週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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"国名 背番号 ? 名前","ロングパス","成功率","プレー時間","90分あたりのロングパス"
"ルーマニア 15 - ドリン ゴイアン",17,88%,187,8.18
"ロシア 2 - ワシリー ベレズツキー",7,86%,98,6.43
"フランス 5 - ウィリアム ガラ",11,82%,281,3.52
"ポルトガル 2 - パウロ フェレイラ",26,81%,322,7.27
"イタリア 2 - クリスティアン パヌッチ",50,80%,403,11.17
"ポルトガル 15 - ペペ",32,75%,374,7.7
"フランス 3 - エリック アビダル",12,75%,118,9.15
"イタリア 4 - ジョルジョ キエリーニ",20,75%,310,5.81
"オランダ 3 - ヨン ハイティンガ",27,70%,179,13.58
"フランス 15 - リリアン テュラム",10,70%,187,4.81
"ドイツ 21 - クリストフ メッツェルダー",33,70%,564,5.27
"スペイン 15 - セルヒオ・ラモス",57,70%,496,10.34
"フランス 13 - パトリス エブラ",13,69%,187,6.26
"ロシア 8 - デニス コロジン",38,68%,405,8.44
"ロシア 18 - ユーリー ジルコフ",56,63%,491,10.26
"スペイン 4 - カルロス マルチェナ",43,63%,496,7.8
"オランダ 2 - アンドレ オーイエル",29,62%,310,8.42
"オランダ 4 - ヨリス マタイセン",18,61%,310,5.23
"ドイツ 17 - ペル メルテザッカー",28,61%,564,4.47
"スペイン 11 - ホアン カプデビラ",43,60%,496,7.8
"ルーマニア 4 - ガブリエル ターマシュ",31,58%,280,9.96
"トルコ 2 - セルべト・チェティン",25,56%,285,7.89
"オランダ 21 - ハリド ブラルズ",25,56%,282,7.98
"ロシア 4 - セルゲイ イグナシェビッチ",41,56%,403,9.16
"スペイン 5 - カルレス プジョール",25,56%,426,5.28
"トルコ 3 - ハカン・バルタ",24,54%,505,4.28
"ドイツ 16 - フィリップ ラーム",51,53%,517,8.88
"ポルトガル 16 - リカルド カルバリョ",17,53%,281,5.44
"ロシア 22 - アレクサンドル アニュコフ",31,52%,497,5.61
"トルコ 13 - エムレ・ギュンゴル",8,50%,63,11.43
"ポルトガル 4 - ボジングワ",30,50%,281,9.61
"ルーマニア 3 - ラズバン ラツ",39,49%,280,12.54
"トルコ 4 - ギョクハン・ザン",23,48%,275,7.53
"オランダ 5 - ジョバンニ ファン・ブロンクホルスト",26,46%,310,7.55
"ルーマニア 2 - コスミン コントラ",28,46%,280,9
"イタリア 19 - ジャンルカ ザンブロッタ",31,45%,403,6.92
"イタリア 3 - ファビオ グロッソ",49,45%,349,12.64
"フランス 19 - ウィリー サニョール",22,41%,187,10.59
"トルコ 20 - サブリ・サリュオール",26,38%,318,7.36
"ドイツ 3 - アルネ フリードリヒ",20,35%,376,4.79
"平均",28.55,60%,334.4,7.91
文末のプレー表により、カプデビラの特徴を見る。
対象とした試合は、最初のロシア戦である。

カプデビラの良い点は、パスがぶれないことである。
ツータッチ以内でボールを動かし、受け手の利き足に送るものがほとんどである。
また、逆足である右でのパスのぶれも少ない。

・パス総数とぶれ
ワンタッチ 10 ぶれ 1
ツータッチ 15 ぶれ 1

・パスのブレからスペインがピンチになったもの 1
73分51秒:
ワンタッチでビジャの右足にパス、やや後ろにずれる。
ビジャのバックパスが直接パブリュチェンコに渡る。

上のプレーでピンチを招いた原因は、カプデビラのパスのずれというより、ビジャのパスミスといえる。
大きく見積もっても責任は5分5分であろう。
この試合において、カプデビラのパスのずれからスペインがピンチを招く場面が多かったという事実はない。

早くボールを動かす、少ないタッチで出すパスにぶれが少ない、受けての利き足に出すパスが多い。
カプデビラの持つこれらの特徴は、攻撃のリズムを切らないことにつながり、スペインにとって非常に貴重な存在だった。
また、この試合、スペインの1点目はカプデビラのダイレクトパスから始まり、2点目は、コーナーキックから彼が縦に運んだことから生まれた。
ボールを持っていない場面では、オーバーラップのタイミングの良さが目につく。
必要な時に必ずサイドからフォローしている。
また、その後の守備への戻りも早い。
65分0秒からのプレーなどはその典型である。
ただし、この試合では、戻った後、簡単にファールをする傾向が見られる。
守備においては、マークの切り換えの判断がよい。
1対1においては、22分05秒にセマクに抜かれピンチを招いた。
1試合で1度というのは非難されるべき数字ではない。

例えば、セルヒオ・ラモスには、次のようなミスがあった。
46分32秒 セルヒオ・ラモス、ジルコフに飛び込んでかわされる
56分22秒 セルヒオ・ラモス、自陣エリア近くで相手に潰される
88分19秒 セルヒオ・ラモス、自陣エリア前の相手にパス
特に、下の二つは致命的なミスである。

カプデビラについて、この試合からは、

・少ないタッチでパスを出す技術がある
・パスがぶれない
・受け手のことを考慮したパスを出す
・右足のパスもぶれない
・フォローのタイミングがよい
・戻りも早い
・マークの切り換えがよい
・ミスが少ない

という特徴が浮かぶ。

また、オーバーラップの後、ドリブル突破がないことから、それが苦手であることも推察される。
これが、他の試合でも通用するかどうかは、各自確認されたい。
他の試合についてプレー表を作られた方は、ぜひお教え下さい。


