週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
「崖っぷち対決となったフランス対イタリア」
「イタリアが勝利」 「ルーマニアがオランダに負けたことから、トーナメント進出が決まった」 「ルーマニアは残念だった」 「戦力的に劣勢な中、粘りに粘って最終節に望みをつないだんやけどな」 「これで、スペインの対戦相手はイタリアと決まった」 「それもまた難儀なことやな」 「先発はこう」 「フランスはリベリーを左に置いた」 「そこから内側に入れてボールを集めようということで、形こそ違え、狙いはオランダ戦とかわらない」 「ことろが、前半10分で彼が交代する」 「突然ピッチに倒れこみ、足に猛烈な痛みを訴えた」 「骨折ではないかといわれている」 「代わってナスリが入った」 「しかし、これは困る」 「リベリーを中心に相手を崩すはずが、その彼がいなくなってしまった」 「フランスは、この後、ナスリにボールが入らず、右サイドをごりごりと進むことになる」 「フランスの計画は丸つぶれ、イタリアは楽にディフェンスできるので大喜び」 「これだけでも十分にまずいのだが、それに追い討ちをかける出来事が起こる」 「23分にラインの裏に抜けたルカ・トニをアビダルが倒して退場」 「おまけにPK」 「ピルロが決めて1-0」 「攻撃の要を怪我で失い、退場で一人少なくなったあげくにリードを奪われた」 「困ったを通り越して絶望的な状況やな」 「フランスは、アビダルにかわるセンターバックを入れる」 「10分にリベリーと代わったナスリは、わずか15分で再びベンチに下がった」 「その直後のフランスは、1-4-3-2」 「点を取りたいから前に2人残した」 「しかし、これはイタリアを相手にすると良くない形で、ザンブロッタからファーサイドのトニに合わせられて酷い目にあう」 「ルーマニアも同じような形でやられていた」 「これはたまらん、ということで、ベンゼマを左に下げた」 「一人少ない場合の常識的な形になったわけやな」 「このベンゼマを下げたことは、攻撃面でも良い効果があった」 「彼が左から持ち込むことで、ボールがわりと楽に前へ進むようになった」 「ただ、そこからが問題で、ペナルティーエリアの前まではくるが、そこから最後の決めるプレーが出ない」 「リベリーがいない影響やな」 「得点は動かないまま、時は流れて55分」 「ドナドニは、ピルロをアンブロジーニに代える」 「さすがというかなんというか」 「相手が一人足りない状況でも、中盤に穴をあけないことを第一に考える」 「第一戦で見せた性格的な癖がここでも見られた」 「イタリアらしいといえばイタリアらしいねんけどな」 「らしいといえば、この試合のデータも非常にイタリアらしい」 「UEFAからの図やな」 「これだけを見ると、ゴール以外のデータは非常に競っていて、とてもどちらかが10人で戦っていたとは思えない」 「ボール支配率なんかは、むしろフランスの方が上やな」 「70分近く一人少なかったチームが支配率でまさるっている」 「おまけに、シュート数にもほとんど差がない」 「ただ、そのシュートに関しては、さすがにイタリアというデータがある」 「これはなんだ」 「同じUEFAからのデータで、左側がイタリアがシュートを打った場所、右がフランスのそれをあらわしている」 「ふむ」 「イタリアは、一番シュートを打たせたくないゾーン、つまり、赤で囲まれたゾーンで一本も打たせていない」 「言葉を返せば、フランスのシュートは、打たれてもあまり怖くないゾーンから打たされていたということか」 「やらせるところはやらせるが、最後の肝心な場所はゆずらない。イタリアの守備の良さが存分に出たデータではなかろうかと」 「リベリーがいれば、そこをなんとかできたかもしれんけどな」 「フランスにとっては、とことん不幸であったと」 「その、不幸とか不運とかについてやねんけどな」 「なんや」 「最初のルーマニア戦で、勝ちにいかへんかったやろ」 「同点でフォワードを代えるには代えたけど、ひたすら守備に使ってたからな」 「それなのに、この試合で下のように組んだ瞬間は、博打に出てるわけやろ」 「一人少ない状態で、フォワードを下げへんのやからそうやな」 「ここで、勝ち目の薄い賭けに出るくらいなら、ルーマニア戦で無理にでも勝ちに行った方がよかったということになる」 「結果論やけどな」 「結果論というか、このこと自体が、賭けに出ることのできるうちに賭けておかないと、後から賭けに出られるとは限らない、ということの教訓やと思うけどな」 「さよか」 「なんにしても、イタリアがスペインの相手と決まった」 「両チームの先発を単純に向かい合わせると下のようになる」 「ピルロがおらんな」 「イエローで出場停止なんや」 「それはスペインにとって朗報やな」 「そうでもないと思うで」 「なんでや」 「受けを第一に考えるドナドニとしては、スペインのようなチームを相手にする時は、特に中盤での守備を第一に考えたい。