週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
日本がスペインに勝って、決勝トーナメントに進出した。
大変めでたいことであり、大いに祝福されるべきできごとである。 しかし、一方で忘れてはいけないこともある。 つい先日まで、「吉田麻也のクリアミスミス」「吉田麻也のパスミス」と呼ばれ、大きな話題になっていたプレーである。 はたしてあれは吉田の責任なのであろうか。 プレーは次のようだった。 このあと失点し、コスタリカに敗れる。 上の流れを見ると、確かにパスがズレてつながっていない。 その意味において、これはパスミスである。 次に、同じ場面を、下の二人の選手について、その動きの差に注目して見ていただきたい。 二人とも、ボールを追うために左に動いている。 その動きの起点となる、右足の着地に注目する。 赤いユニフォームの選手の着地は、次のタイミングである。 青いユニフォームの選手の着地は、次のタイミングである。 明らかに日本の選手の方が動き出しが遅い。 動画のフレーム数でいうと、15フレームだけ遅い。 1秒で大体60フレームなので、4分の1秒ほど遅い 結果として次のようになる。 ぎりぎりでボールに触れている。 遅い動き出しでもボールに触れられるならば、きちんと動き出していれば簡単にこのボールを処理で来たはずである。 このプレーについて、「こんな厳しいゾーンで難しいパスをつなぐべきだはない」としてパスを出した責めることはできる。 しかし、それには意味がない。 まず、今のサッカーはリスクを犯してでもつなぐことが主流であり、日本代表もそれを目指している。 そうである以上、受ける側がパスに対して準備をしておく必要がある。 また、「引き分けで十分なグループ状況なんだから、安全を優先クリアすべきだ、パスを選択すべきではない」という批判も成り立つ。 確かに、チームの指示で選択が変わる場面ではある。 無理に勝ちにいかず、引き分けを目指すなら、このパスは絶対に出してはいけない。 しかし、それでも準備動作を怠る理由にはならない。 その理由は、上で見た赤い攻撃側の選手の動作にある。 この選手は、一度左足に体重をのせた後、それを抜き、両足をそろえて少し浮いた状態になる。 それにより、パスに対して素早く反応することができる。 この状況では、ディフェンスはクリアするかもしれないし、パスをするかもしれない。 不確定な状況では、どの方向にも素早く動けるように、下のように浮いて準備する必要がある。 別角度からみると次のようである。 これがサッカーの基本である。 それに対して、青い選手は完全に片足に体重をのせている。 これが、動き出しが遅れる原因であり、まったく基本に忠実ではない。 パスに反応が遅れたのは、それが原因である。 また、パスではなく、大きなクリアが行われるとしても、準備動作は必ず行わなければならない。 それは、常に、クリアミス、キックミスの可能性があるからである。 コスタリカの選手は、パス、クリア、キックミス、そのどれが起きてもすぐに対応できる。 それに対して、日本の選手は絶対に動き出しが遅れる。 かりに、キックミスが起きて、この二人の間にボールがこぼれたとき、青い選手は絶対に競り負ける。 これは、ディフェンスラインの前でプレーする場合、特に致命的な欠陥となる。 よって、この状況では、攻撃側、守備側、ともに赤い選手のようにプレーすることが必要であり、それがサッカーに絶対不可欠な基本である。 13番の選手は、その絶対に欠かしてはならない基本を守っていない。 よって、このプレーから失点したことは、完全にその選手の責任である。 このプレーは、「吉田のパスミス」と語られるべきではない。 「受け手の準備動作の不足」もしくは「13番の一歩目ミス」として語られる必要がある。 こう書くと、「おまえは吉田をかばいたいのか」「おまえは13番が下手だといいたいのか」という話になる。 しかし、そうではない。 この場面で一番重要なのは、「サッカーにとって一歩目は致命的に大事である」という事実である。 これは、非常によく言われることだが、必ずしも守られてはいない。 例えば、以前に「サッカー選手と準備動作」というテーマでマルセロの動きについて見た。 