週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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「さて」

「注目の第2戦は、1対1の引き分け」

「アウェーゴールの差でバルサが決勝進出」

「実にめでたい」

「めでたいのかね?」

「めでたくないのかね?」

「今回はその辺りを見ていこうかと」

「うむ」

「まず、先発はこう」



「ふむ」

「中々興味深い」

「チェルシーは右にアネルカとボジングワ」

「バルサの特徴は下のようになる」



「エトーが左でメシが中」

「トゥレが下がって、中盤の底にブスケツ」

「なんだか意味深な感じがする」

「エトーが左というのは、受けを考えた配置と見ていい」

「右サイドを押さえたい時に良くこれを使う」

「ところが、後ろはトゥレをわざわざセンターバックにして、中盤にブスケツを入れている」

「これだと、守備的に薄くなる」

「その一つの理由が下に見られる」

「下の図では、左に動くボールを、青いドログバと黄色いブスケツが追う」




「ブスケツは素直にボールを追うのに対し、ドログバは体を当てに行く」





「その結果はというと」





「ドログバの1人勝ち」

「トゥレとブスケツの一つの差は、体を当てることに対する強さで、守備ラインの前をカバーする選手には、この要素が必須になる」

「マウロ・シウバ、マケレレ、ガットゥーゾなどなどやな」

「マウロとか聞くとマジーニョを思い出すな」

「古きよきガリシアかね」

「それはともかく、試合開始時点でのバルサは、前は受けを考え、後ろは攻めを考えたような布陣になっている」



「前回、バルサは引いて守るべきであり、それ以外は勝つ確率を減らすだけだという話が出た」

「少なくとも、使った選手を見ると、引いて守る配置ではない」

「サイドは守るものの、やはり、フットボール美学とやらを追求して、後方からきちんと組み立てて攻めるつもりの配置に見える」

「では、果たして、本当に攻めることができたのか」

「その辺りが問題になる」

「まず、ボールポゼッションは、大体、バルサが2/3、チェルシーが1/3で推移した」

「バルサは、いい数字やな」

「次に、ボールを保持した後、どのようなチャンスを迎えたかを見る」

「4分5秒、メシが下の形でボールを持つ」



「これは、ナイスなチャンスやな」

「ただし、メシがトップの関係で、中央に誰もいない」

「この後、メシのドリブルはバラックに防がれる」

「7分2秒、逆サイドから長いボールにアウベスが飛び込む」



「ボレーで合わせたボールは逆サイドに抜けて終わる」

「この後、9分にエシエンのボレーが決まってチェルシーがリード」

「28分53秒、メシのドリブルから、逆サイドのイニエスタのシュート」



「枠を外れる」

「36分1秒、アウベスがエトーに入れる」



「戻してシャビ」




「サイドに展開して、メシ」



「クロスは、直接キーパーへ」



「これは、おそらく、前半最高の形だった」

「アウト・イン・アウトの典型やな」

「37分17秒、メシがサイドを突破する」



「そこからクロス」



「キーパーに直接渡る」



「いい崩しだったが、中には合わなかった」

「ちなみに、これまでのプレーから、リードされた後、バルサは前線を右から、メシ、エトー、イニエスタに変化させたことがうかがわれる」

「40分44秒、メシがボールを持つ」



「良い形だったが、クロスはタッチラインを割る」

「44分43秒、シャビが中に入るイニエスタにパス」



「フリーで受け」



「前を向く」



「これも非常にいい形であるな」

「最終的には、シャビが浮き球でラインの裏を狙い、カットされる」

「前半ロスタイム2分56秒、ショートコーナーからシャビのミドル」



「相手にブロックされ、その跳ね返りを叩くも枠をそれる」

「前半のバルサのチャンスは以上」

「以上かね」

「以上や」

「エリア内からフリーでシュートを打つとか、ラインの裏に抜けた選手がキーパーより先にボールを触るとか、そんなチャンスはないわけやな」




「ない」

「そうか」

「ついでに、フォワードがセンターバックの間、ドフリーでボールを持つ、といったシーンもない」



「これは、ドログバのコントロールミスで終わったやつやな」

「ちなみに、バルサは、エリア内でボールを持つこともあったが、周囲に必ず2~3人の守備者がいた」



「前半攻めることができなかったバルサ、はたして後半どうなるのか」

「続きは」

こちらからどうぞ」

「さて」

「第2戦、いかに戦うか」

「バルサはチェルシーをいかに崩すか」

「そんな話が前回出てきたわけだが」

「だがなんや」

「チェルシーは、守り方自体を変える可能性が高いから、第1戦からの結論はあんまり意味がなかろうと思うわけや」

「そうか」

「この試合では、48分にマルケスが崩れ落ち、50分にプジョルが入った」

50分 マルケス→プジョル


「これは、チェルシーにとって少し途方にくれるところがあり、守備での目標が失われる」

「プジョルに代わったし、前みたいに真面目にケアしなくてもいいのではないか、という話になる」

「それに対するヒディングの回答は明快で、70分に下のようになる」

70分 ランパード→ベレッチ


「これはなんというか」

「からいな」

「おそろしく勝負にからい」

「バルサになにもさせませんよ、という引き方やな」

「ワントップにして、引いて守れたらこれほど楽なことはない」

「マルケスがいるとこれができない」

「それで苦労するわけだが、その心配がなにもなくなった」

「この変化を見ても、バルサにとってマルケスの存在がいかに重いかということがわかるし、たった一人の選手が戦術に極めて大きな影響を与えることがわかる」

「戦術というのは選手の技術的特長から導かれるものであり、技術がわからない人間は結局戦術を理解できないという例でもあるし、技術をわからずに戦術を論じても、上っ面をなぞることしかできない」

