週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
これは、「正しいインサイドキックとは」のまとめである。
正しいインサイドキックは、下のように蹴る。 足の面を斜めに固定し、やや外側から回すように蹴る。 ボールは、体の正面より軸足側に飛ぶ。 (詳細) ここから、捻りを加える。 足首を変化させない場合となるべく同じモーションから、捻りを加える。 下のように、できるだけ最後まで2つの可能性を残すと良い。 (詳細) 最後に方向を変化させることは、相手の裏を取ることにつながる。 下の例は、いずれも、赤いパスコースをフェイントに使い、足首を返すことで白いコースに出して守備の裏を取っている。 正しいインサイドキックは、足首を捻らない場合、捻る場合の二つを複合させて使う。 (詳細) 一方、下のような特徴を持つインサイドキックは、間違った蹴り方であり、実際にはまったく役に立たない。 ボールに触る時、窮屈な体勢である。 蹴った後、大小の差はあれ、必ず蹴り足側後方に傾く。 このような傾向がある場合、即座に蹴り方を変えた方が良い。 (参考:誤ったインサイドキック) 上は、”パターのように蹴る”と教えられるインサイドキックの特徴である。 注意していただきたいのは、このような蹴り方はあまり意味がない、あまり練習する必要がない、それほど重要ではない、ということではないことである。 ここでの主張は、パター型のインサイドキックは、まったく意味がなく、一切練習する必要がなく、重要性は皆無である、ということである。 パターのように蹴るインサイドキックは、サッカーから完全に排除してよい。 これに疑問がある場合は、この稿を最初から読んでいただきたい。 次に、なぜそのような間違いが広まり、長い間正しいとされてきたのか、という点について見る。 また、実際に、このような形で蹴ってみようと思われた方は、正しいインサイドの練習法をご一読願いたい。
これは、「正しいインサイドキックとは ~正しい技術 その他の例~」の続きである。
ここまでの例では、誤ったインサイドキックを蹴るのは白いユニフォームの選手だけであり、正しいインサイドキックを蹴るのは赤いユニフォームの選手だけであった。 そうではない例を示す。 下は、誤ったインサイドキックの例である。 早い段階で膝を外に開き、それを中心に足を振る。 パター型インサイドキックに典型的な、蹴った後、蹴り足の後方に傾く姿も見られる。 下は、正しいインサイドキックの例である。 膝を割らず、膝を伸展させて蹴っている。 体が左に流れているが、蹴り足後方への傾きは見られない。 以上のように、赤いユニフォームのチームにもパター型のインサイドを行う選手は存在し、白いユニフォームのチームにも正しいインサイドを行う選手は存在する。 また、一方で、間違った蹴り方の例で参照した選手が、正しい蹴り方を行う場合もある。 下は、間違った例である。 しかし、同じ選手が、下のように蹴る。 ここから、つま先を横に開かず、膝を伸ばしながら蹴る。 ここから膝を開き、かかとを捻る 膝の伸展を使い、ボールを蹴る直前にかかとを捻る、正しいインサイドキックが行われている。 また、最後の図に見られるように、蹴り足後方へのバランスの崩れもない。 下の二つを比べれば、姿勢の違いは明らかである。 同じ選手が、一方では正い蹴り方をし、他方では誤った蹴り方をする。 この差が問題になる。 正しい蹴り方がなされたのは、下の状況である。 見てわかるように、出し手、受け手、双方にまったくプレッシャーはかかっていない状態での横パスである。 非常に楽な状況でのパスだと言える。 誤った蹴り方がなされたのは、下の状況である。 いずれも、縦に出している。 楽な横パスと、ゾーンの間を縦に入れるパスで、より難しいのは、縦に入れるパスである。 楽な横パスと、ゾーンの間を縦に入れるパスで、より正確性が求められるのは、縦に入れるパスである。 楽な横パスと、ゾーンの間を縦に入れるパスで、より真面目に蹴らなければいけないのは、縦に入れるパスである。 この選手は、ある程度適当に蹴ってよい場面で、正しいインサイドを使い、より真剣に蹴らなければならない場面で、パター型のインサイドを使っている。 これは、パター型を正しい技術と認識しているためである。 しかし、これは、これまで見たように、完全な誤りである。 縦に入れる場面こそ、正しいインサイドキックが必要になる。 