カプデビラ
グループリーグ、ロシア戦のプレー表

前半
3分18秒 サイドへの上がり、コントロールから待ってビジャにパス、ビジャ潰される
6分25秒 ワンタッチでシルバの左足にパス、オーバーテイク
8分6秒 ワンタッチでシャビの右足にパス
11分55秒 カウンターへのポジショニング
14分24秒 サイドからの上がり
15分45秒 ワンツーから前に出るアニュコフに背中で当たる
16分11秒 右から崩される、シルバ
17分18秒 ツータッチでイニエスタの右足にパス
19分46秒 ワンタッチ、<右足で>縦のスペースにパス、トーレスからゴール
22分05秒 セマクに抜かれてクロス、ロシアのシュートはポスト
23分44秒 サイドライン際を上がる
25分34秒 ツータッチでシルバの左足にパス
26分3秒 エリア近くまで上がる
26分17秒 ワンタッチでビジャの右足にバックパス
26分42秒 ツータッチでイケルへバックパス
27分52秒 ツータッチでシルバの左足にバックパス
27分55秒 敵陣、ワンタッチで前のビジャへ落とす、ビジャへファール
31分35秒 ヘディングでクリア、シウバへ、戻しをクリア(浮き球、プレッシャー下)、ロシア選手へ
30:33 プジョル、マルチェナ、ラインコントロール、カプデビラ上がりが遅れてラインを崩す
34分30秒 左サイド、アニュコフに対応
36分21秒 ワンタッチでマルチェナの右足にパス
38分42秒 ラインコントロール
43分12秒 スルーパスをクリア
43分44秒 敵コーナーキックからカウンター、イニエスタにつなぐ、ビジャへスルーパス、ゴール

後半
50分49秒 パスをカット
51分25秒 ワンタッチでトーレスの右足にパス20m強
51分39秒 パスをカット、ツータッチでシルバにパス
51分44秒 ワンタッチでビジャにパス、ディフェンスクリア、ビジャが拾う
52分22秒 相手が戻したボールをキープ、ゴールキックにつなげる
53分10秒 サイドラインへクリア
55分26秒 ワントラップからマルチェナの右足にパス、ターンしながら左足でキーパーへバックパス、イケルキックミス、ヘディングでクリア、相手に渡る
57分44秒 サイドから縦へクリア、直接相手へ
60分3秒 スリータッチで<右足で>シルバの左足にパス
60分5秒 ツータッチでマルチェナの右足にパス
61分33秒 ツータッチでマルチェナの右足にバックパス、マルチェナにプレス(パスにずれはないが、判断が甘い)
63分42秒 スリータッチでシャビの右足にパス
65分0秒 ワンタッチで相手に向かい、ツータッチ目でシルバの左足にパス、相手ペナルティーエリアにダッシュ
65分6秒 シルバのセンタリングが相手に渡る、カプデビラ一気に下がる
65分16秒 自陣のエリア前でディフェンス、ファールに見えるが取られず
70分30秒 ツータッチでシャビの右足へ
70分34秒 縦へ持ち込む、左へパス、クリアされる
71分56秒 ツータッチでシルバの左足にパス
73分51秒 ワンタッチでビジャの右足にパス、やや後ろ
77分36秒 ワンタッチでシャビ・アロンソの右足にパス
78分26秒 ツータッチでカソルラの左足にパス
78分32秒 スリータッチ、<右足で>セナの右足にパス
78分58秒 カソルラをフォロー(相手エリア横)
79分23秒 ファール、自陣エリア前
80分55秒 ミドルシュートに反応
86分34秒 ツータッチでシャビ・アロンソの右足にパス(ズレあり)
86分38秒 ツータッチで前にパス、相手に当たりスローイン
89分03秒 クロスをブロック
91分54秒 ツータッチでカソルラの左足にパス
91分54秒 ツータッチ、<右足>でシャビの右足にパス(プレスを抜ける)
93分09秒 フリーキック

*注
30:33 プジョル、マルチェナ、ラインコントロール、カプデビラ上がりが遅れてラインを崩す
以上のプレーを新たに見つけたたため付け加えました。
パスのぶれについての結論に影響はありません。(2008年7月6日)
「さて」

「ベストイレブン発表の季節やな」

「ちょっと遅いという噂もあるけどな」

「それにしても、ベストイレブンというのは難しい」

「何を基準に選ぶかが問題やからな」

「個人の能力なのか、チームへの貢献度なのか、ある試合で目立つ活躍をしたことなのか」

「もしくはそのすべてか」

「どれに重点を置くかによって選出が変わってくる」

「うむ」

「そこで、今回は、チームを基準に選んでみようと思う」

「チームへの貢献ということか」

「貢献に加えて、そのチームにおいて、可換ではない、ということも基準に含めてみた」

「要するに、代わりがいないということか」

「察しがいいな」

「簡単に言えるなら簡単に言え」

「その結果、次のようになった」



「……」

「どうした」

「ちょっとまて」

「なんや」

「なんだこの偏った選出は」

「妥当やろ」

「スペインが4人、ポルトガルが3人、ドイツが2人、トルコとオランダが1人、あまりにも偏っとらせんかね」

「ベストを選ぶとこうなるから仕方がない」

「開き直るな」

「まず後ろからいくと、キーパーのカシージャスは揺るがない」

「まあな」

「彼を語る時に、シュートへの反応は素晴らしいがハイボールの処理に難がある、というセリフがよく使われるが、それは最早嘘に近い」

「去年ぐらいから目測が非常によくなり、ドイツ戦でも難しいボールに対して間違えることなくクリアしていた」

「ベストの座を争ったブッフォンにPK戦で完全に勝利したことからも今大会のベストは彼以外にはない」

「セルヒオ・ラモスも確実かね」

「攻守において他を圧する働きだった」

「センターは、ペペとカルバーリョか」

「ポルトガルのこの2人を超えるセンターバックがいたならば教えて欲しいぐらいのもんやで」

「左はラームじゃなくても、カプデビラやロシアのジルコフ、クロアチアのプラニッチでもいいと思うが」

「ドイツにとって左のラームというのは代えのきかない選手で、その点を取ったわけやな」

「他の3人も代えはきかへんやろ」

「ドイツは決勝に進んだし、その決勝と前半と後半で彼の重要性が如実に出たというのもある」

「中盤に、シャビがいないのはなんでや」

「大会を大いに盛り上げたトルコの選手は欠かせない、その中でプレー時間的にも、戦術的な重要度でも欠くことができないのがアルトゥントップなので、彼を入れないわけにはいかない」

「じゃあセナを外せばよかろう」

「シャビはセスクが代わることができたが、セナはそうはいかない、その差やな」

「右のシュバインシュタイガーはそれとしてや」

「サイドから中に入る彼の活躍なくしてドイツの決勝進出はなかった」

「なぜ左がデコだ」

「このユーロでのデコの活躍は抜群で、攻守においてポルトガルを支えていた。彼を外す理由がない」

「しかし左でプレーしたわけではないやろ」

「ユーロでも基本的に中央より左でプレーしていたし、ポルト時代にそれに近いポジションだったからコンバートされている」

「相変わらずの強引さやな」

「バルサは彼を売るというが、ユーロを見る限り、もう一年待った方がいい」

「フォワードでいえば、ビジャは当然としても、なぜファン・ニステルローイかね」

「オランダは景気のいい攻撃サッカーをしていたような印象があるが、カウンターが効かない状況では、結局ファン・ニステルローイへのロングボールをキープしてもらうことでなんとか形になっていた。チームにとって重要である、というのが鍵やな」