「なにはともあれ、バルサとしては、1点を目指さなければしょうがない」

「交代はというと」

「下のようになる」

81分 エトー→ボージャン、86分 アンリ→フレブ


「うむ」

「なるほど」

「これがバルサの問題の一つで、最初から攻撃において最も強い形で戦っているので、選手を代えてもその面での能力は低下する」

「一枚看板やからな」

「この戦術的な奥行きのなさというのは、どうにかならんものかね」

「チェルシーとしては、バルサが同じように来るなら、下の形でええかね」



「きちんとスペースを埋めて0-0進行、後半65分過ぎから勝負をかけるようなパターンで十分やな」

「中盤の体力ではチェルシーに分があるし、ベンチに攻め駒もある」

「バルサはケイタを中盤に入れると良い意味はあるねんけどな」

「なんでや」

「アウベスのクロスに対して、一番合うのは彼やと思わんか」

「どうやろ」

「まあ、この形なら、まず、チェルシーの有利は動かない」

「後半のグダグダ勝負になったらチェルシーが強いのは第1戦でもそうやったしな」

「おまけに、0-0ならホームで延長までいけることを考えると、失点さえしなければ時間が経つほどどんどん有利になる」

「バルサは困ったな」

「なんにも困ることはあれへんがな」

「なんでや」

「ジャンケンでいうたら、いつもチョキばっかり出してるから、グーを出されて困るだけで、それをやめればええねん」

「でも、バルサはパーは出せへんぞ」

「ほんならこっちもグーを出せばええだけや」



「そうきたか」

「あっちが攻めてけえへんのやったら、こっちも引いたらええだけや」

「トゥレの横にケイタで、サイドにフレブかね」

「去年までのバルサは、この2人がいなくてこういう戦いはできなかったけど、折角買ったんやから、ここで使うたらええやろ」

「引いて左を空けるのか」

「イニエスタを浮かせてエシエンさん、いらっしゃいや」



「まあ、アビダルがエシエンに負けることはないと思うけどな」

「縦にスペースがなければ、エシエンなんかカモみたいなもんや」

「しかし、そう組んで、実は右にアネルカなんかが先発したらどうする?」

「その時は、イニエスタとフレブの位置を代えればいいだけで、なんの問題もない」

「ボールを取った後はカウンターか」

「当たり前で、エトーとフレブをターゲットにしてカウンターを狙う」



「どっちがチェルシーかわからんな」

「相手が嵌め手にくるなら、こっちも嵌め返したらいい。馬鹿正直に相手の予想通りに戦って的になる必要はどこにもない」

「理屈はそうやけどや」

「おまけにベンチを見てみ、アンリとメシが持ち駒になってる状態は相手にとって重いし、調子6割程度のメシを最初から使うより、途中から出した方がええやろ」

「アンリはあかんかもしれんという噂やけどな」

「スコアラインで見れば、0-0以外の引き分けは全部バルサの勝ちになるわけだから、1-1を目指せばいい。それならアウェーで素直に引くのが常道だし、チェルシーの攻撃ならそれで十分しのげる」

