週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
これは、「組み立て、踏み込むことで相手を止める1」の続きである。
バックパスを受ける。 相手が詰める。 体の正面を、一度守備者に向ける。 前に踏み込む。 ディフェンスの足が横に揃う。 パスフェイクをキャンセルした際、バランスを崩す点を除けば、技術的に良い行動である。 バルセロナに来た当初のアビダルは、ザンブロッタと並んで、チームの組み立てを阻害する存在だった。 それが、グァルディオラ就任から10ヶ月ほどで、ここまで改善された。 仮に、10歳の時点でこのように教えられていれば、よりよい選手になったはずであり、正しい教育の重要性がうかがわれる。
組み立てにおいて、相手と正対し、距離を保つことが重要であることを見た。(参考)
また、距離を保つために、相手の方向へ踏み込み、プレーのベクトルを前に向けることが重要であることを見た。(参考) それができない場合、すぐに体勢を悪くしてしまい、次のパスを受ける味方に困難を押し付けることになる。(参考) 具体的には、下のようになる。 今、サイドライン際で、赤っぽい選手がボールを持っている。 チームは右に攻めており、オレンジの線で示されるように、詰めてくる青い選手とは十分な距離がある。 にもかかわらず、ボールを持った選手は、後ろにターンすることしか考えず、そのままバックパスを行う。 パスを受けた選手は、後ろ向きの上、相手からより近い位置でプレッシャーを受けている。これは、組み立てとして非常に悪い。 これを防ぐためには、体の正面を相手方向に向け、左右へのパスを見せることで、出足を止めなければならない。 この時、前へ踏み込む動作を見せることが重要になる。 以下において、前から詰めてくる相手を、踏み込みからのパスフェイクによって止める例を見る。 パスを受ける。 一度、体の正面を、詰めてくる相手へ向ける。 前へ踏み込み、パスを見せる。 モーションをキャンセルし、体を開く。 踏み込みを見た守備者は、一度両足を揃える。これにより出足が止まる。 パス動作を再び開始する。 足をひねりながら、蹴り足方向へ蹴る。 守備者の横を抜ける。 上の2つの例、最初の悪い例、次の良い例ともに、同じ選手がモデルである。 以前は、相手陣、下の状態で相手に詰められ、簡単にバックパスをしか考えなかった。 同じ選手が、自陣で相手に詰められ、きちんと踏み込むことで相手を止め、味方につなぐようになった。 これは、非常な変化である。 同様の行動が、同じ試合の別の場面にも見られる。
「さて」
「バルサは無事に勝ち抜け」 「トータル5-1やしな」 「第2戦の先発はこう」 「バイエルンは、4-0で負けた緒戦からずいぶんと変えたわけやけれども」 「中でも特徴的だったのは、リベリの動きかね」 「フォワードとも中盤とも、サイドとも中央ともいえない位置で浮いていた」 「基本的に、上がるアウベスを追わない」 「ゼ・ロベルトが出て対応するが、中に絞っていた場合などは、遅れることも多い」 「危ないといえば危ないけど、そこを受けてはいられない」 「4点差やしな」 「バルサとしては、その4点を守ればよかった」 「楽な状況ではあった」 「その中で、きらりと光るプレーを見せた選手がいた」 「その名もアビダル」 「アビダルは、バルサに来て以来、あまりにも組み立てが下手でチームの流れを切ることが多かった」 「例えば、敵陣で、ディフェンダーとの距離がある状態でボールを持ったとしても」 「前に出てこられると簡単に後ろを向いてバックパス」 「受けた選手がプレッシャーを受ける」 「といった形で、チームに害をなすことが多かった」 「自分がプレーしなければならないのに、責任を人に押し付けようなパスを出していた」 「それが、去年の夏にグァルディオラが就任し、今年の2月くらいには、明らかな改善が見られるようになった」 「まず、簡単に後ろを向かなくなり、体を相手に向け、左右へのパスを出す姿勢を見せるようになった」 「この試合では、前に踏み込んでのパスフェイクで、前に出る相手を止めるシーンがあった」 「例えば、次の形やな」 「自陣でボールを受ける」 「バルサは左に攻めている」 「詰めてくる相手に対して」 「大きく前に踏み出して、パスフェイクを見せる」 「それをキャンセルし」 「相手の横を抜き」 「無事にパスが通る」 「じつに素晴らしい」 「以前のアビダルのプレーとは天と地ほどの差やな」 「シャビで見た、相手方向に踏み込む大切さ、プレーベクトルを前に向ける大切さ、というのがここでも見られる」 「ちなみに、上のプレーがまぐれではないということが、下の流れでわかる」 「いや、まぐれでこのプレーはできんぞ」 「それはあるけれどもや」 「上の状態で相手に詰められる」 「ここで、体の正面を、一度相手に向ける」 「これも非常に大切やな」 「その後、右足を前に踏み込み、左足でのパスを見せる」 