週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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「さて」

「どうした」

「今日は選手名の発音などについて語って行きたいと思う」

「あいかわらず唐突やな」

「それというのも、ハインツェのせいなんや」

「日本でも有名な選手やな」

「バジャドリーで城と一緒やったしな」

「彼がどないしたんや」

「彼はアルファベットで書くとHeinzeやろ」

「そうやな」

「明らかにドイツ名なわけだから、カタカナにすると、ハインツェなわけや」

「eiの発音はアイに近いからな」

「それは、シュヴァインシュタイガーのつづりが、Schweinsteigerであることを見てもわかる」

「なにも一番長い人をもってこんでもええがな」

「おまけに、スペインのアナウンサーもハインツェのような発音で呼んでいる」

「まあそう聞こえんこともないな」

「ところが、ある日、ガブリエル・ハインツェで検索すると”ガブリエル・エインセ”という文字が一番上に出たわけや」

「エインセか」

「一瞬何のことかと思うやろ」

「Heinzeを真面目にスペイン語で読むと、最初のHを発音しないで、最後で舌を噛むから、確かにエインセではあるな」

「それを見て、実はスペイン人もエインセと呼んでいて、自分が空耳的にハィンツェと聞いていたのではないかと不安になったわけや」

「言語は音も予想で聞くから思い込みがあると空耳は起こりやすいしな」

「外国語で、いちど字幕を見てしまうと、”寿司、鳥、風呂、寝ろ”としか聞こえなくなるのと一緒の原理やな」

「なんの話や」

「そこで、実際にアナウンサーの声を真面目に聞いてみた」

「マメやな」

「それがこれで、エル・カベサッソ・デ・*****、と言っていて、星の部分が選手の名前になっている」



「ふむ」

「どう聞こえる」

「ヘインツェかな」

「最初の音は、間違いなく”エ”じゃないやろ」

「スペイン語の”Je”で”ヘ”と表記する発音に近い気がする」

「最後の音は少し破裂するような音になるから、”ヘインツェ”というのが日本語では一番なじみやすい発音での表記ではないかと思うわけや」

「まあ、この辺の発音に関しては色々あるけどな」

「まあな」

「例えば、最近有名なボージャンなんかもそうやろ」

「Bojanか」

「これは、ボージャンと呼んで、カステジャーノ風にボーハンとはよまなんやろ」

「Borjaはボルハなのにな」

「”Bojan”がボージャンで、”Borja”がボルハというのはいかさまみたいなもんやな」

「そうは言っても、カタルーニャ方面の選手に対して、”J”行の音をハ行ではなく、J行で読むことは多いな」

「JordiやJofreなんかがそうで、ジョルディ、ジョフレやな」

「おまけに、ビジャレアルの監督の、Pellegriniは、”ペレグリーニ”であって”ペジェグリーニ”や”ペリェグリーニ”とは呼ばない」

「有名な、Paellaは、パエリアとかパエーリャとかパエージャとかやな」

「これは、先祖の具合が関係していて、Pellegriniはイタリア系で”ペリェグリーニ”と呼ばれると自分の気がしないからだろうし、Bojanも”ボーハン”と呼ばれては自分の気がしないだろうから、もとの言語になるべく近い音で呼んでいるやと思うで」