「他におらんのかね」

「後は、ルカ・トニ、パブリュチェンコ、トーレスだろうけどみな一長一短で難しい」

「しかし、上の面子では選出チームに偏りがありすぎやろ」

「そうかもしれん」

「せめて下にせんかね」



「色とりどりやな」

「1チームから1人のみで選んだ」

「大体において納得はいく」

「やろ」

「しかしや」

「なんや」

「まず、なぜメルベリなんや」

「大会を通じて彼の読みのよさというのは光っていて、状況が普通なら常にフォワードの一つ先を行っていた」

「おまけに、なぜエブラ、というのもある」

「この大会では、サイドバックが下手なチームは攻撃に支障をきたすことが多かった。その最たるものはフランスのアビダルで、その彼に代わったエブラは象徴的だった、という意味がある」

「キヴは」

「そりゃ抜群に上手い」

「しかし、以前に比べて無理に相手を崩しに行く場面がないのは物足りなくないかね」

「円熟したという言い方もあるが、恐さがなくなったとも言えるかもしれん」

「おまけに最大の謎はデヨングやな」

「前に出るあまり、我を忘れがちなオランダの中で、中盤最後の良心としてチームを支え続けた彼の功績は大きいし、個人の能力も申し分ない」

「納得できるようなできないような感じやな」

「ついでに下のようなメンバーも選んでみた」



「これはなにかね」

「なんやと思う?」

「選考基準が謎やな」

「この大会で、”いい性格”の選手を集めてみた」

「その”いい”というのは、嫌味な感じで、”あんたええ性格しとるわ”と言われる時のいいか」

「そんな感じもある」

「まず、キーパーはブッフォン」

「イタリアはチームの状況が悪く、それに影響されてパフォーマンスを落とす選手がいた。その中でひょうひょうと自分のプレーを続けたのがブッフォンで、一種の鈍感さと周囲に左右されない精神は素晴らしい」

「右は、アルトゥントップ」

「準決勝でドイツに敗れた後、泣き崩れる選手がいるなかで、ひたすら不満を吐き散らし、バイエルン仲間を苦笑させていた辺りがいい」

「あれは何を言ってたんやろな」

「気になるところやな」

「センターバックは、デラスとボンク」

「デラスは、交代にありありと不満顔を浮かべ、それを一切崩さないところがよく、ボンクはディフェンスの中心としてプレーの切れ目に味方を鼓舞する姿がいい」

「左はマニン」

「どの試合か忘れたが、試合前の整列でカメラに向かって盛大に行ったウィンクが脳にこびりついて離れない」

「ファールをしても、絶対に自分は悪くないと心の底から主張する辺りもポイントが高いな」

「ほんまにええ性格やで」

「ディフェンスラインの前にセマク」

「俺様が一番とばかりにのっしのっしと歩き、指示を出すにしても非常に威厳がある」

「要するに偉そうということか」

「ああいうタイプは日本ではなかなか出ない」

「中盤右はトゥンジャイ」

「まったく表情を変えずに酷いファールをするし、まったく表情を変えずにチームのために働く、チャンスを外しても外しても次にトライする。その辺りが理由になる」

「そしてカッサーノ」

「味方がミスをするとあからさまに天を仰ぎ、ディフェンスはいかにもしぶしぶやっているという態度を隠さない」

「左のムトゥ」

「監督がいくら言っても左サイドに穴を空ける辺りにポリシーを感じる」

「前線右にオリッチ」

「体でガツガツいくのが大好きで、フィジカルコンタクトを恐れない。おまけに、20時45分から試合があるその日に、16時からジムで筋トレに励むほど筋肉が好きらしい」

「そしてイブラヒモビッチ」

「ピッチ上でなにが起こっても自分の非を認めないという点では脅威の精神を持っている」

「しかし、こう見るとキャプテン系が多いな」

「その彼らに、守備をサボりがちなムトゥやカッサーノがいかに怒られるかというのもこのチーム魅力になる」

「悪い趣味やな」

「そうかね」

「ベストイレブンの変種として、下の感じはどうや」



「これまた意味のわからん選出やな」

「まずキーパーのボルツ」

「ポーランドやな」

「ポーランド人のサポーターが、”あいつはなぜかいつも怒っている”と言っていたが、確かに怒っている」

「どんな選出理由や」

「プレーの面では、ポーランドのディフェンスは簡単に裏を取られてピンチを招く場面が多かったが、それをよく防いでいた」

「特にオーストリア戦は獅子奮迅の活躍だった」

「あれは凄かった」

「右はロシアのアニュコフ」

「守備ではスナイデルをきちんとマークする忠実さがあり、相手ペナルティーエリアに入っても正確なプレーができる」

「センターバックは両方ルーマニアのターマシュとゴイアンか」

「極限までつなごうという姿勢がよく、ゴイアンは非常な長身にもかかわらず、相手のプレッシャーをかわす技術を持っている。この大会では、ビッグチームをいわれるほど下手なセンターバックを抱えている傾向があり、その反対例として貴重だという意味がある」

「左はプラニッチ」

「クロアチアは、崩しの最後を前に出る彼に頼る部分が多く、彼が疲れるとチームもしょんぼりする傾向があった」

「中盤にポーランドのクジヌベクとレワンドフスキー」

「上にも出てきたポーランドサポーターが、ポーランドには2人のシュート馬鹿がいる、あいつらはゴールが見えたらとにかくダボハゼで打ちやがる、といって毒づいていたのが彼らになる」

「どんな理由や」

「クジヌベクは、上手い下手の前にとにかく気合を前面に出して戦う選手であり、レワンドフスキーはミドルからロングのパスに見るべきものを持っている。両方細かいことができないし、相手の裏を取るのが下手だというのはある」

「クジヌベクは、監督からも非常に信頼されていた」

「ちなみに、そのポーランド人は、ポーランドのセンターバックはでかいだけで下手で遅くて小回りがきかないのが揃っている。これは監督達の責任で、下の世代からもっとスピードやテクニックのある選手を使わなければだめだ、とも言っていた」