「第1戦の後、グアルディオラやイニエスタがチェルシーのサッカーがつまらんのどうこうみたいな発言をして、それはないやろ」

「そんなん、バルサが負けた時に出るお約束みたいなもんで、何の意味もないやんか」

「まあ、そうやけどな」

「それに、もっと煽ったったらええんや」

「なんでそんないに興奮してんねん」

「チェルシーのサッカーは最悪だ、アンチフットボールだ、退屈を通り越して見ただけで気絶しそうだ、とか散々言い散らかして、本番でガチガチに引いたら相手はびっくりやで」

「それじゃ緒戦のヒディングと同じやんか」

「だから、やられたら、やりかえしたらええんやって」

「ハンムラビか、お前は」

「ヒディングに対しても、”昔、戦う戦力があるのに、サッカーをしないチームを見ると反吐が出る、とか言ってあのプレーか。なら、自分に向かって反吐を吐け”とか挑発すれば、流石に冷静ではいられんと思うで」

「どんだけ盤外戦術やねん」

「まあ、チェルシーのやったことは、戦術上当然で、非難されることなんか何一つないねんけど、使えるもんは使っていかんと」

「しかし、今日はまた、えらい勢いやな」

「そうか?」

「一文が長いねん」

「それは意外やな」

「先発やけど、別に、これでええやろ」



「それもありやな」

「アンチフットボールが云々とかいうなら、前に賭けたらええやろ」

「どうせなら、いっそのこと、下まで行ったらええんちゃうか」



「まさにドリームやな」

「しかし、第2戦の最適解は下の図か、そのバリエーションで、これ以外は勝つ確率を下げるだけでアホみたいなもんやで」



「チェルシーは、デコもジョー・コールも今期あかんらしいな」

「それも、引くことが良い解になる一つの理由やな」

「しかし、バルサのフィロソフィー的にそういうわけにもいかんのちゃうか」

「そんなことないで」

「そうかね」

「実際、0506と0405のバルサとチェルシーがその良い例やんか」

「バルサが優勝する年と、その前の年か」

「簡単に言えば、0405のバルサは理想論的サッカーで、常にサイドバックを上げてプレーし、その裏を突かれて5-4で引っくり返った」

「0506は、その反省をいかし、アウェーでは守りを固め、我慢の試合で勝ちにつなげた」

「0405は今と同じ一枚看板サッカーで敗れ、0506は試合毎に、相手に合わせて戦術を調整し、それがビッグイアーにつながった」

「そのあたりは、0405がこちら、0506はこちらのバルサの項目を参照いただくとして」

「フィロソフィーやイデア云々の話は、既に結論が出ていて、しかも、バルサ自身がそれを強烈に体験してるはずなんやけどな」

「その時はライカールトで、監督が違うしな」

「より勝ちやすい方法があるのに、それをとらずに相手の術中にわざわざ嵌りに行くとしたら、そっちの方がよっぽどアンチフットボールやで」

「そうなんかね」

「武道でも実際の戦争でも、技量や戦力が伯仲するほどうかつに動けなくなって睨み合いになるのが普通なわけで、時代劇みたいにちゃんちゃんばらばらやるわけにはいかんやろ」