そうなると、ピルロを外したくなる衝動にかられるはずなんや」 「ほんまかいな」 「だから、むしろピルロがいないことで思い通りの布陣を採用できる意味はある」 「どうなんやろな」 「ドナドニにとっては、ピルロよりガットゥーゾの出場停止の方が頭が痛いんとちゃうかね」 「そういう趣味か」 「そういう趣味やろ」 「まあ、妄想の域を出んけどな」 「まあな」 「なんにしても、1-4-3-1-2のように組んでくれるなら、サイドから攻めるのが好きなスペインとしては悪くない」 「しかし、イタリアはこうは組まんのではないかと思う」 「どうするんや」 「初心にかえって1-4-1-4-1に組むんや」 「そうきたか」 「下の形で、サイドからこられるのは嫌だから、それを避けるわけや」 「最近のセルヒオ・ラモスはあんまり上がらんけどな」 「次の試合でも上がらないという保障はない」 「しかし、上のように組まれるとスペインは困るな」 「自分が1-4-4-2で、相手が1-4-1-4-1だと、崩しきれない試合が非常に多い」 「ルーマニアとの親善試合や、アイスランド戦もそうだった」 「崩したといえば、デンマークとの試合かね」 「ただ、その時は、スペインの方もシステムが違う」 「まあな」 「スペインにとっては、ルカ・トニへのロングボールも非常にこまる」 「こういうボールに弱く、押し下げられると非常に脆い、というのはスウェーデン戦でも見られた」 「こう見ると、スペインが勝てそうな気がしない」 「どうにかせんといかんな」 「どうにかって、どうするんや」 「相手がスペインの中盤を潰しに来るとしたら、こっちから出て行かないというのはどうや」 「逆転の発想か」 「スペインもカウンター待ちで、下のように組む」 「これをやると、シャビ、セスク、イニエスタ、シャビ・アロンソといった選手をなぜ連れてきた、という話になるで」 「それは言わん約束や」 「おまけに、これならサイドにフアン・ロドリゲスとか連れて来た方がええんちゃうか」 「それも言わん約束や」 「ついでに、アラゴネスの性格からしても、これはないやろ」 「引かへん人やからな」 「相手が出てこないなら、無理にでも潰してやろう、というのがいつもの行動パターンやからな」 「例えば下の形か」 「セナの代わりにシャビ・アロンソを入れて、さあどうだ」 「どうだ」 「本当にやりそうで恐いな」 「今回は、ロシア戦のように引いた事実もあるし、こうはならんのちゃうかな」 「ドイツでのフランス戦の教訓もあるしな」 「そんなこんながどうなるのか」 「22日のお楽しみというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」
「クロアチアは3連勝」
「当然、1位通過」 「この試合では、ドイツ戦から9人も入れ替えて勝利した」 「見事であるな」 「先発はこう」 「クロアチアは、はっきりとした1-4-4-2」 「ポーランドは微妙やな」 「システム原理主義を持ち込むと、1-4-2-3-1か1-4-1-4-1かでもめるやろな」 「ゲレイロとムラフスキのポジションがその間みたいなもんやからな」 「ゲレイロがブコエビッチ、ムラフスキがボクリバチにプレッシャーをかける。押し込まれたら、ムラフスキがレワンドフスキの横に戻る」 「そんな役割やな」 「ポーランドは、結局、グループリーグを突破できなかった」 「いいチームやってんけどな」 「最初の試合では、勝ったドイツよりも目を引くチームやったしな」 「グループリーグ3試合で、一つ面白い現象があった」 「なんや」 「ポーランドのディフェンスラインは、毎試合組み合わせがかわり、それも、全部の試合で先発と最終の組み合わせが違う」 「上が先発で、下が最終か」 「そうやな」 「これは、珍しいかもわからんな」 「おそらく、ドイツ戦の前半、オーストリア戦の後半の組み合わせが最もよかったと思うのだが、オーストリア戦でなぜ先発を組み換えたのか、その理由は非常に興味がある」 「オーストリア戦の前半はびっくりするくらい裏を取られてたしな」 「その辺りは、監督インタビューで聞いてみたいところやな」 「次に、ゲレイロのことがある」 「ポーランドに来たブラジル人やな」 「ドイツ戦では、途中から出場し、主に右サイドに流れて活躍した」 