「ポーランドにそういう選手が埋もれているのかどうかはわからんが、興味深い意見やな」

「中盤右のコドレアは、相手を引きつけてプレーするのが上手く、こういう選手は常に価値がある」

「前線は、トルコが2人でアルダとセミフか」

「アルダは左から中央にかけて動き、トルコ攻撃の種になる選手で、セミフは実に劇的なゴールを決めた」

「セミフは、ドイツ戦で守備にいい働きを見せた」

「最後はガス欠で止まってしまったけどな」

「あの状況ではしょうがない」

「まあな」

「トップのもう1人は、オーストリアのハルニク」

「実はや」

「なんや」

「この選手だけは選考理由がわからない」

「そんな無責任な」

「試合メモを見ると、MVPというかMOMの欄に20ハルニクと書いてあるのだが、理由が書いてない」

「思い出せないのか」

「なに光るものを見た、という記憶はあるが、具体的には思い出せない」

「ぼけも大概にせえや」

「今後、彼がどういう選手になるかに注目ということで入れてある」

「元祖無責任男やな」

「最後に、このユーロで思うような活躍ができなかったベストイレブンというのを考えたい」

「下の感じか」



「ベストというのも変な話やけどな」

「キーパーはレーマン」

「文句なしやろ」

「トルコのリュシュトゥとどっちが上かはわからんけどな」

「ドイツには本当にレーマンよりいいキーパーがいないのか、不思議でしょうがない」

「センターバックの右はメルテザッカー」

「トルコ戦でドイツの穴として狙われた」

「左はアビダル」

「サイドバックとしては攻撃を詰まらせ、センターバックとしては退場し、散々な目にあった」

「サイドバックは、右ブラルーズ、左ヤンセン」

「ブラルーズは、オランダの弱点としてロシアに利用され、ヤンセンはクロアチア戦でおかしなプレーを見せて失点し、組み立てにはなんの役にも立たなかった」

「組み立てにおいて役に立たない選手は、最終的に役に立たない、ということが顕著だったのがこのユーロで、この4選手は、その負の面を代表している」

「そうやな」

「中盤の底、右はトゥララン」

「これは、彼が悪いというより起用法の問題で、ルーマニア戦などは、ひたすらロングボールを蹴らされるだけで、果たして彼の特徴に合った使い方だったのか疑問が残る」

「左はピルロ」

「オランダ戦ではファン・デル・ファールトに消され、ルーマニア戦でもジカにマークされて苦しみ、最も重要なスペイン戦では出場停止。満足な働きをすることなくユーロを後にした」

「中盤の右にポーランドのゲレイロがいるがこれは無理ではないかね」

「中央から右に流れていい働きをしたが、チームの事情で中央から左でプレーした。その関係で右に置いてある」

「左はクリスティアーノ・ロナウド」

「UEFAがなにを間違えたのかMOMに2回も選んだが、どう見てもデコよりも貢献度は低い」

「しかし、決めるべきシュートを決めたというのは事実やで」

「例えばチェコ戦で、クリスティアーノ・ロナウドが1得点2アシストだというが、デコは1得点1アシストで、最後の3点目はどう考えても素早くフリーキックを蹴ったデコの功績の方がアシストをしたロナウドよりも大きい。中盤でボールを持ってポロポロと失くしていた彼より、デコの方が遥かに最優秀選手に相応しい」

「前線の右はドイツのゴメス」

「まったく覇気のないプレーに終始した」

「そして、イブラヒモビッチ」

「膝がよほど悪かったと見え、思うようなプレーはできなかった」

「ベストイレブンは以上か」

「そうやな」

「次に、オフィシャルなベストチームを眺めてみる」

「UEFA発表のやつやな」

「まず、ゴールキーパーは、カシージャス、ブッフォン、ファン・デル・サール」

「まあ妥当かね」

「チェフは落球事故があっただけに選びにくい」

「ただ、複数選ぶなら、ロシアのアキンフェエフを入れたいところではある」

「22歳にしてあれだけ間違えのないプレーをするというのは特筆に価する」

「ディフェンスは、プジョル、マルチェナ、ペペ、ボジングワ、ラーム、ジルコフ」

「ミスからドイツに点を与え、クロスに対する反応の鈍いボジングワがベストというのはありえない」

「スペイン選手以外は、攻撃で目立った選手を集めた感じは拭えない」

「中盤は10人」

「まずは有名どころで、シャビ、スナイデル、バラック、ポドルスキー、ファブレガス、イニエスタ」

「しょうがない気もするが、ポドルスキーは決して中盤向きではない」

「続いて、セナ、ズリアノフ、モドリッチ、アルトゥントップ」

「ズリアノフが入っていて、クリスティーアノ・ロナウドがいないところにUEFAの良心を感じる」

「フォワードは4人、ビジャ、トーレス、アルシャビン、パブリュチェンコ」

「この大会は、フォワードに圧倒的な選手がいなかったのが特徴ではある」

「その中で、ビジャは一つ抜けていた」

「特に、スウェーデン戦のゴールは、見事としか言いようがない」

「絶妙のトラップやったな」

「あれでご飯3杯はいける」

「3杯か」

「5杯でもいいけどな」

「ことろで、このようなベストメンバー選びというのは、単なる遊びに見える」

「しかし、あるテーマにそってそれに相応しい選手を選ぶというのは、自分がどれくらいきちんと個々の選手を見ていたかというテストにもなるし、ユーロのまとめという意味でも価値がありますので」

「ぜひ自分なりのチームを選んでいただきたい」

「と、さように思うところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「の前にや」

「なんや」

「スペイン対ロシア戦について、下のような質問をいただいたので、それについて考えようと思う」

---以下引用

(補完:スペイン対ロシア戦で、ロシアが)「スペインと同じ土俵に上がった」ことがそもそもの敗因のひとつとして挙げていらっしゃいます。確かに結果的にその通りだったと思うのですが、妙に落ち着かない感じも抱いてしまいました。

韓国代表、オーストラリア代表、そして今回のロシア代表と、ヒディング氏はそのチームの特質を良く理解していた監督のように感じていました。ある日本の評論家の方が、ヒディングは対処療法の天才と評していましたが、それだけではなく彼の作ったチームの力(招集した選手たちの個々の能力も含め)と性質をよく理解した監督なのだろうなと思っておりました。

だからこそ、「同じ土俵に乗ってしまった」のは、何故?と思いました。魔が差したのか?あるいは(選手たちが疲労のせいで思ったように動けなかったのは予想外だったとしても)彼の中にスペインと同じ土俵で勝負がしたいという「野心」があったのでしょうか。