「モーションをキャンセル」 「この過程で、ディフェンスの両足が、一旦横に揃っている点が注目やな」 「そこから、もう一度キックモーションを起こしてパス」 「無事、味方に渡る」 「これまた素晴らしい」 「寄せてくる相手に向かって、前に踏み込み、出足を止め、距離を保ってからパス」 「ほとんど別人のようなプレー振り」 「ちょっと、キックフェイクの後のバランスがあやしいけどな」 「傾き過ぎておっとっと、みたいな感じやな」 「これだと、例えば、パスフェイクからアウトで切り返したり、モーションをキャンセルした後、もう一度ボールを踏んで向きを変える、といったことはできない」 「そうは言っても、2年前と比べたら、長足の進歩やで」 「人というのは、上手くなるもんやな」 「プレーに対する、正しい技術、そのもととなる、正しいアイディアを持つことが、いかに大切かを物語っているのではなかろうかと」 「アイディアというのは重要やな」 「ある意味、正対と踏み込みというアイディアにおいて、アビダルはシャビに追いついたともいえる」 「ただ、その後、実際の行動においてどれほど上手くできるかというのは別問題で、才能やら肉体的条件やらが関わってくる」 「ある状況で有効な技術、行動というのはほぼ決まっているけれども、細かいところは、自分に合わせて改造する必要がある」 「それで言えば、ファン・ボメルなんかがそうかもしれん」 「どういうことや」 「彼は、実は、ゴールにつなげるために相手を崩すアイディアという点で、非常に優れている」 「確かに」 「例えば、この試合で、インステップフェイクから足を返し、インサイドでスルーパスを出す場面があった」 「赤がシュートフェイクの方向」 「白がパスの方向」 「結局、誰も反応してなくて、後ろに抜けただけやったけどな」 「それはそれとして、この時のパスモーションは下のようになる」 「ふむ」 「ボールが軸足のずいぶん前にあり、体を後ろにそらしながら蹴っている」 「なるほど」 「これは、蹴り方としてはあまりよくない」 「確かに良くない」 「上は、インステップからインサイドへの変更で、いわゆる、ステップサイドの裏と呼ばれるものだったわけだが」 「同じ選手が、インサイドの表から裏へ変更する場合に次のように蹴る」 「やはりボールを前目において、後ろに傾きながら蹴っている」 「同じアイディアをもとにしながら、シャビのフォームとは著しく異なる」 「これは、ファン・ボメルが自分の体に合わせて、技術を変形させた結果ではなかろうかと思うわけや」 「そうなんかね」 「おそらく、骨格、筋肉や関節の柔軟性といった点で、シャビのように蹴るのは難しいため、上のような蹴り方にいきついたのではなかろうかと推察されるわけなんやけどな」 「それは、バルセロナのメディコにでも聞かんと真偽がわからん話やな」 「まあ確かに」 「この試合、ファン・ボメルといえば、インステップからインサイドで上とは逆の変更から、見事なスルーパスを通した」 「42分54秒くらいの出来事やな」 「そちらの詳細はこちらにありますので、よろしければご覧下さい」 「また、上で出てきたアビダルの詳細については、こちらとこちらですので」 「よろしければご覧下さい」 「ビジャレアルが敗れ、スペイン勢はバルセロナを残すのみ」 「ビジャレアルは、最近5位に落ちたとはいえ、リーグで4位を保ちつつ、本当によくここまで辿り着いた」 「最後は、満身創痍でロンドンにたどり着き、文字通り力尽きた」 「以前にも見た通り、現在の選手構成でここまで来れたこと自体が英雄的功績ではなかろうかというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」
センターサークル手前で、フリーでボールを持つ。
左前方へドリブル。 切り返し、中央、相手方向へドリブル。 赤いパスをフェイントに、サイドへパス。 ウィングの一対一を作り出す。 これは、以前に見た、正対することによりパスコースを確保することの具体例になっている。 また、サイドにスペースをつくるため、パス方向の変更が有効に用いられている。 この形の変換は、こちらを参照されたい。
「さて」
「最近なにかと話題のバルサはレクレと対戦」 「先発はこう」 「レクレは、1-4-5-1」 「この配置を見ると、あるチームを思い出す」 「その名も、バイエルン・ミュンヘン」 「先週のチャンピオンズリーグ、カンプ・ノウで4-0と大敗した」 「実に不思議な試合だった」 「バイエルンが、何を求めていたのか、さっぱりわからないという意味では、確かに不思議だった」 「大きな謎の一つは、マルケスに対する対応やな」 「バルサを相手にする時は、まずここを押さえないと話しにならない、というのは良く知られている」 「ところが、バイエルンは彼を放っておいた」 「どのぐらい放っておいたか、というのが下の流れになる」 「まず、左側でマルケスがボールを持っている」 