週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
「さて」
「前の文まで、”ワンツーで、横に出せるなら、そこを囮にして、もう一つか二つ裏を狙う”というアイディアについて詳しく見てきた」 「これを図で表すと、下のようになる」 「走りこむ選手と、ボールを返す選手の間にディフェンスが挟まれている状況なら、この技をしかけることができる」 「ゾーンはどこでもいい」 「応用としては、二人抜く場合にも使うことができる」 「ニハットのプレーやな」 「この系統のプレーのメリットは、下のようにあらわされる」 「上が普通のワンツーで、下が今回のワンツーやな」 「実は、受ける側としては、下の方が技術的に易しい」 「上の場合、赤い場所でのコントロールが難しい」 「前にスピードを上げながら横からのボールを受ける場合、プロでもミスが多い」 「その点、下のパスならボールとプレーヤーが同じ方向に走るのでコントロールは容易になる」 「そして、実は、サイドの崩しでこれと同じアイディアが非常によく見られる」 「これはよく見るな」 「サイドバックの裏を取る一つの手筋やしな」 「アイディア一つで応用色々というやつか」 「サッカーで一番大切なのは、結局そのアイディアの部分やしな」 「そうなんかね」 「例えば、ニハットがパスを出した場面で、変なテクニックを使っているんや」 「どんなんや」 「下のやつやけどな、一回軸足を着地したあと、そのまま飛び上がって、まるでケンケンをしながらボールを蹴っている」 「これは珍しい技やな」 「こんなんどこでも教えてへんやろ」 「ニハットの発明やろな」 「そこが問題なわけよ」 「発明がか」 「どこからその技が飛び出してきたかというと、最初にワンツーを返すフェイクから縦を抜こうというのがあるわけや」 「そらそうやろな」 「アイディアはあるけど、一回の踏み込みでは実現できない。ならば二回飛べばいけるではないか、というところにこの技の起源はあって、それが発想の源になっている」 「アイディアと現実のギャップを埋める橋渡しとして新技が生まれたわけか」 「必要は発明の母というわけで、必要というのはなにかを行いたいというアイディアが作り出すものだから、アイディアが技術を生む元になるわけや」 「あたりまえと言えばあたりまえの話やな」 「サッカーで技術高い、技術が低い、上手い、下手だとよくいわれるけど、じゃあそれを突き詰めていくと、どこにたどり着くかというと、アイディアが足りないから技術が高まらないというのも大きい」 「それは、あるかもわからんな」 「あと、このアイディアというのは、サッカーの文化成熟度とも関係する」 「またわけのわからんことを」 「例えば、チェスの話になるが、ポーランドかどこだかの国は、国民の60%くらいが妙手を妙手として鑑賞できるそうな」 「それがどうした」 「妙手を味わうためには、その時の状況や、何が問題になっているのかということを確実に把握していないと無理やろ」 「そりゃ、駒の動かし方もしらんようではわからんわな」 「つまり、より深くチェスを理解していればしている程、素晴らしい一手をより深く味わえるわけで、そういう人が多ければ多いほど、その国にチェスが浸透している、ひいては、その国にチェス文化があるということができるわけや」 「そういう基準か」 「そうなると、サッカーにも同じことが言えるやろ」 「いいプレーをより深く味わえる観客が多いほど、その国にサッカーが浸透している証ということか」 「プレー人口が多いといった基準の他に、そういうのも大切ちゃうかということや」 「どうやろな」 「だから、こういう技術を分析する文章はわりと大切やと思うわけやな」 「だから最近、ゴールの決め方や、キーパーとの1対1、ラウールの小汚い技や、グティのパスなんかに関する話が多かったのか」 「多分そうやな」 「しかしまあ、そんな大業なことを言わんでも、色々わかった方がおもろいし、やる時に楽しいでええやろ」 「もちろんそうやけどな」 「あんまりサッカー文化とか言い出すと、うそ臭いインテリゲンチャ気取りみたいでようないで」 「そうかね」 「大体そういう人は信用したらあかんことになってんねん」 「そんなこんなで」 「サッカーの技術は色々と面白いというところで」 「また明日」 「明日もやるんかいな」 「たぶんな」 「そんなこんなで」 「ご機嫌よう」 この記事の先頭へ
