週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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最も自然な組み合わせは下図の通り。



この状態では、スペインの方が有利である。

スペインが警戒すべきドイツの攻撃は2種類。



ロングボールと左サイドである。
スペインの守備は、ロングボールをキープされると弱い。
実例は、スウェーデン戦に見られる。
ドイツは、ロングボールをフォワードに入れることができない。
トルコ戦で、ディフェンスラインからクローゼに通ったパスは下の通りである。



スウェーデン戦前半で、イブラヒモビッチに出たパスは下の通りである。


バラックへのパスは下の通り。



バラックは、クローゼより下がってパスを受けることが多い。
クローゼ、バラック共に、ラームから最も多く受けている。
ドイツのフォワードへのロングボールは非常の少なく、スペインに有利である。

ドイツは、左からの攻めに非常に依存している。
具体的には、ポドルスキーとラームである。
スペインで、これに対するのは、セルヒオ・ラモスとシルバである。



セルヒオ・ラモスがポドルスキーに抜かれることはなく、ポドルスキーがセルヒオ・ラモスを止めることはできないと予想される。
ラームとシルバの関係については不明である。
もし、シルバがラームを止めたならば、ドイツは攻める場所を完全に失う。
シルバがイニエスタに変わっても、同様である。

ドイツの左サイドを押さえるには、1-4-1-4-1も有力である。



ファブレガスがシルバにヘルプに行き、トーレスはメルテザッカーにボールを持たせるように動く。
トルコと同じ作戦である。
ドイツの攻撃は、これによりほぼ確実に防ぐことができる。



ドイツは、前線にゴメスを入れることができる。
しかし、グループリーグのデータは、彼にロングボールがほとんど入らないことを示している。
クラニイを入れることもできるが、その効果は未知である。
左サイドは、ポドルスキーを外し、シュバインシュタイガーを入れる方が守備においてよい。
その場合、右サイドはポドルスキーとフリッツが考えられる。



ドイツは、守備的な交代は可能だが、攻撃的な交代が難しい。



守備には、ヤンセン、ロルフェス、ボロウスキー、フリッツなどが考えられる。
攻撃では、オドンコー、ノイビル、そして、上述のゴメス、クラニイである。
劇的に攻撃を変化させる選手はいない。

スペインは、状況によらず、グィサ、カソルラ投入の可能性が高い。
続いて、シャビ・アロンソ、セルヒオ・ガルシアであろう。



セルヒオ・ガルシアの右サイドは、左サイドからのクロスにおいて、ラームと競り合うときに有効である。



ドイツはロングボールでスペインの弱点を突くことができない。
左サイドを止められると、ボールを前に運ぶ手段がない。
スペインにとって極めて有利である。
残る手段は、セットプレーである。
しかし、それを得るには、ボールを敵陣に運び、ファールを奪うか、コーナーキックにつなげるかしかない。
それも難しいほどにドイツの攻撃は渋滞するであろう。
ドイツとしては、中盤でスペインの攻撃を食い止めるか否かが鍵になる。
だが、トルコ戦から判断して、それも難しい。
ドイツに有利な展開は、ゴール前で人数をかけて防ぎ、持久戦に持ち込むことである。
「さて」

「スペインについてやな」

「前のページまでで、ロシアの中盤のディフェンスがいかにおかしかったかを見てきた」

「そのずれの大きな元は、セムショフがシャビをマークする、ズリアノフがセナを見る、アルシャフィンが戻らない、右サイドが空く、セルヒオ・ラモスがフリーになる、というところにある」



「この状況で、セスクが機能するのは当たり前といえば当たり前になる」

「セスクというかファブレガスやな」

「同じやろ」

「一応、国際表記も乗せといた方がええやろ」

「そういえば、背中はファブレガスやな」

「ビジャが負傷し、34分に彼が入る」

「そのセスク・ファブレガスが、下のような位置でボールを持つとスペインのチャンスになっていた」



「ズリアノフの横の微妙なスペースやな」

「ここを見る選手はいないから、そこでロシアの中盤を引き付けると、より中盤が空いて攻撃が上手くいく」

「最初からそこに入ったというより、入ってから徐々にいい場所を探り当てた形だった」

「ちなみに、主に右でプレーしていたシルバが下がってもよく、同じような形になる」



「セスクとシルバは相性がいいな」

「パスコースがお互いにわかるみたいやな」

「セスクが入ってスペインがよくなったのは、ロシアが中盤にスペースを残していたからで、それならば本質的にフォワードのビジャがそこに下がってボールを受けるより、もともとトップ下を得意とするセスクが受けた方がいい」

