週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
前回は、維持正対までを見た。ここでは、前進正対からを見る。
・前進正対 前進正対とは、自ら守備者に向かい、正対状態をつくりだすことを指す。 具体的には、以下のようになる。 自ら相手を求め正対する。 下のプレーも同様である。 一切逃げずに、自ら守備者と正対する。 以上は、相手がいる場所そのものを目指して正対する前進正対である。 また、前進正対の一種として、自分の動くコース上に進入してくる相手と向かい合う正対もある。 これを進入正対と呼ぶ。 ・進入正対 前を向いた状態から、斜め中央へと進路を取る。 このコース上に、守備者が侵入してくる。 これに対し、進路を変えずに進む。 進入してくる相手と正対直前にある。 右へのドリブルフェイクから切り返し。 この進入正対は、ドリブルと絡めて使われることが多い。 これは以下の理由による。 守備者は、ボールの移動軌跡上で止まろうとする。 その止まろうとする瞬間にフェイントを合わせることで、相手を大きく振ることができる。 このため、逆に抜けた後、相手に追われることが少ない。 進入正対は、相手との正対直前に技をかけて抜くことに適している。 次に、正対において最も重要な主導正対を見る。
前回は、サッカーの上手さは正対により評価されるべきことを見た。
ここでは、正対の種類について見る。 ・瞬間正対 瞬間正対とは、ごく短い時間、相手と正対することである。 この程度でも、相手の動きを制約する効果がある。 これが最も初歩的な正対である。 ・抑止正対 抑止正対とは、前に出てくる相手に対して体の正面を向け、その方向にプレーベクトルを向けることによって、前進を阻むことである。 プレーベクトルを向けるとは、相手方向に踏み込み、前へのパスやドリブルを見せるといった行動を指す。 この例では、正対している時間が短く、止めた後すぐに横を向いている。 この横を向いた状態は、相手の前進を止める効果が薄く、次のプレーに時間がかかると体を寄せられることになる。 より時間の長い抑止正対は、以下のようになる。 相手を止めた後、状況によっては、周囲の動き出しを待つため、正対状態を維持する必要がある。 そのような正対を維持正対と呼ぶ。 次にこれについて見る。 ・維持正対 維持正対とは、正対状態を一定時間維持することである。 これは、周囲のパスを引き出す動きを促すために重要である。 横を向いた状態から正対に入る。 前に踏み込み、アウトで切り返すフェイントを行う。 次に、左へパスを出すフェイントを行う。 正対状態に戻る。 味方にボールを預ける。 正対状態を維持するため、ドリブルフェイク、パスフェイクが用いられていることがわかる。 次も維持正対の例である。 (画像出展:http://www.youtube.com/watch?v=euMu1SKi-ak) 右足を振り上げて回す動作が、相手を牽制するために使われている。 正対を維持できるようになれば、相手と向かい合う恐怖がなくなる。 そうなれば、自ら求めて正対を行うようになる。 相手に向かって前進し、正対することを前進正対と呼ぶ。 次にこれを見る。
ここまで、正対こそがサッカーにおける上手さの核であることを見た。
正対が核である以上、技術レベルは、それを基準に定義されなければならない。 この基準は、いわば正対度というべきものであり、上に行くほど高い。 サッカーの技術の高さにおいて、個別技術の器用さ、キックが正確である、キックが遠くまで飛ぶ、切り返しが深い、切り返しの種類が豊富である、といった要素は副次的な重要性しか持たない。 副次的であるということは、個別技術がサッカーに必要ないという意味ではない。 いくら正対に優れていても、その後のパスがすべてずれるようでは意味がない。 個別技術は、正対の後に重要になるという意味である。 また、個別技術をいくら器用にこなしたところで、正対ができなければ、それはただの下手である。 この点については、これまでに見た通りである。 正対ができるか否かによって、明快に上手、下手の区別がなされる。 正対をできる選手が上手であり、正対をできない選手が下手である。 より正しく言えば、正対してプレーする方が楽な選手を上手と呼び、正対しないでプレーしたがる選手を下手と呼ぶ。 正対の欠けたプレーは、しょせん嘘であり、偽である。 最初は、どうしても横を向いたプレーから始まる。 ボールを持って相手に詰められると、あわてて横を向いてしまう。 少し進化すると、相手から逃げながらも、ボールを保持して移動しつつプレーするようになる。 これがスラロームである。 ただし、スラロームは、行き止まりの概念である。 どんなに突き詰めたところで、本当に上手くはならないし、真の技術は身につかない。 上手と下手の段差を飛び越える鍵は、正対にある。 そこを乗り越えて初めてサッカーをプレーすることができる。 それ以前は、サッカーの真似事をしているにすぎない。 これは、サッカーを見る上で絶対に欠かすことのできない視点である。 正対も、レベルにより、いくつかの種類に分けることが可能である。 次に、それぞれの意味するところを見る。
以前、スラロームにより、一度抜いた選手に追いつかれる例を見た。