---引用ここまで

「ふむ」

「これはまた」

「鋭い質問やな」

「まず、対処療法というのが適切な言葉かどうかは別として、ヒディングがその国の特徴に合わせたチームを作る名人である、というのは確かやな」

「そうでなければ、これだけの成績が残せるはずがない」

「例えば、1998のオランダチームでは、ビム・ヨンクという非常に癖のある選手を使っていた」

「守備は最低で、スピードはないし、競り合いにも弱い、身長はあるのにハイボールは苦手」

「しかし、ボールを持てば天才的な選手で、あれほどパスを出せるのは、他にグアルディオラしかいなかった」

「彼を中盤の要として、実に素晴らしいポゼッションサッカーを展開した」

「そして、2006年のオーストラリア代表」

「闘争心とパワープレーを十分にいかした戦いで日本が沈められたのは記憶に新しい」

「さらには、今回のユーロ」

「つないで攻めるという姿勢は、緒戦から一貫していた」

「それは、ロシア人にそれだけのテクニックがあると判断したと見ていい」

「事実として、ロシア人は上手い」

「スウェーデン戦、オランダ戦ではその良さが存分に発揮された」

「しかし、パスでとんでもない大ポカもよく出る」

「最初のスペイン戦の1失点目がそうだし、次のスペイン戦で開始1分26秒、2分57秒にもあるし、オランダ戦では心臓の止まるようなミスも出している」

「下は、ロシア陣でセンターバックがボールを持っている」



「それを斜め後ろにパス」

「直接ファン・デル・ファールトに渡す」



「すさまじいミスやな」

「まあ、普通はありえん」

「最初の写真の状況なら、他に安全な選択肢はある」

「サイドに蹴りだしてもいいしな」

「ロシアの選手は、自信があるのはいいが、それが裏目に出て、状況を甘く見すぎるところがある」

「そこまで改善するのは無理だった、ということかね」

「ただ、これだけのミスをおかす選手達に、きちんとつなげと指示するのは、よほどの信念がいる」

「監督が攻撃サッカーと口では言うが、選手のミスに耐え切れずに小言を連発し、結局チームが空中分解してしまう例は多い」

「言ってることとやってることが違うと、一番選手の信頼を失う」

「つなぐサッカーを目指す場合、そういうミスに対する耐性というのは非常に重要で、その点でヒディングは類を見ない」

「スウェーデンやオランダとの試合を見ると、その方針は間違っていなかった」

「しかし、スペイン戦のまとめであるように、”スペインより守備が薄いのに、スペインと同じ土俵に立って戦ったら、そりゃロシアには勝ち目がない”というのは揺るがない事実である」

「この場合、同じ土俵に立ったことが問題というより、なぜあそこまで中盤の守備が崩壊したかが問題になる」

「攻撃で面でスペインと同じ土俵に立つとしたら、守備面でスペインを超えていなければ勝ちがたい」

「そうでなければ、相手の弱点を突く方がよい」

「ロシアがオランダ戦で燃え尽きていたというのは考えられるが、ヒディングへのインタビューがあれば、試合前にスペインに対する勝ち筋をどう見ていたのか、中盤の守備の崩壊の理由、右のセルヒオ・ラモスをあれほどフリーにしたのはなぜか、といった点は、ぜひ聞いていただきたい」

「ユーロ最大の謎の一つやしな」

「三つあるけどな」

「とまあ」

「そんなこんなで」

「次は、反響の大きかったオランダ対ロシア戦の補稿をお届けしたいという予告をしつつ」

「また次回」

「ごきげんよう」
「さて」

「スペインがなぜ優勝できたのか、という疑問についてやな」

「とりあえず、様々な理由を検証してみたいと思う」

「よかろう」

「まず、”スペインは、上手い、テクニックのある選手を揃えていいサッカーをしたのが良かった”というような説明がある」

「しかし、それはドイツワールドカップでもそうで、例えば、フランス戦の先発は下のようになっていた」



「懐かしいな」

「今回の選手としての違いは、パブロ、ペルニア、ラウール、セナで、中盤より前の選手では、ラウールとセナしか違わない」

「そうやな」

「上手い選手を揃えたのが良かったというなら、なぜ前回は駄目で今回は良かったのかを明らかにしないといけない」

「ふむ」

「例えば、ラウールをイニエスタに代えたから優勝できた、というなら、その理由も知りたい」

「まあ、システムが違うというのはある」

「でも、それは理由にならんやろ」

「まあな」

「スペインは、ドイツワールドカップの予選の間、1-4-2-3-1や1-4-4-2系で戦っていて、それで上手くいかずに1-4-3-3系に変えたという経緯がある」

「それに、ユーロ予選でも、1-4-4-2系でうまくいかなかった」



スウェーデン戦や、アイスランド戦がそうやな」

「ドイツの1-4-3-3から今回の1-4-4-2に変えて上手くいったというなら、なぜ予選の段階で上手くいかなかったのか、さらには、それ以前から上手くいかなかったのはなぜかを明らかにしないといけない」

「そうかね」

「そりゃそうやで」

「じゃあ、個々の選手が成長したというのはどうだ」

「トーレスやセスクがイングランドで成長して、イニエスタも円熟して云々という感じか」

「あかんな」

「予選が終わったのが半年前で、そこでは嫌になるほど苦労したし、一時は出場不能じゃないかとまで言われていた。果たして、人間というのは半年でそこまで成長するのか疑問が残る」

