週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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前回、距離を取るためは、相手と正対し、相手の両足を横にそろえさせればよい、という点を見た。
ここでは、どうすれば相手の両足が横にそろうかを考える。

守備において足を横にそろえる利点は、横の動きに強くなることである。
前に出る場合、両足を交互に前、後と動かす必要がある。右足が着地すれば、次は左足であり、その次はまた右足にある。
前に進む状態で、着地する足の横を狙われるとそれを防ぐことができない。
これは、以前にも見たように、片足立ちの人間は軸足を動かすことができないからである。
また、前進しながら、着地していない足を横へ動かすことも非常に難しい。
以下にそれを見る。

赤は右に攻めている。今、パスが出た選手に対してディフェンダーが詰める。


(クリックで拡大)



攻撃が完全に前を向く。



これに対し、ディフェンダーは止まらず、前に詰め続ける。
下の図において、右足を着地する。
左足は体の後ろにあり、両足が前後に開いた上体にある。
見難い場合は、クリックして拡大していただきたい。



ボールを持った選手は、右前へのパスを試みる。
これに対し、ディフェンダーは、左足を横に開くことでパスカットを試みる。









左足を横に開こうとしているのがわかる。
しかし、これは無理である。前に出ながらであるため、その方向に体は流れ続ける。このため、軸足である右足を固定できない。その結果、下のように、ケンケンのような形で右足が前に出る。



ボールは、足先を通過し、ディフェンスは完全にバランスを崩す。








上の流れで、正面方向と、パスの出た方向の間の角は非常に小さい。
前に出る状態では、すぐ横に来るパスを止めることも難しい。
概念は、下のようになる。



図の上が、前に出ながらの守備にあたる。横の動きに弱く、パスをカットできる範囲が非常に狭い。
図の下が、両足を横にそろえた守備にあたる。パスをカットできる範囲が広い。
パスコースを限定することは、守備にとって極めて重要であり、そのため相手と正対した場合、ディフェンスは足をそろえる。
逆に言えば、オフェンスとしては、相手と正対した後、パスフェイクを入れることで、高い確率で相手の足をそろえさせることができる。

文末に足をそろえた状態での守備例がある。パスがより大きな角度で出されている。

次に、前に出るディフェンダーに対し、次に地面につく足をドリブルで攻める例を見る。
白い選手が左サイドでボールを持ち、赤い選手がそれに飛び込む。



詰める側の左足が着地する。





ディフェンスは、右足を前に出す。
白い選手は、それがどこに着地するかを見ながら待っている。



画面手前に少し体を倒した後、ディフェンスの右足の上を軽い浮き球で抜く。

















前に出るディフェンダーに対しては、次に着地する足の横や上を狙えば抜くことができる。
逆に言えば、それをフェイントに使えば、ディフェンスは近づくことができず、距離を保つことができる。

上のようなドリブルは、いわばパッシブ(受動的)なドリブルであり、相手が飛び込んでくる状態に応じて抜く。
一般的にイメージされるドリブルは、アクティブ(能動的)なもので、自ら前へ進み、相手を抜いていく。
この二つは、異なる技術と見てよい。
基本的にアクティブなドリブルが上手い選手は、パッシブなドリブルも上手い。しかし、逆は必ずしも成り立たない。
相手との距離を保つにおいて、パッシブなドリブルを身につけることは重要である。

これまでをまとめる。
組み立てを良くするためには、相手と正対し、距離を保てばよい。
距離を保つためには、相手の足を横にそろえさせればよい。
足をそろえさせるためには、正対して、パスフェイク、もしくは、ドリブルフェイクを用いればよい。
相手の飛び込みを防ぐためには、パッシブなドリブルを行う技術が必要である。

これらを別の形で書いたものがこちらにある。


付録:
足を横にそろえたディフェンダーと正対した後のパス。
より広い角度で出さなければならない。















前回、良い組み立てと悪い組み立ての差異を述べた。
今回は、悪い組み立てを詳しく見ることで、その改善方法を探る。

下の図は、サイドでボールを受けた状態を示している。
この時、ボールを持っているチームは、左から右へ攻めている。
まず、一連の流れを見ていただきたい。











このプレーは、組み立てとして、非常に悪い。

まず、最初にサイドのプレーヤーがボールを受けた時点では、十分に前方のディフェンダーとの距離がある。



しかし、パスを出す段階では、非常に近い距離まで詰められている。



距離を詰められることは、周囲の味方を苦しくする。
その理由は、以下の通りである。



ディフェンスとの距離が近いと、パスを出す範囲が限定される。
この場合、ボールを持っている選手は左利きであり、斜め後ろを向いているため、上図の白線より左側にしかパスは出ない。
ディフェンスは狙いをつけやすくなり、黄色い方向への出足が早くなる。
その結果、パスを受ける選手は時間的余裕を失う。

