週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
[86] [87] [88] [89] [90] [91] [92] [93] [94] [95] [96]
「さて」

「下の流れから、どのようなパスが出たか、というのが問題であったわけだが」







「正解はこう」



「ピンクのパスをフェイントにして、ディフェンスを右につって、白い方向にパスを出す」

「その結果、キーパーとの1対1が生まれた」







「一対一をいっても、チェクの飛び出しが良く、そのまま点が決まったわけではないけどな」

「それにしても、今回のパスと、トルコ戦のパスは、まったく同じ手筋やな」





「おまけに、パスを出した選手は、同じヌーノ・ゴメス」

「そこが鍵やな」

「どこや」

「上手い選手の上手いプレーといっても、実は状況とそれを打開するアイディアは同じというところや」

「そこか」

「インサイドで出すか、スパイクの横で出すかといった技術の違いはあれ、それの根底にあるものは同じで、見方によっては、同じことを繰り返しているだけのことが多い」

「それを盗めば、我々もビューティフルなプレーができるということか」

「そうありたいところやな」

「見るのも楽しくなるしな」

「それは必ず楽しくなるな」

「見るといえば、パスが出るひとつ前のこのシーンは大切やな」



「なんでや」

「鑑賞のポイントとしては、ヌーノ・ゴメスにボールが入る前のディフェンダーの動き、つまり下の図のオレンジ丸でかこまれた赤い選手の動きが大切やろ」



「彼が、この状態で右につられているから縦に通るわけやな」

「もし彼がヌーノに詰めていたら、右に返すのが正解になる」

「そりゃそうやな」

「そのディフェンスの動きが、次のプレーを決定付けるわけだから、鑑賞側としては、ヌーノがボールに触る前にそれを見ておくと正しくプレーを味わえるわけや」

「さよか」

「ちなみに、スペインのあるマスコミで、”ヌーノ・ゴメスは、パスを半分ミスしたから上手くいった”と言っていた」

「とんでもない話やな」

「右に返そうと思ったボールを蹴り損ねて縦に出たから偶然上手くいった、ということをいいたいのだと思うが、トルコ戦から考えても、足の動きを見ても、明らかに意図的なプレーやで」