「つまり、ドイツ系のHeinzeも実はハインツェと呼びたいという話やな」

「ちなみに、ボージャンの苗字のKrkicも”クルキッチ”で、最後は”ク”じゃなくてセルビア風に”チ”やな」

「単純にカステジャーノ読みすればいいというものではないだけに面倒やな」

「同じアルファベットで違うように読めというのは実に難儀な話やな」

「そういえばやな」

「なんや」

「上のエインセという表記よりも納得の行かない選手が一人いてだな」

「だれや」

「メシなんやな」

「メシか」

「メッシならともかく、メッシーはないと思わんかね」

「どうやろな」

「とりあえず、下の音を聞いてみてくれ」



「うむ」

「どうや」

「メシーかメシやな」

「最初にメシーとなっているのは、語尾で調子を取るためやし、どう聞いてもメッシーにはならんやろ」

「まあ、アルゼンチン風に発音するとメェシィに近くなるけどな」

「そこまで行くともはや収集がつかんけどな」

「そんなことを言うたら、ベティスの Edu なんかもっと大変やで」

「彼がどうした」

「Eduをなんと読む」

「エドゥーやろ」

「ところが違うねん」

「そんなアホな」

「本人が言うから間違いない」

「だって、前にフリューゲルスにいた選手もEduでエドゥーやったやろ」

「懐かしいな」

「鬼のフリーキッカーで、センターサークルのすぐ前くらいから直接決めてたな」

「いや、そんな昔話はおいておいてだ」

「うむ」

「本人に言わせると、エドゥーじゃなくて、エ↑ドゥらしいんや」

「エにアクセントがあるのか」

「エで上がって後ろで落ちるのが本当やから、エドゥーとは呼んで欲しくないそうなんやなこれが」

「また微妙な注文やな」

「それで、アナウンサーも一時期はエ↑ドゥと呼んでいたんやけどや」

「どうした」

「下の2週間程度前の音声を聞いて欲しいんや」



「うーむ」

「うーむやろ」

「どう聞いてもエドゥーやな」

「もとに戻ってしまったということや」

「きっと、エ↑ドゥやとスペイン語のリズムに合わんのやろな」

「なんにせよ、名前の呼び方は、かくも非常に難しいといわけやな」

「とはいえ、エインセやメッシーなどの、明らかに違う表記は修整したほうがいいのではないかというところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」
「首位のレアル・マドリーは、マジョルカと引き分けた」