下の二つの図を比べると、バックパスが出た後の方が、相手との距離が縮まっているのがわかる。





さらに、パスを受けた選手は、下がりながらボールをコントロールせねばならず、最初に比べて条件が悪い。
前回も見たように、このようなプレーは、組み立てとして良くない。

その原因は、まず、最初にパスを出す選手が、相手との距離を保てなかったことにある。
距離を詰められたことでパスコースが限定され、ディフェンスに狙いを定められたことで、次の選手が苦しくなった。
ここでは、寄せてくる相手に対して、簡単に後方を向いたことも選択肢を狭めた。

次に、別の例を見る。
ボールを持っているチームは、左から右に攻めている。

前線から、ボールが戻される。



コントロール。



この時、最も近い守備者との間に十分な距離がある。

コントロールした後。



ボールが両足の丁度真ん中にある。この選手は左利きである。この状態から、利き足で前方にパスを送ることはできない。

バックパスの体勢に入る。



相手との距離は、いまだに6mほどある。
しかし、これだけ余裕のある状態で、バックパスの体勢に入っている。
守備側の青い選手達が、前に詰める体勢に入っているのがわかる。

バックパスが通った後。



一番近い相手との距離は縮まり、受けた選手は下がりながらプレッシャーを受けている。
状況として最悪である。

結局、キーパーまで戻さざるをえない。



これは、組み立てとしては、どうにもならぬほどの失敗である。
相手陣で、前を向いてほぼフリーで持っていたはずのボールが、キーパーまで下がり、相手のプレッシャーを受けている。

失敗の理由は、下の図にある。



この状況で、体を後ろにひねり、ボールを足の間に置いている。
これでは、白い線の左にしかパスを出すことができず、ディフェンスを呼び込んでしまう。
ここでは、単純に体の正面を相手に向け、下のような赤いパスを出すフェイントを使えばよい。



これで、ディフェンスの出足は止まる。
相手を一定の距離で止めることができれば、周囲のプレッシャーが緩和され、上のような負の連鎖は止まる。

相手の出足を止め、距離を保つという点について、次に詳しくみる。
今、イエーロにバックパスが出て、それにエウベルがプレッシャーをかける。





この状態で、イエーロの右側と後方にスペースがある。
しかし、ここから、前に踏み込む。











上の図において、体の正面を相手に向けて、その方向に踏み込んでいるのがわかる。
これにより、前に出てくる相手を止めることがでる。



イエーロがボールを右にコントロールした後である。
プレッシャーをかけた赤い選手、エウベルの足に注目していただきたい。
両足が横にそろっている。
これが、相手の前進を止めた証拠である。
前に出るためには、足は前後に動かねばならない。横にそろった状態で前進することはできない。
このため、ボールを持っている選手は、相手との距離を保つことができる。
前回の悪い例では、それが欠けていた。

以下の流れにおいて、一度相手の前進を止めたため、適切な距離が保たれていることがわかる。













最終的に、中盤にボールが渡る。

上のプレーの鍵は、下のようにあらわされる。

一度相手に向かう。



相手は、両足を揃えてとまる。



これにより、相手との距離が保たれる。

下の例は、下がりながら、一度体を前に向けることにより相手を止め、パスフェイントから逆に抜ける。

体を前に向け、フェイントを複合させることで、寄せてくる相手を牽制し、距離を保っていることに注目されたい。



























体の正面を相手に向け、距離を保つ。この技術は、組み立てのみならず、サッカーにおいて最も大切な技術である。
次に、この点を考える。
中盤、横向きでボールを持っている選手にプレッシャーがかかる。