「その辺りは、こちらの動画でご確認いただければと」

「要するに、上の発言をした人は、正しくプレーを鑑賞できていない」

「ご不満のご様子やな」

「あんな発言をしては、ヌーノ・ゴメスに失礼というものやで」

「不満といえばだな」

「なんや」

「この試合でもちょっと不満なことがあってだな」

「愚痴か」

「多少そうやな」

「よろしくないな」

「分けて書くか」

「その方がええな」

「では、愚痴編はこちらというところで」

「また次回」

「ご機嫌よう」
「よし」

「よしってなんや」

「お前の愚痴とやらを聞こう」

「そんな大そうなもんでもないねんけどな」

「遠慮せずに言え」

「チェコの得点は、コーナーキックからやったやろ」

「そうやな」

「具体的には下の形から決まった」



「赤いのがチェコやな」

「これは、オープン、つまり、ゴールから遠ざかるように蹴るコーナーで一番入る確率が高いと思われるプレーがそのまま使われている」

「ニアポスト側に二人入れて、その後ろにスペースを空けてそこで叩くとうやつやな」

「オレンジで囲まれている選手がニアポストに二人、その後ろに白い点線のスペースが空いていて、まさに理屈どおりなんやな」

「その辺りの詳しい話は、コーナーキック関連の文章をお読みいただくとしてだ」

「実際に試合場にいれば問題はないが、テレビではこのプレーが実にわかりにくい」

「それはしかたないな」

「コーナーキックの時に、一番良くある画面の切り替えというのは、下の感じやろ」





「ボールを蹴るまでキッカーを大写しにして、次の瞬間引いた映像に切り替えるという手法やな」

「これは、コーナーキックを味わうには最悪の方法やろ」

「まあ、蹴る前の中の配置と動きは非常に大切やしな」

「その一番大切なところを無視して、写しても写さんでもどうでもいいキッカーをクローズアップするとはいかなる魂胆かと」

「画面上の動きの問題ちゃうかね」

「ぜひともこのような映像作りはやめていただきたいと願うわけやな」

「それが不満か」

「実はもう一つある」

「言ってみろ」

「スイス対トルコの試合やねんけどな」

「トルコが終了間際に劇的な逆転勝ちを決めたやつやな」

「スイスの人はなにをやっておるのかと」

「どういうことや」

「前半はつばぜりあいが続いて、途中から大雨になったやろ」

「すごい降り方やったな」

「それで、ピッチに水が浮いて、全体が水溜りになったわけや」

「走るたびに水しぶきが上がり、パスは地面につくとべしゃっべしゃっと止まる。実に楽しそうであった」

「そういう状況では、明らかにスイスが優勢だった」

「そうやな」

「まず、そういうピッチでは、ボールが止まるので、テクニックが発揮しづらい」

「細かくドリブルをしようとしても、ボールが止まるので置いていってしまうし、細かくパスをつなごうとしても、途中で止まってしまう」

「そうなると、大雑把なサッカーしかできない」

「ボールが止まるから、当たり合いが増えるし、短くつなげないからロングボールが増える」

「そうなると、体が大きく、そういうサッカーに適しているスイスの方が強い」

「トルコは軽量級が多いからな」

「おまけに、雨そのものに慣れているスイスは、その状況での戦い方を熟知している」

「相手とは雲泥の差だった」

「具体的にいうと、下のようになる」



「青い線が行うべきプレー、赤い線が行うべきでないプレーか」

「まず、上の右側から見ていくと、こういうときはキーパーにバックパスをしてはいけない」

「途中でボールが止まると酷い目にあうからな」

「おまけに、PKスポット付近というのは、一番水溜りができやすい場所だから、そこにボールが止まりやすい」

「一番芝が荒れてるからやな」

「次に、細かいドリブルをしてはいけない」

「ボールを置いてけぼりにして、相手に取られてしまう」

「では、どうするかというと、一番左のように、前に蹴ってはそれに追いつき、前に蹴ってはそれに追いつき、という方法で前に運ぶといい」

「少々強く蹴ってもどうせ途中で止まるから追いつく」

「そして、ひたすらディフェンスラインの裏に放り込む手段が一番有効になる」

「普段ならゴールラインを割るボールも、べちゃっべちゃっとバウンドするたびに止まるから、その心配がない」

「スイスの選手はそれをよくわかっていて、先制点もまさにそこから生まれた」

「このビデオやな」

「それに対して、トルコはついつい細かいことをしようとしてボールを失っていた」

「慣れてないから、状況への対応がおくれたんやな」

「緒戦を負けて、敗退の縁に立つスイスにとっては、まさに天の恵みだった」

「ほんまにそうやな」

「1-0とリードして前半を終わる」

「スタンドも大満足」

「どころがだ」

「どうした」

「ハーフタイムでは既に雨がほとんど上がってしまった」

「不思議な夕焼け空になったな」

「これはよくない」

「最近のスタジアムは、素晴らしく水はけがよいから、15分もすればかなりいいピッチコンディションに戻る」

「これはスイスにとってよろしくない」

「困ったところやな」

「困ったというなら、なにかをすればいい」

「なにをするんや」

「スタジアムの排水を止めてしまえばいい」

「無茶なことを」

「すでにリードを奪っている。ボールが止まる状況の方が点は入りにくい。おまけに水が浮いていた方がスイスにとって有利である。以上のことを考えれば、それが一番勝つ確率が高い」

