週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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「さて」

「相変わらず順調なスペイン代表であるが」

「エストニア戦では、非常に興味深い交代が見られたので、その辺りを見て行こうかと」

「うむ」

「まず、先発はこう」



「スペインは、中盤にシャビが2人並んでいるのが特徴的である」

「相手が引いてくるのは確実なので、そこに組み手の上手い2人を並べるとうことやな」

「それで守備的にも心配ないと」

「そういう判断やな」

「エストニアの試合運びは、予想通りに守備を重視していた」



「プジョルにボールを持たせ、中盤での寄せを早くすることでスペインの選手に技をかける時間を与えず、非常に良い守備をしていた」

「かつ、攻撃では、ほとんどカウンターに出ていかなかった」

「特にサイドの選手の切り換えが非常に遅い」

「ボールを奪ってもまったく前に出て行かない」

「実に消極的だった」

「前半はとにかくしのいで、後半勝負、とうことやな」

「しかし、35分にシャビのフリーキックからフアニートと頭で決めてスペイン先制」

「37分には、カウンターからビジャが右サイドを抜けてクロス」

「中でトーレスが倒されてPK」

「ビジャが決めて、0-2」

「もろくも狙いは崩れさる」

「スペインに回されて崩されたというのではないだけに悔しい」

「最初の得点につながったフリーキックなんか、まったくいらんファールからやったしな」

「攻めなければいけないエストニアであるが、攻撃において下のような特徴があった」



「まず、トップのボスコボイニコフはワントップで苦しい」

「体が大きく、ターゲットに使う選手だが、ロングボールをキープできない」

「コントロール技術もさることながら、読み合いの面でも、フアニートに当たるフェイントから体を引かれてバランスを崩すなど、負ける場面が目立った」

「次に、左サイドバックのクルグロフから良いパスが出ない」

「組み立てで長いパスを出すと通らず、逆サイドに展開するパスもことごとく合わない」

「前半のエストニアは、彼が空く場面が多かっただけにもったいなかった」

「この2点がしっかりしていれば、もう少し押し返しが効いた」

「キーパーと1対1になる決定的なチャンスを一度作ったが、攻め手は非常に少なかった」

「逆に、右サイドバックのヤーゲルは、組み立てが非常に上手い」

「自分の動きに、周囲がどう反応し、どのようなスペースができるのかをきちんと把握している」

「どんな国にも、こういった、いわゆるサッカーのわかる選手が何人かいるのは面白い」

「ただ、守備面では、イニエスタにしろ後半出てくるリエーラにしろ、まったく止めることはできなかったし、スルーパスに対する読みも外れていた」

「まあ、組み立てができて、イニエスタとリエーラをきちんと止められたら、トップクラスのチームでプレーできるけどな」

「そして、中盤の中央に位置する、14番ヴァシリェフと13番ヴンケ」



「きちんと相手を向いてプレーすることができる点で非常にいい」

「前半は、守備に重きを置いていたが、端々にボールをもってよいプレーを見せた」

「その前半は、0-2とスペインリードで終了」

「追いつきたいエストニアは後半どうしたかというと」

「ガードを解いてきた」



「上はボールを持った時の概念図で、ヴンケとヴァシリェフのどちらかがフォワードに近い位置まで上がるようになった」

「スペインには、ある程度スペースを空けた長い展開が有効で、その訳は、ユーロのスウェーデン戦とかわらない」

「これで、徐々にエストニアは良くなっていく」

「そんな中、53分にセルヒオ・ラモスがイラオラに交代」



「これは不思議に思う」

「この状況なら、理屈的には、フォワードとサイドとボランチを代えそうなもんやしな」



「この種明かしは単純で、セルヒオ・ラモスは1週間以上前から怪我を引きずってプレーしていたためなんやな」

「この後、さらにエストニアペースになり、3回連続で決定的チャンスを迎えるなど、雲行きが怪しくなる」