「それは、UEFAページのデータにも出ている」 「この絵はなんだ」 「ゲレイロのプレーゾーンを表していて、茶色が濃いほどその場所によくいたことを表している」 「ポーランドは、右から左に攻めているのか」 「絵の右上に<POLと書いてあるのが攻撃方向を示している」 「つまり、ゲレイロは、ハーフラインより前、中央より右でプレーしていたということか」 「そうなる」 「この試合でよいプレーを見せたことから、次のオーストリア戦で先発する」 「ほぼセンターサークル付近か」 「中央でのプレーが多く、ドイツ戦で見せた右に流れる痕跡はない」 「むしろ、わずかながら左に流れた形跡がある」 「そして、クロアチア戦」 「センターサークル付近、ハーフラインより前が多いな」 「ここでも右に流れた痕跡はない」 「ないな」 「これはどうだったのかと」 「ゲレイロを使うなら使うで、彼の得意なゾーン、つまり右に流して使った方がよかったのではないかということか」 「あのタイプの選手は、特徴を最大限に発揮できる場所で使った方がよい場合が多い」 「ただそうなると、右サイドも含めて、チーム全体の動きを代表に入ったばかりの彼に合わせないといけなくなるので、なかなか難しいのではないかね」 「ポーランドのパスポートを取得したのが20日くらい前らしいからな」 「そんな新しい選手のために全体を組み変えるのはなかなかできんで」 「まあそうやけどな」 「ポーランドの前線で自然にボールをキープできるのは、スモラレクとゲレイロやけど、この2人の使い方が今ひとつ定まらなかった感はある」 「この2人を、相手が疲れる後半まで取っておくような手も有効だったかもしれん」 「次のワールドカップに向けての楽しみではあるな」 「一方、クロアチア」 「この日のクロアチアは、左サイドから主に攻めた」 「特に中央でボールをキープした後、ラインの裏に出るプラニッチからチャンスを作った」 「フォワード2人にボールが入ると、ほぼ間違いなくキープできたのも大きい」 「その辺は、ポーランドセンターバックにも問題がある」 「今後のクロアチアは、まず間違いなく下の形がベースになる」 「ドイツ戦やな」 「守備では、基本的に相手にプレッシャーをかける」 「下の形やな」 「相手サイドバックがボールを持った時の図であるな」 「一部で3-3と呼ばれるプレッシャーのかけかたで、この形からボールを追い込んでいく」 「もし、先制した場合は、相手によって下のように引く」 「1-4-4-1-1か」 「この場合、相手は無理に攻めず、後ろできちんとつなぎながら崩した方がよい」 「クロアチアが攻める場合、下の形が基本になる」 「一つの特徴として、サイドバックが良く上がる」 「中盤では、モドリッチが大きく動いてパスを引き出し、味方に送る」 「相手としては、モドリッチをぜひ止めたい」 「止めるといっても、あれだけ動かれるとなかなかマークしづらい」 「守備だけを考えるなら、1-4-4-1-1か1-4-1-4-1で彼が動いた方のゾーンをどんどん狭くしていくといい」 「あとは、上がってくるサイドの裏をどのように突くか」 「流れて上手いフォワードを動かすか、サイドのスペースに後ろから速い選手を入れるか」 「そういった点が楽しみやな」 「ドイツを倒したクロアチアの今後と、対戦相手の対応が楽しみだというところで」 「また次回」 「ごきげんよう」
「トルコが2点のリードを奪われて、75分から逆転勝ち」
「イスタンブールは狂喜乱舞らしい」 「そりゃそうやろな」 「先発はこう」 「赤い方がトルコで白い方がチェコ」 「前半は、完全にチェコの試合だった」 「トルコは、完全に相手のディフェンスにはまっていた」 「下の形やな」 「1-4-1-4-1で守られると、中盤でのプレッシャーがきつい」 「よって、ボランチでゲームを組み立てるということが非常にやりづらい」 「そうなると、それより下がったところからパスを出すことになる」 「しかし、相手の中盤が多いので、間を通そうと思ってもなかなか隙間がない」 「それならサイドから行きたいところだが、そこも寄せが早いので、なかなか前に進むことができない」 「そうなると、上の図の赤い矢印のようにどうしてもロングボールを蹴らざるをえない」 「この辺は、チャンピオンズの決勝と同じ理屈やな」 「これはトルコにとって良くない」 「トルコのフォワードと、チェコのセンターバックの高さの差は明らかで、まったく勝ち目はない」 「実際に勝てなかった」 「こういう展開が続くと、安全な場所、つまり、バックス間のパス交換が多くなる」 「とりあえずボールはキープできるからな」 「そこで、チェコは下の形で意図的に長いボールを蹴らせに行った」 