した」

「バルサは、いい数字やな」

「次に、ボールを保持した後、どのようなチャンスを迎えたかを見る」

「4分5秒、メシが下の形でボールを持つ」



「これは、ナイスなチャンスやな」

「ただし、メシがトップの関係で、中央に誰もいない」

「この後、メシのドリブルはバラックに防がれる」

「7分2秒、逆サイドから長いボールにアウベスが飛び込む」



「ボレーで合わせたボールは逆サイドに抜けて終わる」

「この後、9分にエシエンのボレーが決まってチェルシーがリード」

「28分53秒、メシのドリブルから、逆サイドのイニエスタのシュート」



「枠を外れる」

「36分1秒、アウベスがエトーに入れる」



「戻してシャビ」




「サイドに展開して、メシ」



「クロスは、直接キーパーへ」



「これは、おそらく、前半最高の形だった」

「アウト・イン・アウトの典型やな」

「37分17秒、メシがサイドを突破する」



「そこからクロス」



「キーパーに直接渡る」



「いい崩しだったが、中には合わなかった」

「ちなみに、これまでのプレーから、リードされた後、バルサは前線を右から、メシ、エトー、イニエスタに変化させたことがうかがわれる」

「40分44秒、メシがボールを持つ」



「良い形だったが、クロスはタッチラインを割る」

「44分43秒、シャビが中に入るイニエスタにパス」



「フリーで受け」



「前を向く」



「これも非常にいい形であるな」

「最終的には、シャビが浮き球でラインの裏を狙い、カットされる」

「前半ロスタイム2分56秒、ショートコーナーからシャビのミドル」



「相手にブロックされ、その跳ね返りを叩くも枠をそれる」

「前半のバルサのチャンスは以上」

「以上かね」

「以上や」

「エリア内からフリーでシュートを打つとか、ラインの裏に抜けた選手がキーパーより先にボールを触るとか、そんなチャンスはないわけやな」




「ない」

「そうか」

「ついでに、フォワードがセンターバックの間、ドフリーでボールを持つ、といったシーンもない」



「これは、ドログバのコントロールミスで終わったやつやな」

「ちなみに、バルサは、エリア内でボールを持つこともあったが、周囲に必ず2~3人の守備者がいた」



「前半攻めることができなかったバルサ、はたして後半どうなるのか」

「続きは」

こちらからどうぞ」

「さて」

「第2戦、いかに戦うか」

「バルサはチェルシーをいかに崩すか」

「そんな話が前回出てきたわけだが」

「だがなんや」

「チェルシーは、守り方自体を変える可能性が高いから、第1戦からの結論はあんまり意味がなかろうと思うわけや」

「そうか」

「この試合では、48分にマルケスが崩れ落ち、50分にプジョルが入った」

50分 マルケス→プジョル


「これは、チェルシーにとって少し途方にくれるところがあり、守備での目標が失われる」

「プジョルに代わったし、前みたいに真面目にケアしなくてもいいのではないか、という話になる」

「それに対するヒディングの回答は明快で、70分に下のようになる」

70分 ランパード→ベレッチ


「これはなんというか」

「からいな」

「おそろしく勝負にからい」

「バルサになにもさせませんよ、という引き方やな」

「ワントップにして、引いて守れたらこれほど楽なことはない」

「マルケスがいるとこれができない」

「それで苦労するわけだが、その心配がなにもなくなった」

「この変化を見ても、バルサにとってマルケスの存在がいかに重いかということがわかるし、たった一人の選手が戦術に極めて大きな影響を与えることがわかる」

「戦術というのは選手の技術的特長から導かれるものであり、技術がわからない人間は結局戦術を理解できないという例でもあるし、技術をわからずに戦術を論じても、上っ面をなぞることしかできない」