「ユーロに向けて代表が準備を進める今日この頃」
「スペイン代表はペルーと親善試合を行った」 「親善試合と言うには激しかったけどな」 「確かに」 「ペルーのファールに、あのイニエスタが切れる場面も見られた」 「普段は、いくら倒されてものれんに腕押しみたいな顔でプレーするのにな」 「珍しく相手にくってかかっていた」 「まあ、ペルーの方にもそれだけやる理由はある」 「スペインには、多くのペルー移民がいる」 「移民というのは、なにかと肩身が狭い」 「代表がまずいプレーをしたり、大差で敗れたりすると、それがますます狭くなる」 「勝てばそれが逆になる」 「そうなると、ペルー代表としては、気合を入れてやらざるをえない」 「もう一つは、ヨーロッパ市場へのアピールというのもある」 「活躍してスカウトの目に止まってスペイン移籍、という流れを狙うわけやな」 「特に今の時期なら、来シーズンのメンバーに滑り込むことも可能だから、張り切らざるをえない」 「そんな事情もあって、ユーロの準備試合とはいえ、かなり本気の試合になった」 「テストとしては本気のテストやな」 「そして、結果はどうだったかというと」 「2-1でスペインの勝ち」 「順当のように見えるが」 「決勝点が後半ロスタイムだったことを考えるとそうでもない」 「スペインの先発はというと」 「ふむ」 「なるほど、という感じやな」 「イニエスタが右に来ている」 「ここから選手がどう動くかというと、こうなる」 「イニエスタが中央に入ることで、クッションになり、そこから展開していく」 「彼が中に入る分、右サイドはセルヒオ・ラモスが大きく上がる」 「サイドの前が中、その外をサイドバックが上がるパターンやな」 「前半、この配置でわりと良くボールが動いていた」 「そして、後半からは下のようになる」 「ボランチとトップが交代した」 「シャビとシャビ・アロンソが下がり、セスクとセナ」 「トーレスが下がってグィサが出た」 「57分には、ビジャが下がり、デ・ラ・レーが入る」 「これは、どうやろな」 「セスクが中盤の前に入ると、下のようにイニエスタが入るスペースと重なる」 「上手くいかない気配が満載やな」 「それもあってか、その5分後にはこうなる」 「イニエスタに代えて、右にカソルラ」 「これならば、いわゆる普通の1-4-4-1-1の構造になる」 「さばくトップ下に、縦に動くサイドというやつやな」 「カソルラのクロスに対して、シウバ、セスクでは空中に弱い、というのはあるけどな」 「そして、最後にはセルヒオ・ガルシアが右に入る」 「代表デビューおめでとうというやつやな」 「この試合のスペインを見ると、二つのパターンを試したことがわかる」 「一つは、右にイニエスタを置き、彼を中に入れてそこから展開するパターン」 「もう一つは、セスクをトップ下に置き、サイドを縦に動かすパターン」 「ここでは、イニエスタの方を詳しく見たいと思う」 「うむ」 「その問題点をラインごとに見るとして、まず、キーパーとディフェンスについては下のようになる」 「セルヒオ・ラモスが頻繁に上がるので、右サイドにスペースが残りやすい」 「そして、センターバックの二人、マルチェナとプジョルは、ユーロレベルにおいて、ハイボールに強いとはいえない」 「さらに、プジョルは組み立てが上手いとはとてもいえない」 「次に中盤のラインを見る」 「一見、守備向きの選手が少ない」 「二見してもそうやで」 「まあな」 「守備向き云々というのは、所属チームでの役割を考えるとわかりやすい」 「例えば、シャビ・アロンソは、横にマスチェラーノという潰しを得意とする選手がいる」 「シャビ、イニエスタの後ろには、トゥレ・ヤヤが控えている」 「トゥレが守備向きかどうかは別にして、構成としては、彼がシャビとイニエスタをカバーするようになっている」 「シウバも、後ろをバラハ、マルチェナ、アルベルダといった選手にカバーしてもらっていた」 「つまり、この4人は、カバーされる側ばかりが集まっている、ということやな」 「こういう構成だと、ボールを持ってパスが調子よくつながっているうちはいいが、一度劣勢になると、とめどなく劣勢になりがちやな」 「最後に、フォワードのラインだが」 「まず、トーレスにボールがほとんど入らない。