「丁度いい場所にスペースがあった」

「ここで一つ問題がある」

「なんや」

「ロシアの守備での大きな問題の一つは、右サイドが空きすぎることなわけやろ」

「それを修整する手を打たなかったのはなぜか、というのが問題になる」

「一応、後半開始から修整が試みられている」



「明らかに、アルシャビンがセナにつくようになった」

「それは、46分から50分までをご覧になればおわかりになるのではないかと」

「しかし、これはあまり意味がなかった」

「なぜなら、アルシャフィンは、左に切り返すセナにまったくついていけなかったからである」



「切り返されると簡単においていかれてしまい、セナは右足のアウトで縦にボールを入れることもできたし、持ちかえてサイドを狙うこともできた」

「パスコースを切る、という意味では、アルシャフィンはなんの役にも立たなかった」

「これはディフェンスとしては困りもので、切ってくれるはずのコースを切ってくれないとかえって混乱する」

「スペインの一点目は、正に中に切り返したセナが縦に入れたことから始まった」

「この試合だけを見ると、まったく守備向きではないように見える」

「そうやな」

「蛇足で付け加えると、セスクが出た後のスペインのシステムは、1-4-1-3-1-1になっている」

「1-4-1-4-1とかいたメディアもあるが、セスクはセマクを見る必要があるので、シャビよりも前に残る」

「それはさて置き」

「次は、トーレスとグィサの動きの差について見てみたい」

「最も単純な方法は、その2人がどういう場所でどのようなプレーをしたかを調べればいい」

「最も単純なのは、2人の移動した軌跡を比べることちゃうかね」

「それを調べるのは困難だから、場所とプレーで代用する」

「そうか」

「プレーの中でも、直接ゴールに向かわないものだけを取り扱う」

「どういうことや」

「中央に入るパスを受けて味方にパスしたり、スペースに流れてボールを受けるような動きで、直接シュートに行ったり、一発を狙って裏に動くようなプレーは含まない」

「ふむ」

「おまけに、ワントップで調べないと意味がないので、トーレスは34分にビジャが退場して69分にグィサと交代するまで、グィサは登場後、ロスタイムが終わるまでを調べる」

「トーレスが35分で、グィサが23分やな」

「まずはトーレスの55分10秒」



「ヘディングで味方に落として、上手く合わなかったシーンやな」

「58分14秒」



「シルバから、いわゆるクサビになるパスが入る」

「おまけに、実によく考えられたパスで、敵のポジションのずれをそのまま利用できるようになっていて、トーレスがコントロールしてそのまま前を向いてもよく、それをフェイントに止めて味方につないでもいい」



「ボールにメッセージが書かれたようなパスやな」

「しかし、コントロールミスでボールを離してしまい、ディフェンスにクリアされる」



「このあたりが、スペインでのトーレスの評価を下げる一つの要因になっている」

「そのゾーンでボールを持ってなにかしてこそ、というところはあるからな」

「次は、61分44秒」



「これぞクサビで、本当にクサビ形になっている」

「トーレスはこの3回やな」

「35分で3回」

「大体、12分で1回ということになる」

「グィサについては、下のようになる」



「なんだこれは」

「一度サイド、特にこの試合では右サイドに流れるというのが特徴だった」

「わかりにくい絵やな」

「グィサの直接ゴールに向かわないサイドでのプレーは、71分12秒、72分39秒、77分15秒、82分35秒、86分7秒に見られる」

「5回か」

「23分で5回、大まかに5分に1回の勘定になる」

「トーレスの12分に1回とはずいぶん差がある」

「この2人の差は、下のように表される」



「中央にボールが入ってきたとき、トーレスは、それと逆サイドに動き、ディフェンスの視界から消えようとする」

「そこから一発で裏を取るような動きを狙う傾向が強い」

「それに対し、グィサはサイドに開いてボールを受け、中央の守備を薄くした後、そこから前に出る傾向が強い」

「トーレスはより直線的にゴールを狙い、グィサはその前にワンクッション置く」

「いわゆるスペイン的なのはどちらかというと」

「グィサの方になる」

「彼の方が代表のフォワードとしてはいいのではないか、という意見が根強いのは、このようなところにも原因がある」

「ただ、グィサのように動くと、ボールは持っているのに、いつまでたってもシュートにいけないような状態に陥りやすいというのもある」

「スペイン病か」

「その辺は注意したい」

「まとめると、セスクが入ってよくなったのは、ロシアの守備に原因があった、グィサが入った方がボールが動くように見えるのは、トーレスとの動きの差があるから、ということやな」

「試合全般としては、スペインより守備が薄いのに、スペインと同じ土俵に立って戦ったら、そりゃロシアには勝ち目がない」

「ロシアのゲームプランの詳細は気になるところやな」

「ほんまやな」

「さて、今回も質問をいただいたので、それに極力答えてみようかと」

「まず、最初は、イニエスタの調子が戻ったようだが、食中毒から回復したと見てよいか?」

「以前より動きはいいが、まだいい時のイニエスタには届いていない、というのと、調子が落ちた原因が食中毒かどうかわからないので回復したと見ていいかどうかもわからない」

「食中毒になって調子が上がる選手はおらんやろ」

「そりゃそうやけどな」

「次は、イニエスタとシルバは、サイドを交換するようになったが、それはベンチからの指示によるものか?」

「ほぼ100%そうです」

「プレビューで、イニエスタを使いながらセスクを使うとこの二人が干渉して上手く行かない、とあったが、この試合は機能したのではないか?」

「中盤に大きなスペースがあったので、両人にとって必要な場所が確保できたというのがある」

「そうかね」

「もう一つは、ボールの動かし方で、スペインは後半開始から意図的に左にボールを動かすようになる、そこでイニエスタがプレーできるようになった」

「ほっておくと、右に右にボールが流れてたからな」

「相手がスペースを潰して来た時に、イニエスタが中に入るとお互いに重なるし、そのような時は、サイドから縦にスペースを狙う選手がいて、そこに上手い選手からパスを合わせる方がお互いのスペースを利用するという意味でよい」

「つまり、変化なしと」

「この試合の後半でも、左に意図的に動かそうとしても、やはりボールは右に流れる傾向が強く、そうなったときにイニエスタは消えている時間が長かった」

「セスク、シルバ、セルヒオ・ラモスが活躍する時間帯やな」

「セルヒオ・ラモスが非常に目立ったというのは、スペインの右にスペースがあったし、そこから攻撃していた、ということになる」

「それについては面白いデータがあってだな」

「なんや」

「これやけどな」



「これはなかなか」

「スペインのパスはシルバからセルヒオ・ラモスが頭一つ抜けている」

「シルバからファブレガスが二番目やな」

「しかし、ファブレガスの登場は34分」

「ということは、一試合にすると29本から30本ということか」

「実に多い」

「仲良しさんやな」

「イニエスタを見ると、セルヒオ・ラモスから16本受けている」

「これは、右サイドにいた時にもらった分やな」

「サイドチェンジが16本も通るとは思えんからな」

「やはり、スペインの右、ロシアの左の守備に問題があったことがわかる」

「データは語るというやつか」

「次なる質問は、ビジャが怪我をしたが、グィサをトップ、トーレスをトップ下のような形で使ってうまくいかないか?」

「原理的に上手くいく可能性はあるけれども、トーレスがトップ下で本当に機能するためには、周囲の選手がその周辺にスペースができるようにできるように動く必要がある。今の代表ではそれを実行する時間的余裕に乏しく、それに向いた選手もいないため、まず上手くいかないでしょう」

「とまあ」

「こんなところかね?」

「おそらく」

「そんなこんなで」

「決勝のプレビューは、できるだけ早くあげたいと思いますので」

「お楽しみに」

「では、また次回」

「ごきげんよう」
「さて」

「ロシアの守備についてやな」

「そのために、まずはスペインの守備から見てみたい」

「比較用やな」

「ロシアの中盤がセンターサークルの横でボールを持っている」



「赤がロシア、黄色がスペイン」

「この場合、トーレスも下がって、ビジャと2人でフロントラインを組み、その後ろに中盤の4人が見える」

「オレンジの丸のついたビジャは、サイドへ相手を追い込んでいく」



「この時、中盤は綺麗に4人ならんでいる」

「見本のような中盤のラインやな」

「選手を横に並べると、相手のパスコースが最も限定されやすく、ボールの横移動に強いため、このような構造が用いられる」

「ふむ」

「このラインを頭に入れた後、ロシアの守備を見てみる」

「下やな」



「この時点であれ?と思う」

「一番左にフォワードが残っていて、その後ろに3人のラインらしきものが見える」

「そこから右にパスが出る」



「ここでもあれ?っと思う」

「なにやら3人のラインがもう一つ出てきた」

「そこからもう少し進む」



「おお」

「これはいったいいかなるディフェンスなのか」

「伝説の1-3-3-3-1システムやな」

「それやったらもう少し前でプレシャーをかけるし、こんなに3人のラインが互い違いにずれたりはしない」

「なんか不思議というか現代絵画的のような配置やな」

「次に、さらに恐ろしいディフェンスを見る」

「ほう」

「まず、スペインのキーパーからセンターバックにパスが出る」



「センターバックからセンターバックへ」



「もう一度戻す」



「縦へドリブル」



「引いてくる選手にパス」



「ワントラップからサイドへ」



「これまたワントラップからサイドへ」



「縦へドリブル」



「縦パス」



「それを戻す」



「ここからは、敵陣に入ったということで、ボールを持っている選手と一番近いディフェンスとの距離をあらわすオレンジの点線に注目していだきたいかと」

「サイドから中へ」



「中央へ横パス」



「サイドへ縦パス」



「ダイレクトで戻す」



「相手陣で完全にフリーになる」



「これは、守備としては恐ろしいことで、ぜひ堪能していただきたい」

「まず、スペインは何も特別なことはしていない」

「難しい技術を使ったわけでもないし、途中でスピードを上げるパスも使っていない」

「簡単なパスを空いてるところにつないだら、いつのまにか絶好の状態になっている」

「これは攻撃としては理想的やな」

「守備としたら、なにをやっているのかという話やけどな」

「スペインの攻撃はゴールキーパーから始まっていて、しかもゆっくり攻めている」

「これで守備組織が整わなかったら嘘である」

「嘘であるのに、中盤でなんの抵抗もなくボールは進み、見事にピンチを招いている」

「ボールを持つ選手に対して、距離が詰まる場面すらない」

「どこで守備をしたいのかがさっぱりわからない」

「それを言うなら、下の例もなかなかのもんやで」

「セナがくるりとターンして縦パス」



「ロシアは相手陣でプレッシャーをかけているわけやな」

「ところが、間を抜かれて即ピンチ」



「5分でわかるに出てきた無駄プレスというやつか」

「下の流れも中々興味深い」

「中央から左前方にパス」



「それを中へ」



「フリーの上、右サイドに大きなスペースがある」



「これまた、ロシアの中盤が無抵抗でやられていることに注目したい」

「わからんな」

「とにかくわからんな」

「ユーロ後、ヒディングへのインタビュー企画というのは必ずあると思うが、ぜひその時は上の図を見せて、いったい選手への指示はいかなるものであったかを聞いていただきたいところではある」

「やはり疲労かね」

「それが一番楽な説明の仕方ではあるけど、ここまで守備に構造がないというのはそれだけでは理解できんじゃろ」

「ロシア人のむらっ気というやつかね」

「なんじゃ、それは」

「業界では、わりと有名で、ロシア人は、どんなに強い相手にも勝つことができるが、どんなに弱い相手にも負けることができる、という説がある」

「どこの業界や」

「知らんけどな」

「さよか」

「とにかく、次は、セスク、そして、トーレスとグィサの違いやな」

「やっとスペインか」

「この試合は、ロシアのことがわからないと理解できないから、仕方ないんや」

「続きは」

こちらから」
「なんと」

「遂にスペインが決勝に進んだ」

「無敵艦隊と呼ばれて沈没するのが常やってんけどな」

「その手垢のついた呼び名が今回は実現する可能性が出てきた」

「まずはめでたい」

「先発はこう」



「スペインはいつものメンバーやな」

「ロシアもメンバーとしては、予想通りだったのだが」

「そのプレーというのは、予想しがたい内容だった」

「予想しがたいというか想像しがたいというか」

「実は、この試合が、どうして0-3の大差で終わったか、という理由のほとんどは最初の5分間に凝縮されている」

「うむ」

「そこで、5分でわかるロシア対スペインというのを最初の題目にしたい」

「最初というからには、続きがあるのか」

「次が、ロシアの守備、その後に、セスクの意味、トーレスとグィサの違い、と続く」

「長いな」

「ただでさえ長いねんから、無駄口はつつしんでや」

「努力するわ」

「まず、ロシアのこの試合の方針は、開始44秒から1分6秒の間に見られた」



「これは、その22秒間につながれたパスを表している」

「ズリアノフからサイドチェンジ、そこから10本のパスがつながってスローインになる」

「途中スペインの選手に触られてはいるけどな」

「赤い線はそれを表している」

「これは、この試合、つないで攻めますよ、という意思表示やな」

「ロングボールに弱いスペインに対し、正面から戦うことを宣言している」

「要するに、つなぐの大好きスペインと同じ土俵に上りますよ、ということでもある」

「そうやな」

「次のプレーは1分26秒」

「サイドで、ロシアの選手が縦にショートパス」



「ロシアは左に攻めている」

「パスは、簡単にカットされる」



「赤がロシア、地味な黄色がスペイン」

「このカットのされかたは技術的に問題がある」

「そんな短いパスをカットされていては、つないで攻めることなどできない」

「ロシアの選手は、基本的に上手いが、こういったどうにでもなる場所でぽろっと間違える」

「対して、スペインはそれがほとんどない」

「いわゆるパスサッカー同士の対決で、その差は大きい」

「勝手にこけるロシアが不利になる」

「お次は、2分18秒」

「キーパーへのバックパスを、パブリュチェンコが追いかける」



「しかし、簡単に横にはたかれて、なんの意味もない」



「この状況で追っても、後ろにスペースを残すだけで、一文の得にもならない」

「回りが見えてないのか、気合が空回りしているのか」

「不可解なプレーになっている」

「そして、2分27秒」

「ロシアは、前に4人の選手を並べてプレスをかけているように見える」



「しかし、ボールを持っている選手との距離があり過ぎる」

「そしてなにより、そのすぐ横に大きな隙間が空いている」

「プレッシャーの意味はなにもない」

「そこを通されて下のようになる」



「前に出た赤い選手が置いていかれ、中盤にぼっかり穴があいている」

「無駄プレスというやつで、集団でスペースを消していないから、前に出たことでかえってピンチを招く」

「守備の意思統一が見られない、ということやな」

「というか、何を狙っているのかがわからない」

「その後は、2分57秒」

「中盤、自陣でアルシャビンがボールを持つ」



「そこで、ピンクのパスをフェイクにして、白い矢印のパスを出す」



「おそらく狙いは股抜きやな」

「ところが、シャビに読まれて跳ね返される」



「これは危ないプレーやな」

「遠くに跳ねたからよかったものの、シャビの前にこぼれたり、別の角度で跳ねてスペインの選手の前にこぼれたりすると、一気にカウンターを喰らう」

「自陣で股抜きをしかけてはいけないということか」

「というか、アルシャビンの狙いが、シャビに完全に読まれたことの方が問題やな」

「そうか」

「細かくパスをつないで攻めるとなると、一対一で相手の裏を取ることが必要になる。それなのに、ロシアで一番上手いと思われるアルシャビンがこうも簡単にパスを読まれてはその点に不安が残る」