「バルサは、技量において絶対的に優っている自信があるから、同じやり方を貫くんやろ」

「技はそうだとしても、サッカーはそれだけでは決まらんのと違うか」

「それに、あれだけ選手を揃えたチェルシーが、完全に守りに来たのに、ちゃんとエリアの中までボールを運べるバルサというのは、凄いで」

「それは確かに」

「チェルシーは、決して余力を残して守り切ったわけではなく、空いてはいけない部分が空く場面が多々あったし、最後の壁でバルサの攻撃をしのぎぎった、というゲームだった」

「チェルシーがあそこまで守ったら、普通のチームだと手も足もでんやろな」

「マドリー対リバプールのような試合になりかねない」

「それは言うたらあかん」

「そのんなこんなも含めて、第2戦をお楽しみに、というところやな」

「それにしても、バルサは十分勝てるんやから、素直に勝ちに行ったらええとおもうけどな」

「そこも注目という話や」

「というところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」

「ちなみに、クラシコの分析はありませんので」

「申し訳ありませんが、ご理解いただければと」

「そのような次第です」

「そういえばや」

「なんや」

「この試合、ドログバに注目してて一つ気づいたんやけどな」

「だからなんや」

「マルケスが倒れたシーンやけどな」






「最後、左手を上げて、手前を向き、何かを叫んでるんや」

「そのようやな」

「これは、サイドラインに向かって医者を呼んでいる図で、バルサの選手ですら誰もこんな行動は取っていない」

「マルケスの怪我が尋常じゃないのを直感したんやろうな」

「その瞬間、敵のために本気で医者を呼ぶことのできるドログバは、なんというか、人として信用できると思わんかね」

「当たり前といえば当たり前の行動のような気もするが、実はそうでもないのかもわからんね」

「そんなこんなで」

「今度こそ本当にまた次回」

「ご機嫌よう」


最初に戻る

「さて」

「マルケスのパスがおかしかったのではないか、という話の続きやな」

「そうらしい」

「この試合でマルケスが前を向いて出したパスの一覧は下のようになる」

(2:04 GK、ドログバ、空中、マルケス、エトー(○))
04:43 メシへパス、左足で右サイドフェイク、右足で中(○)
06:04 敵陣中までドリブル、パスミス
14:45 斜め前へロング、クリア
15:53 アウベスへパス
15:58 アウベスへパス
17:59 シャビへパス
18:15 シャビへパス
19:48 ピケへパス
20:04 シャビへパス
21:41 ピケへパス
24:42 ライン際、シャビへパス
27:00 ライン際、トゥレへパス
28:15 エトーへパス、正面から中央へ変換(○)
29:29 サイドから中、逆サイドへ長く、クリア、コーナー
32:47 メシにパス
33:55 アウベスに横パス