「誰も守備にこないので、どんどんドリブルで進む」 「ハーフライン手前に到着」 「まだフリー」 「ついにハーフライン突破」 「さすがに人が近づいてくる」 「しかし、十分距離があるので、落ち着いて前方へパス」 「エトーに渡る」 「ボールをキープしたエトーに正面を向いた選手がフリーでフォローする」 「ディフェンスとしては最悪やな」 「引いて守っているくせに、ディフェンスラインの前にとんでもないスペースを残している」 「実に不思議である」 「このような流れは、1回限りではない」 「下では、またもマルケスがフリーでハーフラインを越える」 「縦にパス」 「戻して、サイドにさばく」 「その結果」 「アウベスが文字通りドフリー」 「ゾーンに対するアウト・イン・アウトのような形になっていて、流れとしては理想的やな」 「攻撃としては、なんにも難しいことをしていないのに、非常に良い状況を迎えている」 「守備側としては、バルサのストロングサイドは、右で、そこを押さえなければならない」 「ところが、マルケスをフリーにした上に、右サイドもフリー」 「まことに謎である」 「次もマルケスに対する守備」 「今、ボールを持ったマルケスが中央方向へ進む」 「この時点で、寄せるディフェンスと大きな距離がある」 「中にパスを出すフェイクから、軽く外へ切り返す」 「縦へパス」 「見事に間を抜けて」 「縦へ転がり」 「味方につながる」 「この時点で、バルサの選手は4人」 「ディフェンスは、4人とセンターサークル内に1人」 「たった一本のパスで、4対4.5を作られては、ディフェンスはなにをしているのかわからない」 「ここでも、マルケスは別に難しいことをしたわけではなく、十分に余裕のある状況でパスを出している」 「プレスともいえないプレスで、中がバラバラというのは、なんとも理解し難い」 「バイエルンは前から行きたいのか、後ろで守りたいのか、その点からしてようわからん」 「詰めるにしても中途半端やしな」 「似たようなことが、ピケの側でも起こる」 「詰めてくるバイエルンの選手に対し、パスをピケに戻す」 「前に出た選手は、そのまま詰める」 「ところが、まったく届かない」 「おまけに、一番出しやすいパスコースが空いているので、ピケはそこを通す」 「その結果、下のようになる」 「ひどい話やな」 「前に出た選手のすぐ横を通され、その先にいる選手が文字通りドフリー」 「さらに酷いことには、パスを受ける選手のすぐ横に、前をむいたフリーの選手がいる」 「結局、簡単にターンされ、下の状態になる」 「右サイドへのパスが出し放題の状況で、その先にはメシかアウベスがいる」 「困ったな」 「確かに」 「このような形のよくわからない守備というのは、以前にも出てきた」 「ユーロ2008のロシア対スペインやな」 「バイエルンの狙いは、はたして何であったのか」 「謎は深まるばかり」 「ちなみに、謎のシーンは攻撃にも存在する」 「キーパーからのロングボールをトニが落とす」 「後ろから走りこんだシュバインシュタイガーがこれを戻す」 「アルトゥントップが受ける」 「ここまでの流れは非常に見事」 「これができれば、バルサの弱点を突きやすい」 「ここから、縦にドリブル」 「あら」 「プジョルに潰される」 「まあ」 「まことに残念な結果に終わった」 「バルサとやるなら、中央に長く入ったら、次は左に展開したいところやな」 「ここからやな」 「この場合だと、ファーでフリーのトニへ直接クロス、もしくは、それをフェイクに使って左のスペースに展開しても十分行ける」 「アウベスが中に入っているから、サイドのスペースはガラガラのはずやしな」 「おまけに、そこにはリベリがいた」 「左下の矢印の先、頭だけ映っているのがリベリ」 「上の流れだと、メシはここまで戻ってこないから、絶対にチャンスになる」 「バイエルンは、バルサ対策でやるべきことについて、完全な逆をやった感がある」 「そういえば、バレンシアが、同じようなシステムを用いて、似た形でやられたことがあった」 「ただ、この試合では、これまでのバルサ対策の一つが有効でなくなる可能性が見えた」 「ピケか」 「ピケのさばきが格段によくなり、マルケスを空けてピケを完全に空ける守備をやると無理が生じると考えられる」 「サイドチェンジだけでなく、フリーになった時のコース取り、パスの出し方という点でも上手かった」 「その辺りは、こちらでご覧頂くとして」 「攻撃で狙う筋はこれまで通りとして、果たして、今後どう守るかね」 「両方のセンターバックの前にフォワードを2人置いて壁を作るか、あくまでもより恐いマルケスを重視して抑えるか、どっちかやな」 「そんなこんながどうなるか」 「今夜の試合が楽しみというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」 |
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