「そりゃそうやけどな」

「おまけに、スイスは自国開催だから、スタジアムの排水設備を止めるなど朝飯前」

「まあな」

「なぜ止めなかったのかと」

「きっと心の正しい人たちなんや」

「開催国がグループリーグで敗退したら盛り上がりに欠けるから、勝つために全力を尽くすのは義務みたいなもんやで」

「きたない技を使いたくなかったということではないかね」

「両チームともに同じ条件で戦うわけやからきたなくもなんともないやろ」

「トルコは排水設備をいじれへんしな」

「そこをどうにかできるから、自国開催はええんやないか」

「まあな」

「それを真面目にピッチ整備までしてどうするのかと」

「実は排水を止める手段がなかったとか」

「そんな設計があるかいな」

「まあ、スイスの人は正直であるということやな」

「そうなんかね」

「レアル・マドリーなんかは、雨も降ってないのにピッチを水浸しにしたあげく、排水を切ったことがあるけどな」

「そこはえらい違いやんな」

「やっぱり心正しい人々なんや」

「そんなこんなで」

「また次回」

「ごきげんよう」
「前回のユーロに引き続き、スペイン対ロシア」

「今回もスペインが勝利した」

「先発はこう」



「ちなみに、前回はこう」



「システムも違えば選手も違う」

「当然といえば当然やな」

「しかし、ロシアにいたっては、先発11人全部違うで」

「それはちょっと凄いかもわからんな」

「スペインは、ユーロ前のペルー戦とほぼ同じ布陣やな」

「ちなみに、ペルー戦はこう」



「シャビ・アロンソをセナに代えたわけやな」

「中盤をカバーするための自然な選択かと」

「前の形だと、みんな行きっぱなしになりかねない」

「その辺りはペルー戦を参照していただくとして」

「システムの眼目はその時と変わらず、右のイニエスタを中に入れて、そこから崩していこうというものだった」

「しかし、それは封じられた」

「封じられた理由は後から見るとしてだ」

「うむ」

「19分にスペインが先制する」

「ビジャのゴールだった」

「その後の布陣が面白くて、次のようになった」



「完全に自陣に引いた1-4-4-1-1やな」

「1点リードしただけで完全に引く、というのはこれまでのスペイン代表にはない姿やな」

「カウンターから逃げ込みを狙う、まことに正しい姿ではある」

「それは、試合終了まで変わらなかった」

「その証拠に、この試合のボール保持率は、スペインが46%、ロシアが54%」

UEFAの調べによると、スペインが8%負けている」

「これは驚きのデータやな」

「普通にやれば、スペインがボールを持ってロシアが守るはずやから、逆になるはずやな」

「その理由は簡単で、スペインがしっかりと引いたもんだから、ロシアはハーフラインの前方のスペースでいつまでもボールを回すことができた」

「その最中にミスが出るのが困りものやったんやけどな」

「スペインは、そのミスに乗じてカウンターからチャンスを作り出す」

「リードしたまま試合は進み、62分までに下のようになる」



「トーレスとイニエスタが外れて、セスクとカソルラが入る」

「これも、ペルー戦で見られた配置やな」

「今のスペインは、イニエスタを右に置いてそこを起点にするパターンと、トップ下にセスク、右にカソルラを置いて、一般的な1-4-4-1-1で戦うパターンが存在する」

「この試合では、相手の左サイドバック、ジルコフが攻撃で非常にいいプレーを見せていたので、それを押さえるためにもカソルラの方がいい」

「ジルコフは、イニエスタを後ろに引っ張るというスペイン対策としてもいい働きだった」

「おまけにセルヒオ・ラモスでも止めるのに苦労していた」

「あれだけ苦労するセルヒオ・ラモスというのもあまり見たことがない」

「それはそれとして、先制した後、引いてからのカウンターという手が見事に決まって、4-1で快勝した」

「まずはめでたいと」

「うむ」

「次に、ロシアの方を見てみる」

「ペルー戦で大活躍をしていた、スペインの右サイドを非常に警戒した布陣だった」



「右は、イニエスタを左サイドバックのジルコフが、セルヒオ・ラモスを左中盤のビリアレトジノフがマークする」

「中央では、シャビをセムショフとパブリュチェンコが、セナをズリアノフがマークする」

「パブリュチェンコは、マルチェナもケアする」

「そのようになっていた」

「ここで一つ不思議なのは、ロシアの中盤のラインで、20番のセムショフが少し凹んでいた」



「システムを1-4-1-4-1だと見ると、確かにセムショフの位置が他の選手より低い」

「1-4-2-3-1だと見ても変で、明らかにセマクよりも高い位置にセムショフがいる」

「これはどういう意図なんやろな」

「天地は逆になるけど、スペイン対策で1-4-1-4-1に組んで、中に入るイニエスタをケアする方法があったやろ」



「中に一枚置いて対応するやり方やな」

「ロシアのように組めば、その一枚が左サイドに寄るのでイニエスタに対処しやすい。これともう一つは、シャビのところにパスを集めさせて、セムショフとパブリュチェンコで挟む狙いがあったのではないかと思う」