そして、フォワード二人の間のコンビネーションもほとんどない」 「ビジャとトーレスは相性が悪いのかね」 「良かった記憶がないな」 「まあ、そのようなスペインの弱点を考えた上で、相手の対策などを思い悩んでみる」 「一番最初に思い浮かぶのはこれやな」 「ツートップ系のチームなら、一人を下げてシャビ・アロンソをマークさせ、もう一人をマルチェナにつける」 「これで、なるべくプジョルにボールを持たせる」 「そうすれば、スペインの組み立てがうまくいかなくなる」 「ペルーも、後半からこの方法を採用していた」 「この作戦は、バルセロナ対策としても有名やな」 「これをもっと推し進めると、下のような手も考えられる」 「やたらとマンツーマンが多いな」 「前のユーロでは、ギリシャがこの系統の作戦で優勝した」 「今回はどうかという感じやな」 「後は、1-4-1-4-1に組んで、左サイドの選手にセルヒオ・ラモスを追わせるか否かで攻撃と守備のバランスを取る方法もある」 「1-4-1-4-1でのサイド前残しというやつで、サイドに浮いた選手がカウンターの基点になる」 「スペインに対して受ける、という意味ではこんな感じかね」 「攻め方としては、ロングボールに強いフォワードがいるなら、プジョル、マルチェナの前、アロンソの後ろをどんどん狙っていくとええな」 「左サイドバックが優秀であれば、積極的に上げることでイニエスタを押し下げることもできる」 「チャンピオンズリーグ決勝での、エシエンとクリスティアーノ・ロナウドの関係やな」 「カウンターは、やはりセルヒオ・ラモスの裏を狙いたい」 「ラモスの裏にロングボールを入れて縦に押しこんだ後、逆サイドを狙う」 「後ろに走るのが苦手なスペインの中盤の戻りは遅れる。だから、この流れに入れば必ずチャンスになる」 「なんかあれやな」 「なんや」 「妙に弱点が多いな」 「まあ、中盤を完全にパス重視で組んでいるから、その反動が弱点になるのは仕方がないかもしれん」 「そうはいっても、前のワールドカップでは、中盤をいわゆる攻撃的に組んで、フランスに叩き潰された苦い思い出がある」 「アラゴネスは、出るか引くかの選択を迫られると、根性で前に出ようとする性格やしな」 「まあギャンブル大好きやからな」 「ギャンブルというか、スロットマシーン愛好家ちゃうか」 「それはそれとして、あと気になるのは、チーム内の矛盾というやつやな」 「どこや」 「まず、中盤でパスをつなぐ構成なのに、ディフェンスラインの組み立て能力としてそれを活かしにくいのが一つ」 「あとはなんや」 「攻めを標榜するわりに、フォワードの組み合わせに問題を抱えているのが一つ」 「ほほう」 「最後に、右利きのイニエスタを右から中央に入れると射角の問題を生じる」 「色の部分がパスを出しやすい場所か」 「右利きの人間が、左サイドから中央に入ると、相手ゴールに対して直接危険なパスを出しやすい」 「下半分がそれやな」 「ところが、右から左に入ると、直接ゴール前を狙いにくい」 「上半分やな」 「ジダンやリケルメ、ロナウジーニョといった選手が左を好むのは、これも一つの要因であり、果たして右サイドの右利きを引き金にする攻撃がどれほど有効であるのかは疑問が残る」 「偉大なる実験ということやな」 「そんなこんなどうなるか」 「今後の発展を見つめつつ」 「また次回」 「ご機嫌よう」
元の問題はこちら
