週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
「さて」
「前半は、トルコがうまく試合を運びながらも追いつかれた」 「苦しいといえば苦しい」 「リードを奪うつもりでキックオフから無理をして、同点にされたわけやからな」 「その分、後半は、体力的にも苦しくなる」 「具体的には、中盤での守備がほころびはじめる」 「徐々に相手に詰めきれなくなっていく」 「1人でも詰められなくなると、全体が下がるしかない」 「例えば、下のような形での守備はできない」 「もし、サイドのボールを持った選手に詰めていない状態で、その横が前に詰めると、そこに段差ができる」 「その間を通されると、守備は大体終わる」 「そうなると、横の選手も下がらざるをえない」 「そして、ドミノ倒しのように全体が下がる」 「ディフェンスラインも裏へのボールが恐くて下がるようになるしな」 「この現象は、疲れが溜まるほどおこりやすくなる」 「まずは、79分」 「白いドイツは、左に攻めている」 「右サイドから短いパスが2本中央につながり、そこからサイドへ展開」 「これをラームが受ける」 「縦にドリブルを入れて何を狙うかというと」 「必殺の内への切り返し」 「そして、これまた必殺のクロス」 「中でクローゼが合わせてドイツが勝ち越し」 「ここで一つ不思議なことがある」 「うむ」 「クローゼのシュートにおいて、キーパーの姿が見えない」 「ゴールが無人やな」 「実は、上の写真で、クローゼのところで3人重なっていて、クローゼの後ろにディフェンダー、そのまた後ろにキーパーのリュシュトゥがいる」 「もろかぶりか」 「正にその通り」 「クロアチア戦に続き、またもゴールをお留守にしてしまったわけやな」 「そうやな」 「そんなミスもあり、ドイツがリード」 「2対1」 「トルコとしては、非常に苦しい」 「疲労、主力の欠場、交代の不足、といった要素がより重くなる後半79分でキーパーのミスもあり失点」 「これはきつい」 「しかし、7分後に同点に追いつく」 「ほとんどありえんな」 「理屈で考えるからありえないわけで、それを越えたところにこのゴールはある」 「右でラームを振り切ったサブリ・サリュオールがゴールラインまでドリブル」 「クロスに対してニアポスト手前に飛び込んだセミフがつま先で合わせる」 「コースを変えたボールは、レーマンの横をすり抜けゴールへ」 「2対2の同点」 「86分」 「ひょっとするとまたもトルコが……という雰囲気になる」 「しかし、90分」 「右サイドから中央にボールが渡る」 「そこから左サイドに展開」 「ボールを受けたラームが、中央に切れ込む」 「中央のヒツルスペルガーにパス」 「ワントラップで縦を向いた後、前に抜けるラームに戻す」 「キーパーの動きを見てニアサイドを抜きゴール」 「ドイツが勝ち越し」 「そのまま逃げ切った」 「上のドイツの2点は、同じような出だしから生まれている」 「右サイドからパスをつないで、相手の中盤の前を横切るように左へ展開、ラームがドリブルから中に切り返す、というところまでは同じやな」 「前半のトルコは、このような流れを許さなかった」 「トップのセミフはボールを追えなくなっていたし、中盤は前に詰めきれなくなっていたので、あの時間帯ではしょうがない」 「対するドイツは、やはり左サイド頼みやな」 「結局は下の2つしかないな」 「相手としてはこれを止めたいと」 「そして、ドイツの左から攻撃を仕掛けたい」 「トルコの得点は2つともドイツの左サイドからだった」 「これは偶然ではなく、意図的にそちらからの攻撃を狙っていた」 「そこの守備が甘いのは、ポドルスキーの戻りがどうしても遅れるのが原因やな」 「戻っても相手に詰めきれないからパスをつながれるというのも大きい」 「ラームが穴というわけでもないねんけどな」 「彼は、前半自陣ゴール近くでパスミスをしたこと、サブリに抜かれて同点を許したことがかなりのマイナス評価だとは思うが、それ以外では、守備も攻撃も実にいい働きをしていた」 「特に最後のシュートなどは抜群に上手かった」 「下の場面やな」 「これは、シュートモーションに入る直前やな」 「まず、キーパーの方をきちんと向いているのがいい」 「そこから、ファーサイドのピンクの矢印へ打つフェイントから、ニアサイドへシュート」 「この流れと技術は、ファン・ニステルローイやバチスタがゴールを決めると時とまったく同じであるというのが素晴らしい」 「そりゃ、同じ状況でゴールを決める技術がほとんど同じになるのは当たり前やろ」 「サイドバックがフォワードと同じ技術を的確に使っているというのがよろしいわけや」 「さよか」 「いわゆる、決定力というのを改善しようと思ったら、正しい場面で正しい技術を使えるようにならないとしょうがないしな」 「コントロールも上手かった」 「ここでは、ギザギザ線でドリブルのようになっているけど、ラームはワンタッチでキーパーと向かい合ってそのままシュートにいける場所にボールをコントロールしている」 「これもまた大切なことやな」 「このシーンで見れば、技術的に上手いフォワードと同等のものがある」 「たいしたものであるな」 「なんにしても、この試合でドイツの長所は左サイドであり、弱点もまた左サイドであることがはっきりとした」 「決勝の相手は、それを突いていきたいところやな」 「それがスペインになるのかロシアになるのか」 「今夜の試合が楽しみというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」
疑問点:下の状況で、ヌーノ・ゴメスはファーサイド側にシュートを打てなかったのではないか?結果的にニアになっただけではないか?