それは、これまでも述べてきたように、最後まで選択肢を二つ持つことができるため、相手にその意図を読まれにくいからである。 踏み込み段階で方向のわかるパター型のインサイドでは、守備に狙いを定められてしまう。 この選手の名前を、メルテザッカーという。 センターバックとして、組み立ての非常に下手な選手で、ユーロでは、チームの弱点として利用された。 組み立てにおいて、縦にパスを通す、通した後、受けた選手がプレッシャーを受けないということは非常に大切である。 しかし、パター型の間違った蹴り方をする以上、パスが通りにくく、受け手が苦しい状況になるのは当然である。 ここでの問題は、メルテザッカーが、正しい蹴り方をできないわけではないことである。 楽に蹴ってよい状況では、より正しい方法で蹴っている。 にもかかわらず、”真面目に”蹴らなければならない状況になると、常に間違った技術を用いる。 これは、誰かが、誤った方法を正しいと教えたためである。 そうでなければ、このような不自然かつ非論理的な蹴り方を身につけるはずがない。 メルテザッカーの組み立て下手は、教育の成果である。 インサイドでパターのように蹴る、という誤りを教えるのは、即刻やめるべきでる。 教えることに一切意味はなく、覚える必要も一切ない。 下手になるための技術など、練習するだけ時間の無駄である。 本来、コーチに教える人間や、コーチが率先してやめるべきである。 しかし、これまで長い期間、パターのように蹴るインサイドキックが正しいとされてきた。 今後も、そのように教えるコーチは後を絶たないだろう。 このため、選手は自衛せざるを得ない。 そのような指導を受けた場合、聞くフリだけしておいて、実際には正しい蹴り方を練習し、試合で使う必要がある。 インサイドは、よく言われるように、もっとも使われることの多いパスである。 もし、同程度の才能を持った選手の一方が不自然で意味のない蹴り方を10年続け、他方は正しい蹴り方を10年続けたとしたら、その差は取り返しがつかぬ。 以上のことを認識していただきたい、というのが、この稿を書いた目的である。 間違った教育は、選手の可能性を潰してしまう。 それは、メルテザッカーに見られる通りである。 さらには、、真面目な選手ほど、間違った教えの影響を受けやすい。 これは非常に悲しむべきことである。 次回は、これまでをまとめる。
これは、「正しいインサイドキックとは ~正しい技術~」の続きである。
最初に、前回に述べた、足をやや外側から回すインサイド(表)とそこから足首をひねるインサイド(裏)は、様々な選手により使われていることを見る。 下は表のキックの例である。 ここでは、蹴り終りにおいて、体が後ろに傾いている。 本来、そのように体勢を崩す必要はない。 軸を真っ直ぐに保ち、その回りに巻きつくように蹴ることで、バランスは改善される。 下は、同選手が、表から裏への変化をつかって、相手の裏を取る場面である。 ここで足首を返す。 この仕組みは以下のようになる。 赤いパスに釣られたディフェンスは、黄色方向に動き、白い方向へのパスで裏を取られた。 これは、前回で見たスルーパスの仕組みとまったく同じである。 ここまで、足を捻るタイプのインサイドについては、大きく角度を変える例を見てきた。 しかし、捻りを調整することで、体の正面方向に出すこともできる。 別の例では、正面やや軸足側に蹴る。 上のかかとを捻る三例は、すべて違う選手である。 この蹴り方が、特殊な個人に付随するものではなく、より一般的なものであることがわかる。 ここまでの例では、誤ったインサイドキックを蹴るのは白いユニフォームの選手だけであり、正しいインサイドキックを蹴るのは赤いユニフォームの選手だけであった。 しかし、かならずしもそうではない。 その点と、教育の重要性を見る。 「さて」 「うむ」 「チャンピオンズリーグでは、バシレアを相手に不始末な試合をやらかしたバルサであったが」 「バーゼルか」 「リーガではまたも大量得点」 「今回の犠牲者はバジャドリー」 「見事な散り方であった」 「この試合では、バルセロナの今後を占う上で、重要な事実が見られたので、それを追々見ていこうかと」 「よかろう」 「先発はこう」 「注目はシャビ」 「なんでや」 「最近、インサイドの話で良く出てくるからやな」 「そうか」 「見た限り、彼はパター型のインサイドキックを、この試合で一度も使っていない」 「ほんまかね」 「これは、パター型インサイド不要論の一助になるので、もし使っている場面を見つけられた方はお教え願えればと」 