一度体の正面を相手に向ける。



この時、ディフェンスの足は横にそろっている。
以後、この距離が保たれる。





下の例では、サイドに浮いたパスが出る。
ボールを持つ選手に詰めるデイフェンダーの動きに注目されたい。







体を相手に向ける。







相手の両足がそろい、距離が保たれる。



上の二つは、それぞれ、中盤の中央と前線の左サイドの例である。
前回とあわせると、正対して相手を止め、距離を保つ技術は、ゾーンを問わず有効であることがわかる。

組み立てにおいて、この技術を持つ、持たないの差は、具体的に下のような場面であらわれる。

この技術を持たない場合、相手に距離を詰められ、パスコースが限定される。



その結果、ディフェンスを呼び込む形になり、周囲の選手がボールを受けるスペースを消されてしまう。

もし、この前の段階で相手と正対して距離を保つことができれば、下のようになる。



前をむいて、距離を保つことで前方へのパスコースが生まれる。
例えば、赤いパスを出すことができる。
デイフェンスがこれに対抗するためには、黄色い矢印のように下がる必要がある。
そうなれば、今度は、青いパスが有効になる。

下の図から、白い矢印のようにバックパスを出すことと比べれば、天と地ほどの差がある。





相手との距離を保つことで、周囲にスペースができ、良い連鎖が生じる
それができなければ、周囲のスペースを消してしまい、悪い連鎖が起きる。
相手を簡単に近づけ、すぐに後ろを向く選手は、チームに災厄をもたらす。

この、一番近いディフェンダーへ正対してプレーできるか否かということは、サッカーが上手いか下手かを決定する最も重要な要素である。(参考

ディフェンダーであるから、それができなくてもよい、というものではない。

監督は、これを念頭において選手を指導すべきである。
また、選手は、常にこれを意識しながらプレーすることが上達への近道である。
組み立てについて

組み立てとは、ボールを相手ゴールに向けて運び、ラストパス、もしくは、シュートにつなげる過程を指す。
ボールを運ぶ手段は、二つある。
パスとドリブルである。

ここでは、パスについて考える。
まず、組み立てにおける良いパスと悪いパスの違いに注目する。
組み立てにおける良いパスの条件は、受け手に優位な状況を作ることである。
言葉を変えれば、できるだけ困難な状況に陥らぬよう配慮することである。

そのためには、ボールを受けた選手と最も近いディフェンダーとの距離が、なるべく開いている方が良い。

また、受けた選手が次のプレーに移りやすい方が良い。
コントロールに手間がかかる。利き足で出したい状況で逆足に来る。ボールに触るためにバランスを崩さなければならない。
このようなパスは、受け手に困難を与える。

これらの点について、具体的な例を見る。

・受け手と最も近いディフェンダーとの距離

良い例

図は、白い矢印のパスが通った後の状況を示している。
ボールを持っているチームは、白い矢印の方向に攻めている。
ファーストタッチの瞬間の最も近いディフェンダーとの距離を見る。
オレンジの線が距離をあらわしている。







上の例ででは、ボールを受けた選手と最も近い守備者の間に、十分な距離がある。二番目と三番目の写真は、相手陣に入っている。相手陣で周囲との距離がある状況を作れば、組み立ては成功したといえる。

悪い例

赤いチームがボールを持っている。
自陣で空中にあるボールを、中央に浮かせてパスした。



結果、下のようになる。



ボールを受ける選手は、黄色い相手選手にのしかかられている。
受け手と相手の間に距離がない。

自陣で前方にパスを送る







受け手は、完全にプレッシャーを受け、相手との間に距離がない。

サイドラインから中央にパスを送る。







パスの前から相手が受けての近い位置におり、パスを受けて二人に囲まれた。

これらのように、パスが通った後、受け手と最も近いディフェンダーとの距離がつまっている場合、受け手は困難な状況に陥る。

一般に、パスを受ける選手のファーストタッチの瞬間に、最も近い守備者との距離は、遠ければ遠いほど良い。
ある選手の組み立てが上手いか下手かを論ずる際、これは有力な区別点となる。適切な機材が揃っている場合、この距離を数値化することは難しいことではない。このデータを集めれば、組み立てにおける選手の優劣を数字で論ずることができる可能性が高い。
ただし、わざとディフェンダーを受け手にひきつけるパスを出して、相手のゾーンを崩す技術がある。それについては、後述する。


・次のプレーへの移りやすさ

サイドにパスが出る。



レシーブした瞬間



コントロールした瞬間に、最も近いディフェンダーと正対している。
ワンタッチ目が攻撃の第一歩になっており、無駄なく次のプレーに移行している。
これは、良い例である。