「ほう」

「○印がいわゆるマルケスらしいパスで、前半合計は3本で、5分以降に絞ると、40分間で1本しかない」

「うむ」

「これはどうしたことかと」

「まあ、動き出しが合わなくて出しづらかった、とかそんなんちゃうか」

「まあ、そうかもしれんけど、下の写真が理由の一つではなかろうかと思うんやけどな」



「どういうことや」

「下のパスを使うと、体全体としては、左方向に回転するわけやろ」



「そうやな」

「そうなると、キックの後、軸足である左足でその回転を支えなければならない」

「そうなるわな」

「この試合、マルケスは後半開始直後に突然倒れ、負傷退場した」

「48分の出来事やな」

「診察の結果、軸足となる左膝の半月板が内側、外側ともに損傷していたらしい」

「言いたいことは読めてきたで」

「おそらく、試合前から膝の具合が相当悪くて、それで、上のようなパスを出しづらかったのではないか、と推測されるわけや」

「あくまでも推測の域を出ん話やな」

「もちろんそうやけどな」

「しかし、マルケスの負傷は痛いな」

「痛いとかそういうレベルの話ではないほど痛いな」

「やっぱり痛いんやないか」

「マルケスがいなくなって、どうやってチェルシーを崩すよ」

「やっぱりピケの方から行きたいところやけどな」

「行けるかね」

「例えば、下のバリエーションやな」

「前半か」

「イニエスタがアビダルにバックパス」



「それをエシエンが外に膨らみながら詰める」




「ピケにパス」





「前にドリブル」



「例によって、誰も寄せてこない」



「左サイドのアンリにパス」





「無事にパスが通る」



「これがどうした」

「要するに、下のパスの射線が通ってるやろ」



「そうやな」

「前の例では、エシエンが邪魔で通せなかった」



「ふむ」

「イニエスタを経由してアビダルに戻したことで、エシエンのポジションがずれ、結果として通るようになったわけで、それを利用していきたい」

「それはどうやろ」

「例えば下の形やな」



「イニエスタが点線のように縦を突いて、ピケはそこにパスフェイク、方向を変えてアンリか」

「そうすれば、サイドのイワノビッチは中に釣られるから、アンリは余裕のある状態でボールを受けることができる」

「この状況ならそうやけどや」

「なんか文句でもあるんか」

「いや、後から言うわ」

「感じ悪いな」

「その話の前に、ピケが持った時の別の選択肢も考えてみないかね」

「別にええけどやな」

「まず、下の形で持った時、センタースポット手前のトゥレへパスが通りそうな気がする」



「それはあかんな」

「下の形でドログバとランパードに食いつかれるので、ボールをキープするのは非常に難しい」



「実例が6分40秒にありますので、ビデオをお持ちの方はご覧いただければと」

「それなら、トゥレを離して、ドログバとランパードの間にシャビやイニエスタを引かせたらどうか」



「これは、ミケルが許してくれない」

「ただ、いつでも完全にマークできるわけではないので、有効でないこともない」

「17分12秒にバルサが上手く崩した例がありますので」

「ビデオをお持ちの方はご覧いただければと」

「それなら、アウベス、メシへの展開はどうか」



「ボジングワ、マルダがマンツー気味についているので厳しい」



「前に見たように、アンリへのパスはエシエンが遮断している」

「あとは、ラインの裏に出るエトーに合わせるくらいか」

「ピケはそのパスをほとんど出さんな」

「苦手なのかもわからんな」

「そうなると、やっぱり、アビダルと一緒に頑張るしかない」



「次戦、その辺りがどうなるのか」

「その辺りを見てみようというところで」

こちらをご覧いただければと」

「しかし長いな」

「ほんまやな」
「さて」

「ここでは、ランパード、特にその手の動きに注目してみよう、というわけやな」

「手は口ほどにものをいい、という諺もあるくらいやしな」

「まず、軽い例としては下のようなものがある」

「今、白丸で囲まれたトゥレがボールを持ち、それをドログバが近くでマークしている」



「オレンジの丸で囲まれたのがランパード」

「トゥレが、画面奥へ切り返した時、ランパードは、右手を上げ、手のひらをドログバに見せる」



「これは、ステイの合図で、ドログバはトゥレを追わなくていい、俺が対応する、という意味になる」

「それを受けて、ドログバは立ち止まり、トゥレを離す」



「ここで、トゥレを追うな、というのは、もちろん、マルケスへの守備が甘くなるのを恐れてのことである」