写真中央の白と黒の選手がメルテザッカー、左の赤い選手がヌーノ・ゴメス 時計回りにターン この状態でヌーノ・ゴメスとボールの動きを把握可能 左足を斜め前に出す 左足着地 右足着地 軸足の外側を抜かれる 以上の写真で見られる通り、メルテザッカーはファーサイドへのシュートコースを切るために動いています。 もし、ヌーノ・ゴメスがファーに打つことのできない状態であれば、そちらにはシュートが飛ばないのですから、ニア側を防ぐための動きをみせるはずです。 例えば、下図の状況から、左足をより左に出して踏ん張り、右へ動こうとするといった行動です。 動きから、メルテザッカーはファーサイドにシュート可能であると信じていたと考えられます。 それが正しければ、ヌーノ・ゴメスに二つの選択肢があったことになります。 もちろん、メルテザッカーが判断を誤っただけであるという可能性も否定できませんが、難しくても、ファーに打てる状況だったのではないでしょうか。 またなにかありましたら、よろしくお願いします。
「さて」
「スペインが遂にクォーターファイナルを突破した」 「パサール・デ・クアルトスというやつやな」 「パサールは突破、クアルトスというのはクォーターファイナルの意味になる」 「そのまんまやな」 「先発はこう」 「イタリアは、前回の予想で、こうはしないだろうといった形に最も近い」 「外れたな」 「確かに」 「イタリアの中盤の守備はなかなか興味深かった」 「カッサーノを加えたボックス・ワンみたいな守備やったな」 「カッサーノがセルヒオ・ラモスをマンツーでマークし、中盤のひし形は距離を保ちながら左右に動く」 「例えば、左のカプデビラがボールを持つと下のようになる」 「アクィラーニがすっと上がって、ペロッタと横並びになり前をさえぎる」 「セナがボールを持つと、今度はアンブロジーニがすっと上がり、前をさえぎる」 「その時、カッサーノはセルヒオ・ラモスをマークしている」 「守備の時だけを見れば、1-4-2-3-1と1-4-1-4-1の間みたいな形やな」 「ちなみに、イタリアは、この形からボールを取りにいかない」 「ただひたすら前に壁を作ってコースを切るだけで、ボールを積極的に追い込んだりはしない」 「ひたすら待って、相手が縦に蹴るかパスがぶれるのを待つ」 「実に我慢強い作戦やな」 「はたして、選手がそれに納得していたかどうかは疑問やけどな」 「スペインの方はというと、ゴールラインから11mほどのところに最終ラインを置き、ビジャを中盤に引きつけて自陣で守った」 「イタリアがロングボールを使ってくるのは見え見えだから、無理にラインを上げずに待って守ろうということやな」 「このユーロコパのスペインは、守備で待つというのが特徴やな」 「ロシアやスウェーデンの時もそうやったな」 「守備といえば、セルヒオ・ラモスはルカ・トニを相手にいい仕事をしていた」 「左からのクロスに対してファーに逃げるトニと競り合って負けなかった」 「あの辺りはさすがであるな」 「前半は、両方待ち待ちのだらだらとした展開で終わり、後半」 「イタリアもスペインも、少し前からボールを追う気配を見せた」 「その時、配置が微妙に変わっている」 「まず、スペインは、イニエスタが左で、シルバが右」 「これは前半の途中から場所を入れ換えていた」 「そして、トーレスが右に開くようになった」 「カッサーノはグロッソのヘルプにいくわけでないから、グロッソの周辺にスペースができやすい、そこに開いてボールをもらおうという狙いがある」 「これに対して、イタリアは、変な形になった」 「前から行くのはいいが、ペロッタが行きっぱなしになり、1-4-3-3のようになった」 「これで、中盤にスペースが空いてスペインの調子がよくなった」 「このペロッタの動きは監督の指示だったかというと」 「そうではない、とうのが58分の交代だった」 「ペロッタに代えてカモラネージ」 「カモラネージの守備での動きを見たら、きちんと戻るようになった」 「これは、攻撃を重視した交代だともとれるけどな」 