「図の場合、左にいるシオンコが鍵やな」 「トルコの左センターバックのセルベトに右から遅いパスが入るタイミングを狙って、ハカン・バルタへのパスを切るように寄せていく」 「そうなると、セルベトは前に蹴らざるをえなくなる」 「赤い矢印のパスを狙ってシオンコが動くと」 「そういうわけや」 「チェコは、非常に上手くトルコを封じ込めた」 「そして、攻めるときは下の形」 「長いボールをコーラーに合わせてフォロー」 「とにかくこればっかりやな」 「今回のチェコの弱点は、カウンターができないことで、その原因は取ったボールを中盤でつなげないことにある」 「ボールを取ってさあ行こうか、という時に中盤でプレッシャーに負けてミスが出るから前にパスが出てこない」 「おまけにクロスカウンターをもらう」 「だから、コーラーの頭頼みになってしまう」 「先制点もコーラーの頭やしな」 「それは、こちらでご覧いただければと」 「ビデオではなく、ぱらぱら漫画に近いものですので、日本からのアクセスも問題ないかと」 「前半、トルコはほとんど手も足もでない状態でハーフタイムに突入する」 「後半開始から、トルコは選手を代える」 「セミフ・シュンテュルクが下がり、サブリ・サリュオールが入る」 「後半は、トルコの攻撃が明らかによくなった」 「まず、最初の要因は、左サイドのアルダにボールを集めたことだった」 「ボールを奪った後、なるべく早い段階で彼にボールをあずけ、チェコの体制が整う前にドリブルでしかけることが突破口になった」 「チェコの守備が崩れていない時でも、グリゲラを背負った状態の彼にボールを入れ、そこでデイフェンスを引きつけてからの展開を狙っていた」 「これは、一点突破型の状況打開法やな」 「アルダのキープ力とドリブル能力が鍵で、それがグリゲラに負けると一切攻撃が機能しなくなる」 「アルダが難しい役割をこなしたことで、トルコにチャンスが訪れるようになった」 「下がってくるシオンコが、彼のドリブルに弱いことも幸いした」 「それはあるな」 「そして、57分にトパルが下がり、カジム・カジムが入る」 「トルコは全体的に変な形やな」 「攻撃で、左右のバランスをわざと崩して攻めるから、守備でも変な形になるんやな」 「攻撃でなにを狙っていたかというと」 「下のようになる」 「カジム・カジムが右から中央に入り、ヤンクロフスキを引っ張る」 「その外から、サリュオールがウィングのような位置まで上がる」 「このことにより、プラシルを押し下げる」 「その結果、次のようなスペースがうまれる」 「右サイドにぽっかりと穴が空く」 「アルダを中央に入れてポラークを引き付けると、右に開くアルトゥントップを見る人間がいなくなる」 「こうなるとガラセクが対応しなければいけないのだが、中央もケアする分、どうしても遅れる」 「カジム・カジム登場後のチェコはよくここが空いていた」 「アルトゥントップにやられたのはそれが原因やな」 「その具体例が下の絵に見られる」 「サイドからアルトゥントップがクロスを上げた場面やな」 「確かにフリーになっている」 「そうやな」 「ここで、トルコの配置を見てみる」 「ふむ」 「上で説明したのと、ほぼ同じ形になっている」 「アルダがもっと右に来てるな」 「その時のチェコの配置はこう」 「プラシルとシオンコがいないな」 「この前に、カドレツ、プルチェクと交代している」 「チェコの配置は、トルコの計画通りか」 「正に」 「ここのクロスから、チェフが落球するわけやな」 「なんというか」 「ちょっと信じられんな」 「ハイボールに対するチェフというのは非常にうまいはずやけどな」 「上手の手から水が漏れるともいうしな」 「こぼれたのはボールやで」 「わかっとる」 「右前に斜めに走るアルトゥントップというのは、トルコの攻撃の手品の種のようなもので1点目もそこからうまれた」 「連続映像はこちら」 「なんにしても、作戦でいえば、トルコの圧勝だった」 「苦しい状況を、交代と作戦で打開した、という意味では、ここまでで最高の試合やな」 「それに、後半開始から左を攻めたのは、カジム・カジムを入れて右から攻めるための布石だった可能性が高い」 「もしそうなら、あまりにも見事で言葉がない」 「チェコは、チェフの落球も痛かったが、後半途中から中盤が前に出られなくなったことも痛かった」 「だれもボールに詰めないもんだから、ディフェンスラインがペナルティーエリアにかかって、その11m程前に中盤のラインがあるほどに押し込まれる」 「その押し込まれた状態でも、3m前にあるボールに対して出ることができない」 「疲労があるにしても、極端すぎる」 