「次の例では、センターサークル内のトゥレにボールが入る」



「黄色い丸がドログバ、オレンジの丸がランパード」

「トゥレからシャビへのパスに対して、ランパードがまたも右の手のひらをドログバに見せる」



「これも、ステイの合図で、ドログバは、シャビに行かなくていいことを示している」

「そっちは俺が回るから、お前は残ってトゥレをマークしろ、ということやな」

「実際、ドログバはボールを追わない」






「ランパードとミケルがボールを追い、マルケスとシャビの前に壁をつくり、ドログバは中の守備を担当している」

「次は、ピケが前にドリブルで攻めて来る例」

「まず、ランパードはサイドを向きつつ、中のトゥレを指差す」



「これは、俺がボールに被せるから、トゥレを見ておけ、という合図やな」

「ここで、ピケが中に切り返す」



「この時、ランパードは、画面外を指差している」

「その先にはもちろんマルケスがいるはずで、ドログバにそっちのケアをうながしている」

「ピケを空けて、トゥレ、マルケスを抑える方針が見える」

「それについては、次なんかも強烈やな」

「アビダルから、ピケにバックパス」

「この時、ランパードは、画面左を見ている」



「そして、またも画面外を指差す」



「これは、ドログバにマルケスのマークを指示している」

「常識的には、言ってることが無茶苦茶やねんけどな」

「上の図からドログバを除くと、ピケを抑える選手はだれもいない」

「それでもかまわない、ピケは無視してマルケスを抑えろ、という方針であることが上からもわかる」

「ちなみに、ランパードは、ドログバだけでなく、中盤全体にも指示を出す」

「下では、センターサークル内で、トゥレがボールを持っている」



「この時、オレンジで囲まれたランパードは、左手を横に上げている」

「トゥレは、自分とドログバで対応するから、中盤はここに出るなという意味やな」

「実際、ドログバが下がってくる」

「ここで、彼に待ての合図を送る」




「実は、上の2つの図は、最初の例と同じものなんやけどな」

「上のように、ランパードが全体を仕切る姿は度々見られる」

「下などもその例で、サイドに出たマルケスがフリーになる」



「この時、ランパードは左手を横に上げ、全体に下がれの合図を送っている」

「それに従って、中盤の選手が下がる」



「中へ進路を取ったマルケスに対応する準備をしながら、中央を指差す」



「もうお分かりのように、これは、ドログバにトゥレを見ろの合図である」

「同じような姿が、以下にも見られる」

「例によって、黄色の丸がドログバ、オレンジの丸がランパード」

「ピケがボールを持ち、ランパードが下がれ下がれの合図を送る」









「ランパードの指示に従い、エシエン、バラックなどが位置を下げているのがわかる」

「ここからマルケスにパスが出る」




「これはよくない」

「極めて良くない」

「サイドライン際でマルケスをフリーにするのと、これだけ中央でフリーにするのとでは、まったく意味が異なる」




「上が離しても良い例、下が悪い例やな」

「誰がミスを犯しているかというと」

「ドログバで、下の形から、ふらふらとピケに近寄った」



「この日のチェルシーの守備でそれは誤りで、逆に動いてマルケスへのパスを出しにくくさせ、もしボールが出たら、その後のプレイを阻害しなければならない」

「マルケスの前が空いた理由その3は、ドログバの誤り、という結論になる」

「上の流れでも、彼がマルケスを見なかった結果、下のようなピンチを招く」

「フリーになったマルケスに、ランパードが応対に出る」



「正面に入ったところで」



「中央側を抜き」



「人の間を通し」




「エトーに渡る」



「これこそマルケスやな」

「守備としては、ディフェンスラインからこのゾーンにボールを入れられては、中盤に何人置いても無駄になるので、一番嫌なパスである」

「それをいとも簡単に通すのがマルケスで、それがために、相手チームは多大な苦労をして彼がボールを持たないようにする必要がある」

「彼の得意なパスの概念図は下のようになる」



「赤い正面へのパスを見せて、足を返し、白いパスを通す」

「直接急所をえぐるパスを出せる」

「だから、マルケスの前に入る時は、正面に入りすぎず、2度ほど軸足側にずれて立つ方がいい」

「しかし、一つ不思議なことがある」

「なんや」

「マルケスは、上のパスが得意なはずなのに、この試合ではほとんど出なかった」