「1-1やったな」

「2位のビジャレアル、3位のバルセロナは差を詰めるチャンスだったわけだが」

「両チームともこけて、7ポイント差は変わらず」

「なかなか縮まらないもんやな」

「マドリーこけたらみなこけるというのが流行やしな」

「けったいな流行やな」

「とりあえず、先発はこうやな」



「両チーム普通といえば普通かね」

「マジョルカはイバガサを中央に置いて、そこからの組み立てを重視したタイプやな」

「イバガサは、トップ下や左で使われることもある」

「マドリーはディアラとバチスタを外して、中盤から前に上手い選手をそろえたタイプの布陣を採用している」

「まあそうやな」

「そんでや」

「なんや」

「一口に上手いと言っても、色々と種類がある」

「まあそうやな」

「この試合では、マドリーのゴールシーンで、一つ典型的な上手さをあらわすシーンがあったので、それを見てみようと思う」

「ええで」

「まず、一つ目は下の写真や」

「中盤でガゴがボールを受けた場面か」



「一番上の写真で、ガゴがボールを受けて、サイドに一人選手が余っている」

「ロッベンやな」

「そこを有効に使おうと思えば、赤い円で囲まれたディフェンスを消してしまえばいい」

「その選手が一番サイドに近いからな」

「それをどうやって達成するかといえば、2番目の写真のように、ボールを持った選手が真っ直ぐそのディフェンスに向かっていけばいい」

「いわゆるピンという奴やな」

「ディフェンスというのは、向かってこられると進路を空けるわけにはいかないから、その方向にピン止めされた状態になる」

「それによって、点線のゾーンが空くわけやな」

「そして、十分に敵を引き付けてからボールを離せば、めでたくサイドにフリーの選手ができる」

「定石といえば定石やな」

「まったく同じ状況が下でも見られる」

「これは、上でサイドに出たパスを、前に出たロッベンが受けた場面やな」



「サイドでボールを止めたロッベンは、中央を向くと、最も近いディフェンダーに向かってドリブルをはじめる」

「その狙いは、要するに、2枚目の写真にあるゾーンを空けることやな」

「さっきと一緒で、進行方向に敵をピン止めして、その横にスペースを残す」

「そこから一気にドリブルで縦に抜けるわけやな」

「最後のプレーがパスかドリブルかの違いこそあれ、使われている手筋はまったく同じなわけや」

「そうやな」

「以上のプレーは当たり前といえば当たり前なわけだが、下手な選手がやれば下のようになる」



「ふむ」

「要するに、敵に向かわずに最初からスペースに向かい、結局ディフェンスをそちらに寄せてしまって、肝心な場所を埋めてしまう」

「下手というか、何も考えずにプレーすると、選手は大体赤い矢印のように動くな」

「それは結局、下手ということなんや」

「そうなんかね」

「サッカーにおける上手、下手の最初の分かれ目は、ボールを持った後、どれだけ目の前の敵に正対できるかで、それができない選手はいつまでたっても二流なんや」

「ほほう」

「それで、ドイツワールドカップの日本代表で、最もできなかった部分がそこなんやな」

「まあ、あれはチームが上手くいってなかったしな」

「チーム云々の前に、あれだけ相手に向かうことができないのは個人としての能力の問題やで」

「しかし、なんで今さらそんなことを持ち出すんや」

「この前、フェネルバッチェとチェルシーが試合をしたやろ」

「したな」

「フェネルバッチェの監督はジーコやろ」

「ジーコやな」

「今のジーコのサッカーには、日本代表監督をしたことで学んだことがいかされていると思うんや」

「それはそうやろな」

「その一方で、日本はジーコから学んだことをどのくらいいかしているのだろう、と考えると、どうにも心もとない」

「まあ、失われた四年らしいからな」

「失われたと断言する以上、そこから得たものがないというこやろ」

「そうなんかね」

「ジーコが学んだことをいかして、日本がジーコと過ごした時からなにも学ばず、学ぼうとする意思も薄弱であるとしたら、それはどういうことなんだろうかと思ったわけや」

「ジーコは自分が失敗したから、そこから学んで当然で、その失敗の犠牲者である側は学ぶことなどない、ということちゃうかね」

「はたして、それで正しいんやろか、そんなことでは本当に失われた四年になりはせんのだろうか、などということを、つらつらと考える今日この頃であるわけや」

「さよか」

「チェルシー対フェネルバッチェ戦では、そのようなことを頭の片隅に置いて見られるのもいいのではないかというところで」

「また次回」

「ごきげんよう」


おまけ:マジョルカのラインコントロール

「チャンピオンズリーグ圏内をかけた対決」

「ビジャレアル対アトレチコ・マドリー」

「注目の一戦はビジャレアルの完勝に終わった」

「内容も結果もというやつやな」

「ビジャレアルはいまやリーガの良心と呼ばれつつある」

「レアル・マドリーもバルサもアトレチコも今ひとつの世の中で、チームとしてきちんと設計されたチームではあるな」

「今回は、その設計の一部を見ていこう、とまあそのようなわけや」

「よかろう」

「先発は以下のようになっていた」



「アトレチコの左がシモンでないことを除けば、いつものみんなという感じやな」

「この試合で、誰がすごかったかというとピレスがすごかった」

「抜群の働きやったな」

「ビジャレアルの1点目と2点目は、まさに彼が起点になっていて、最初は左からドリブルで中央に持ち込んだボールを左に流れるロッシにパスしたところから始まった」

「2点目も崩す流れとしては、同じ形やった」

「ビジャレアルの動きを見ると、明らかに左のピレスが中心で、模式的にあらわすと下のようになる」



「ピレスが中に入ってロッシが外に逃げる、カプデビラが外側からフォロー中にセナが入って、ニハットとカソルラがゴール前、右のベンタはあまり深いところまで上がらず、組み立てに重点を置くと」