「それに、カウンターもできなかった」 「トルコの配置を見れば無茶攻めは明らかで、中央や右サイドに空いてるスペースをつけば、いくらでも前に行けそうな気がする」 「それが出なかったのは、中盤がプレッシャー下でパスをつなげないことと、コーラーがそこに流れてボールを引き出せなかったことが原因やな」 「動けなくなったコーラーを下げて、バロシュを入れたい場面やけどな」 「それができないのは、前半に選手が怪我をして交代を1枚使ってしまったことが大きい」 「39分にマテヨフスキーが下がり、ヤロリームが入った」 「後半動けなくなったのは、コーラー、プラシル、ポラーク、シオンコで、この4人に対して交代枠が2つしかなかった」 「つらいとこやな」 「運もトルコに味方していたといえなくもない」 「チェコは、ガラセクをディフェンスラインに入れてしまって、1-5-4-1のような形にした方が守りやすかったのではないかね」 「サリュオールが上がってくることを考えると、そうかもわからんな」 「なんにしても、戦術的に非常に学ぶことの多かった試合というところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」
「スペインは2連勝」
「グループリーグ突破も決まった」 「勝ち越し点が決まったのは、93分」 「その幕切れに、マスコミには劇的の文字が躍る」 「確かに、展開は劇的なものだったが、はたして内容はどうか、というところやな」 「この試合では、交代のチームに及ぼす影響が非常に良く出ていたので、その点を見ていきたいと思う」 「先発はこう」 「スペインは前も試合と同じ。スウェーデンは右サイドが変わっている」 「試合開始からは、スペインのペースだった」 「実に良くボールを保持した」 「しかし、ボールは持っているものの、中央の固いところを避けて外へ外へボールが流れた」 「赤がなくて青ばっかりということやな」 「スウェーデンは、マルチェナ、プジョルを空けて、中央に壁を置くようにしていたことも関係している」 「上の状態では、見た目は攻めていても、あまり有効ではない」 「それはシュート数にもあらわれていて、前半15分で、シュートは1本にとどまった」 「恒例のUEFAページから拝借した図やな」 「左から右に時間が流れて、目盛り1つが1分をあらわしてる」 「スペインのシュートは3分半の1本だということがわかる」 「しかし、15分に2本目のシュートでスペインが先制する」 「ショートコーナからトーレスやな」 「これで勢いづくかと思いきや」 「まったくの逆で、その後はまるっきりスウェーデンが優位に立った」 「ゴールを決めた後、スペインは次のシュートまで23分を要した」 「その間に、スウェーデンは5本のシュートを放ち、1ゴールを上げた」 「この押し返しの主役になったのは、やはりというか、イブラヒモビッチだった」 「点を取った後のスペインが、前から行くのか引くのか中途半端だったこともあるけどな」 「前半、イブラヒモビッチに通ったパスのトップ3は下のようになる」 「メルベリから5本、ストールとニルションから4本づつか」 「長め目のパスが、ディフェンスラインからイブラヒモビッチに良く入っていたことがうかがえる」 「これが、いかに多かったかというと、他のパスと比べるとよくわかる」 「これか」 「90分で、一番多かったパスは、ニルションからリュングベリへの9本、次は、メルベリからストールへの8本と、ストールからエルマンデルへの8本」 「イブラヒモビッチへのパスは、前半45分での数値やから、それと匹敵する数字なわけやな」 「いかに彼がキーであったかがわかる」 「それにしても、これをやられると、スペインはつらい」 「スペインの弱点がもろに出るしな」 「どんな形にせよ、中盤が押し下げられることに弱い」 「セナが入っても、今の組み合わせでは中盤でなかなかボールを取れない」 「その辺りは、ペルー戦をご覧いただくとして」 「25分には、プジョルが負傷する」 「交代はアルビオル」 「彼の方が高さに強い意味はある」 「しかし、39分にスウェーデンはイブラヒモビッチがゴールを決めて追いつく」 「前半は、スウェーデン優位のまま終わり、後半に入る」 「そこで、驚きの交代が出る」 「イブラヒモビッチが下がり、ローゼンベリが入る」 「なんと」 「最も大切な選手がいなくなってしまった」 「将棋でいえば、いきなり飛車と銀が盤上から消えたようなもんやな」 「将棋でいわんでもええけどな」 「理由は怪我か監督との喧嘩以外に考えられない」 「膝に痛みを抱えていたそうやから、その関係やろな」 「その結果、後半のデータはこうなる」 