「なにはともあれ、バルサとしては、1点を目指さなければしょうがない」

「交代はというと」

「下のようになる」

81分 エトー→ボージャン、86分 アンリ→フレブ


「うむ」

「なるほど」

「これがバルサの問題の一つで、最初から攻撃において最も強い形で戦っているので、選手を代えてもその面での能力は低下する」

「一枚看板やからな」

「この戦術的な奥行きのなさというのは、どうにかならんものかね」

「チェルシーとしては、バルサが同じように来るなら、下の形でええかね」



「きちんとスペースを埋めて0-0進行、後半65分過ぎから勝負をかけるようなパターンで十分やな」

「中盤の体力ではチェルシーに分があるし、ベンチに攻め駒もある」

「バルサはケイタを中盤に入れると良い意味はあるねんけどな」

「なんでや」

「アウベスのクロスに対して、一番合うのは彼やと思わんか」

「どうやろ」

「まあ、この形なら、まず、チェルシーの有利は動かない」

「後半のグダグダ勝負になったらチェルシーが強いのは第1戦でもそうやったしな」

「おまけに、0-0ならホームで延長までいけることを考えると、失点さえしなければ時間が経つほどどんどん有利になる」

「バルサは困ったな」

「なんにも困ることはあれへんがな」

「なんでや」

「ジャンケンでいうたら、いつもチョキばっかり出してるから、グーを出されて困るだけで、それをやめればええねん」

「でも、バルサはパーは出せへんぞ」

「ほんならこっちもグーを出せばええだけや」



「そうきたか」

「あっちが攻めてけえへんのやったら、こっちも引いたらええだけや」

「トゥレの横にケイタで、サイドにフレブかね」

「去年までのバルサは、この2人がいなくてこういう戦いはできなかったけど、折角買ったんやから、ここで使うたらええやろ」

「引いて左を空けるのか」

「イニエスタを浮かせてエシエンさん、いらっしゃいや」



「まあ、アビダルがエシエンに負けることはないと思うけどな」

「縦にスペースがなければ、エシエンなんかカモみたいなもんや」

「しかし、そう組んで、実は右にアネルカなんかが先発したらどうする?」

「その時は、イニエスタとフレブの位置を代えればいいだけで、なんの問題もない」

「ボールを取った後はカウンターか」

「当たり前で、エトーとフレブをターゲットにしてカウンターを狙う」



「どっちがチェルシーかわからんな」

「相手が嵌め手にくるなら、こっちも嵌め返したらいい。馬鹿正直に相手の予想通りに戦って的になる必要はどこにもない」

「理屈はそうやけどや」

「おまけにベンチを見てみ、アンリとメシが持ち駒になってる状態は相手にとって重いし、調子6割程度のメシを最初から使うより、途中から出した方がええやろ」

「アンリはあかんかもしれんという噂やけどな」

「スコアラインで見れば、0-0以外の引き分けは全部バルサの勝ちになるわけだから、1-1を目指せばいい。それならアウェーで素直に引くのが常道だし、チェルシーの攻撃ならそれで十分しのげる」

「第1戦の後、グアルディオラやイニエスタがチェルシーのサッカーがつまらんのどうこうみたいな発言をして、それはないやろ」

「そんなん、バルサが負けた時に出るお約束みたいなもんで、何の意味もないやんか」

「まあ、そうやけどな」

「それに、もっと煽ったったらええんや」

「なんでそんないに興奮してんねん」

「チェルシーのサッカーは最悪だ、アンチフットボールだ、退屈を通り越して見ただけで気絶しそうだ、とか散々言い散らかして、本番でガチガチに引いたら相手はびっくりやで」

「それじゃ緒戦のヒディングと同じやんか」

「だから、やられたら、やりかえしたらええんやって」

「ハンムラビか、お前は」

「ヒディングに対しても、”昔、戦う戦力があるのに、サッカーをしないチームを見ると反吐が出る、とか言ってあのプレーか。なら、自分に向かって反吐を吐け”とか挑発すれば、流石に冷静ではいられんと思うで」