「そのような感じやな」

「ここで最近よく思うことがあるのだがな」

「なんや」

「リーガの上位というのは、左利きのチームばかりではないかね」

「左利きか」

「左サイドを中心に崩していくチームを左利きとすると、このビジャレアルは正に左利きやろ」

「まあそうやな」

「普段のアトレチコ、つまり、左にシマオがいる時は、これまた左利きやろ」

「シモンな」

「図でいうと下の感じや」



「シモンがサイドでボールを受けて、ざっと縦に押し込んで、そこから縦か中の二択か」

「シモンはドリブルのスピードでピレスに勝る代わりに、パスでは劣るのであまり複雑な攻めはできない」

「キャラクターの違いというやつやな」

「アトレチコがいい形で攻める時はこれが多く、いうたら左利きや」

「そうかね」

「そんで、バルサも左利きやろ」

「アンリやな」



「左にボージャンでもいいけど、相手をより崩せるのはアンリの方や」

「とーんとーんとすこし跳ねるようにドリブルをして、ぎゅっと縦に抜けるか、そのフェイクから中にいくかが得意技やな」

「縦にいったらクロス、中に入って逆サイドへのシュートか上がってくるイニエスタ、シャビにパス」

「アンリ・パターンというやつやな」

「右から有効に崩す場面というのはほとんどない」

「エトーは中に入るし、ザンブロッタが上がってもさして効果的ではないしな」

「つまり、バルサも左利きや」

「さよか」

「2年前、ロナウジーニョがいたころはさらに極端な左利きやったしな」

「過去形にしたらあかんで」

「そして、去年の12月頃、勝っていたころのマドリーも左利きやったやろ」

「ロビーニョか」



「ロビーニョやな」

「シモンと似たような特徴やけど、中に入っての細かいパスがよりうまい」

「相手を引き付けてからのプレーもうまいな」

「つまりは、以上のみなさんすべて左利きなわけや」

「ほほう」

「システムこそ違え、左の前にサイドからゲームを動かす選手を置く、というのは一つの形やと思うんやな」

「その形の強いチームは多いな」

「デコのいたポルトとかやな」

「セードルフのミランもその変形やな」

「昔はロベルト・バッジョのいたインテルも同じような手段を使っていた」

「リーガに関係の深いところでは、リケルメのいたビジャレアル、ジダンとチャンピオンズリーグを取ったレアル・マドリーなんかがそうやな」

「まあ、強いチームを作る一つのパターンであることは確かやろ」

「今のマドリーとバルサはお世辞にも強いとはいえんけどな」

「それは言わないお約束や」

「なんにしても、このタイプの設計では、その鍵になる左前の選手をいかすために、色々な条件が必要になる」

「そうやな」

「ここでは、その中でも特に重要な一点だけに絞ってチームを見てみようと思うんや」

「もったいぶらんでもええがな」

「話は単純で、下の図やねんけどな」



「なんやこれは」

「要するに、後方からどの形でボールを入れるのが一番いいか、という話や」

「ほうほう」

「まず、右から見ていくと、右サイドバックから、左の中盤に出るパス、これが一番いい」

「いいというか、効果的ということやな」

「これが決まれば、ほぼ間違いなく左前の選手はフリーでボールを持つことができる」

「ディフェンスの移動が間に合わへんからな」

「ディフェンスはボールがあるサイドによる習性があるからな」

「ただ、これは難しいな」

「それはある」

「まず、この距離を正確に蹴れる選手が少ないし、ボールスピードが足りなければ前に出るサイドバックにカットされてカウンターを喰らってしまう」

「悩み深いところや」

「ベッカムやゼ・マリアとかなら可能かもしれんが、まず人材が見つからない」

「そこで、右から二番目の青い矢印に注目する」



「下がった右のボランチか右のセンターバックからのパスか」

「これももちろん有効で、先ほどと同じ効果がある」

「振り幅は小さいけどな」

「その分、距離が近くなるので、正確に蹴ることのできる選手も増える」

「なかなかいないけど、さっきよりは多いな」

「よって、左前方を有効に利用するという意味ではこれが最も望ましいラインになる」

「2年前のマルケスみたいなもんか」

「バルセロナが苦しくなった時に、それを打開するのはほとんどいつでもマルケスからロナウジーニョへのクロスのパスで、そこから一気に一対一を仕掛けて押し返していた」

「一つのパターンやったからな」

「次に右から3番目のパスだが、これも有効ではある」