「試合中のペロッタの表情、態度を見る限り、監督のやり方に反発以上のものを感じている気配が濃厚やから、戦術的な問題だけではないはずや」 「ほんまかいな」 「ドナドニが解任されれば、彼の口から興味深い発言が飛び出すと思うので、そのような記事が出た場合はお教え願えればと」 「これに対し、スペインは、59分に得意の2枚交代を行う」 「シャビ、イニエスタが下がり、セスク、カソルラ」 「もはやおなじみの交代といえる」 「しかし、それでなにがどうなるというわけでもなく」 「試合は相変わらずだらだらと続く」 「そのだらだらとした原因やけどな」 「そりゃ、両方慎重をいうか、待ちの体勢で試合を進めたからやろ」 「それともう一つ、攻守の切り換えが異常に遅かったことがある」 「トランジションか」 「例えば下の流れを見て欲しいんや」 「これはなんだ」 「いま、右に攻めているイタリアの左サイドに縦パスが出て、グロッソとセルヒオ・ラモスがそれを追いかけている」 「ふむ」 「アップにすると下のようになる」 「そこからボールを拾ってスローイン」 「スローインが投げられた直後が下の絵になる」 「ほほう」 「ちなみに、上の選手配置と下の一番最初の図の配置と比べると、えらいことがわかる」 「中央にいる白い選手たちが、ほとんど戻っていない」 「グロッソとセルヒオ・ラモスがボールを追ってから、スローインが投げられるまで6秒ほど、ボールがタッチラインを割ると確定してからでも4秒~3秒の余裕がある」 「それなら矢印の方向に動いて、もっと守備に適したポジションを取れるはず、ということか」 「ボールがラインを割ってから動くのでは遅くて、割ると決まった時点でポジションを取り始めるのが普通やからな」 「流れとして、イタリアの選手が攻撃のために前にダッシュして戻るのが遅れた、という場面でもないから、単にボールが外に出るのを眺めていただけか」 「おまけに、中央で一番左にいるカモラネージにいたっては、スローインが投げられたというのにダッシュの体勢にすらなっていない」 「そこからスペインにカウンターを喰らう」 「ボールを持っているのはセナやな」 「センターサークル手前まで30m以上ドリブルしてパス」 「簡単に中央に通る」 「この時、守る白いイタリアと、攻める赤いスペインは3対3の同数」 「あっという間に大ピンチやな」 「単純なスローインに対して切り換えが遅く、中盤を30mドリブルされて一本のパスでピンチを招く」 「ひどい話というかなんというか」 「いったいこれがイタリア代表なのかと目を疑う」 「スペインやったら、ああ、またかで済むねんけどな」 「審判への抗議に夢中になって切り換えが遅れるとか、日常茶飯事やからな」 「イタリアがこんなぬるい守備をするというのもいただけない」 「果たして、選手にやる気があるのか疑わしい」 「チームが上手くいっていない気配かね」 「なにしろ、切り換えの遅さというのは、この場面だけじゃなくて、ほとんど一試合丸ごとそうやったからな」 「まあ、遅かったな」 「おまけに、スペインがそれにお付き合いするものだから、非常にだらだらとした試合になった」 「なんにしても、ドナドニが、選手の信頼を得られず、チーム内で孤立していた可能性は非常に高い」 「イタリアらしくないといえば、センターバックのクリアもイタリアらしくなかった」 「これはどういうことや」 「パヌッチとキエリーニのヘディングでのクリアボールがよくスペイン選手に直接渡っていたことを示している」 「そういうことか」 「イタリアのディフェンダーというのは、足でも頭でも、厳しいクリアボールがなぜか味方につながるのが特徴なわけや」 「その辺りは変態的に上手いな」 「ところが、この試合ではスペインに渡す場面が多く、実にらしくなかった」 「その辺は、ネスタやカンナバーロの不在が痛いところやな」 「他には、ピルロとガットゥーゾがいなかったしな」 「ピルロがいても試合内容の流れ事態は対して変わらんかったと思うで」 「なんでや」 「ピルロが出たら、彼のポジションはどうあれ、ビジャがマンツーでつくやろ」 