「そのように思う次第でありますので」 「よろしくお願いします」 「というところで」 「試合やな」 「バルサのセンターバックは、ピケとマルケス」 「前半の途中、この2人が少し言い合うシーンが見られた」 「言い合うというか、スペインでは普通のお話し合いやな」 「その理由を見るのは中々に興味深い」 「これは、バジャドリーの守備の仕方に関係している」 「まず、ピケがボールを持ったとすると、ビバル・ドラドが軽くプレッシャーをかけ、ゴイトンが下がってトゥレをマークする」 「そうすると、マルケスが空くので、そこにパスが出やすい」 「マルケスにボールが送られると、ゴイトンが前に出て、ビバル・ドラドが下がる」 「これは、1-4-4-1-1や、1-4-2-3-1のように、ワントップとトップ下が存在する時の、よくある動きでもあるわけやな」 「そうなんやけど、ここでは、右サイドのペドロ・レオンの動きが注目になる」 「中央のやや高目、ビバル・ドラドに近い位置まで出てくる」 「これはどういうことかというと、下のような形を狙っている」 「マルケスは、前に壁をつくられて、なかなか出すところがない」 「そんな時にどうするかというと」 「大きく蹴るフェイントから足の甲を返し、横にパスを出す」 「これは、彼の得意技でもある」 「上のピンクの矢印のように出すフェイントをかけると、ディフェンスは中央かつ後方に意識が行く」 「そこで横に出せば、スペースがあるはずである」 「はずであるわけだが」 「ペドロ・レオンは、最初からその横パスを狙っていて、一気に詰めて来るから危ない場面になりかける」 「フェイントをかけて蹴るから、パスのスピードはどうしても遅くなりがちやしな」 「そこで、ピケとマルケスのお話し合いがもたれる」 「ピケが、”横パス危ないから前に蹴れよ”とか言うわけやな」 「それに対して、マルケスは、”お前が後ろに下がれ下がれ”という身振りで応じる」 「それはどういうことかというと」 「下の形やな」 「マルケスの前がふさがれた時、ピケがポジションを下げることによってペドロ・レオンとの距離を取る」 「そうすれば、楽にバックパスが出せるし、それでも相手が出てくるならピケがその裏を狙えばよい」 「最初に距離を取っている分、余裕があるはずやしな」 「このあたり、マルケスは手馴れている」 「さすがの組み立て王だけに、修整もお手のものやな」 「相手が引いて守っていたり、1-4-4-1-1だった場合は、ピケは別に下がる必要はないけれども、相手が上のように守ってくるならそれに対応する必要がある」 「サイドを高い位置に置く、1-4-2-3-1の特徴に対処する」 「試合中の選手による調整という意味で興味深い」 「さらに、相手の意見を素直に聞くピケの態度も興味深い」 「後半始まってしばらくの時、同じようにマルケスの前が防がれるシーンがあるが、ピケはさーっとポジションを下げる」 「そしてもう一つ、バルサを相手に前に出るバジャドリー、という事実は極めて興味深い」 「もう、これは、さすがメンディリバルとしか言いようがない」 「実は、去年も同じような試合がある」 「マドリー戦やな」 「恐れずにラインを高く上げて、ぼっこぼっこに裏を取られて、ぼっこぼっこにゴールを決められて、7-0というすさまじいスコアでやぶれた」 「そして今回は6-0」 「ある見方からすると、去年の敗戦から学習していないことになる」 「個人的には、あつものに懲りても吹かないその精神に驚嘆するねんけどな」 「そのような見方もある」 「スペインリーグでも若い世代になるほどゾーンからの組織的な守備を重視する監督が増えていて、そればっかりになるとリーガとしてつまらんやろ」 「それにしても、7-0、6-0はきついで」 「それはそうやけど、1点リードの後、10人の相手に1-4-1-4-1みたいな形でひたすら守り倒して、相手のクリアが甘くなったところをボレーで決めて追加点。