「ふむ」

「チェルシーの守備が外れる場面はあったのに、そのわりには縦に入れるパスが少なかったのではないか、というのを次に見てみたい」

「長くて大変ですが、こちらからどうぞ」

「さて」

「世の中がクラシコで盛り上がる中、一つ前のバルサ対チェルシー」

「遅ればせながらというやつやな」

「結果は無得点の引き分け」

「チェルシーとしてはしてやったり」

「バルサとしては憤懣やる方ない」

「そんな結果だった」

「先発はこう」



「バルサはいつもの人々」

「チェルシーの方は、配置がガタガタしているが、こう描くのが一番正しい」

「守備における狙いと関係しているわけやな」

「その狙いを、一枚絵で表すと次のようになる」



「まず、基本は、ピケを空ける型の守備で、ランパードとドログバでマルケス、トゥレ・ヤヤを押さえる」

「そう組むと、下のパスが厄介である、ということを以前、セビージャ戦で見た」



「そこで、エシエンをピケとアンリの入れることで、それを消す」

「逆サイドでは、ボジングワがメシにほぼマンツーでつく」

「今までに見られたバルサ対策の総決算のような形で、これで抑えられなければ、バルサは本物であると言える」

「チェクからドログバへのキックも執拗に見られたしな」

「特に試合開始直後は、意図的に多く使っていた」

「あれは、弱点を突く以上に、ホームで勢いに乗って前に出てくるバルサをいなす意味もある」

「ついでに、敵地でミスの出やすい開始5分程度、なるべく自陣からボールを遠ざける効果もある」

「大事な試合における入りの常套手段ではある」

「それはそれとして、チェルシーが下の形で守っている、というのは、開始しばらくで、ほとんどの人がそのような気がしたのではないかと思われる」



「しかし、そうであると断言できそうで、できない部分があった」

「妙に例外項というか、矛盾する出来事が多かった」

「その辺りは、後ほど見ることにして、まずは上のようであったという証拠の方から見てみようかと」

「よかろう」

「下の絵では、赤っぽいバルサが右に攻めている」

「ピケがボールを持つ」



「黄色い円で囲まれているのが、ドログバとランパード」

「手前がドログバ、奥がランパード」

「ピケがドリブルで持ち上がる」




「しかし、ランパードはそれに詰める気配を見せず、中央に残る」

「おまけに、アンリへのパスコースにはきちんとエシエンが入っている」

「ちょうど、上で見た形になっている」

「しかし、これだけでは、偶然の可能性が高い」

「そこで、次に、ドログバとランパードは、本当にピケを無視していたという事例を見てみようかと」

「アビダルから、ピケにバックパス」



「ここでは、ドログバとランパードの体勢に注目したい」

「例によって、手前がドログバ、奥がランパードやな」



「ボールがピケに行く途中、ドログバはピケの方を向いているが、ランパードは完全に横、つまり、トゥレの方向を向いている」

「ピケがボールコントロール」



「なんと、ドログバは逆方向を向き、ランパードにいたっては、完全に後ろを向いている」

「なんというか、無茶苦茶な状況やな」

「ボールから目を離すな、とはよく言われる言葉だが、ドログバもランパードもまったく無視している」

「ピケが前にドリブル」



「やっぱり、2人とも別方向を向いている」

「ピケが8mほど進む」



「ドログバは、やっとボールに向き直るが、ランパードは後ろを向いている」

「さらに5mほど進む」



「ランパードはやっとピケを向く」

「センターサークルに入ったところで、ドログバがマルケスへのパスを切りながら寄せる」



「上は、偶然では絶対に起こらない流れで、チェルシーがピケを空けて守備を組み立てた証拠になる」

「ドログバはマルケスを見ることが最優先事項で、ランパードはトゥレを見ることが最優先である、としないと説明がつかない」

「なるほど、チェルシーはそのように守備をしていたのか」

「めでたしめでたし」

「とは行かない」

「上でも出たように、それと矛盾する状況が多く見られた」

「マルケスが前の空いた状況でボールを持つ場面が、非常に多く見られた」

「まずは、下の流れ」

「アビダルから、ピケにバックパスが出る」



「そこにドログバが詰める」



「もともと詰め切れる距離じゃないので、簡単にマルケスにパスが出る」



「届いた後の状況はというと」



「マルケスの前に無限の荒野が広がっている」



「これはおかしい」