「それに、そのような成長が可能だとするなら、どこがどう変わったかを教えてもらわないと納得するのは難しいかもしれんな」

「トーレスのボディバランスが、一年前よりよくなったのは確かやけどな」

「それでもってユーロ優勝の理由にするのはちと無理やろ」

「1人の人間の変化でチームを優勝させてしまうのは難しいかもわからん」

「当たり前や」

「それなら、一戦ごとにチームが成長したというのはどうだ」

「それを言うなら、ドイツもロシアもユーロ開始よりもよくなっているから、スペインのチームとしての成長度が他のチームを超えていたことを示さないと意味がない」

「ユーロやワールドカップのチームが、一戦ごとによくなるのは当たり前やからな」

「まあな」

「そういえば、アラゴネスの時間が残っているのに3枚使い切る、強気かつ早めの交代がよかった、とする説もあるが」

「それも眉唾か妄言やな」

「実は、アラゴネスというのは、早め早めに交代を行う傾向がある」

「例えば、ドイツのチュニジア戦もそうやな」

「56分で3人の交代が終わっている」

「つまり、残り34分は怪我人が出ないのを祈るのみ、ということになる」

「ユーロ予選のスウェーデン戦でも、59分で3人代えている」

「それに、アラゴネスが交代を行うと、どんどん攻撃的な選手が増える」

「強気かつ早めの交代というのは、彼の癖のようなもので、このユーロに限ったことではない」

「まあそうなる」

「要するに、上に出てきた理由は、一瞬もっともらしく聞こえるけど、これまでもアラゴネスのスペインが持っていた特徴を焼きなおしているに過ぎない」

「つまり、もしそれで優勝できたとするなら、なぜこれまでが駄目だったか、という疑問が残るわけやな」

「となると、この大会で今までと変化した点を考えざるをえない」

「そりゃ当然やな」

「まあな」

「というか、最初っから違いを考えろという話やな」

「思い起こせば、最初のロシア戦で奇妙な動きがあった」

「この先発から」



「先制した後、下のように引いた」



「これまでは、1点取ったからといって、自陣に引くようなことをしたことがなかった」

「アラゴネスは、切り合うのが好きやからな」

「切り合うのが好きというか、自分から試合を動かして行くのが好きというか」

「例えば、ドイツワールドカップでは、緒戦のウクライナ戦がこう」



「中盤の右にいるセナに注目していただきたい」

「第二戦のチュニジアがこう」



「やはりセナがいる」

「第三戦は、控えを中心としたメンバーだったので除外するとして」

「トーナメント緒戦のフランス戦はこう」



「セナが消える」

「別に怪我をしたというわけではなく、この試合、途中から出場する」

「驚くべき攻撃精神というかなんというか」

「普通、逆やな」

「より強い相手に守備を重視してセナを入れる、というならわかるが、その逆」

「相手を崩し難いと見るや、より上手い選手をいれて無理にでも崩そうとする」

「これこそがアラゴネスで、自ら主導権を握って試合を動かそうと試みる」

「ドイツではそれが大失敗に終わったわけやな」

「フランス相手に、後半一本のシュートも打てずに敗れた」

「その彼が、ロシア戦で引いたというは、ある意味事件やったわけやな」

「守備を固めて、相手の崩れを待つ、以前と比較すれば、明らかに我慢強い作戦を採用した」

「我慢といえば、その後のスウェーデン戦とイタリア戦でも我慢をしている」

「そうかね」

「両方の試合で、イニエスタとシャビを外し、セスクとカソルラを入れている」

「そうやな」

「そこに我慢が見える」

「いや、ごく普通の交代やろ」

「これまでのアラゴネスの普通というのは、セナを外してシャビ・アロンソを入れる式の交代であって、いわゆる常識的な交代というのは彼の普通ではない」

「そうきたか」

「スウェーデン戦、イタリア戦では、無理に自分から試合を動かしにいかなかった」

「当たり前といえば当たり前やけどな」

「そんな当たり前でもないで」

「そうか?」

「監督というのは、自分のサッカー感があって、それは中々変えられないし、特にそれで勝ってきた実績のある監督というのは変えない」

「カペッロが極限まで中盤に穴を空けるのを嫌うようなもんか」

「アラゴネスは、チームがうまくいかないと、上で見たようにショック療法のような交代を繰り出して選手を鼓舞することが得意であるにもかかわらず、今回は普通の交代に徹した。これは、自分の本能を抑えた結果やと思わんかね」