「ところが、69分、シャビのフリーキックからプジョルが押し込んでスペインが追加点」

「ありゃ」

「1点目に続き、またシャビのフリーキックが炸裂した」

「この日の彼のキック精度というのは恐ろしく、フリーキックにしろコーナーキックにしろ、どんぴしゃで味方に合っていた」

「当たり日やったんやな」

「そして、得点直後、デル・ボスケが動く」

「70分、ビジャを下げて、セスク・ファブレガスを入れる」



「その前の59分に、エストニアのキンクがプリエに代わっている」

「これは、56分にキンクがイエローをもらっていたことが関係しており、疲労の他に退場を心配している」

「そういえば、最初、イニエスタを倒してスペインの先制点を呼び込んだのもキンクやったな」

「それはさて置き、ビジャからファブレガスという交代は興味深い」

「まず、その後に採用されたシステムは、1-4-4-1-1だった」

「1-4-1-4-1ではない」

「シャビは、セスクが入った段階で後者だと思っており、ポジションをセスクの隣に下げようとしていた」

「しかし、セスクが、”戻ってくるな、戻ってくるな、いいから前に居ろ”というゼスチャーを見せてそれを制止した」

「その意味は、主に3つある」



「まず、一つは、相手の中盤の三角形に対して、こちらも三角形で対抗する」

「じつは、1-4-4-2で1-4-1-4-1を相手にすると、中盤の中央で数的不利を招く場合がある」

「前者は、ボランチが2人なのに、後者は、それに対応する場所に3人居る」



「上の図では、シャビ、シャビ・アロンソ対ヴァシリェフ、ヴンク、ドミトリイェフで、2対3やな」

「フォワードがきちんと下がっているうちは問題ないが、なにかの拍子にずれることがある」

「典型的な例が、ユーロ2008の決勝やな」



「上の状況で、フリングスはシャビ、ヒツルスペルガーはセスクについて、その前のセナがフリーになっている」

「その状況を避けるには、フォワードの片方を下げて、ディフェンスラインの前に残る1人につけてしまうのが一番早い」

「実は、ビジャレアル対ベティスでも、それは行われている」





「ビジャレアルは、一番目の形でリードを奪った後、二番目の形に変更した」

「ギジェ、イバガサのどちらかが、必ずアウレリオについていた」

「1-4-4-2で1-4-1-4-1を受けるには、フォワードのどちらかを下げて、中盤の1につければいい」

「監督をされる方は、おぼえておかれると便利な定石かと」

「二番目の狙いとして、セスクをディフェンスラインの前で左右に大きく動かし、低い位置からの組み立てを担当させるというのがある」



「大きく動くとなると体力を消耗するので、新しく入った選手がやる方がよい」

「おまえけに、受けるスペースを変えながらボールを引き出すというのは、セスクの得意とするところでもである」

「相手が長い展開で押し込んできたとしても、セスクを経由することによりボールを落ち着けて前につなぐという意図がある」

「3番目はシャビで、広がった中盤のスペースでパスを受けて、スルーパスなりサイドへの展開へつなげようということやな」

「組み変えて早々、トーレスに2つスルーパスが出た」

「一つは、トーレスがコントロールミス、もう一つはディフェンスにカットされた」

「まあ、まとめると、中盤にヘルプを増やすことで守備的に安定させ、組み立てで低い場所でセスク、高い場所でシャビを使おうということになる」

「それで非常に上手くいった」

「試合が急に落ち着いたしな」

「しかし、一つ疑問が残る」

「なんや」

「相手が縦に長い展開を仕掛けている時に、ハイボールい強いわけでもなく、長い距離を走ることに向いているわけでもないセスクを入れるのは、守備的には矛盾であり、そのデメリットが出るという理屈も成り立つ」

「例えば、オーストラリア対日本で、小野を入れたときのような話かね」

「そうやな」

「スペインの場合、一人中盤に近づけて、きちんと守備に人数を増やしているというのは大きい」

「シャビか」

「それに、エストニアは、ハイボールからヘディングで勝負していたわけではなく、スペースに送ることで攻めていた。それなら、同じような特徴を持った選手で、より新鮮な選手を入れるというのは守備面で矛盾しない」