「思うだけか」

「本当のところは、監督のヒディングに聞かないとわからないので、どなたか聞いていただきたいと思う次第やな」

「イニエスタに対する守備としては、まず、彼が単純に中へ入った場合には下のように対処する」



「ジルコフがついていき、中でセマクと挟む。そこへ17番のズリアノフが下がってきて、ボールを奪ったらカウンター」

「その時、上がってくるセルヒオ・ラモスには、ビリアレトジノフがつく」

「ビリアレトジノフの名前がどうにも覚えられなくて困る」

「歳やな」

「なんにしても、先制を許す前は、いいカウンターがでていた」

「イニエスタが本当に中央に行った場合の守備はこうなる」



「普通に中盤がボールに寄せて、ジルコフがサイドに残ってセルヒオ・ラモスをケアする」

「これにより、スペインの右サイドを抑えた、という点ではロシアの作戦は成功だった」

「しかし、17分に失点して話が変わる」

「その失点は、センターバックのパスミスからだった」

「14番のシロコフがほぼフリーの状態で前方へパス」

「それが相手のカプデビラに直接渡った」



「ワンタッチで前方へパス」



「そこにトーレスが走りこんだところから悲劇は始まった」



「トーレスを追いかけた8番のコロジンがショルダーチャージ」



「これでボールがルーズになり、ディフェンスがクリア」



「ところがどっこい、これをトーレスがカット」



「ボールは中央へ」



「トーレスが回収してパス」



「走りこんだビジャが無人のゴールに決める」



「ロシアとしては最悪のミスやな」

「ヒディングが試合後、”チームが未成熟だった”といったのは、こういうことやろな」

「これだけじゃなくて、パスミスは非常に多かった」

「それも、絶対にやってはいけないたぐいのミスやな」

「それにしても、ロシア人というのは堂々とミスをする」

「俺様のパスが通らないわけがない、という態度でミスが出るところがなんともいえない」

「最初のパスミスはそうやな」

「次のクリアミスは、体勢が崩れていたせいではある」

「あれは、トーレスに当たって中にこぼれたように見えるが、実はそうではない」

「ただの偶然ではないな」

「トーレスは、意図的に足を出している」

「この場面か」





「二人のバランスを見るとわかるように、白い方はつんのめりになっているのに、赤い方はバランスを崩さず足を出している」

「ショルダーチャージの後、バランスの回復が早かったということやな」

「これを見ても、トーレスの体のバランスがよくなったことがわかる」

「そういえば、一つ謎があるんやけどな」

「なんや」

「このプレーの開始はこうやろ」



「そうやな」

「14番が右で、8番が左や」

「そうなっている」

「しかし、メンバー表では、その位置が逆やろ」



「そうやな」

「これはどうしたことかと」

「なぜかはわからんけど、この二人は試合中に頻繁にポジションを交代するんや」

「センターバックがか」

「そうなんや」

「珍しいな」

「どういう意図でやっているのか、さっぱりわからんけど、そうなんや」

「そうか」

「実は、この二人はロシアの弱点でもあるねんけどな」

「どちらも加速が遅いし、小回りがきかない」

「ビジャの3点目に如実にそれが出ている」

「後半のロシアは前に出たけど、センターバックがこれでは後ろが不安でたまらないところやな」

「おまけに、良くスルーパスで裏を取られていた」

「あれはスペインがうまいのもある」

「ただ、スペインのスルーパスはほとんど下のパターンやから、読めるで」



「ラインの前で一度横に動いて反航した選手に出すわけやな」

「反航についてはこちらが詳しいですので」

「ご一読いただければと」

「さて」

「うむ」

「スペインは強いのかね」

「相手のミスを確実に点につなげる、カウンターを確実にチャンスにつなげる、という意味では強かった」

「あのカウンターはこれからも続けるんやろか」

「ロシアはミスが出るから、それを待った専用の作戦かもしれん」

「テクニックがあるチームがカウンターに入ると強いもんやけどな」

「スペイン人の性格がそれに向くかどうかは疑問やけどな」

「まあな」

「スペインの4点を見ると、1点目は相手の大ミスと相手センターバックの弱さ。3点目は相手センターバックの弱さ。4点目は誤審。それらが大きな役割を果たしていて、それのないチームと対戦する時にどうなるかは予断をゆるさない」