「まあそうなるかね」 「オランダ戦でファン・デル・ファールトにマークされて消されたように、今回はビジャに消されるから流れは対して変わらない」 「それでも、一瞬のパスで裏を取る可能性は増えるやろ」 「だらだらした流れは変わらず、イタリアがほんの一瞬のチャンスで点を決める、という可能性は高まったかもしれん」 「結局、120分でも勝負はつかず、PK戦の末、スペインが勝利した」 「そのPK戦について、この試合が終わった直後に質問メールをいただいたので、それにできるだけ答えてみようかと」 「質問の内容は、まず、カシージャスは5本中4本方向を読んでいたが、ブッフォンは、止めたグィサ以外は読みが外れた。ここに技術的な差はあるのか、というのが第一やな」 「これは中々難しい疑問であるな」 「まず、ブッフォンがキックの逆に飛びやすい、というのは、ドイツワールドカップの決勝でもそうだった」 「賭け事が好きなのに二択を外す男、というやつやな」 「その原因らしきもは確かに見える」 「下の写真やな」 「ここで大切なのは、一枚目と二枚目の写真になる」 「少しわかりにくいが、左足を軽く後ろに引いている」 「動かすとわかりやすいので、写真を保存して、ぱらぱら漫画にしていただければと」 「この後、ブッフォンは、右足、左足と順番に体重を乗せてジャンプする」 「つまり、体重を乗せるのは、左足→右足→左足で、それからジャンプという手順になる」 「その動きを、スペインが誇るPK阻止王、レイナと比較してみる」 「2シーズン前のチャンピオンズリーグ、チェルシー戦やな」 「レイナは、つま先立ちになり、重心をやや前に倒し、その状態から足の踏み変えなしで第一歩を踏み出している」 「この場合でいうと、左足→右足→ジャンプ、という流れか」 「レイナの場合、足を踏みかえるのではなく、体重を流して一歩目を出す感じやな」 「つまり、ブッフォンの左足→右足→左足→ジャンプと比較して、一つ少ない」 「もし、この差が常にあるとしたら、PKの阻止率は決定的に違ってくる」 「そりゃ当然やな」 「一つの仮説として、ブッフォンは体重を移動させる際に足の踏み換えが一つ多いため、飛ぶまでに時間がかかる。時間がかかるがゆえに先に飛ぶ方向を決めないと間に合わない。このため、キッカーの狙いを最後まで見る時間がなく、また、動き出しが早いため、裏をとられやすいというものが考えられる」 「あくまでも仮説やけどな」 「最初の一歩を出す前に、その逆の足を引かないまでも、そこに体重を乗せる、と断言するためには、ブッフォンのPK映像が多数必要やけど、それを持ち合わせていないので無理なわけやな」 「イタリアサッカーやブッフォンが好きな方でPKの資料をお持ちの方は、上の仮説が真実か否か、教えていただければ幸いかと」 「前のチャンピオンズリーグの時は、色々な角度からリプレイしてくれて、キーパーの動きを分析しやすかったんやけどな」 「今回は、選手のアップやPKに対する人のリアクションが中心の映像つくりやったから、あまり資料にならない」 「ところで、カシージャスについてはどうや」 「カシージャスは、待って飛ぶ場合と、完全にヤマをかけて飛ぶ場合を使いわけが極端で、例えば、ディ・ナターレに対しては完全に左に賭けて飛んでいる」 「レイナとの比較はどうや」 「何かを断言することはできないので、ゴールキーパーに詳しい方に教えていただきたいかと」 「次は、スペインとイタリアのキッカーで使う技術に差はあるのか、という質問についてだが」 「これは、膨大なデータを処理してキックの種類を分類していけば差が出るのかもしれないが、知っている範囲では個人によるとしか答えられないので、回答不能ということで」 「なんや頼りないな」 「ほっといてんか」 「最後に、スペインが今後よくなるためのポイントは?という質問がある」 「問題としては、中盤でボールを取れない、下がると脆い、取ってからが遅い、というのは明らかなので、この点の改善が鍵になる」 「まあ、つなぐ選手で引いて守ってカウンターのような形になっているので、難しい点ではあるな」 「選んだ選手と実際に採用した戦術が一致していないので、修整もなかなか難しい」 「次のロシア戦でその辺りがどうなるのかというところで」 「今回はこの辺で」 「また次回」 「ご機嫌よう」