シュートやパスで相手の足元を抜く場合、一度ディフェンスに正対すると良い。 正対とは、体の正面を相手の正面に向けることを意味する。 これは、相手の足を揃え、利き足方向にスペースを作る効果を持つ。 以下に具体例を見る。 0708シーズンチャンピオンズリーグ決勝、マンチェスター・ユナイテッド対チェルシー戦の42分におけるルーニーのプレーである。 ここでは、シュートではなくクロスが目的となっているが、フェイントなどのメカニズムは同じである。 ここで、ディフェンダーの重心が後ろにのっているのがわかる。 正対して前進する構えを見せることで、ディフェンスにこの体勢を取らせることができる。 一度相手を押し込むことにより、横へのドリブルが楽になる。 以上のように、一度相手と正対し、押し込む姿勢を見せられると、ディフェンスは横の動きに対する反応が遅れる。 この遅れを取り戻すために大きく足を出すため、その下を抜きやすくなる。 このようなパスは、俗に「股抜き」と言われる。 しかし、股を抜くよりも相手の軸足を意識し、その横を通す感覚を持つほうが良い。 片足で立つ人間は、軸足を動かすことができない。 このため、足元を抜いてシュートやパスを送る場合、その横を通せばカットされる心配はない。 よって、動きの中でマーカーの軸足を意識することは非常に大切である。 相手と正対する。一度正面へ押し込む。利き足方向へ切り返す。相手の軸足を意識しながらキックモーションに入る。足を返して軸足の横を抜く。 具体的には、以上の手順でこのプレーは行われる。 右足でシュートを行う時、角度の変更は下の図のようになる。 ピンクがフェイントのシュートコース、青が実際のシュートコースである。 一般的に、15度前後ずらせばよい。 インフロントからインステップ、インステップからインステップ、インステップからインサイドにサーフェスを変えて角度を変えることが多い。 基本的な状況において、このテクニック自体は難しくない。 踏み込んだ後、体の中心、肋骨のやや下側を後ろに引くようにすると蹴りやすい。 ラウールや、フォルランのシュートでもそれは見られる。 ラウールのシュートは、いわゆる股抜きであり、フォルランは違う。 しかし、軸足の点からみれば、ラウールは相手の軸足の内を通しており、フォルランは外を通している。 上の二つのシュートは、内側、外側の差があるのみで、軸足の横を抜くという点において原理的に同じである。 練習法 以下の点が大切である。 ・相手と正対する ・一度正面へ押し込む ・利き足方向へ切り返す ・相手の軸足を意識しながらキックモーションに入る ・足を返して軸足の横を抜く 以上の手順を習得する最も単純な方法は、1対1からのシュートである。 この場合、キーパーを必要としない。 タイミングは、ファーに打つシュートがブロックされるタイミングで足を返すのが最もよい。 フェイントをかけるためには、先手を取る必要がある。この練習では、ドリブルで一度相手を押し込むことがそれにあたる。 パスを出す選手を用いる場合、下の練習も有効である。 この場合、一度正面を向いて押し込む必要はない。 また、軸足の内側だけでなく、外側を抜くシュートも重要になる。 下のような状況では、後ろからシュートブロックに来るディフェンスの足元を抜くプレーが有効である。 裏を取られた守備者は、あわてて足を伸ばすケースが多い。 シュートブロックに来た場合、ニア方向に踏み込んだ後、一瞬待ってから足を返せばちょうど逆サイドに抜ける。 この技術は、シュートやクロスにおいて、敵をあざむく最も簡単な方法の一つである。 下のような形では、スルーパスに使うこともできる。 応用範囲が広く、ぜひ身につけたい技術の一つである。
「遂に今年も終わりを迎えた」
「今年というか、今シーズンやな」 「最後の勝者はユナイテッド」 「1-1の同点、延長でも決着つかずPKへ」 「サドンデスの末、マンUの優勝」 「非常に拮抗した熱い試合であった」 「先発は、こうなっていた」 「チェルシーの方は完全に予想通りやな」 「それは、シーズン中、普通に試合を見ていた人ならほとんど当る」 「まあな」 「難しいのは、マルダかカルーかという一点だけやしな」 「マルダを使ったということは、より守備を固めて始めようということになる」 「決勝の判断としては常識的で、攻めなければいけない場面でカルーを投入できるメリットもある」 「つまりは、持ち駒やな」 「一方のユナイテッドの先発予想はこうだった」 「しかし」 「実際にはこう」 「うむ」 「これは意外というか」 「男前というか」 「なんというか」 「クリスティアーノ・ロナウドが左に来ている」 「この意図というのは明白で、ここを起点に攻めますよ、ということになる」 「要するに、点を取りに行くということか」 「これまでも、このポジションでよくプレーしていたからその意味では普通ではある」 「しかし、決勝で、相手がチェルシーであることを考えると色々話が変わってくる」 「まず、左を中心に攻めた場合に怖いのは、下の筋やな」 「左から攻めるならば、それをフォローするためにエブラは上がらざるを得ない。そうなるとサイドにスペースが残る」 「そこをドログバへのロングボールから狙っていく、というのはチェルシーの大好物なわけやな」 「相手がいらっしゃいと言っている場所に敢えて飛び込むというのは、実に男らしい」 「次に、ロナウドを左に置くと、前線へのロングボールを使いづらくなる」 「ルーニー、テベスではテリー、カルバーリョ、エシエンを相手にすると勝ち目が非常に薄い」 「実際に、試合でも勝てなかった」 「1-4-1-4-1を相手にすると、どうしても入れる場所がなくて長く蹴らざるを得ない場面が増える。そこで目標がないのは厳しい」 「ロナウドが競った方がなんぼかましやということか」 「そうやな」 「次に、ロナウドを左に置くと、エシエンに対するマークの問題が出る」 「エシエンがおとなしくしてるうちは、攻めるロナウド、守るエシエンであんまり問題はないねんけどな」 「例えば、マンチェスターが狙い通りに先制した場合、それを取り返すためにチェルシーは攻める。攻めに入った場合、必ずエシエンが上がってくるから、それを放っておくわけにはいかない」 「彼のオーバーラップから得点が生まれるのは、良く見る姿やからな」 「そうなると、誰かがマークする必要がある」 「この形やとロナウドがつかなしゃあない」 「となると、守備での負担が重くなる」 「守備に走らされると、攻撃が鈍る」 「ロナウドを左に置くと、果たしてその辺がどうなのか、という不安が残る」 「そのような状態をさけるなら、最初から下の図でええやないかということになる」 「つまりは予想の先発なわけか」 「そうやな」 「しかし、ファーガソンのクリスティアーノ・ロナウドに対する信頼はすごいと思わんかね」 「確かに」 「もし、この状態が頻繁に起こったら試合にならへんわけやしな」 「これが起こらない、つまり、クリスティアーノ・ロナウドがエシエンに1対1で負けることは絶対にないし、マケレレやジョー・コールがヘルプに来たとしてもボールを失わない、という確信がないとこの先発は組めない」 「チェルシーは、マルダを使って安全指向。マンチェスターは、最初から有り金の8割を賭けるような大胆な起用」 「果たして、その結果どうなったかというと」 「前半は見事にマンUのペースになった」 「鍵は26分の先制点」 「ブラウンからのクロスを逆サイドでロナウドがヘディング」 「見事に決まって1-0」 「左サイドに置いたロナウドがまさにぴったりとはまった得点だった」 「エシエンは、ロナウドのヘディングを警戒するあまり、前に入ろう入ろうとしてクロスに対してかぶってしまった」 「かぶるというのは、要するに、頭の上を越されるということやな」 「それにしても、ピッタリな起用やな」 「それはそうだが、クロスが上がる前の段階で、ランパードが届かないボールに詰めすぎてかわされたミスも見逃せないところやで」 「この後は、先制点を取られて前に出るチェルシーの裏を取ってカウンター」 「34分のクリスティアーノ・ロナウド、42分のルーニーからのクロスは両方点になっておかしくなかった」 「これは、先に強気に張ったユナイテッドが優ったかとおもいきや」 「一番悪い時間に同点に追いつかれる」 「チェルシーのゴールが、まさに前半終了間際の45分に決まる」 