「この布陣自体、ほとんど実戦例がないしな」

「はっきり言って、予選とは別のチームやしな」

「果たしてどうなるかと」

「うむ」

「そんで、ロシアはどうや」

「みんな落ち着いてボールを操るわりに、落ち着いたままミスをおかすという奇癖さえなければ強いで」

「そんな急には直らんやろ」

「ゴール前のアイディアなんか非常に面白いけどな」

「ミスで自滅するか否か、というところか」

「一つの方法としては、無理につながず、カウンター型に変えることはできるんやろうけどな」

「その辺りが注目というところで」

「また次回」

「ご機嫌よう」
「今大会注目の一戦」

「オランダ対イタリア」

「大方の予想をくつがえす結果になった」

「オランダの3対0」

「大差やな」

「まさに」

「とりあえず先発はこうだった」



「奇策はなしというか」

「両チームともに、メンバー表だけ見ると3トップになりそうではあるが、実際にはサイドを下げるのでそうはならない」

「開始のイタリアは、完全に1-4-1-4-1やしな」

「両サイドを上げると1-4-3-3になるけど、そうはならない」

「オランダの動きは下のようになる」



「スナイデルとファン・デル・ファールトで長くボールを動かし、カイト、ジオを長く走らせる」

「それをエンヘラールとデヨングが支える」

「オランダといえばポゼッションサッカー、つまり、ボールを長く保持することから相手を崩すサッカーで有名やな」

「このチームも基本的にそれを目指している」

「しかし、なによりも、カウンターの切れが凄まじい、というのがこの試合の結論だった」

2点目3点目は、絵に描いたようなカウンターから決まった」

「そのビデオは、日本から見られるのかね」

「その点は、お教え願えれば幸いかと」

「次に、イタリアの方に目を移す」



「カウンターを基調にして、ピルロからのパスで崩していこう、ということで間違いない」

「しかし、それは上手くいかなかった」

「先に点を取られたこと、ピルロをファン・デル・ファールトに押さえられたことが痛かった」

「自分から攻めなければいけない状況になったし、ファン・デル・ファールトはピルロと大のお友達のようにいつも一緒にいた」

「その状態で、どのような攻めがもっとも良かったかといえば、中に入るカモラネーシだった」



「下がって組み立てを助けては、前に出てドリブルから崩しのパスを入れ」

「実にいい働きだった」

「ここで、ガットゥーゾを代えて、誰かにパスをさばかせる、というのはあかんのかね」

「いや、十分にあるというか、それが普通の手やな」

「そして、63分、デル・ピエーロが左に入る」



「後半のイタリアは、球際の激しさを前面に押し出し、中に入るカモラネーシ、左を上がるグロッソなどが良い攻撃を見せた」

「ピルロは、マンマークを外すため、中央を外れ、盛んにサイドに動いていた」

「ただ、その影響もあってか、75分を過ぎて、ファン・デル・ファールトが疲れから動けなくなってフリーになる場面が増えたものの、パスがずれる場面が非常に多かった」



「ファン・デル・ファールトは完全に止まってしまった」

「ピルロにずっとついて、攻撃ではどんどんスペースに走って、あれで一試合は難しいと思うで」

「ところで、イタリアは弱いのかね」

「カウンターが使える状況なら、強いで」

「リードされてピルロを抑えられた時にどうするか、という話か」

「そうやな」

「逆に、オランダは強いのかね」

「カウンターが使えない状態で進み、ファン・デル・ファールトとスナイデルの体力が切れたらその後は難しいはずやな」

「となると、相手は耐久作戦でくるわけか」

「この後あたる、フランスとルーマニアは確実にそうやろな」

「小さいコンビの持久力が鍵ということか」

「その小さいについてやけどな」

「なんや」

UEFAのデータページにチームの身長についてのってるんや」

「それがどうした」

「それを見るとわりと面白い」

「これか」



「上は、チーム平均身長で、国民平均身長世界一であるはずのオランダは、それほど高くない」

「ほぼ大会平均と同じやな」

「さらに、身長の分布図が興味深い」



「左端のオレンジ色が175cm未満の選手やな」

「いわゆる、小さい選手や」

「オランダより多いのは、スペイン、フランス、ポルトガル、トルコの4カ国か」

「オランダは、国民の身長が高い国のはずなのに、小さい選手の割合が大きい」

「上の4国は、生物学にある、赤道に近づくほど個体が小さくなるの法則と矛盾していないのが面白いな」

「さらに、右の水色の部分も面白い」

「185cm以上、いわゆる大きい選手の割合か」

「これも平均でしかない」

「大きい国のわりに、大きい選手をそれほど使わないということか」

「これはつまり、オランダがポゼンッションサッカー、ボールをつなぐサッカーを標榜しているため、小さくてもテクニックに優れた選手を好む傾向があることを示している」

「とは言えへんやろな」

「まあな」

「国民平均身長が大きい、サッカー選手も大きいはずだ、あまり大きくない、これはオランダがテクニックを重視するからだ、というのはあまりにも短絡的やしな」

「国民の平均とサッカー選手の平均でどの程度の差があるのか、国民の分布と選手の分布に差異はあるのか、それが国によってどう違うのか、監督によって代わるのか、年代ではどうなのか、といったことがわからんとなんとも言えへんしな」