「ロシアがオランダを破った」
「すごい試合だった」 「とにかくロシアの作戦面が凄くて、オランダは見事それに絡め取られた」 「ヒディングの罠に落ちたオランダ、という感じやったな」 「その辺を詳しく見ていこうかと」 「よかろう」 「なんでいつも偉そうなんや」 「癖かな」 「先発はこう」 「オランダは予想通りで、ロシアは変な形をしている」 「そこに重大な意味があるんやな」 「オランダは、イタリア戦で見たように、下のような構造をしている」 「エンヘラール、デヨングが中盤を支え、スナイデルとファン・デル・ファールトが長く展開する」 「ここで、サイドに注目する」 「攻撃面だけを見ると、左サイドが強く、右サイドの方が弱いことがわかる」 「ここに着目し、下のような配置を引く」 「その意味は、左に壁をつくり、オランダのボールを右に流させることにある」 「具体的には、左にボールがきたらサエンコが素早くジオに詰め、セマクがその裏をカバー」 「アニュコフは、スナイデルをマンツーでマークする」 「そうすると、下の四角の部分が空く」 「そこをわざと空けるわけやな」 「ジオがボールを持った場合の配置は、次のようになる」 「オランダにとって、この状態から左サイドを崩すのは難しい」 「よって、バックパスか横パスが入った後、右に流れる」 「右に流れた後、どのように対応するかというと、次のようになる」 「空いたスペースにはブラルーズが入ってくる」 「これに対し、17番のズリアノフは中へのパスを切り、18番のジルコフが上がって対処する」 「もし、ジルコフがカイトのマークなどで出ることができない場合は、ズリアノフがサイドに出る」 「次の写真に、その様子が見られる」 「黄色で23と書いてあるのがブラルーズやな」 「その前に18番のジルコフがいる」 「ロシアの中盤は、サイドに流れず、中央を固めているのがわかる」 「次の写真は、右センターバックのオーイエルがボールを持った場面で、周囲にロシアの選手はいない」 「そこから縦にロングボールが出た後の図が下」 「この場合、18番のジルコフが中に入った関係で、17番のズリアノフがサイドに出てブラルーズを追っている」 「オランダが、図のように、ジルコフとズリアノフでブラルーズに対処していたことの一端がうかがえる」 「しかし、上の2人がサイドのブラルーズをマークできない状況もある」 「そらあるわな」 「その時の守備はどうするかというと」 「アルシャフィンがマークする」 「アルシャフィンがサイドに出て、ブラルーズにボールが渡りそうなら共に下がり、味方が回収しそうなら前に出てカウンターの種になる」 「アルシャフィンが引いた場合は下の写真のようになる」 「しかし、盛大に右サイドがあいている」 「守備の側は、ボールと逆サイドの方に人がいるという不思議な図やな」 「ここにも、オランダの狙いの一端があらわれている」 「このような守備方法は、ブラルーズが攻撃的に素晴らしい選手であった場合、採用するのは難しい」 「例えば、ブラルーズがフリーの状態でどこにでもボールを落とせる選手であれば、それだけで守備は危機に陥る」 「ゼ・マリアのような選手やな」 「わかりにくい例えやな」 「ドリブルが得意であっても、非常に困る」 「ボジングワやシシーニョのような選手であれば、サイドを突破されて守備どころではなくなる」 「例えば、下の場面で23番が上手いドリブラーだとすると、ディフェンス的には終わった状態に近い」 「周囲にスペースがあり過ぎやからな」 「前半、オランダが苦しんだのは、下の守備に見事にはまってしまったことが原因だった」 「いわゆるトラッップディフェンスやな」 「そして、ボールを奪われた後は、右のスペースに送られることで苦しんだ」 「例えば、アルシャフィンが持ち込むと、中央より左にいるパブリュチェンコがちょうどファーからニアに動く形になり、ディフェンスの裏を取りやすい」 「その辺りも上手くできている」 「前半は、ロシアの手にのせられてしまったオランダ」 「後半、黙っているわけにはいかない」 「そこで、どのような手段を取ったのでしょうか」 「というのが軽い戦術問題なわけですが」 「続きはこちらから」