「これが嫌で、最初のように守るのに、これでは話が合わない」



「例えば、下の場面でも、マルケスの前に大きくスペースが空いている」



「白丸がマルケス」

「前にパス」



「メシが受けてプロテクション」



「ランパードを置き去りにする」



「見事に最悪やな」

「以前に見た、バルサに対するやられパターン、その1やからな」



「ちなみに、ここでのマルケスは密かに技を使っている」




「上の2つの写真で、黄色い丸で囲まれたのがボジングワ」

「メシをほぼマンツーで守る関係で、中に絞っている」

「ところが、一枚目の写真ではメシの近くに居るのに、次の写真では後ろ向きに走っている」

「これは、2つの写真の間にマルケスがフェイントを入れたせいやな」

「左足で外に蹴るフェイクから、右足で中に蹴っている」

「組み立て皇帝と呼ばれるだけに、技のレパートーリーも広い」

「実は、マルケスが前を向いてパス可能な状況で受けるシーンは、前半だけで16回もある」

「詳しくは、後ほどの表をご覧頂くとして」

「16回はいかにも多い」

「確かに」

「その原因が問題になる」

「ふむ」

「その一つの概念図は次のようになる」



「ドログバが攻撃用のポジションを取った後で、バルサがボールを回収し、ドログバが戻れない状態でマルケスにパスが出ると前が空く」

「ランパードはトゥレへのパスを切りながら下がるので、マルケスはハーフライン付近まで到達することができる」

「上でマルケスがメシに出した状況が正にそれで、チェフのゴールキックから始まる」



「それを、前線でマルダが追ってバルデスと激突」



「マルケスにボールが出た段階で、マルダは置いていかれ、彼の穴をドログバが埋めている」



「これは、もちろん、マルダとドログバを入れ替えても成り立つ」

「これが、マルケスがフリーになるパターン1」

「その2が下の形」



「マルケスサイドバック説やな」

「白丸で囲まれたのがマルケスで、通常、4バックの右センターバックがここまで開いて攻めてくることはない」

「3バックならわかるけどな」

「ここまでサイドに出られると、フォワードでは追い切れない」

「よって、ドログバは追わず、ランパードが回り込んで対応するか、ミケルが出て、それによって生じる穴にランパードが入ることで解決する」



「マルケスがパスミスでもしてくれたら、ドログバからのカウンターが決まる確率は高い」

「そのミスをしないから、ここまで自信を持って開くんやけどな」

「普通恐くてやらない」

「これが、マルケスの前が空くパターンその2」

「その1とその2は理由がわかりやすい」

「マルケスとトゥレを見る2人のうちの1人が攻撃に出て戻ってくれなければ、どちらかが空くし、マルケスとトゥレの間を異常に離されたら追い切れない」

「この2つで閉じてくれれば、話は簡単やねんけどな」

「最初の、ドログバが追う例なんかは説明がつかない」




「下みたいな形もあるしな」

「今、ドログバがピケとハイボールを競り合う」



「それがバルデスまで抜ける」



「バルデスからマルケスへ、マルケスからアウベスへパス」



「この時、画面右上の選手がドログバで、既にバランスを回復している」

「アウベスからマルケスにパス」



「マルケスから引くシャビにパス」



「ミケルが追ってくる」

「シャビからマルケス」



「マルケスからシャビ」



「画面一番上のドログバは動く気配すらない」




「上の流れもおかしな話で、ピケを空けることを徹底するなら、下のようにならなければならない」



「ドログバはアウベスからマルケスに戻るパスを予想してボール側に詰めるべきであると」

「そうなれば、空いたピケに横パスが出る可能性は高い」

「ところが、現実には、そうならず、ドログバは、青い矢印のように、ピケをマークするポジションを取っている」

「これはいかなることであるか、というのが問題になる」

「そりゃそうやな」

「それを解く一つのヒントが下の写真にある」



「ここで、画面右中ほどの選手の腕の位置が重要で、前方、フリーになったシャビを指している」



「これは、そこにきっちり詰めんかい、というメッセージである」

「その送り先は、画面上部でぶらぶらしているドログバに対してであろうと思われる」

「そうであれば、ドログバの動きがおかしいことになる」

「そんな点を、次に見てみるわけやな」

「続きは、こちらからどうぞ」



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