「その辺をきっちりやれば、修論にはなるんちゃうかね」

「題名は、”オランダにおけるサッカーフィロソフィーによる身長選別に対する影響について”とかかね」

「じゅげむじゅげむみたいな題やな」

「そんなこんなで」

「また次回」

「ご機嫌よう」

「今回は、ルーマニア対フランスに関する簡単な分析もありますので」

「そちらもどうぞ」
「ルーマニアとフランスの試合は、今大会初の引き分け」

「おまけにスコアレス」

「攻撃面では、実に低調な試合だった」

「スコアの額面通りというかなんというか」

「先発はこう」



「まず、ルーマニアに注目する」

「試合開始直後のルーマニアは、システムがわかりずらくなかったかね」

「なんかへんな形に見えたな」

「その原因は、まず左前のムトゥやな」

「監督の頭の中では、1-4-1-4-1のはずで、ムトゥは下の図の半透明な位置にいることになっている」



「ところが、時間の経過とともに中途半端な位置に浮いていく」

「それで少し変な形に見える」

「1-4-1-4-1では、作戦としてサイドを浮かせることもある」

「この試合はそうじゃなくて、監督の指示に承服しきれないムトゥが勝手に浮いただけやと思うで」

「もう一つ、ルーマニアのシステムがわかりにくい原因は、マンツーマンを重視したディフェンスにもある」

「一度マークにつくと、ゾーンを越えてマークし続けるので、位置関係がわかりにくくなる」

「センターバックなんかフォワードが下がると、どんどんついて行くしな」

「そのセンターバックの穴は、ラドイが下がって埋める」

「マイナスに戻るボールに対しても、ディフェンスラインもあまり上げず、非常に古風ともいえる守備方針やな」

「攻撃では、キヴが要になってパスを回す」

「センターバックのタマーシュのクリアボールも攻撃の起点になる」

「ただ、前線が弱い」

「ムトゥは自分の役割に納得しておらず、ダニエル・ニクラエではフランスのディフェンダーに歯がたたなかった」

「この試合で、フランスキーパーのクペのセーブがゼロというのがそれを物語っている」

「相手の対策としては、キヴさえ潰しておけば大丈夫というのはある」

「それについては、フランスの方の動きが面白かった」

「先発の構造はこう」



「構造といっても簡単なもので、トゥラランが長いボールを蹴って、マケレレが前にでてボールを散らす。サイドは縦に走るという形やな」

「マケレレにさばかせてどうするという気もするな」

「そうはいっても、昔より狙ったパスが多くてええ感じやで」

「そりゃチェルシーでそうせざるを得ない状況が多いからであって、もともと上手いわけではないから限界がある」

「しかしまあ、フランスの攻撃の単純さというか変化のなさは際立っていた」

「ここにジダンを投入すれば凄いんやろうけどな」

「後ろが固いのは確かやしな」

「フランスはどうにもならんなあ、という感じで進んで、その交代が実に興味深かった」

「フォワードのアネルカ、ベンゼマを外して、ゴミスとナスリを入れた」

「そして、次のようになる」



「交代の後の前線の動きは目をみはるものがあって、キヴとラドイを厳重にマークしていた」

「まるで引き分けを狙いに行くような作戦やな」

「本当に勝ちに行こうと思うなら、前線を守備の負担から開放して、相手にある程度やられるけど、こっちはそれ以上にやり返す、という方法の方がいい」

「ところが、この負けない作戦」

「それほど叩きあいに自信がないんやろか」

「どうなんやろな」

「残りの相手が、イタリアとオランダであることを考えると、ここは思いっきり勝ちに行くべきではないかね」

「それで自分がこけたら元も子もないという考えやろな」

「その判断が正しいのか否か、今後の注目というところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ごきげんよう」


Copyright (C) 2005-2006 SAMURAI-FACTORY ALL RIGHTS RESERVED.
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新コメント
(05/21)
最新トラックバック
プロフィール
HN:
studio c60
HP:
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター