週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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サッカーにおいて、周囲の状況を知ることは重要である。

パス、ドリブル、シュート、その他様々な行動は状況に合わせて選択される。

選択には情報が不可欠であり、その情報のほとんどは視覚によってもたらされる。

以下、矢印のついた選手に注目する。







流れの中で、完全にボール以外の部分を見ている。



情報を得るために周辺を見渡す、これは通常ルックアップと呼ばれている。

ここではそれについて見る。

ボールが人から人へ動いている途中、すなわちパスの途中でボール以外を見るべきであることはよく知られている。

実際の試合でもそれはよく行われる。







ボール以外を見た状態



同様の例を見る。







ボール以外を見た状態



次も同様である。







ボール以外を見た状態



ボールが動いている途中で周囲を確認することがわかる。

次に、他の選手がパスをコントロールする場合の動きを見る。
これまでに、イニエスタの特徴として、正対からプレーすること、浮きを含めてニュートラルを経由すること、トリックをほとんど使わないことを見た。

ここでは、これらの特徴が意味することを見る。

次のプレーは、以前に見たものである。
















































正対から浮いた後、アウトで相手を抜いている。





ボールに触った後、右足をついた状態は以下のようである。



次のプレーも、以前に見たものである。














































最初に見たものは、以下のようであった。







二番目のものは以下のようである。







ともに右足のアウトで切り返しているが、後者の方が角度の変化が大きい。

右足をついた時点での姿勢を比較すると以下のようである。




後者の方が傾きが大きい。

傾きが大きいことは姿勢の乱れが大きいことを意味する。

以下は、イニエスタの正対としてはトリックの要素が強いものである。





















































右足をついた時点での姿勢を、トリックを用いないものと比べる。




後者のトリックを用いた方が傾きが大きく、相対的に乱れが大きい。

プレー中の角度の変化は、大きければ大きいほど姿勢を乱しやすい。

トリックは、複雑なものを用いれば用いるほど姿勢を乱しやすい。

これらは、一般的に正しいと考えられる。

プレー後の乱れが大きいければ大きいほど、次のアクションでボールを失いやすい。






































































スペースに動き、大きな角度で切り返す。





いわゆるスラロームと呼ぶ行動である。

プレー後の姿勢は大きく乱れている。

ここからパスを出す。





カットされる。





直接の失敗の原因は、パスを出す前の姿勢にある。



姿勢の乱れが大きいければ大きいほど次の動作が難しくなり、動きが限定される。

動きが限定されることにより、相手に読まれやすくなる。



結果としてボールを失う。

このようなプレーを繰り返す場合、その選手を下手と言う。

その下手さは、プレー前の乱れに起因している。

乱れは大きな角度の変化に起因し、大きな角度の変化はスラロームに起因する。

この状態を修正するためには、正対を行えばよい。

正対からのパスやドリブルは、より小さい角度の変化ですむ。

このため、次の行動前の乱れを小さくすることができ、プレーを継続しやすくなる。

次の図は、上から順に乱れが少ない。





つまり、上から順に次のプレーを行うことが容易である。

これまでに見たイニエスタの特徴は、すべて動作後の乱れを最小に保つことにつながっている。

最初に、正対からプレーを行うことを見た。

これは、次のプレーへの移行角度をなるべく小さくすることによって、角度変化による乱れを最小に保つためであると言うことができる。

次に、ニュートラルを経由してプレーすることを見た。

これは、より歪みの少ない状態から始めることにより、行動終了時の乱れを最小にするためと言うことができる。

最後に、トリックをほとんど用いないことを見た。

これは、無駄なアクションを省くことにより、自ら動くことによる乱れを最小にするためと言うことができる。

同じ結果を得られるなら、プレー後の乱れは少なければ少ないほど良い。

そのためには、角度の変化を小さくし、プレー前の歪みを小さくし、無駄な動作を少なくする方がよい。

そのために、正対し、ニュートラルを経由し、トリックを省くことが行われている。

イニエスタの技術は、乱れを最小に抑えることを大きな柱として構築されていると言える。

次回もこの点について見る。
前回まで、イニエスタのプレーが集団の中で持つ意味を見た。

ここでは、個人技として持つ意味を見る。

根拠となる画像を並べると長くなるため、先に結論を述べる。

これまで、イニエスタの正対からのプレーを多く見た。

それら全てを通して、大きな動きを伴うトリックがほとんど見られない。

これはプレー上の顕著な特徴だと言える。

比較的トリックの要素が強いものは、次の2つに見られる。

以下は、ボールを踏んだ後、インサイドで左に蹴るフェイントからアウトで右へ蹴っている。















以下では、インからアウトのダブルタッチ系の技を用いている。





















イニエスタは、このようにはっきりとわかるトリック系のプレーより、より単純にアウト、インでパス、ドリブルをすることが多い。

以前、正対は状況がシンプルであるがゆえにそこから用いる技もシンプルなものが多くなることを見た。

イニエスタのプレーは、その実例と言える。

これまでに、イニエスタは、正対からプレーすることを見た。

また、浮きを含めてニュートラルを経由することを見た。

これに加え、トリックをあまり用いない。

次に、これらの特徴が意味することを見る。


*以下は、これまでに見たものを、正対からの動作に絞って列挙したものである。

正対からトリックをほとんど用いずにプレーすることがわかる。




















































































































































































































































































































































































































































続き:イニエスタに見る技術構築の柱
前回は、2012ユーロでスペインのパスサッカーをなにが支えていたかを見た。

また、イニエスタのプレーが示すパスサッカーの意味を見た。

以下は、以前に見たプレーである。






































































これに対し、以下のプレーがある。
































































ボールの動きを見てわかるように、相手にひっかけられている。





次も同様である。













































正対からパスを出し、ひっかけられている。





次もまた同様である。






























































































正対から切り返し、パスをひっかけられている。






まとめると以下のようである。





このゾーンでボールを失えば、カウンターが怖い。

このため、上のようなプレーをした選手には、「ゾーンによってリスクを考えてプレーしろ」「簡単にプレーしろ」といった指示が飛ぶことが多い。

しかしイニエスタは、このゾーンでも正対からプレーする。






























































上の2つは、これまでに見たものである。

センターライン付近で正対をおこなっている。




そして、次の選手は余裕のある状況で受けている。




これらのプレーは、以下の2点を示している。

まず、リスクがあるかないか、危険かどうかは、その選手の持つ技術レベルによることを示していることである。

イニエスタは、このゾーンで正対することを危険とは思っていない。

むしろ、そうすることが当然であるように正対を行なっている。

正対からプレーすることに慣れた選手は、そうすることが自然であり、そうプレーすることが最も簡単である。

それを周囲が見て危険だ、あんなプレーは危ないと思う。

それは、2つの理由があると考えられる。

1つ目は、自分の技術レベルが低いため正対が危険に見える。

2つ目は、正対からプレー打開する選手を見たことがないため、それが良くない行動に見える。

どちらにせよ、正対を理解していないことからくる勘違いに他ならない。

次に、チームとして正対を禁止していないことを示していることである。

「その位置でボールを失うと危ないからリスクを考えろ、正対をやめろ」という指示を出すことは容易である。

しかし、スペイン代表ではそのような指示は出されていないと考えられる。





このプレーが行われたのは決勝であり、イニエスタは平気で正対している。

ここで、「リスクを考えろ」「簡単にプレーしろ」と言われていた場合、おそらく次のプレーの選択肢はバックパスになるはずである。

それでは、このようなプレーは生まれないし、このようなプレーをする選手は生まれない。

リスクを考えることは確かに重要である。





イニエスタにも失敗はある。

しかし、リスクの反面で得られる利得を考えることも重要である




イニエスタが守備を引きつけているため、受け手に余裕ができる利がある。

周囲に集められた守備者は、次のプレーに対するポジションを取るのに時間がかかる。

これも攻撃にとって利である。

スペイン代表は、得られる利と危険をはかりにかけて、利を選んでいる。

世の中にそのような考えが存在し、またそれによりユーロを制したチームがあることを明快に記憶することは重要である。

「カウンターで失点するかもしれない」という考えの一方で、「ボールを失ったからといって必ず失点するわけではない」という考え方も存在する。

そこから、「ボールを失う可能性もあるが、味方が余裕を得ることで得点につながる可能性を高めることができる」という考え方に進めることもできる。

リスクがあるから、危険だから、あれをするなこれをするなという以外の道がある。

そして、危険だという判断自体が、本人の思い込みや知識の無さからでている可能性がある。

この点を把握することは、育成において極めて重要である。

例えば、「イニエスタは上手いからそれを禁止する必要がないだけだ、下手な子供に同じ事をさせるわけにはいかない」という考え方が順序を取り違えたものであることは明白である。