「マルダのドリブルをリオ・ファーディナンドがギリギリでクリア」 「そのボールが、ちょうどいい形でランパードの頭に合う」 「右にできていたスペースに流し、エシエンが走りこむ」 「ゴールまでの距離は30m」 「しかし、迷わずシュート」 「それがディフェンスに当る」 「当ったボールは、傍にいたファーディナンドの背中を直撃」 「うまいぐあいに走りこんでくるランパードの前にこぼれる」 「前に出るキーパーの鼻先でシュート」 「ゴールネットを揺らした」 「うむ」 「しかしなんだ」 「なんだ」 「これはすごいな」 「チェルシーにとってはとんでもない幸運やな」 「相手に当ったボールが3回も都合のいい場所に飛んでいる」 「ビリヤードでも難しいという話やで」 「そりゃ、3クッションは難しいわな」 「そして、これで、展開ががらりと変わる」 「後半は完全にチェルシーのものだった」 「マンチェスターは、前に急ぎすぎて悪い形でボールを失う。急いだボールがつながったとしても受けた選手が孤立してしまう。孤立した状態を無理なドリブルで打開しようとしてまた悪い形でボールを失う。という実によくない流れになった」 「いわゆる悪循環というやつな」 「正に」 「おまけに、エシエンが頻繁に上がるようになって、ロナウドが後ろに走る機会が増えた」 「前に見たこのパターンやな」 「それもあって、ロナウドのパフォーマンスは時間を追うごとに悪くなっていった」 「こうなると交代が注目されるわけだが」 「最初の交代はマンチェスターで、86分、スコールズに代えてギグスを入れた」 「ふむ」 「なかなか含蓄深い交代やな」 「ロナウドを守備の負担から開放するために、ギグスを左に入れるのかと思ったら、トップ下のような位置に入った」 「ロナウドはあくまでも左で行くと」 「次の交代はチェルシーで、92分、つまり延長2分にマルダに代えてカルーを入れた」 「これも、ふむ、という感じやな」 「下がるのはジョー・コールの方が一般的やな」 「彼が一番持久力に欠ける、という判断の交代がこれまでは多かった」 「ところが、この日はマルダが先」 「それだけ出来がよかったということやな」 「ところが、ジョー・コールはそのすぐ後に足を痛めてアネルカと交代する」 「体力がついていかへんかったんやろか」 「どうやろな」 「ユナイテッドは101分にルーニーに代えてナニ」 「そして、120分、つまり、30分の延長の最後の最後に両チーム一人づつ交代を行う」 「マンUがブラウンからアンデルソン、チェルシーはマケレレからベレッチやな」 「ちなみに、チェルシーのドログバはその5分前に相手にビンタをかました罪で退場している」 「テベスの挑発にのった形やな」 「それはそれとして、最後の交代だが」 「完全にPK狙いやな」 「PKの苦手な選手、ブラウンとマケレレを、より得意な選手、アンデルソンとベレッチに代えたわけやな」 「PKの結果、マンチェスターが優勝」 「ファン・デル・サルもチェクもPKが得意なキーパーではないから、キッカーが甘いコースに蹴るかミスを犯すかで決まる可能性が大で、一番のジョーカーを引いたのはテリーだった」 「5人目で、決めれば勝ちだったはずのキックを外した」 「あれはきつい」 「きついな」 「5人目までで、ユナイテッドで外していたのはクリスティアーノ・ロナウドで、チェルシーで外したのはテリー。チームが勝ったロナウドは次に切り替えられるけど、テリーはそうもいかない」 「試合終了後は泣きじゃくっていて、精神的に壊れた状態だった」 「120分トータルでは、テリーの方がむしろいいプレーをしていただけになんとも言えない気分になる」 「ロナウドは、守備の負担もあって、どんどん下降線やったしな」 「その点で言えば、ファーガソンの采配では、先発からロナウドを左で使うことに関する勝算はどうだったのか、そして、ロナウドを左から中央に移す交代を行わなかった理由はなんだったのか。この二つのことが非常に気にかかる」 「誰かインタービューで聞いて欲しいところやな」 「そんなこんなで」 「今年は、ドラマチックかつ残酷な幕切れであったというところで」 「また次回」 「ユーロにて」 「ご機嫌よう」