「どんだけ盤外戦術やねん」

「まあ、チェルシーのやったことは、戦術上当然で、非難されることなんか何一つないねんけど、使えるもんは使っていかんと」

「しかし、今日はまた、えらい勢いやな」

「そうか?」

「一文が長いねん」

「それは意外やな」

「先発やけど、別に、これでええやろ」



「それもありやな」

「アンチフットボールが云々とかいうなら、前に賭けたらええやろ」

「どうせなら、いっそのこと、下まで行ったらええんちゃうか」



「まさにドリームやな」

「しかし、第2戦の最適解は下の図か、そのバリエーションで、これ以外は勝つ確率を下げるだけでアホみたいなもんやで」



「チェルシーは、デコもジョー・コールも今期あかんらしいな」

「それも、引くことが良い解になる一つの理由やな」

「しかし、バルサのフィロソフィー的にそういうわけにもいかんのちゃうか」

「そんなことないで」

「そうかね」

「実際、0506と0405のバルサとチェルシーがその良い例やんか」

「バルサが優勝する年と、その前の年か」

「簡単に言えば、0405のバルサは理想論的サッカーで、常にサイドバックを上げてプレーし、その裏を突かれて5-4で引っくり返った」

「0506は、その反省をいかし、アウェーでは守りを固め、我慢の試合で勝ちにつなげた」

「0405は今と同じ一枚看板サッカーで敗れ、0506は試合毎に、相手に合わせて戦術を調整し、それがビッグイアーにつながった」

「そのあたりは、0405がこちら、0506はこちらのバルサの項目を参照いただくとして」

「フィロソフィーやイデア云々の話は、既に結論が出ていて、しかも、バルサ自身がそれを強烈に体験してるはずなんやけどな」

「その時はライカールトで、監督が違うしな」

「より勝ちやすい方法があるのに、それをとらずに相手の術中にわざわざ嵌りに行くとしたら、そっちの方がよっぽどアンチフットボールやで」

「そうなんかね」

「武道でも実際の戦争でも、技量や戦力が伯仲するほどうかつに動けなくなって睨み合いになるのが普通なわけで、時代劇みたいにちゃんちゃんばらばらやるわけにはいかんやろ」

「バルサは、技量において絶対的に優っている自信があるから、同じやり方を貫くんやろ」

「技はそうだとしても、サッカーはそれだけでは決まらんのと違うか」

「それに、あれだけ選手を揃えたチェルシーが、完全に守りに来たのに、ちゃんとエリアの中までボールを運べるバルサというのは、凄いで」

「それは確かに」

「チェルシーは、決して余力を残して守り切ったわけではなく、空いてはいけない部分が空く場面が多々あったし、最後の壁でバルサの攻撃をしのぎぎった、というゲームだった」

「チェルシーがあそこまで守ったら、普通のチームだと手も足もでんやろな」

「マドリー対リバプールのような試合になりかねない」

「それは言うたらあかん」

「そのんなこんなも含めて、第2戦をお楽しみに、というところやな」

「それにしても、バルサは十分勝てるんやから、素直に勝ちに行ったらええとおもうけどな」

「そこも注目という話や」

「というところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」

「ちなみに、クラシコの分析はありませんので」

「申し訳ありませんが、ご理解いただければと」

「そのような次第です」

「そういえばや」

「なんや」

「この試合、ドログバに注目してて一つ気づいたんやけどな」

「だからなんや」

「マルケスが倒れたシーンやけどな」






「最後、左手を上げて、手前を向き、何かを叫んでるんや」

「そのようやな」

「これは、サイドラインに向かって医者を呼んでいる図で、バルサの選手ですら誰もこんな行動は取っていない」

「マルケスの怪我が尋常じゃないのを直感したんやろうな」

「その瞬間、敵のために本気で医者を呼ぶことのできるドログバは、なんというか、人として信用できると思わんかね」

「当たり前といえば当たり前の行動のような気もするが、実はそうでもないのかもわからんね」

「そんなこんなで」

「今度こそ本当にまた次回」

「ご機嫌よう」


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