「さて」
「ロシアの右サイドを空けるトラップディフェンスにのせられてしまったオランダ」 「後半打開をはかる」 「まず、開始の46分からカイトを下げて、ファン・ペルシを投入」 「この意味は、わかりやすいな」 「右にスペースを残すなら、ボールを持た時に、よりいい仕事をするファン・ペルシでそれを突こうということやな」 「そして、54分に次の交代を行う」 「ファン・ペルシから8分後か」 「そうやな」 「なかなか素早い動きやな」 「ブラルーズに代わって、ハイティンガ」 「この意図もわかりやすいな」 「ブラルーズよりボールを持ってよりいい仕事をするハイティンガでロシアの残すスペースを攻めようということやな」 「しかしや」 「なんや」 「このオランダの交代は、意図がわかりやす過ぎると思わんかね」 「そうなんやな」 「ロシアが右にスペースを残す、それを利用するためにサイドの2人を攻撃的な選手に代える」 「ごくごく常識的な発想やな」 「常識的ということは、相手にも読まれるということやろ」 「そうやな」 「その相手というのはヒディング」 「恐いな」 「なんかそこに罠がある気配がぷんぷんする」 「明らかにするな」 「そして、それは実在した」 「ハイティンガの投入を契機に、ロシアの選手がオランダの右サイドに残るスペースに殺到するようになった」 「例えば、オランダの交代から2分後、56分にパブリチェンコが決めたゴールも、このスペースから始まった」 「選手の大筋の動きとしては、下の図のようだった」 「セマクが大きくサイドに出て、アルシャフィンのパスを受けてセンタリング、ファーからニアに入ったパブリュチェンコがボレーで決めた」 「下は、10番のアルシャフィンが11番のセマクにパスを出した直後で、オランダの右サイド、写真の上側に大きなスペースが空いているのがわかる」 「そこにセマクが入り込んだわけやな」 「このようなシーンは、ハイティンガの登場後よく見られて、他にも下のような例がある」 「オランダのサイドはすかすかやな」 「ハイティンガもファン・ペルシも右から攻めろという指示を受けて送り出されているし、前のカイト、ブラルーズに比べると守備向きではないから、仕方がないといえば仕方がない」 「ここまでの流れからすると、オランダは、ヒディングの術中に完全にはまったということか」 「まさに」 「前半は、相手が攻めれない右サイドをわざと空けて交代を誘い、交代によって守備的に弱くなった同じサイドを攻めて逆に点を奪う」 「真に見事やな」 「左のガードを下げて相手の右ストレート誘い、左のクロスカウンターを合わせていくようなものか」 「なんの話や」 「ボクシングの話や」 「なんにしても、トルコのチェコ戦と並んで、このユーロでの戦術大賞候補の試合やな」 「交代も含めた戦術的な読みが完璧だったという意味では、こちらの方が上かもわからんな」 「逆に言えば、オランダのファン・バステンは、ヒディングの手のひらで踊らされた形になる」 「踊らされたというか、そうなる危険を承知の上で、あえてそこに踏み込んで、切り合いを挑んだのではないかね」 「フランス戦の交代を見ると、その可能性はあるな」 「やろ」 「でも、そのファン・バステンの性格まで読んでのことだったと仮定したらどうや」 「そりゃ脱帽の上に頭を丸めるしかないな」 「相変わらずわけのわからんことを」 「そうか?」 「なにはともあれ、ここまででも十分にヒディングの凄さがわかるのだが、この後がさらに凄かった」 「続きは」 「こちらにて」 |
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