「さよか」

「違うか?」

「まあ、70分以降に試合が落ち着いたのは確かやけど、それがセスクのおかげとばかりは言えへんやろ」

「69分のゴールで、エストニアががっくり来たのは確かやしな」

「図にすると、下のようになる」


引用元:http://www.as.com/futbol/partido/Estonia-Espana-0279_10_04_1393_0163

「一応、グラフが上に行けば行くほど、チャンスが多いということになる」

「見ると、後半開始からスペインの攻撃が止まり、徐々にエストニアペースになったことがわかる」

「ところが69分にスペインがゴール」

「70分にセスクが登場して、再びスペインが優位に立つ」

「それにしても、前半、エストニアは良く守ったとはいえ、やっぱりやられてるな」

「そりゃ、戦力差が段違いなんだからしょうがないで」

「そこで思うんやけどな」

「なんや」

「スペインは、エストニアが引くと予想してシャビとシャビ・アロンソを中盤に並べたわけやろ」

「そうやな」

「それに対して前に出れば、後半開始からのように、わりと優位に戦える」

「それがどうした」

「それなら、キックオフと同時に最初から前に出たらどうかと思うわけや」

「奇襲か」

「15分くらいバンバン選手を前に上げて、相手が空けた中盤を攻めていくわけや」

「それで、ビジャへのロングパスを返されて、一発で沈むわけか」

「まあ、その危険はあるけれども、相手のペースにはまらず、こっちから主導権を握りに行くという意味ではええやろ」

「博打やけどな」

「やる価値のある博打やと思うけどな」

「まあ」

「そんなこんなで」

「また次回」

「ご機嫌よう」



おまけ:

先発:スペインのみ


最終配置




上のように、バックパスが出る。
これを受けた選手は、オレンジの輪で囲まれた選手へパスを出す。

1 この場合、前から詰める相手に対して、一度正対してからパスを出した方がよいか、そうではないのか

2 パスを出す時、どのような技術を用いるべきか
















解答

この場合、センターサークル付近の選手は完全にフリーである。
正対して時間を消費せず、なるべく早いタイミングでパスを渡す方が良い。

このパスを出す時、ディフェンスラインから前に出る選手を止めたい。
それには、赤い矢印のパスを見せるのが効果的である。
裏を狙われることで、ディフェンスは前に出ることを躊躇する。








上の状態で、前にドリブルをしている。
このままドリブルを続け、左のオレンジで囲まれた選手にボールを渡したい。
なるべく良い状態で渡すには、どのようにコースを取ればよいか。











解答





後ろから追ってくる選手のコースを横切るように中へ切れ込む。
これにより、サイドのディフェンスを中に動かすことができる。
その結果、ライン際の選手がパスを受けた時、最も近いディフェンダーとの間に十分な距離を確保できる。

横切るように中に入って、サイドへパスという手筋は良く用いられる。
ここでは、試合分析で使用した、「イバガサは組み立てが上手く、中央に置くと攻撃が良くなる」、「ピレスはボールキープでスペースを作り、それを利用するのが上手い」といった言葉の具体例を見る。
また、他の選手や状況との比較も行う。

0809シーズンの第6節、ビジャレアル対ベティス戦において、ペレグリーニは、ギジェを前線に、ピレスを左に入れ、イバガサを中央に移動させる交代を行った。

先発

58分


その理由と効果は、ビジャレアルの2点目に見られる。
以下にその詳細を見る。

自陣でボールを持ったイバガサは、正面の相手に対してドリブルを行う。



次に左を向き、そちらにパスを出すそぶりを見せる。
この結果、前方の守備者はその方向に移動する。



イバガサは、逆に右へと切り返す。



下の図で、守備者が上方、イバガサから見て左側にずれていることがわかる。



守備者をずらして作り出したスペースにパスを通す。



相手を逆に動かしたため、より縦方向へパスを出すことができる。
また、サイドに出すフェイントをかけているため、その方向へ相手選手がつられている。






イバガサの一つのパスで、次の上から下の状況に変化した。




組み立てで、ボールを前に運ぶという意味において、非常に優れている。
このプレーを行うためには、相手と正対する技術、右にパスを通すために左に相手を釣るアイディア、切り返しからパスまでの動作の素早さ、サイドへのフェイクから縦に出す技術、正確なパスの角度と強さ、というものが重要になる。

特に、最後のパスの角度と強さを正確にする技術、パスタッチの良し悪しと呼ばれるものは、選手により差が大きい。
パスの下手な選手は、広角に強く出してしまい、受け手に合わない場合が多い。