マンチェスター・ユナイテッド対チェルシー
ゲームプラン チェルシーの先発は、非常に高い確率で次のようになる。 左にカルーを置けばカウンターの威力が増し、マルダを置けば守備的に安定する。 チェルシーは、下のように引いて守る。 ボールを奪った後、ドログバへ、もしくは、サイドへのロングボールからカウンターを行う。 この目的のため、押し込まれた側と逆の選手は前に残る。 左サイドを攻められた場合、右のジョー・コールが高い位置を保つ。 チェルシーとしては、マンチェスターが短いパスをつないで攻めてくる方が望ましい。 これは、1-4-1-4-1は、相手ボランチへのプレッシャーをかけやすいシステムであり、1-4-4-2のパス回しを寸断するのに適しているからである。 中盤でボールをひっかけてカウンター。 これがチェルシーのパターンである。 ユナイテッドが、あえてそれに立ち向かうなら、下のような先発が考えられる。 1-4-1-4-1に対抗するためには、プレッシャーのかかりにくいディフェンスラインからの組み立てが鍵になる。 ここのため、サイドはブラウンよりもハーグリーブスの方が良い。 しかし、このように組まれる可能性は低い。 プレッシャーのかかる試合ではミスがでやすいことを考えても、相手の得意な土俵で戦う必要はない。 チェルシーのように、中盤の守備が堅いチームに対しては、そこを飛ばすのが最も簡便な対策である。 ディフェンスや、中盤のラインも無理に上げず、相手にボールを持たせる形にすればよい。 その方が、チェルシーにとっては苦手な形である。 この場合、マンチェスターの先発は以下のようになる。 チェルシーのドログバと比較して、クリスティアーノ・ロナウド、テベスはロングボールを受けるのに適しているとは言い難い。 その不利をおしてでも、中盤を飛ばす方が良い。 前半は、相手の固い部分を避け、スペースの生じる後半に勝負をかけるのが妥当である。 交代:チェルシーが不利な場合 左にマルダを置いた場合、チェルシーの先発は次のようになる。 チェルシー不利の場合、つまり、得点が必要な場合の交代は次のようになる。 さらに時間が進んだ場合、中盤の選手を外してシェフチェンコを入れる。 これに対し、マンチェスターは、サイドの選手を代えて対抗する可能性が高い。 最終的に、テリーを上げたパワープレーも考えられる。 その場合、5バックで対抗するのが妥当である。 交代:マンチェスター・ユナイテッドが不利な場合 先発を次のように仮定する。 ここからマンチェスターが攻める場合、その変化は多岐に渡る。 例えば、サイドを代えるならば、下のような交代が考えられる。 疲れやすいサイドを、攻撃に有効な選手に代えている。 しかし、同じメンバーで、下のような配置も可能である。 相手のチェルシーは、守備において変化の少ないチームである。 ジョー・コールをカルーかマルダに代えた後は、80分過ぎまで交代を遅らせる可能性が高い。 これは、先発の状態で十分に守備を重視していることと、控えに先発以上の力を持つ選手が少ないためである。 その意味において、チェルシーの対応は読みやすい。 しかし、それに対して、上記のどちらが有効か、断言することは難しい。 ユナイテッドの攻撃における変化が多い理由は二つある。 一つは、前線で複数のポジションをこなす選手が多いためである。 もう一つは、ベンチに先発と同等かそれ以上の攻撃的才能を持った選手がいるためである。 このため、可能な組み合わせの数が非常に多い。 例えば、サハを使う場合、次のような形も考えられる。 選択肢が多い、というのは、一般的によいことである。 しかし、あまりにも多すぎる場合、迷いを生じさせる原因となる。 無数の可能性の中から、最適なものを選び出すのは常に難しい。 この試合において、戦術的に最も興味深いのは、マンチェスター・ユナイテッドがリードされた場面での交代と配置の変化である。 |
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