「どうやろな」

「今回のスペイン代表のキーワードは、この我慢ということで、それにより相手の乱れを上手く利用することができた」

「そうかね」

「最初のロシア戦では、一度引くことで、相手のパスミスを上手く突いてカウンターから追加点を重ねた」

「あれは、ロシアのミスを見越した作戦やったんやろな」

「次のスウェーデン戦は苦労した」

「15分にショートコーナーから先制したのはいいが、その後は手も足も出なくなった」

「イブラヒモビッチへのロングボールが効いて、中盤が後ろに走らさせる。スペインの最も苦手とする展開になり、34分、そのイブラヒモビッチのゴールで追いつかれる」

「これは、いかんと思っていた後半開始」

「ピッチにイブラヒモビッチの姿はなかった」

「怪我で交代」

「非常な幸運だった」

「後半はほぼ一方的に攻めたが点は入らず」

「ロスタイムのビジャのゴールで勝利する」

「次のギリシャ戦は、スペインの1位、ギリシャの4位が決まっていたため、控えメンバーが主に出場」

「それにも勝って、トーナメント緒戦でイタリアと相対する」

「戦術的に、スペインは勝ちにくい試合だった」

「しかし、イタリアは監督がチームの掌握に失敗していた」

「ドナドニか」

「イタリア戦の文章について、”あまり面白くないが、つまらない試合だったので、手を抜いているのではないか?”という指摘をいただいたのだが、手を抜いたわけではない」

「ほんまかいな」

「あの試合で、イタリア最大の敗因はなにかと問われたら、監督が選手の信頼を得られなかったことで、技術や戦術以前の問題になる」

「信頼を得られていないというのが本当なら、の話やな」

「2010年までの予定だったドナドニを切ったというのは、一つの傍証やと思うで」

「ともあれ、延長120分を0-0で耐え抜き、PKでのカシージャスのセーブもあり準決勝へ」

「そこで再びロシアと対戦」

「ロシアは中盤の守備がひどい以前の問題だった」

「オランダ戦で燃え尽きていたとしか言いようがない」

「そして、決勝はドイツ」

「これは、相性のいい相手だった」

「おまけに、ドイツの攻撃の種になるラームが前半で負傷交代」

「ドイツの攻撃の導線は、左に一本あるだけで、その根元が切れてしまった」

「おかげで後半は、より楽に守ることができた」

「イブラヒモビッチといい、ラームといい、実にクリティカルな選手が負傷した」

「非常なツキといっていい」

「それに対して、スペイン選手の負傷はビジャのみ」

「大会前、期間中のコンディショニングが上手くいったというのは言える」

「以上をまとめると、スペインの勝因は次のようになる」

「まず、選手が上手かった」

「これは、スペインが営々と培ってきたサッカー嗜好に負う所が大きい」

「そして、監督が我慢をした」

「無理に動いて、相手を崩しすのではなく、自分たちが崩れないことを主眼にした作戦を採用し、選手交代もその方針に従った」

「これによりチームが安定した」

「安定したことにより、相手の乱れを利用しやすくなった」

「スペインと対戦したチームは、選手の怪我や内部事情で乱れを見せることが多かった」

「それを活用して勝っていった」

「特に、怪我については、運の要素が強い」

「それも怪我をした選手、イブラヒモビッチとラームが、相手の攻撃の要であった点は幸運だった」

「つまり、テクニック、我慢、運、これらが勝利の鍵だったということになる」

「我慢、というのが、これまでと一番違うところか」

「そうなる」

「戦術的に、苦手な相手との対戦が少なかったことも大きい」

「弱点はペルー戦の通りだが、特にロングボールを主体にしてくるチームが少なかった」

「スウェーデンとイタリアだけやな」

「スウェーデンは、前にもあるように、イブラヒモビッチが怪我をしたことで途中で頓挫」

「イタリアは、選手を守備に追い使うばかりで、勝負にこなかった」

「おかげで、スペインの粗が目立たずにすんだ」

「こう見ると、勝つべくして勝ったようにも見える」

「終わってみるとそんなもんやけど、事実は違う」

「開幕前から周囲の状況は、決してよくなかったしな」

「まずは、ラウール問題やな」

「外す外さないで大いにもめた」

「それもあって、ユーロ前にアラゴネスが辞めるの辞めないのでずいぶんと問題になった」

「あの頃は、ファンやマスコミからラウールの話が出ると、露骨に嫌な顔をしてた」

「おまけに、イエーロの問題もあった」

「彼は、元レアル・マドリーで、代表のディレクターのような地位に就いた」

「イエーロはマドリーの権益を代表するわけで、ラウールを召集するように影に日向に圧力をかけたことは想像に難くない」

「これもよほどうっとおしかったはずやな」

「おまけに、協会そのものともうまくいかない」

「スペインが勝ち続けて、協会が慌てて契約延長を打診したが、ユーロの始まる前に言わず今さら言うな、とにべもなく断った」

「このような逆境に耐えての優勝」

「ピッチの中でも外でも、アラゴネスの忍耐が勝利した形になった」

「やはり、我慢や忍耐というのが今回の優勝のキーワードではないかということか」

「どうしてもそうなる」

「そんなこんなで」

「スペイン優勝の理由編はこの辺りで」

「また次回」

「ご機嫌よう」

「の前にや」

「なんや」

「ありがたいことに、いくつか質問を頂いたから、それに答えてもらおうと思うわけや」

「わしが答えるんかいな」

「こっちが、疑問を呈するをするから、それにさくさくと答えて欲しい」

「頑張るわ」

「まず、今回の勝因は、どの相手も放り込みメインで崩してこようとしなかったのが大きいのではないか?」

「はい。そうです」

「ポゼッション向きの中盤と、カウンター向きのトーレスというお話でしたが、結果的には攻め方の幅が自然と生まれて、良かったのではないか?」

「はい。トーレスは、ボールを持ってシュートに行けないスペイン病の解消に役立っていました。しかし、中盤の構成は、決していいものではありませんでした」

「トーレスの決勝点はラームのミスではないか?」

「シャビのスルーパスに対して、ラームは非常にいい反応を見せています。最初の段階では、トーレスよりもいい動きを見せて、体を前に入れています。それにも関わらず前を取られたのは、腕で体をつかまれ、強引に体を入れ替えられたためです。これができたのはトーレスのスピードとトーレスとラームの体格差がものをいっています。ラームが体を入れるよりも、もっとボールに方向に行っていればクリアできたのではないか、という疑問は残りますが、トーレスの身体能力が優ったと見る方が妥当です」













「GKは、トーレスのシュートを防げたのはないか?」

「シュートの時、トーレスは軸足がボールと離れた状態でした。このような場合、強くコントロールされたシュートが来る可能性は低くなります。その意味では、レーマンは寝るべきではありませんでした。しかし、ラームが体を入れトーレスの進路を妨害しそうな状況であったことを考えれば、フォワードのスピードが予想以上のものであったということもできます」



「ドイツ戦で、シャビ・アロンソの投入は守備固めか?」

「そうです。より安定した試合運びのために投入されています」

「シャビ・アロンソは思ったより前に行っていたが、どのような指示を受けていたのか?」

「守備では、フリンクスに自由にボールを持たせないこと、押し込まれたらセナの横に入り、スペースを与えないこと、この2点が主であったと考えられます」

「ドイツは全体に動きが悪く、後半25分すぎから特に落ちてパワープレーにも行けないように見えた。これは疲労の影響か?」

「日程的には、ドイツの方がゆるく、そうではないでしょう。ドイツの攻めの問題は、単純にボールを前に運ぶ手段に乏しかっただけです」

「ポドルスキーとセルヒオ・ラモスのマッチアップで、ポドルスキーの完敗だった、これも疲労の影響か?」

「ミッドフィールダーとして動くポドルスキーは、カウンターで先手を取った時以外はそれほどいい動きをしていません。能力差で抑えられたと見るべきです」

「トーレスの得点では、ディフェンスラインの押し上げがなく、スペースが生まれたのではないか?」

「あの場面で問題があるとすれば、クローゼとバラックの間に段差を作ってセナをフリーにしたことです。ドイツは、中盤のラインの前にバラック、クローゼを置き、シャビとセナにスペースを与えないようにしていました。その方針に従うなら、クローゼはマルチェナへのパスをケアするよりも、まずセナへのパスコースを切るべきでした。しかし、このわずかな乱れから得点につなげたスペインの能力をさすがというべきです」



「トーレスの得点で、センターバックが追えば追いついたのではないか?」

「サイドに逃げるボールだったので、センターバックでは追いつきません」

「レーマンが勝手に飛び出しゴールを空けたのではないか?」

「飛び出した後、寝るべきではない場面でした。しかし、トーレスのスピードが予想以上であり、ラームを抜き返したことも事実です」

「スペインは後半から自陣に引いた。その一つの理由は、ドイツは組み立てでミスをするからか?」

「ドイツは、左さえ抑えれば他に手はないため、リスクを犯す必要はなく、スペインは穴を空けないことに注力していました」

「ドイツの両サイドは死んでおり、スペースを消せば恐くなかったから引いたのではないか?」

「ドイツの右サイドは最初から死んでいます。左サイドもラームの退場により機能不全に陥りました」

「スペインの優勝は、運が非常にいい方向に作用したからではないか?」

「その通りです。ただし、上述のように、運をつかむための忍耐が存在したのも事実です」

「次のワールドカップに向けての課題はなにか?」

「まず、監督選びです」

「今大会の傾向はなにか?」

「顕著なものは、守備において捨てる場所のあるチームは強くなれない、ということです。特にサイドバックにおいてそうです。スペインは、セルヒオ・ラモス、カプデビラという2人のサイドバックが非常に優秀でした。他の国ではこの2人より能力で劣るか、片方を捨てることができました。その点が大きな違いです」

「ここ10年ばかりのスペイン代表の変化はなにか?」

「2002年の代表や1998年の代表が才質において今回よりも劣っていたとは思えません。2006年に至っては、ほぼ同じメンバーです。2002年、1998年と違いがあるとすれば、セルヒオ・ラモスとセナの存在です。また、ルイス・アラゴネス自身の変化としては、やはり我慢ということです」