気落ちしたところをカウンターでしとめて勝ち逃げ、とかそんなチームばっかりになったら、ほんまにお先真っ暗やで」 「どのチームの話や」 「どのチームというわけでもないねんけどな」 「はっきりせん奴やな」 「なんにせよ、前半は4-0で終わる」 「4点ともエトーというのが恐ろしいところではある」 「そして後半どうなるかというと」 「こうなる」 46分: メンドゥンヤニン→アギーレ、ペドロ・レオン→カノービオ 「さすがにまた来たメンディリバル」 「この状況で、ビバル・ドラドをボランチに下げる」 「ビバル・ドラドという選手は、周囲が良く見え、組み立て、ラストパスに威力を発揮する」 「しかし、運動能力、身体能力には恵まれておらず、体を当てていくような守備はできない」 「その彼をボランチに置く」 「いまさら引けへんというかなんというか」 「あくまで前に出る気満々やな」 「前に出るとき何を狙うかというと」 「いつものパターンやな」 「手筋であるバルサの右サイド」 「要するにヌマンシアやスポルティング・ヒホンと同じ筋を狙う」 「そして、この後のバルサの交代が、重要な意味を持っている」 「まずは68分」 「マルケスをマルティン・カセレスに代える」 68分:マルケス→マルティン・カセレス 「そして、72分にグジョンセンからケイタ、75分にエトーからフレブ」 72分:グジョンセン→ケイタ、75分:エトー→フレブ 「さて、これらの交代の意図はなんでしょうか」 「というのが今日の戦術問題か」 「いや、そんなに大げさなもんではないけどな」 「少し考えられてから続きを読まれるとよろしいのではないかと」 「はい」 「それで」 「その意図はというと」 「全て右サイドに効くようにできている」 「マルティン・カセレスはサイドへのカバーがマルケスよりも遥かに速く、フレブは下がってスペースを埋められる」 「トゥレが右に出た場合、ケイタが下がって中央を埋める」 「ケイタを右に置いてくれたら、ちょうどヒホン戦での予想通りやねんけどな」 「残念ながらケイタは左や」 「この一連の交代は、重要やな」 「監督が、右サイドの守備に問題があることを認めて、それに対処したことになる」 「つまり、先発では問題があることを認識しながら、あえてデメリットに目をつむり、メリットにかけている、ということが垣間見える」 「これは、去年、おととしのバルサを考えると、非常な安心材料やな」 「戦術的自爆の嵐やったしな」 「しかし、右に問題があると認識しているとすると、最初から下の形にした方がいいような気がせんかね」 「マルケス左か」 「ピケかカセレスにサイドのカバーを任せて、マルケスをプジョルとで挟む方が守備的にはええやろ」 「マルケスを左に置くと、左前方へクロスに長いパス、という必殺技が使いにくくなるし、シャビ、アウベス、マルケスで右を徹底的に強くするという辺りでそうしてあるのではないかね」 「そうなんかね」 「守備のデメリットより、攻撃のメリットを優先した結果やと思うで」 「なんにしても」 「去年までの自爆癖も消える気配で」 「得点力はすさまじく」 「バルサはめでたしめでたしと」 「ほんまにそう思うか?」 「思わんのか」 「確かに、ボールをキープして失ってすぐプレスをかけて奪ってまた攻める、という自分のパターンに持ち込んだ時は恐ろしく強く見える」 「そらそうやで」 「しかし、一つ外れたり、飛ばされたりして、中央からサイドにさばかれるとびっくりするくらい脆い」 「どう脆いんや」 「あっという間にゴール前に行かれるという意味でも脆いし、シュートを打たれる形が非常に危ない」 「ほうかね」 「それが心配なんやな」 「苦労性やな」 「概念的に言うと、バルサはチャンスの数で8対2くらいで圧倒してるとするやろ」 「いきなりなんや」 「これが相手にミスが出ないとすると、7対3くらいになる」 「その数の根拠がわからんけどな」 「概念やから、大体の話で聞いてくれ」 「ええけど」 「さらに、サイドとトップに強い選手を揃えたチームを相手にすると、6対4くらいになる」 「そうしとくか」 「こうなると、相手が先制点を奪う、ということが十分に起こりうる」 「そらあるやろな」 「より前に出なければならいな状況になると、右の薄みがさらに強調されることになる。この時、カウンターからの攻撃に耐え切れず、追加点を決められて豪快に沈む、という事態になりはせんかと思うわけだ」 「つまりは、自分のペースで戦えているうちはいいが、それが外れた時にまずいということか」 「いい時と悪い時の落差が激しすぎて、一つ裏目を引くとえらいことになる可能性がある」 「ふむ」 「綺麗なんだけど割れ物注意という感じで、もう一つ二つ、振幅を小さくする、チームを安定化する変更が必要だと予想する次第や」 「それが杞憂に終わるか否か」 「今後の注目ということで」 「また次回」 「ごきげんよう」 「と言いたいところだが」 「なんや」 「この試合、どうしても触れておかねばならない人がいる」 「誰や」 「バジャドリーの選手やねんけどな」 「あれか」 