「振り幅がより小さくなる分、効果も小さくはなるけどな」

「そのかわり、蹴る技術はより簡単になる」

「ただし、右足の方がええな」

「それはそうやな」

「この位置で縦を向いた状態から左足を使ってそこに出すのはかなり難しい」

「最後に一番左の矢印になるが、これはサイドの選手をフリーにすると言う点ではほとんど意味がない」

「まあ、相手も左によってるところにパスを出すから難しいわな」

「ビジャレアルは、その点、ゴンサロからそれなりに、エルグンからパスが出る」

「特にエルグンはいいな」

「いい展開力やな」

「ブルーノの立場がないな」

「彼は左利きだし、地面を転がるパスを前に当てる方が得意やしな」

「ええ選手やねんけどな」

「現時点ではやはりエルグンの方がいい」

「そうかもしれん」

「まあ、この左側にいい形でパスを出すというのは、この系統の組み合わせでチームを運用する時に重要な鍵になる」

「左側に攻撃のトリガーがあるとしても、弾を込めな役にはたたへんからな」

「相手のアトレチコを見ると、下のようになる」



「要するにパスが出んと」

「そういうことやな」

「次にバルセロナはこうなる」



「やはり出えへんと」

「マルケスがいないと出ないな」

「トゥレからでないのが信じられへんけどな」

「キック力的にはいけそうなもんやけどな」

「なんかサイドに長く蹴るとなるとおっかなびっくりみたいになるからな」

「一ヶ月くらいそればっかり練習すればいけそうな気がせんか」

「どうやろな」

「まあ、それは置いておいて、下がったシャビからはまれに出る」

「シャビは前に上げて、左を上がるアンリに、ボージャン、エトーとともにからみたいから、あまり下げたくないところではある」

「そこが矛盾ではある」

「最後にマドリーはこうなる」



「なかなか出ないな」

「ペペからたまに、ラモスからたまにでるが、微妙にずれることが多く安定しない」

「なかなか難しいな」

「左利きのチームを作る時は、とりあえずこの辺に注目するとええと思うわけやな」

「要するに崩す能力を持った選手にどうやってボールを送り込むかという話か」

「そこに問題があると、宝の持ち腐れで大体うまくいかない」

「それが正しいかどうか」

「ぜひご検討いただきたいというところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」



「さて」

「バジャドリーは負けてしまった」

「大敗といえば大敗やな」

「スコアだけ見れば、強いバルセロナが弱いバジャドリーを難なく破ったように見える」

「ところがそうではない」

「というところを見ていきたいわけやな」

「よかろう」

「この試合のバジャドリーは、戦術的に特筆すべき事柄があった」

「先発は以下の通りやな」



「バルサの先発に不満があるなしは置いておいて、バジャドリーはトップ下にあたる位置に、ビバル・ドラドが来ているのが非常に意味深い」

「新聞の予想もそうやったな」

「バルセロナと対戦することを考えると、ここに彼を置くか、シシーやコネを置くかでずいぶんと話が違う」

「下の意味やな」



「最近のバルサは、ビジャレアル戦で見られるようにサイドバックをやたらと上げたがる」

「最近というか、昨シーズンからの癖が復活したというか」

「そうなると、上図の点線のゾーンがあく。押し込まれた状態からそこを突くには、トップ下にスピードに優れ突破力があり、サイドに流れて仕事のできる選手を置きたい」

「それをやるなら、右にシシー、トップ下にコメといった布陣が考えられる」

「ところが現実にはこう」



「トップ下はビバル・ドラドで、右にコメ」

「ビバル・ドラドの一番の弱点は、まったくスピードがないことなわけや」

「そうすると上の攻めは難しいな」

「まず、スペースで受けるためにトゥレを振り切る時点で難しいし、受けたとしても追いつかれて体で潰される」

「当たりにも強くないしな」

「そうなると、このように組んだバジャドリーの狙いは攻撃ではない、ということになる」

「まず守備が狙いやな」

「そりゃ攻撃じゃなきゃ守備やろ」

「攻守の切り換えが狙いかもしれんやんか」

「そんなわけあるかいな」

「ビバル・ドラドの任務は、トゥレのマークが主やな」



「バルサが組み立てている段階ではマンツー気味にトゥレをマークして、エリア近くに運ばれたら、ディエゴ・カマーチョとアルバロ・ルービオのヘルプに行くというのが任務やな」