欠点は、横から詰める選手に対して横を向き、中に切り返すことが最初の守備者に近づくことにあった。 この解決例を見る。 今、白と黒のチームが左に攻めている。 センタライン上、画面上側の選手がボールを受ける。 保持者の前方に十分なスペースがある。 ここから向きを変え、中央の選手と向き合う。 ここでは、完全に正対状態にある。 正対から縦に切り返す。 前方の選手と正対する。 最初に正対した選手は、一度受身に回ったため追うことができず、地面に横たわっている。 ここから、サイドへパス。 これも連続正対である。 始めは、十分に前方のスペースのある状態であった。 それにもかかわらず、横へ動き、一度正対する。 これにより、サイドに追い込まれる危険を避けると同時に、前へ加速することを防いでいる。 その後、次の守備者と正対し、前方へパスを出す。 正対することは、相手に近づくため、危険なプレーに見える。 しかし、守備者を受身に回してしまえば、むしろ次のプレーが容易になる。 同様の例を見る。 ボールを持つチームは左に攻めている。 下図の白い矢印の先にボールがあり、オレンジの矢印の先に保持者がいる。 白い守備者に追いつかれる。 正対に移行する。 アウトでの切り返し。 次の守備者と正対する。 中への切り返し。 次の守備者と正対する。 以下、画面左の白い守備者の足がそろうことがわかる。 これは、正対されたことにより、それを受ける体勢に入ったためである。 サイドへパス。 最初は、サイドの狭いスペースから始まった。 これを次々と正対することにより、脱した。 典型的な連続正対であり、一対複数の状況を、正対により1対1の連続に還元している。 正対は、相手に近づくが、守備者を受身に回すことで、切り返した後に距離を空けることができる。 スラロームは、最初は相手から遠ざかるが、自分を不利な体勢に追い込むため、大きな切り返しなど、無理な技が必要になる。 相手に向かうことは、一見怖いように見えるが、サッカーにおいては正対した方がよいプレーを行いやすい。 ピッチ上で、守備者と正対する方が楽な選手を上手と呼び、そうでない選手を下手と呼ぶ。 下手を上手いに変えるには、途中で正対すればよい。 これにより、左右にパスコースが確保される。 パスをフェイントに縦に切り返し、次の守備者と正対すれば、また新しいパスコースが確保される。 連続的に正対すること、それにより、1対複数の状況を1対1の連続に変えることが、よいプレーをする鍵である。 正対から逃げる選手は、自ら厳しい状況を打開することができない。 それどころか、自ら厳しい状況に落ち込む。 そうなっては、いかに素質に恵まれ、いかに良い個別技術を持っていたとしても、実際の試合では役に立たない。 それが下手ということである。 これまで、正対こそが上手さの核心であり、下手を上手に変える鍵であることを見た。 次回は、サッカーの技術はどのように理解されるべきか、上手いとはどのように理解されるべきかを見る。
前回は、正対によるスラロームのコース取りの改善法を見た。
結論として、下のようなプレーが得られた。 これが実行可能であることを示唆する例を見る。 ボールコントロール 縦のスペースへ 切り返しから正対へ 正対から切り返し 内側の守備者に向かい、ボールを小さく突く。 アウトで切り返し 中央へパス サイドの選手と正対後、中の選手と正対し、最後のパスへとつなげている。 最初に見た図と類似したプレーである。 違いは、後ろの選手が外から追い越しをかけている点である。 これにより、サイドの守備者が引きはがされた。 これは、保持者のプレーを助けている。 ただし、このプレーは、そのような補助なしでも可能である。 まず、サイドの選手と正対することで、受身に回らせる。 受身に回すとは、重心を後ろにかけさせる、半身の体勢にさせるなど、守備者のプレーベクトルを後方に向けさせることである。 その実例は、前回に見た。 縦フェイクを見せ、内側へ切り返す。 中央の守備者と正対し、ボールを相手に突くことで、受身に回す。 この状態では、サイドの守備者は、ボール保持者に詰め寄ることができない。 前に詰めることで、下がる中央の守備者との間に段差ができ、エリア内へと切れ込まれる。 よって、それを防がざるをえない。 保持者は、受身に回した正面の守備者との駆け引きのみに集中すればよい。 いわゆる上手い選手は、連続的に正対することにより、1対2の状況を1対1の連続に変化させることができる。 このため、プレーが安定する。 それを行うためには、正対が不可欠である。 スラロームの場合、以下のようなプレーになる。 これは、2人の守備者を一回の切り返しで抜こうとしている。 その意味で、純粋に1対2を行おうとしている。 当然、無理な切り返しを行わざるをえない。 このような角度の大きな切り返しは、どんなに優れた身体能力を持ち、どんなに優れた個別技術を持っていても原理的に難しいプレーである。 常に難しいプレーを選ぶようでは、その素質が十分にいかされることはない。 本当に上手いプレーをするなら、より小さな、無理のない切り返しにプレーを還元する必要がある。 スラロームを刷り込まれた選手は、下の二つを直接つなごうとする。 具体的には、間を抜くと見せて、大きくアウトで切り返す。 この時の、体正面の角度変化は下のようになる。 しかし、正対を挟むと以下のようになる。 この時の、体正面の角度変化は次のようになる。 スラローム的なプレーは、角度変化が大きい。 正対からのプレーは、角度変化が小さい。 次のプレーに問題なく移ることができるなら、切り返しは小さければ小さいほど良い。 より簡単なプレーをつなげる方が、常に簡単であり、ミスが少ない。 つまり、安定したプレーにつながる。 相手に正面を向けて向かい合うことは、自ら守備者に近づき、一見、次のプレーに移りにくい印象を与える。 しかし、そこで相手を受身に回してしまえば、守備者のすぐ横を抜くことができる。 パスにしてもドリブルにしても同じである。 これに比べ、スラロームは大きく相手を振るため、一見、次のプレーが有利になる印象を与える。 しかし、切り返しの角度が大きくなることをはじめ、様々な弊害を持つ。 それは、以前に見た通りである。 これから逃れるためには、正対を行うしかない。 ここでのプレーは、上手い選手、安定したプレーをする選手が正対を用いる具体例であり、正対することこそが上手さであることの実例である。 次もスラロームの問題点が正対によって解決される例を見る。 |
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