「わかるんか」 「アルバロ・ルービオか」 「テクニックがしっかりしていて、本当に献身的に働く、いい選手やな」 「一家に一台とは彼のことやな」 「そうではなくてだ」 「じゃあ、アセンホか」 「一対一で、右に入るとみせかけて左にシュートを誘い、それを弾いたのは見事だった」 「変なパスミスからグジョンセンに決められた辺りもチェックポイントやな」 「だからそうではなくてだ」 「だから誰や」 「わかっててやってるやろ」 「やっぱりあれか」 「多分それや」 「ゴイトンか」 「そうや」 「大活躍やったな」 「なんともいえん」 「例えば下のような状況があった」 「いい形でボールを持った選手が、ディフェンスを押し込む」 「サイドのディフェンスを自分に引き付けることで、ライン際にスペースを作る」 「そして、そこにはゴイトンがいる」 「満を持して前方へパス」 「完全に通ったと思ったら」 「ゴイトンはオフサイドポジションにいる」 「なんでやねんと」 「一番外側で、完全にラインが見える場所にいるのになぜオフサイドにかかるのか、不思議なところやな」 「おまけに、惜しい惜しくないの議論が起こらないほど、完璧に前に出ている」 「次は下の場面」 「次にどのようなプレーが行われるかというと」 「それは縦へのスルーパスしかない」 「ゴイトンは大チャンス」 「おまけに並走するのはマルケス」 「遅さには定評がある」 「これはもらったと思ったら」 「なぜかクリアされる」 「ゴイトンは大きくて速いのが売りなのではないかと」 「そして、最後は右サイド」 「ボールを持った選手が、一番サイドの守備者を押し込む」 「ゴイトンは、守備者と平行に走る」 「そして、ボールをくれくれとさかんに要求する」 「しかし、パスは来ず、不満げな表情を見せる」 「いや」 「まあ」 「そんなわけあるかいと」 「ボールを持った選手が、わざわざディフェンスに向かって行くのは、下の形を想定している」 「守備をピン止めして、前の選手にサイドへ開いて欲しいわけやな」 「距離があいたところで、右足アウトでさばいて勝負や」 「ディフェンスとしてもそれはわかっているから、外にパスが出たら、いかに早く詰めようかと考えている」 「ところが自ら近づいてくるゴイトン」 「敵も味方もみんなびっくりや」 「相手との距離がないから、カットされそうで出しにくいし、通っても近いから守備は簡単に間に合う」 「彼はムルシア時代からこういう感じやからな」 「今ひとつ状況と先が読めないというかなんというか」 「動き方がわかっていないというかなんというか」 「肉体の動きはただものじゃないねんけどな」 「ピケと競り合いながらロングボールを胸でぴたりと止めるプレーなんかを見ても、やはりただものじゃないで」 「ただものじゃないとしても、上の動きでは点は取れない」 「仏作って魂入れずかね」 「ちなみに、去年は、ムルシアでリーガ31試合に出場、21試合先発で1790分プレーして2得点や」 「895分で1点か」 「10試合フル出場ぐらいの時間やな」 「きついな」 「2部では15点取ったことがあるねんけどな」 「そうか」 「そんなこんなで」 「ゴイトンはもったいないというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」
これは、「正しいインサイドキックとは ~正しい技術 その2 裏~」の続きである。
これまで、正しいインサイドキックとして表と裏を見た。 表とは、足首の角度を斜めに固定し、やや外側から回すように蹴るものである。 裏とは、ほぼ同じフォームから最後に足首を返して蹴るものである。 この二つを組み合わせることで、相手の裏を取り、攻撃を成功させる例を見る。 下図において、中央やや右がわにボールがある。 ここでは、ボールを持った選手と同時に、オレンジで囲まれた守備者の動きに注目されたい。 左足(軸足)を踏み込む。 キックの瞬間、ディフェンスが外側につられている様子がわかる。 パスは中央に出る。 しかし、最初に円で囲んだディフェンダーは、サイドに体を向けている。 以下、スルーパスが通る。 最初に円で囲んだディフェンスは、完全にパスの方向と逆に動いた。 これは、なんらかのフェイントにかかったと考えるのが自然である。 以下に別角度から見る。 左足を踏み込む。 足首の角度を変えずに、中心より軸足側に蹴る、いわゆる表のインサイドキックを見せる。 ここから、急激に足首を捻る。 ディフェンスは、前の段階で見えたパスにつられているため、逆を向く。 