「スウェーデンは、45分とロスタイムあわせてシュートは2本のみ」 「交代で入ったローゼンベリに、後方から渡ったパスは次の通り」 「ストール、ハンション、ニルションから1本ずつのみ」 「メルベリからはゼロ」 「前半との違いは明白やな」 「3人合わせて75%オフみたいなもんやな」 「以上のことから、この試合のスペインの勝因はイブラヒモビッチがいなくなったことであると言うことができる」 「この試合、スペインは負けた方がよかったかもわからんな」 「なんでや」 「その方が修整に力が入るやろ」 「それはそうかもわからんが、この試合で、アラゴネスの交代がぴたりと当たったのは、心強い要素ではある」 「58分の二枚代えやな」 「シャビ、イニエスタのバルサコンビを下げて、セスク、カソルラを入れた」 「セスクもバルサ関係者やけどな」 「その結果、下のようになった」 「再びのデータ図か」 「明快にシュートが増えている」 「それにしても、58分で交代を3つ使い切るとは大胆やな」 「ギャンブラー・アラゴネスと呼ばれるだけのことはある」 「そして、そのアラゴネスと、ロシア戦で途中交代をめぐって悶着をおこしたトーレスはフル出場」 「めでたいことやな」 「そういえばや」 「なんや」 「ペルー戦で、トーレスとビジャのコンビネーションが見られない、という話をしたやろ」 「したな」 「それを読んだ人から、ロシア戦でその点を注意して見たけど真偽の程がわからなかった、その話は本当なのか、というメールが来たわけや」 「ほほう」 「そこで、次にそれを考えて見たいわけや」 「こちらをご覧下さいというところで」 「またお会いしましょう」
「さて」
「トーレスとビジャのコンビネーションについてやな」 「まず、二人の選手のコンビネーションが良い悪いを考える時に、もっとも単純な発想としては、どのくらいパスを交換したかを調べればいい、というのが浮かぶ」 「そこで、質問にあったスペイン対ロシアでの両者のパス交換を調べてみる」 「トーレスからビジャへが2本、ビジャからトーレスへは1本」 「ソースはUEFA」 「まあ、少ないと言っていい」 「最小限の交換という感じか」 「ただ、ここで考えるべきは、逆にパスの交換が多いからといって、コンビネーションが良いという証明にはならないということやな」 「例えば、下の図やな」 「相手がプレシャーをかけてこない状態で、前にパスコースがないと、センターバックの間で何本でもパスをつなげることができる」 「具体的な例は、ギリシャ対スウェーデンでのギリシャのバックスやな」 「攻めあぐねて、後ろでずっとパスを交換してブーイングを浴びていた」 「後半はデラスの位置を変化させることで、どうにかそれを打開しようとしていたけどな」 「上の例では、確かに二人の選手の間のパス本数は増えるが、これをもってコンビネーションがいいとはいえない」 「当たり前といえば当たり前やな」 「となると、コンビネーションとはなんだ、コンビネーションがいいとはなんだ、という話になる」 「定義で悩むというやつか」 「そこで、あれはいいコンビだ、と言われる条件を考えてみると、互いの考えが言葉を介さずに理解される、という要素が必須であることは間違いない」 「以心伝心というやつやな」 「じゃあ、サッカーにおいて何を理解するのかと考えると、いくつかの選択肢がある状況において、共通のものを選び出してそれに向けて協調して動く、という状態が互いを理解した状態であるということができる」 「プレーイメージの共有とその実行ということやな」 「例えば、上のセンターバックのパス交換は、この2人の間では一つのパスコースしか存在しないため、上の話で出てきたいくつかの選択肢から共通のものを選び出すという要素が抜ける。だから、これはコンビネーションが良いか悪いかの結論に対して証拠とすることができない」 「当たり前のパスやからコンビもなにもないということやな」 「すると、下の状態でのパスもコンビネーションが良い悪いという話とは無関係になる」 「これは、ロシア戦でビジャが決めたときにトーレスからパスが出た場面やな」 「この状態で、ビジャが走りこむ場所はディフェンスの間、エリア中央しかなく、これはビジャを世界中どのフォワードに代えてもこう走る」 「他の動きは考えられへんしな」 「上のように動く選手がいたら、それはフォワード廃業というより、サッカー選手廃業に近いものがある」 「別に廃業せんでもええと思うけどな」 「ビジャの走るコースが一本だと、それにあわせるトーレスのパスコースも一本になる」 「すると、選択の余地というものがなくなるわけか」 「だから、上のパスは2人の選手のコンビネーションがいいかどうかの議論に対しては有効性を持たない」 「要するに、当たり前のパスということかね」 「そこで、どんな動きやパスが良いコンビネーションといえるのか、その具体例を考えてみる」 「下の図か」 「青いチームは右に攻めている」 「今、右サイドから中央にボールが出て、それをワントラップした選手が左サイドを向いた状態をあらわしている」 「ここで、ボールを持っているのがグティ、1と書かれた選手をラウールであるとする」 「この2人の間にスルーパスが通ります。