「要するに、相手の裏を取りながらつないで攻めたら、餅は餅屋でスペインの方が一枚上といいたいわけか」

「次は、3分28秒」

「アルシャビンがセルヒオ・ラモスを背負ってボールを受ける」



「ターンしようとするが」



「簡単に体を入れられてしまう」



「左から攻めたいロシアとしては、これはきつい」

「アルシャビンがキープして、セルヒオ・ラモスを引っ張った後、上がってくるジルコフを使いたいところやからな」

「アルシャビンが負けてはどうにもならない」

「おまけに、ジルコフもセルヒオ・ラモスを相手に勝てなかった」

「グループリーグでは勝ててたのにな」

「一度振り切って追いつかれるシーンがあったから、疲労が原因だろうと考えられる」

「ジルコフが疲れているなら、他の選手もそうだろうという予想はつく」

「ロシアとしては、スペインを崩すとっかかりにしたい左サイドを押さえられた、選手に疲労の色が見えたというのはマイナスだった」

「次は、4分49秒」

「まだあるんか」

「まだまだあるで」

「これは、ロシアのディフェンダーが頭でクリアした場面」



「それが、味方につながらない」



「このクリア自体は、わりと難しいものだったが、他でも、このような場面は多く見られた」

「5分38秒、7分33秒、12分56秒とかのプレーやな」

「クリアが攻撃の起点になれないのは痛い」

「特に押されている時はそうやな」

「最後のプレーは、5分10秒」

「ちょっと待て」

「なんや」

「開始5分でわかるロシア対スペインじゃなかったのか」

「切り捨てれば5分や」

「ああ、そうか」

「納得したんか」

「そういうわけでもないけどな」

「中央でシャビがボールをキープする」



「この時、サイドに大穴があいている」

「そこに走りこむのは、セルヒオ・ラモス」



「自分へのパスで縦に抜け出す」



「この場面では止められてしまったが、セルヒオ・ラモスにここまでスペースを与えてはまずい」

「オランダ戦では、ここを空けて相手を誘い込んだんやけどな」

「ブラルーズとセルヒオ・ラモスはまるで違う。クロスは遥かに正確だし、縦に勝負もできれば、中に切り返してシュートも打てる」

「実は、お手紙が来て、日本の解説者が、これをロシアのトラップディフェンスが失敗しているから云々といっていたが、実際どうなんでしょうという質問があった」

「どうなんや」

「まず、ヒディングは、第一戦で非常に気を使ってスペインの右サイドを止めに行っている」

「そのあたりはこちらから」

「つまり、セルヒオ・ラモスを自由にしてはいけないということを知っているわけで、それをわざわざ誘い込む理由がない」

「しかし、実際にロシアの左はやたらとスペースが空いていた」

「おそらく、アルシャビンが戻るはずだったのに戻らなかったのだろうと考えられる」

「ムトゥと同じような理由か」

「一戦目でそこを止めようとしていた監督が、二戦目で急にそれを放棄して守備を崩壊させるとは考えにくい」

「なんにせよ、そのトラップディフェンスが失敗している云々という話の内容がもう少し具体的にわかれば、答えも違ってくる可能性がありますので」

「ご存知の方はお教え願えればと」

「とりあえず、最初の5分のおさらいだけはしておくか」

「箇条書きにすると、下ようになる」

・ロシアは細かくつなぎ、スペインと同じ土俵に上がった
・ロシアは、つなぐ途中でミスが出る
・守備で前に出るがその横、裏にスペースを残す
・1対1の読み合いで勝てない
・セルヒオ・ラモスとの1対1に敗れ左を抜けなかった
・ジルコフから推察して疲労が蓄積していた
・クリアがつながらない
・右サイドにスペースを残し過ぎた