広角に出すのは、前の選手によるパスカットを恐れるためであり、強く出すのは感覚の欠如であることが多い。
この試合、ビジャレアルは、セナをイバガサに置き換えた。

先発

58分


イバガサは、特に、最後のパスタッチの部分でセナよりも優れている。
このため、上のような組み立てにおいて、良くなる場面が増える。

イバガサのパスを受けたジョレンテは、中央のピレスにパスを送る。



ピレスは前方へドリブル。



赤いパスフェイクの後、後ろに切り返す。



下の図を見ると、正面にいた2人のディフェンダーの距離が縮んでいるのがわかる。
その2人は横に動いたため、後ろに動くピレスを追うことができない。
もしパスフェイクを入れなければ、一人の守備者が前に出て、後ろからプレッシャーを受けることになる。
距離をとった後、右サイドに切り返す。



次に、赤いパスフェイクを入れてサイドにパスを出す。
パスフェイクは、一番外側の守備者を中央に引き付け、サイドへ出るのを遅らせるためである。
ここで、画面下からサイドバックのアンヘルがフォローに来る。
ピレスは、中央でボールをキープすることでその時間を作り出した。



以上の流れにおいて、ピレスは、キープとパスフェイクでスペースを生み出し、それを自分、もしくは、パスによって利用している。
「ピレスはボールキープでスペースを作り、それを利用するのが上手い」という言葉の具体例である。

ボールを受けたアンヘルは、相手と正対することで、縦方向へ突破するためのスペースと、中央方向へのパスコースを確保する。




ここでは、ワンツーで縦に抜け出すことで、前のスペースを利用した。



相手と正面から向かいあうことで、突破用のスペースを確保することは、非常に大切である。

これができない例は下のようになる。






濃い芝と、薄い芝の境目を縦に移動しており、まったく相手と正対していないことがわかる。
また、2枚目と3枚目を見比べると、わずかながら外に逃げている。
このようなプレーは、守備にとってまったく恐くない。
ここでは、下のように、一度ディフェンス方向へドリブルをして、後ろに下げ、その後に縦に行く方が良い。



このような形で相手に向かうプレーというのは、残念ながら、多くの日本選手に不足している。(参考

上の選手はネルソンである。彼は、ベンフィカ時代、ビジャレアルと対戦した。その時は、上のような、逃げるがごとき行動は見られなかった。むしろ、一番近いディフェンダーへ差し組むように仕掛け、左右どちらにでも抜くことができた。
そのような、向かっていく気持ちを失っていることは、非常に残念である。

ワンツーで縦に抜けたアンヘルがクロスを送る。




空中での競り合いの後、エリア内にこぼれる。



それをイバガサが回収し、ドリブルで前へ運ぶ。
イバガサが、この地点に到達しているのは、ピレスのボールキープにより時間が生まれたことが大きい。



このプレーも、セナをイバガサに代えた効果が出ている。
セナはイバガサほど狭いスペースのドリブルが上手くなく、おそらくトラップからのシュートを選択したと考えられる。

また、この試合のセナとイバガサではポジショニング自体ことなる。
前半、セナとエグレンの2人は、ほぼ常にボールの後ろに位置していた。



しかし、後半、イバガサはボールよりも前に位置し、上のようにペナルティーエリア前後でもプレーしていた。



ドリブルで抜けたイバガサが、ファーへクロスを上げる。



ピレスがボレーをミス、それをジョレンテが決める。



この場面で、ギジェ・フランコは、キーパーのバランスを崩す役割を果たしている。








最後の図において、ボレーの瞬間、キーパーは片足立ちになっている。
これは、最悪の体勢に近く、次のプレーに対応できない。
ギジェは、熱い魂、競り合いを恐れない、泥臭いといった形で語られるが、ここでもそれらが見られる。

以上のように、この得点において、イバガサの組み立て能力とペナルティーエリア近くでプレーする能力、ピレスのボールキープから時間とスペースを作り出す能力が、決定的な役割を果たしている。
前半の配置では、このような場面は生まれない。