そのパスコースと、1番の選手の動きはどのようなものでしょう、というのが第一問になる」 「もっとも普通のコースは下のようにあらわされる」 「センターバックの間やな」 「しかし、グティとラウールの場合、こうはならない」 「ほぼ間違いなく、下のようになる」 「ラウールはバックステップを踏み、グティはサイドにパスを出すフェイクを入れた後、体の向きから90度を越えるような角度でスルーパスを出す」 「普通、こんな角度でパスは出せないし、出したとしても上手く通らない」 「ところが、グティはこれが非常に得意で、ラウールはそれを十分に知っている」 「この辺りについては、こちらが詳しく、こちらにも関係記事がありますので、それを読みいただくとして」 「この状態で、グティの方も、上のパスにラウールが合わせてくれることを知っている」 「ラウールはグティが出すと信じ、グティはラウールが受けると信じ、同じ選択肢を選んでいる。これが実現された場合、この2人は、コンビネーションが良いといっていい」 「まあそうやわな」 「次に、別の例も考えてみたい」 「下の図か」 「速攻から、サイドをうまく崩した状態で、ボールが移動した後の状態を、矢印の選手だけを動かしてあらわすと下のようになる」 「ふむ」 「上の流れで、ボールを持った選手を代表にも選ばれているセルヒオ・ガルシア、1のついた選手をディエゴ・ミリートとしてどのようなパスが出るか、1はどのような動きをするのか、というのが第二問なわけや」 「おそらく、もっとも普通のアイディアは下の流れやな」 「フリーのサイドに渡してクロスか」 「サイドでドリブルが入るか入らないかは別として、クロスが来る可能性が高いから、とりあえずファー方向に動きながら中に入るか、それをフェイントにして裏を取るか、どちらかを狙う」 「動きとクロスが合えば一点の場面やな」 「ところが、セルヒオ・ガルシアは必ずしもそうのような選択肢を選ばない」 「どうするかというと、下のように体を捻りながらヒールかなにかで無理やり中に入れる」 「これはどのような狙いかというと、1の選手がファーからニアに入って、ディフェンスが遅れればそのままシュート」 「シュートブロックに飛び込んでくれば、切り返してシュート」 「このような筋を狙っている」 「一度サイドに返さず、より直接的にゴールを狙っていくわけやな」 「フォワードらしいアイディアと言える」 「しかし、これは、1の選手が反応してくれないとすごいことになる」 「例えば、クロスが来ると思った場合の動きと重ねると、次のようになる」 「なんやねん、そのパスは、という感じになる」 「セルヒオ・ガルシアは、この手のちょっと人とは違うアイディアが持ち味なのだが、なかなか理解されない」 「ところが、ディエゴ・ミリートはこれがわかる」 「びっくりするくらいによくわかる」 「このような2人は、コンビネーションがいいと言える」 「ちなみに、上のような意思疎通が見られたのは、2シーズン前、ツートップを組んでいた時で、今年はセルヒオ・ガルシアが主にサイドでプレーした関係であまり見られなかった」 「こういう、阿吽の呼吸でプレーが完成した瞬間というのは、実に気持ちがええな」 「必ずしもプレーが完成しなくても、アイディアが通じただけで気持ちいいもんやで」 「そうなんか」 「例えば、フットサルでやな」 「いきなりフットサルか」 「下のようなプレーがあったわけや」 「これはなんだ」 「ペナルティーエリアを、フットサルの丸っこいやつに変換して見て頂きたい」 「上のは、フォワードが下がってボールを受ける場面なのか?」 