禁止されていないから正対を行うことができ、そこからのプレーを磨くことができる。

もし最初からそれを試すことができないなら、どこに上達の道があるのであろうか。

イニエスタも、最初から今ほど上手かったわけではないと考えられる。

過程で失敗を重ねながら、決勝で守備者3人を相手にして平然としていられる選手ができあがったと考えられる。



そして、今でも全てが成功するわけではない。





それでも正対をやめないことを見るべきである。

「ワンタッチ、ツータッチでどんどん回せ」

「ゾーンでリスクをコントロールしろ」

「簡単にプレーしろ」

これらの言葉は、よく耳にするものである。

耳障りもよく、まるで何か良いことを言っているように錯覚しやすい。

しかし、これらが必ずしも真実でないことを、イニエスタのプレーは示している。

真実でないのみならず、育成の過程において、これらの言葉が選手の未来を閉ざす可能性すらある。

この点は、特に指導者においてきちんと把握されるべきである。

次回は、イニエスタのプレーが個人の技として示すものを見る。
これまでに見たイニエスタの価値を図で表すと以下のようである。



正対から守備者を引き付ける。
これにより、周囲にスペースをつくリ出す。

正対から正面の守備者を押し込む。
これにより、周囲の守備者も押し下げる。

正対から左右両側へのプレーを見せる。
これにより、一つ後ろのラインの守備者の動きを制限する。

正対から左右両側へのプレーを見せる。
これにより、守備者の視線を自分に引き付ける。

正対から状況を悪くせずに待つ。
これは、味方が適切なポジションを取るための時間をつくり出す。

正対することで、敵の動きを制限し、味方の動く空間と時間をつくり出す。

それにより、次の行動が容易になり、次々とプレーがつながる。

















































ボールを止めて、正面の守備者に向かう。









守備者を押しこみ、画面右の選手をフリーにする。







パスを戻した段階で、画面右端に味方が一人増えている。

正対から前へのプレーを見せ、適切な時間待ったことにより、味方が増えている。



フリーになった選手から、サイドの選手へパスが出てフィニッシュへとつながる。









この場合、正対から押さずにプレーを続けることもできる。




この状態から、ワンタッチで中央に戻すことができる。

そうすれば、下と似た状況はできあがる。



しかし、そうしてできたものは、正対から押してできた状況と似て非なるものである。

まず、周囲の守備者を押し込んでいないため、次にボールを受ける選手はより早い段階でプレッシャーを受ける。

次に、ボールが早く動くため、右外からフォローする選手はよりスピードを上げて走らならければならない。

そのため、より余裕のない状況で前線へと到達する。

パスを出す側、パスを受ける側双方に少しづつ余裕がなくなるため、その次のプレーで失敗する確率が高まる。

結果、正対から押すプレーに比べて、より悪いプレーが行われる。

スペインは、パスサッカーであると言われる。

今回のユーロなどでは、形容詞をつけて素晴らしいパスサッカーなどと言われる。

しかし、パスサッカーとは誤解を生みやすい表現である。

まず、非常に多い誤解は「パスサッカーなのだからなるべく早くパスを回すほうが優れている」というものである。

それが進むと「ワンタッチ、ツータッチでどんどん回すサッカーが素晴らしい。それこそがパスサッカーだ」というものになる。

イニエスタが示すところは、まったくの逆である。

上の例では、正対から一度押してボールを離している。











これにより、周囲の守備者の動きを制限し、味方のためのスペースをつくり出すと同時に、右外の選手が攻撃エリアに到達する時間を作り出している。

これまでに見たプレーもそうであった。





これらの形をつくる前に、正対が決定的な役割を果たしていた。

パスサッカー、本当の意味でパスがつながるサッカー、パスをつないだ後で本当に相手を崩すサッカーとは、正対から相手を押し込む能力によって支えられている。



イニエスタのプレーは、明快にそれを示している。

このことは、極めて重要である。

「ワンタッチ、ツータッチでどんどん回すサッカーが素晴らしい。それこそがパスサッカーだ」という勘違いをした人は世に多い。

監督、選手、ファン、すべての段階でそうである。

もしこのような価値観でサッカーを行う場合、正対をする選手が邪魔になる。

イニエスタは、パスが出せる状況でも、相手を押し込むという一手間をかけてパスを出す。

パスをどんどん回す、フリーの味方をどんどん使う、そのためにフォローを極限まで早くする。

そのような環境では、正対から押す前にボールを離すことを強要される。

それを無視して正対からプレーした場合、周囲との齟齬が生じる。

このため、周りに合わせるか、チームの方針から離れてプレーする以外になくなる。

チームの方針から離れた場合、当然ながら居場所を失う。

これは、非常に大きな問題である。








正対から押すことは、チーム全体としてよりよいプレーにつながる。

これは、今までに見た通りである。

勘違いしたパスサッカーを押し付ける場合、正しくプレーしようとする選手をチーム全体として潰してしまう。

もしくは、正しくプレーする機会を集団として奪い取ってしまう。

これが選手の成長に重大な悪影響を与えることは明白である。

それを避けるためにも、イニエスタのプレーが指し示すところを理解することは重要である。

次も、同様の点について見る。


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