「スペインはウィングがいない、ウィングを捨て他チームで勝てるとは思えない、テクニックは認めるが疑念を捨てられない、という評価についてはどうか?」

「確かに、代表からもれたウィングはいます。へスース・ナバス、ホアキン、ディエゴ・カペル、リエーラといった選手がそうでしょう。しかし、ウィングがいないと勝てないというのはなにも論理的根拠がありません」

「ウィングを連れて行ったらスペインは勝てたと思うか?」

「そのような選手を招集していたら、別の歴史になっていたはずです。勝てたとも負けたとも言うことができません」

「どうして日本のマスメディアはチームとしてではなく、単なる選手の名前の足し算で判断してしまうのか?」

「誤謬(ごびゅう)、英語でFallacyという言葉があります。これは、簡単に言えば、論理的に破綻している文章が、さももっともらしく聞こえることの理由にあたります。論理的誤謬を知ることで、そのようなものに騙される危険性は減ります。サッカーの文章ではそのような誤魔化しが非常に通用しやすい、という現状があります。書き手の主観を、文章技術や、都合のいい通念や他人の言葉の援用でもっともらしく見せる、というのがその代表です。例えば、スペインは歴史の重みからしてドイツを恐がっている、ゲルマン魂がどうこう、最後に勝っているのはドイツだ、といった通念を利用した説明です。しかし、それが何の意味もないことは、決勝をみればわかります。そのようを文章に騙されないようにする方法は、以前にもあるように、再現性と追試可能性を見ることです。それがない文章は、嘘だと思って読むべきです」

「誤謬については、検索でWIKIの文章を読めばよくわかるということで」

「今回はこの辺で」

「後ほど、ユーロのベストメンバーやまとめを出せればいいというところで」

「また次回」

「ごきげんよう」
「ついにスペインが優勝した」

「じつに44年ぶりらしい」

「トーレスのゴールを守りきっての勝利」

「実は、プレビューにもある通り、スペインがドイツに勝つこと自体は意外なことではない」

「遅れてきたプレビューというやつやな」

「日曜の昼からネット障害でアップすることができずに申し訳ない」

「いいわけはあかんな」

「ほんまのことやから仕方がない」

「さよか」

「それはそれとして、ドイツに勝つことは意外でないとして、スペインがこの大会に優勝したのは実に意外だった」

「始まる前は、とても勝てるとは思えなかったしな」

「決勝が終わった直後から、”なぜスペインは勝ったのか?その鍵となったのはなにか?”という疑問が頭から離れなかった」

「ぜひとも答えておかなかればいけない問題やな」

「それについては追々議論していこうかと」

「ええで」

「とりあえず試合やな」

「先発はこう」



「双方ほぼ予想通りではある」

「ドイツでは、クローゼとバラックが横並びであること、スペインではファブレガスの位置が前にずれていることが特徴といえば特徴やな」

「これまでのドイツを見ていると、攻め筋は二つしかない」



「ラームが上がってのクロスと、ポドルスキーを使ったカウンター」

「要するに、左サイドからしか攻めることができない」

「まず、第一の興味は、スペインがこれをいかに食い止めるか、というものだったわけだが」

「別に、なにもしなかった」



「例えば、ドイツの左サイドにボールが流れるのを防ごうと思えば、トーレスがメッツェルダーを押さえるとよい」

「しかし、距離を空けていたため、自由にパスを出された」

「ドイツのパスの出所になるラームに対しても甘かった」

「シルバが詰めればいいのだが、これまた距離を空けすぎていた」

「ラームにファブレガスが行くかシルバが行くか、中途半端な場面も目立った」

「スペインの守備のゆるさが出て、立ち上がりはドイツが攻める展開になった」

「意外というかなんというか」

「なんで、アラゴネスはドイツの左を自由にさせたんやろな」

「攻め合って勝てる自信があった、と見るのが妥当やろな」

「それで、どうなったのかというと」

「33分にトーレスがゴールを決めた」

「下の形やな」



「右から縦に走り込んで、出てくるレーマンの上を抜いた」

「ここで、以前、コメントで教えていただいたトーレスの言葉が思い浮かぶ」

「プレミアのキーパーは倒れるのが早いから楽だ、というやつやな」

「レーマンもドイツ人ながらプレミアに長い」

「さて、その辺はどうかというと」

「やはり早い」



「トーレスのかかとがつく前に倒れる体勢に入っている」

「ここで一つ不思議なことがある」

「なんや」

「トーレスは、この形で、倒れるキーパーの上を抜くのが得意やろ」

「そうやな」

「昔、カシージャスの上を抜こうとしたら、実は相手が倒れていなくて胸にナイスパスをしてしまい、もの凄いブーイングを喰らったこともあった」

「あったな、そんなことも」

「そういう情報はレーマンも当然持っているはずなのに、お約束のように抜かれているのが不思議じゃないかね」

「レーマンは、左に飛び出すと寝る癖があるのと、トーレスのスピードが予想以上だったということちゃうか」

「そうなんかね」

「なんにしても、前半は0-1で終わる」

「そして後半」

「ラームがヤンセンに代わる」



「なんと」

「まあ」

「これはいかん」

「ドイツとしては、唯一の選手がいなくなってしまった」

「ボールを運ぶことのできるのは左で、そこでゲームメーカーのような役を果たすのがラーム」

「その彼がいなくなってしまったら、どこからも攻めることができなくなってしまう」

「この交代の理由は、怪我か監督との喧嘩意外に考えられない」

「スウェーデン戦でのイブラヒモビッチと同じやな」

「攻めに精彩を欠くドイツ」

「58分、ヒツルスペルガーを下げてクラニイを入れる」



「バラックが下がったわけやな」

「ここでも不思議なことがある」

「なんや」

「ドイツのフォワードへのロングボールが極端に少なかった」

「ゴメスの時もそうだが、背の高い選手を使うわりに、放り込まない」

「これは、このユーロを通してそうで、データにも残っている」

プレビューにもデータの一部がある」

「それにしても、スペインは放り込まれるのが一番困るのだから、ドイツの側としては、体格をいかしてがんがん放り込んだらええと思わんか。それでゴール前の混戦が増えれば、体の付け合いで負けへんやろ」

「そういうチームを作っていない、ということかね」

「彼我の特徴を考えた時に、ラームがいない状態でもたもたつなぐより、放り込んだ方が遥かに効率的やと思うけどな」

「ドイツも、最後はメルテザッカーを上げて放り込んだけどな」

「もっと早くやってもええという話や」

「なんにしても、スペインが逃げ切って優勝」

「じつにめでたい」

「めでたいのはめでたいのだが、その理由はなにか、優勝できた原因はなにか、というのが実に気にかかる」

「続きは」

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