「そういうことで、この場面で、パスを出す方は、下がる選手の左足ぎりぎりのところにスペースで止まるような遅いパスを通した」 「ふむ」 「それは、下がる選手に合わずに抜けてしまったが、それは、下がる方は足元にもらって、ディフェンスを背負った後、下のようなプレーを考えていたからなわけや」 「ワンツーか、それをフェイクにして逆ターンからシュートか」 「これは一般的なアイディアといえる」 「そうやな」 「出した方は、なぜそうしなかったかというと、下の筋を狙っていたからなんや」 「これはどういうことや」 「下がりながらボールを受けると見せかけて途中で止まり、背中でディフェンスに当たった後、それを軸にターンしながら裏に抜けてそのままシュートを打つ、という狙いやな」 「ほほう」 「なぜこれが有効かというと、デイフェンスのポジションが図の上側にずれていて、背中で当たった後のターンに対抗する手段がないからなんや」 「だからスペースに止まるパスを出したわけか」 「ところが、理解されなかったものだから、後で受けようとした選手からからパスを出した選手に苦情が出た」 「そりゃそうなるわな」 「そこで、パスを出した選手は、指で当たってターンをする軌道を描いたわけや」 「それで」 「すると、受ける方の選手は、ああ、わかったという顔をしてプレーに戻っていった」 「それは中々やな」 「その場ではわからなくても、ほんのちょっとの説明でアイディアが通じた時というのは、それはそれで気持ちがいい」 「コミュニケーションの大切さ、ということやな」 「それは、さておき、トーレスとビジャに話を戻すと、彼らの間で、例えば上のラウールとグティ、セルヒオ・ガルシアとディエゴ・ミリートの間のようなコンビネーションがあったかというと、残念ながら記憶にない」 「それは証明しないのか」 「ある、ということはわりと証明しやすいんやけど、ない、というこはなかなか証明しづらくて、2人がコンビを組んだ全試合のビデオでプレーを逐一見て、ほら、ほとんどないでしょう、というしかないような気がする」 「非存在の証明というやつか」 「そうなんかね」 「まあ、あるかないかでいえば、日本では産出しないと思われていたダイヤモンドが見つかった例もあるしな」 「もし、こんなコンビネーションの実例がある、ということをご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお教え願えればと」 「確かに、ダイヤモンドの例でも、あるという証明はしやすいな」 「石に光をあてて、ほらダイヤのところに山がでるでしょ、といえばいいから納得しやすい」 「それがいつでもどこでもできれば証明になるな」 「ついでに、他の人が同じ実験を行って、確かに同じことがおこらなあかんけどな」 「再現性と追試可能性というやつやな」 「その二つは、サッカーでも重要やな」 「ほうかね」 「スペインはロシアに4-1で勝ったけど、その試合を誉める時に、それが再現可能であるかどうかという点は非常に重要になる」 「スペインのマスコミは、ドイツワールドカップの苦い思い出があるから、馬鹿騒ぎの中にも保留の姿勢があった」 「個人の選手の評価でもそうで、なにかを言うためには、その再現性が大切になる」 「選手寸評でも、一試合か二試合見ただけで書いてるやろ、というのは大体外れている」 「そして、追試可能性というのは、サッカーのプレーよりも、書かれるものに関して重要になる」 「書く方か」 「例えば、このチームは、アタッキングゾーンで前を向いて勝負する選手がいない、という文を書いたとする」 「ふむ」 「これに追試可能性を持たせるためには、そのようなパスについて、なるべく具体的なデータを出すしかない」 「当たり前やな」 「それが前のワールドカップの日本代表まとめであったわけだ」 「それがどうした」 「こういったデータを出すのはなかなか面倒くさい」 「ひたすら数えなあかんからな」 「ただ、サッカーの文章は安全な場所から石を投げつけているだけのものになりがちで、それをさけるもっとも有効な方法は、誰もがその内容を検証可能な方法で出すこと、つまり追試可能性をできるだけ高めて出すことやと思うんや」 「要するに、何かを言うなら誰でも確認できる証拠をきちんと添えて出せ、ということか」 「蹴球計画は、その辺を意図してつくられているんだけど、なかなか十分にできない反省を込めてここに記しておこうかと」 「良いサッカー批評かそうでないかを、追試可能かどうかで判断してみるのは面白いかもしれんな」 「時間がある方は試していただければと」 「そんなこんなで」 「今回はこの辺で」 「質問などございましたら、コメント、メール問わずお送りいただければ、できる限り答えて行きますので」 「よろしくお願いします」 「あと、最近、原稿の依頼が絶えて困っておりますので」 「もし何かありましたらこちらからお送りいただきたいというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」 |
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