サッカーでは、個々の選手の良い面が組み合わさった時に点が生まれることが多く、逆にそうでなければ生まれることは少ない。

選手を、その長所がいきる場所で使い、また組み合わせとしてより力を発揮する配置、動きにすることは重要である。

ペレグリーノは、それぞれの持つベクトルを組み合わせて、チームを一つの方向へ導く術に長けている。
スペインリーグ第6節 ビジャレアル 2-1 ベティス

「さて」

「少々遅ればせながら、第6節のビジャレアル対ベティスをお届けしようかと」

「少々じゃないやろ」

「この試合では、ビジャレアルの選手交代が非常に効果を発揮した」

「負けてるビジャレアルは、後半、監督のペレグリーノが面白い、というやつやな」

「その辺りを見て行こうかと」

「よかろう」

「先発はこう」



「前半を通して、全体的にビジャレアルの方が優位だった」

「しかし、終わってみると0-1」

「あら」

「まあ」

「こうなると、後半の動向が気になる」

「後半開始からは、メンバーの変更なくシステムの変更もなし」

「ラインの裏を狙うボールが増えたくらいかね」

「時間は経過するが得点は動かず」

「果たしてペレグリーノはどうするのか」

「ビジャレアルのベンチは下の通り」



「58分に2枚同時に交代されるのですが」

「選手の特徴を知っておられる方は、どうなるのかを予想して以下を読まれると面白いかと」

「そして、交代後の試合展開によって、さらなる変化をどう行うかについても考えられるとさらに面白いのではないかと」

「いうところで」

「すこし間隔を空けて交代後へ」










「ペレグリーノの選択はこう」

58分


「セナとロッシが外れて、ピレスとギジェ・フランコが入る」

「左にピレスが入り、中央にイバガサ」

「まず、イバガサが中で、ピレスが左というのはわかりやすい」

「長いボールを正確に蹴り、ラインの裏に落とすボールも正確なイバガサは中央で力を発揮する」

「おまけに、相手と正対してからの組み立ても上手い」

「ピレスは、ボールキープに優れ、周囲にスペースを作り出して後に味方を利用するのが上手い」

「特に、左から中央に入ったときによい」

「攻めるにおいて、上の組み合わせは非常によろしい」

「セナを外したのは休ませるためかね」

「この場合、問題の解答としては、セナかエグレンを外して、イバガサが中、ピレスが左というもので正解になる」

「皆様の答えはいかがだったでしょうか」

「で、前線の交代はどうかということになる」

「ロッシは、スピード、技術に優れ、中に入るピレスとクロスするように左に出て良い」

「となると、ロッシを残してもええはずやな」

「まあ、この試合、ロッシの調子は悪かった」

「それが理由だとすると、この問題自体卑怯な設問やな」

「そうやな」

「認めてどうする」

「一応、理屈っぽく説明するなら、消去法でやるしかない」

「ふむ」



「まず、怪我でもなければ、ビエラ、シガン、ブルーノの投入はない」

「ブルーノは守り向きだし、センターバックとキーパーはよほどのことがないと代えない」

「カニとカソルラでは、今現在、カソルラが明らかに優っている」

「これも、極端な疲労か怪我か休養目的でないと代えない」

「となると、マティアス・フェルナンデスとギジェ・フランコが残る」

「マティは、左から中央に入ってのスルーパスが一番良く、本人も左に行きたがるからピレスと被りやすい」

「となると、ギジェとジョレンテで組んで、イバガサがサイドに展開した後のクロスを叩き易くする方がいい、ということになる」

「しかしや」

「なんや」

「消去法でギジェが残るとしても、ジョレンテと代えるか、ロッシと代えるか、理屈だけでは決めきれないのと違うかね」

「そうやな」

「素直に認められても困る」

「問題の解答としては、ロッシ、ジョレンテを外してギジェを入れる、で正解になる」

「皆様の答えはいかがだったでしょうか」

「上の交代に続き、60分にベティスも動く」

「左のマルク・ゴンサレスを下げて、モンソンを投入」



「うむ」

「これは」

「ようわからん」

「フェルナンド・ベガは、攻めにおいて使えない」

「相手の右サイドバックであるアンヘルがフリーになっていたので、そこを押さえに行こうという意味だとは思う」