「それにしても、見事なガード戦法ではないかね」

「いわゆる亀になるという感じやな」

「トップのジョレンテは、中央でロングボールを受ける選手で左右に流れてどうこうできるわけではないので、このような形に組むとまったく攻め手がなくなる」

「ちょっとびっくりするな」

「バジャドリーというチームは、サンチアゴ・ベルナベウでのレアル・マドリー戦で非常に勇敢に攻めて、7-0で返り討ちをくらった戦歴の持ち主やしな」

「監督のメンディリバルは、最近リーガで少なくなった攻撃精神をふんだんに持ち合わせた人やしな」

「それがこれだけ守るとは、さすがに7-0での敗戦がこたえたのかと思いきや」

「途中からえらいことになる」

「まずは、22分で、その1分前にエトーのゴールでリードを奪われる」

「そうすると、突然下の配置になる」



「コメがトップ下に来て、ビバル・ドラドは右に移る」

「これは、要するに、上で検討したバルサを攻めるための配置に近い」



「右にビバル・ドラドはどうなん、という気がせんでもないけどな」

「彼がボランチに近くなることで、左のセスマを押し上げることができるから、それはそれでええやろ」

「そうなんかね」

「コネはビバル・ドラドのようにマメにマンマークなどできないから、トゥレが空く、その代償として、スピードをいかしてスペースを縦に進むことができる」

「ガードを解いたわけやな」

「これは面白いな」

「試合の前から、リードを奪われたら配置を変えろと指示されていたわけか」

「この素早い変更はそうとしか考えられない」

「バジャドリーの変化にバルサは対応できず、押されはじめる」

「結局、テュラムがPKを取られて、前半は1-1で終わる」

「前半1-0でしのいで、後半勝負、という考えも成り立つ中、試合前から殴られたら殴り返せと指示を出していたメンディリバルはさすがの攻撃精神の持ち主やな」

「その心は、後半さらなる形で発揮される」

「46分にボージャンに決められた後やな」



「1-4-3-3に見える」

「見えるというかそのまんまやな」

「その意味は下の図で、攻めるなら攻めて下さい。そのかわり、こっちもそちらの残したスペースをいただきますよ、ということになる」



「バルサ相手にほとんどノーガード戦法か」

「普通これはできない」

「ボールを持たせたら天下一品のバルサと叩き合ったら、普通潰れるしな」

「まあ、結果的には、この後2点を追加されて、見事に潰れるんやけどな」

「得点的にはそうやけど、バルサも相当危なかったで」

「バジャドリーのシュートが2回枠を叩いたしな」

「あれはほんの少しのズレでゴールやで」

「まあな」

「それに、2点を取ったバルサばかりが攻めていたわけではない、という一つの証が下のグラフや」



「なんや、これは」

「バジャドリーが守備に徹していた開始から22分まで、ガードを解いた22分から前半終了まで、そして、後半に入ってからのシュート数を、45分に何本打ったかという形で表したものや」

「つまり、シュート数割るプレー分数かける45ということか」

「式はどうでもええねん」

「ずいぶんはっきりと出るもんやな」

「一番左の後半の部分を見ると、バルサとバジャドリーで大して差はない」

「7対6か」

「つまり、バルサを相手にガードを捨てても、十分に勝負になることを示唆しているわけや」

「バルサの側から見ると、あれだけうまい選手を集めていても、スペースを空けて攻めてくる相手を叩き伏せることができないということか」

「これは、非常に不安なデータだと思うんやな」

「というよりや」

「なんや」

「データだけでいえば、バジャドリーは22分からの布陣が一番良かったのと違うかね」

「この形のバルサが下の手に弱いのは昨シーズンで散々証明されてるしな」



「それに、前半1-1で終わった後、バルサの選手たちがテュラムのPKに関してヒステリックに抗議していたのを見ても、精神的な安定も欠けているといわざるをえない」

「別に冷静になってカウンターをかければ、バルサの戦力なら十分に勝てるのにな」

「あんなにキーキー言う必要はないと思うんやけどな」

「そういえば、もう一つ気になることがあってやな」

「何が」

「後半が始まる前、席につく前にクライフとラポルタが笑顔で談笑してた場面がニュースで流れてだな」

「それがどうした」

「話が終わってラポルタは階段を下りるために、クライフに背を向けたんや」

「ほうほう」

「その瞬間に表情が豹変して、下唇をかみしめていたんやな」

「そりゃまた面妖な」

「いったい何があったんか気になるところやな」

「普通、ある人と話した後、表情が一変するのは、相手をとんでもなく嫌いな証拠やけどな」

「非常に気になるやろ」

「そういえば昔、スチュワーデスさんで同じような場面を見たな」

「なんの話や」

「睡眠タイムの時、前の席に呼ばれたスチュワーデスの人をこっそり見てたわけや」

「気持ち悪い奴やな」

「何かを言われて、はいはいと営業スマイルで答えていたんやけど、くるりと振り返った瞬間、”けっ、やってられっかよ”という表情に変わって、またすぐ普通の表情に戻ったんやけど、あの時はゾッとしたで」

「それが今の話と何の関係があるんや」

「我慢できない人とにこやかに対応すると、その反動が別れて顔が見えなくなった直後に出るものだから、クライフとラポルタもそういうことなんではないかということやな」

「回りくどい説明やな」

「すまんこって」

「なんにしても、バルサは、戦術は当然として、心理状態や組織にも問題がありそうやな」

「おかげで、チャンピオンズリーグは一番ぐらいに楽な相手と当ったはずなのに、不安が拭えない」

「とにかく、今のバルサは左前のボージャンかアンリにいい形でボールが入れば押し込めるから、下の形でパスを出せる選手をそれぞれの場所に置くことちゃうかね」



「まずは、攻撃で相手を押し込んでから、ということか」

「3トップはもともとウィングにいいボールが入らないと負債ばかりが目立つシステムやからな」

「ついでにザンブロッタもやめた方がええな」

「左から行くんやったら右はそんなに上げる必要もないしな」

「首位に4ポイント差まで詰めたとはいえ、安定感のないバルサがどうなるか」

「今後に注目というところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ごきげんよう」


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