この点での悪い例を見る。
今、左センターバックから、右センターバックにパスが出る。







右センターバックは、下がって受けた。
そこから、体をひねって前を向く。





ここで、前にパスを出す最初の体勢が整う。
上の流れは、受け手に困難をもたらしている。



実際のパスは、白い矢印の方向に出た。しかし、赤い矢印の方向に出す方が良い。ワンタッチで前を向き、パスを送ることができる。
上の流れでは、受け手が下がって前を向き直るための時間的な無駄が生じている。

中央へパスが出る。







中央へのパスを、後ろから走り込む選手が受けた。
この流れにおいて、時間的な無駄はない。
次に、悪い例を見る。

中央からサイドにパスが出る。





後ろから走り込む選手は、赤い矢印の方向に動いている。
しかし、ボールはすでにその前を横切ろうとしている。
この場合、白い矢印へ走る方向を変えざるをえず、時間的無駄が生じる。
スペースへ出すパスの場合、パスと選手の動くベクトルが大きく変化することなく、一点で交わるのが理想である。

相手陣のサイドから中央にパスが出る。



中の選手が受ける。



この時、ボールが腰の高さに近い位置にある。
ツータッチ目の状況は、下のようになる。



二番目の写真の段階では、最も近いディフェンダーとの距離がある。
しかし、コントロールに手間取るパスであったため、その距離を失った。
これは、受け手に扱いの難しいパスを出したサイドの選手の責任である。
コントロールに手間がかかるパスは、次のプレーに移る段階で困難を生み、常に組み立てを阻害する。

ここまで、ボールを受ける選手と最も近いディフェンダーとの距離と、次のプレーに移りやすいか否かについて、良い例と悪い例を見た。
実際には、この二つは複合して現れる。
それを以下に見る。
また、パスを出す選手と、パスを受けた選手の最も近いディフェンダーとの距離の違いにも注目する。

サイドから縦にパスが出る。





パスを受けた選手は半身で外側を向いている。
ディフェンダーは、非常に近い位置で腰を落とし、ボールをのぞき込んでいる。
完全に守備側に有利な状況であり、この時点で組み立ては失敗している。
二つの写真のオレンジの線を比べる。
最初、パスを出した選手と最も近いディフェンダーとの距離は9mほどである。
これに対し、パスを受けた選手とディフェンダーとの距離はゼロに近い。
パスを出す段階では、非常に余裕があり、攻撃に有利な状況であった。
しかし、出た先では、その優位がまったくなくなっている。
持っていた優位性を、次の選手に還元できなかった点において、非常に悪いプレーである。

中央からサイドにパスが出る。



ファーストタッチの瞬間、相手と10mほど距離がある。
セカンドタッチでは、それが3mほどに縮まる。
バックパスを出す。



受けた選手は、プレッシャーを受ける。



一連の流れは、組み立てとして最悪に近い。
まず、最初の選手が受けた瞬間と、次の選手が受けた瞬間を比べる。





相手との距離が縮まっているのがわかる。
通常、バックパスが行われると、その距離は開く。
ここでは、逆であり、味方を危ないゾーンでより余裕のない状況に置いている。
また、二番目の図で、受け手の左足にボールを置いている。
これも、最悪である。
相手は、左側からプレッシャーをかけてきており、左にパスを出せば、ボールがむき出しになる。
加えて、受ける選手は右利きである。
この状況で、左足へパスを出す理由はなにもない。
右足へ、ワンタッチで長く蹴ることのできるボールを送るべきである。

バックパスを出した選手は、非常に余裕のある状況から、受け手を極めて困難な状況に追い込んでいる。

組み立てが下手な選手は、

・パスを出した先で、受け手と守備の距離が近い
・次のプレーへの移行に困難を生じるパスを出す
・余裕のある状態を余裕のない状態へと変換する

以上の特徴を持つ。
上手い選手は逆である。
これらの点に注目すれば、組み立ての上手い、下手を論ずることができる。

しかし、これは、その条件を定義したに過ぎない。
次に、上手い選手と下手な選手の技術的な違い、そして、下手な選手はどのようにすれば上手くなるのか、という点が問題になる。

次回は、それについて述べる。


*注:ここでは、ラン・ウィズ・ザ・ボールはドリブルに含める


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