「全部ロシアの敗因として採用できるな」

「その辺りを書く場合は、押さえておきたい」

「しかしや」

「なんや」

「たった5分でこれだけ問題が発生するのも珍しいな」

「珍しいわな」

「それに、ロシアのプレーが第一戦より内容的に落ちてしまったのは残念ではある」

「中盤の守備がとにかく滅茶苦茶やったからな」

「中盤か」

「その点については」

ロシアの守備編にて」

「トルコがついに敗れた」

「本当に苦しい中で、2-2の同点にまで迫ったが、最後は物量の差に屈した形になった」

「先発はこう」



「トルコ側としては、試合前に考えることがいくつかある」

「一つは、チームの力関係からして、守備に穴をあけたくない」

「ドイツに先に点を取られては非常に苦しくなる」

「特に、ドイツの左サイドをきちんと止めたい」

「今のドイツがいい形になるのは、カウンターからスペースに走ったポドルスキーからと、縦から中に切り返したラームからのクロスやからな」



「しかし、守備を固めたいのはやまやまだが、トルコ側としてはそれだけでもまずい」

「なにしろベンチに選手がいない」

「怪我人と出場停止で、一時はサードキーパーがフィールドプレーヤーとして入るんじゃないかと言われていたくらいやからな」

「おまけに、逆転逆転また逆転で勝ってきただけに、ピッチ内の選手の疲労も気にかかる」

「持久戦になった場合、トルコに有利になるとはとても思えない」

「となると、守備を固めて早めに勝負をつける、というのが一番いいということになる」

「それは普通に考えると無理やな」

「まあな」

「守備を固めて持久戦、というのは可能でも、守備を固めて早く勝ちに持って行くなどという都合のいい話は普通ない」

「しかし、トルコはそれをやらねばしょうがない」

「果たしてどのような手段に出るのかと見ていると」

「まず、守備を固めるという意味では次のようになっていた」



「鍵は、一番前にいる9番のセミフで、彼がまずメッツェルダーの前に立ち、カジムがラームにつくことで、メルテザッカーへのパスを誘う」

「メルテザッカーにパスが出たら、戻すパスコースを切りながらボールを追う」

「それにより、メルテザッカーがパスを出さなければならない状況を作り出すわけやな」

「上のように、ボールを追っていけない状況では、セミフは下のように位置する」



「左のボランチへのパスコースを切るような位置にいる」

「ここから、メッツェルダーにパスが出たらなるべく早く詰め、もしヒツルスペルガーがフリーになるようなことがあればすぐにヘルプに行く」

「この場合、直接メルテザッカーにプレッシャーをかけてはいないものの、その周辺へのパスを出しにくくさせることで、無理にボールを持たせている」

「ドイツの左右を比べると、左のメッツェルダー、ラームよりも、右のメルテザッカー、フリードリッヒのコンビの方がボールを持たせて安心なため、このようなディフェンスが成り立つ」

「メルテザッカーからいいパスが出ることはほぼ皆無やからな」

「彼がボールを持たされた、というのはデータにも残っている」

UEFAによると、ドイツで最も多くパスを出したのはメルテザッカーで、62本になる」

「まあ、これでそれが証明されるわけではないが、矛盾しない結果ではある」

「ちなみに、メルテザッカーが出したパスの本数は、ポーランド戦でチーム7位、クロアチア戦6位、オーストリア戦3位、ポルトガル戦9位やな」

「トルコは、メルテザッカーにボールを持たせて、左にボールが流れるのを防ぐ、メルテザッカーにパスを出させることで、ドイツのペースを乱す、というのを眼目に守備をしていた」

オランダ戦のロシアと同じで、なるべく下手な選手にボールを持たせてなるべく楽に守ろう、という手であるな」

「プレスだけが守備ではないということやな」

「これでトルコは、試合前の一つの課題、守備で穴を空けない、を達成しようとした」

「そしたら、次は、早めに点を取って試合を決めに行く、という課題が問題になる」

「その点については、下の写真が興味深い」



「赤いトルコは左に攻めている」

「ボールの前と横に非常に多くの選手がいることがわかる」

「敵ペナルティーエリアと、そこから引いたサイドに合計8人」

「つまり、一番後ろは2人」

「極限まで攻撃に人を割いている」

「これが前半の12分だから、最初から勝負に出ていると思っていい」

「持久戦にしようという配置ではないな」

「しかし、前に述べたように守ってから、上の写真のように攻めるというのは楽ではない」

「結構な距離を走るでな」

「そこにも、後半ガス欠になる前に勝負を決めようという意図が見える」

「そして、思惑通り、トルコが先制する」

「下の流れで、スローインから」

「中央から1人サイドに回りこむように流れる」



「ボールを受け、胸でバックパス」



「クロスにダイレクトで合わせたシュートはバーに当たり、それを押し込む」



「トルコとしては、狙い通りの展開に持ち込んだ」

「ここからが問題やな」

「ここで、方針を変更して後ろに人数を割き、リードを保ちに行くか」

「それまで通り、人数をかけて追加点を狙いに行くか」

「トルコは後者であったと思われる」

「というのが下の図やな」



「これはトルコが左に攻めている」

「やはり、きちんと前に人をかけている」

「実は、ここからカウンターを喰らう」

「ボールを奪われて、サイドのポドルスキーに走られる」



「このとき、やはり、最終ラインはツーバック状態になっている」

「ポドルスキーがボールを持ち、追ってきたディフェンスと正対した場面がこう」



「5対5で、ディフェンスは数的優位を確保できていない」

「そのため、赤の2の選手はいいカバーリングのポジションを取ることができなかった」

「そこからクロス、外から中に入ったシュバインシュタイガーに決められる」



「試合前、トルコの選手にどういう指示が出ていたのかは気にかかる」

「点を取っても前半はこのまま行けといわれていたのか」

「2点取ったら引けといわれていたのか」

「はたまた別の指示が出ていたのか」

「実に気になるところやな」

「1点取っても引くなという指示が出ていたということは、監督が、1点では勝てないと思っていたことにもなる」

「なにはともあれ、前半は1-1で終了」

「後半はこちらから」


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