「ただし、攻撃には非常に支障が出る」

「一長一短で、マルク・ゴンサレスの調子が上がらないということが決定打なのではないかと」

「まったく縦に抜けられない」

「あれでは彼の良さが出ない」

「互いに手を打ち合った後」

「68分にセットプレーからゴンサロが決めて同点」

「余韻覚めやらぬ70分にジョレンテが決めて逆転」

「58分の2枚代えからわずか12分」

「ビジャレアルが逆転する」

「いや、おみごと」

「それでや」

「ここからが問題なわけやな」

「その時点での配置はこう」



「ビジャレアルは、完全に攻めの形で、守備には向かない」

「そこで、次の図から、ピレス、ギジェを除く選手でどうするか」



「当然こうなる」

76分


「ジョレンテが外れて、ブルーノが入る」

「ブルーノがボランチ、イバガサが前線へ」

「ブルーノを入れることで、守備を強化し、イバガサ、もしくはギジェが下がり、アウレリオをマークする」

「ちなみに、このブルーノという選手は、体を合わせた守備が得意で、グラウンダーで正確につなぐこともできる」

「長いパスは少し苦手やけどな」

「中盤を締めて、逃げ切りに入ったわけやな」

「実は、最初の二枚代えとこの交代はセットになっていないといけない」

「二枚代えて」



「ブルーノが入る」



「ふむ」

「攻める体勢を整えました。首尾よく逆転しました、次に守る手がありません、じゃ話にならんわけだ」

「そりゃそうやな」

「だから、最初に代える時に、そのまとめかたまで考えておく必要がある」

「しかしなあ」

「しかしなんだ」

「これ、できひんチームもあるねんな」

「例えば、レアル・マドリーとかか」

「中盤を締める手段がないねんな」

「行ったら行きっぱなしでいつもばたばたやしな」

「それに比べて、ビジャレアルはいい選手を揃えていると感心する」

「ピレスにイバガサ、マティにブルーノにエジミウソン」

「組み合わせ次第で、色々な戦い方ができる」

「ビジャレアルは、チーム設計も選手の獲得も実に上手い」

「エグレンなんか、よくこんないい選手がいたもんだと感心しきりやで」

「中村俊介を体の圧力で封じることもできるし、中距離のボールもきちんと蹴れる」

「一家に一台的な選手と言える」

「そういえば、ベティスとしては、70分に同点にされてから、76分にブルーノを投入されるまで6分の間があった」

「それがどうした」

「攻めの弱いベティスとしては、ブルーノが入って試合が落ち着くと非常に点を取りにくくなる」

「まあそうやな」

「そうなると、イバガサとピレスが中盤にいる間に叩いておきたいのだが、交代を行ったのは、ブルーノが入った1分後だった」

「もっと早うせい、ということか」

「それを見越して準備しておき、点を取られた直後に代えてもいい」

「理想論としてはそうかもしれん」

「この試合、ビジャレアルの動きを振り返ると、最初がこう」



「次にこう」



「最後にこう」



「これらの狙いは、イバガサが中に入って、攻撃の組み立てがうんぬんかんとか、ピレスが左でなんちゃらかんちゃらとか、ブルーノが守備でほんちゃらもんちゃらとか、そういう説明がなされる」

「上でしゃべった通りやな」

「サッカー雑誌などの記事でも、よくそのような表現に出会う」

「そうやな」

「しかし、そこで当然の疑問がわかんかね」

「なんの疑問や」

「イバガサが入って、組み立てが良くなったというなら、何がどう変わったのか、例えば、前半はこうでしたが、後半はこうでした、という具体例が気になる」

「具体例か」

「こういう場面でこうでしたが、イバガサだとこのように違います、というようなことが言えれば一番わかりやすいし、参考にもなる」

「そりゃそうやな」

「で、実際にやってみたわけだが、これがなかなか難しい」

「そりゃそうやろ」

「それで、とりあえず、この文章を出して追々そのような点について解説しようという話になったわけだ」

「ちゃんとやるのか」

「やるで」

「はたして、どのようなものになるのか」

「お楽しみというところで」

「また次回」

「ご機嫌よう」

交代による変化の具体例


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