結果として、背中側を通されている。 このプレーを矢印で表すと次のようになる。 まず、踏み込みからの流れ、表のインサイドのフォームでは、矢印方向にパスが出るように見える。 しかし、直前に足首を捻る、裏のインサイドを使うことで、矢印方向にパスが出る。 単純に矢印を重ねあわせると、下のようになる。 このイメージのずれから、ディフェンスは裏を取られた。 パスを出した選手は、特別な技を用いているのではなく、普段からのインサイドキックの表と裏、その切り換えを行使しただけである。 ただそれだけで、下のようなチャンスが生まれた。 これは、正しいインサイドキックが、相手の裏を取るという点で非常に優れていることを示している。 同じ流れで相手の裏を取る場面として、下のようなものがある。 最初に通してご覧頂きたい。 今、図の中央右側、センターサークル前に位置する赤い選手がパスを出す。 (最後の図で、ボールは左側の赤い選手の足元にある) このパスの仕組みは以下のようになる。 表のインサイドで赤いコースを見せ、白で裏を取る。 ディフェンスは、赤につられて黄色方向に動く。 最初の例と同じ原理である。 ここで、下の図において、本当に赤方向へのパスフェイントが入ったか否かが問題になる。 下の図は、キック後のものである。 この時、パスを出した選手の膝は、上の図から下の図において外に開いている。 非常に小さい図だが、連続表示すれば、確かに膝が開き、足首が上に返る様子がわかる。 キックの後、膝が外に開くというのは、先に見たように、最後の段階で捻りを加える、裏のインサイドの特徴である。 つまり、キックの最後の段階で方向が変えられたことを示している。 これと、ディフェンスの動きを考え合わせると、ほぼ確実に、表から裏への変換が使用されている。 ここで大切なのは、スルーパスのために特殊な技術を用いているわけではない点である。 もっとも基本的なインサイドキックを利用しているだけであり、それだけでこれほどの利が得られる。 また、上の2つの例でもわかるように、最後に足を捻るインサイドキックでも非常に正確なパスを出すことができる。 特に2番目の例は、針の穴を通すといってもよいほどの精度で出ている。 このように、精度という点でも正しいインサイドキックで十分である。 パター型のインサイドキックは、「窮屈であるが精度が高い」という理由から使われていた。 しかし、もっと自然な方法で十分な精度が出る以上、使う理由が一切ない。 下の図は、以前に見た、誤ったインサイドキックを用いたためにパスカットを許したシーンである。 これは、パター型のパス方向が早い段階で読まれやすいため、相手に早く動き出されてしまうのが原因だった。 もし、この選手が正しいインサイドキックを身につけていれば、下の形で、白いパスは通りやすい。 さらに、この技術は、守備者と正対する(体の正面を見せて向き合う)場合にも有利である。 表のインサイドは、中心より軸足側に飛ぶ、裏のインサイドは中心より蹴り足側に飛ぶ。 つまり、正しいインサイドを身につけていれば、正対した時に、常に2つの選択肢を自然に手に入れることができる。 これは、サッカーにおいて非常な利点である。 (参考:正対することの重要性) 正しいインサイドキックの利点をまとめる -体の使い方が自然である -バランスを保ちやすい -キック後のプレーに早く移ることができる -最後までパスの方向がわからない -表と裏を切りかえることで相手の逆を取ることができる -正対において自然と2つの選択肢が生まれる 精度については、練習が必要である。 足を捻る具合により角度を調整するため、最初はうまくいかない。 しかし、練習により上達する。 一方、誤ったパター型のインサイドキックは、いくら練習しても、上のメリットを手に入れることは絶対にできない。 蹴った後にバランスを崩す、パスの方向を読まれやすい、というのは下手な選手の特徴である。 パター型を教えることは、いわゆる下手くそを大量生産することに他ならない。 これで下手になったとしたら、選手の責任ではない。 教えたコーチの責任であり、コーチにそれを教えたコーチングコース担当者の責任であり、その教科書を制定した者の責任である。 間違った技術を教えることは、選手の可能性を潰し、未来を奪うことにつながる。 次回は、その点について見る。 |
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