そこで見たように、マルセロはまったく準備動作の重要性を理解していないため、一歩目が必ず遅れる選手だった。 ブラジル代表選手でも、準備動作ができない選手がいる。 トッププロでもそうのような状態である。 この試合でも、それは見られる。 当たり前であるが、日本代表は国の打表になるほどの選手の集合である。 しかし、動き出しが遅れる選手がそこかしこに見られる。 丸投げになって申し訳ないが、ぜひその点に注目して試合を見返していただきたい。 上の場面だけでなく、様々な場面で選手の動き出しが遅れる姿が見られるはずである。 さらに言えば、コスタリカの選手でも準備動作が足りない選手は多い。 「サッカーにとって一歩目は致命的に大事である」というのは、言葉では理解されている。 しかし、代表レベルでさえ、それがピッチ上で正確に行われてはいない。 ここでの考えとしては、これをきっかけに、日本が世界一動き出しを大切にする国、世界一一歩目を大切にする国になればよいと思う。 コスタリカ戦では、絶対に欠かしてはいけない基本を欠かしたために予選リーグ敗退の危機を招いた。 スペイン戦で勝ってこの危機は回避された。 そのことにより、このミスは、とてもよいミスになった。 もし敗退していたら、このミスはとてもつらいミスになっていたが、そうではなくなった。 このプレーは、最初の一歩を切れる切れないで歴史が変わることを示している。 きちんと準備動作を行い、きちんと一歩目を出せば歴史を変えることができる、それをこのプレーは示している。 例えば、今回のプレーでであれば、もっと余裕をもってボールに追いつくことができる。 余裕を追いつくことができれば、クリアすることは簡単にできる。 よって、ギリギリのプレーになって失点することもなく、それで試合に負けることもない。 むしろ勝つことだってできる。 ボールに触れた時の状況は次のようだった。 もし余裕をもって触れたら、上に大きなスペースがある。 これを利用すれば、次のようにパスをつなげる。 そこに後ろからフォローが入る。 これはものすごいチャンスになる、という夢が持てる。 一歩目をきちんと切れば、それだけで夢が持てる。 切らなければ試合に負ける。 一歩目の大切さをこれほど明確に示す例もめずらしい。 よって、このミスはとてもよいミスであり、後世に語りつぐ意味がある。 そうであるがゆえに、これを「吉田のパスミス」として語りつぐのは本当にもったいない。 それよりも、「一歩目のミス、準備動作のミス」として語りつぐ方がずっと意義が大きい。 きっと、このプレーは、ワールドカップが来るたびにテレビでもネットでも話題になるだろう。 その時、「あそこは一歩目が大事なんだ」とみんなが思い出せば、動き出しの重要性は未来永劫伝わっていく。 それが、少年少女にきちんと伝われば、その国のサッカーは確実に強くなる。 一歩目の重要さは、子供達には非常に伝わりにくい。 だからこそ、このプレーには価値があり、「二度目のドーハの悲劇」ではなく、「ドーハの一歩目」として語られる方がよい。 そして、日本が世界一一歩目を大切にする国になればよい。 例えば、コーチが複数いるチームなら、一人を「一歩目コーチ」にしてもよい。 これは、準備動作と一歩目だけに注目して指導するコーチで、動画などを分析し、遅れている場面を抜きだし、選手たちに指導する。 これを3年も続ければ、癖として定着し、選手は無意識に正しい準備動作をするようになるだろう。 これは、選手にとってとても重要なことで、この動作を身につけていないと自分自身に負ける。 正しい準備動作をする自分に、正しい準備をしない自分は絶対に勝つことができない。 たかだか一歩目にそこまでの労力をかけられないのが現状ではあるが、コスタリカ戦の負けを見れば、一歩目には歴史を変えるだけの力があることがわかる。 この認識は、日本サッカーの財産になる。 そう思うのですが、いかがでしょうか。 (終わり) 参考:味方のパスに対する準備動作
無題
・80分すぎ
・0-0の状況、勝点0は絶対に避けなければいけない ・守田は負傷明け&W杯デビュー戦ということもあり出来は前半から良くなかった ・自陣中央の深い位置でDFがミスの出やすいアウトサイドキック ・相手が狙いやすい高いボール 教材にはなるけど少なくとも吉田の「判断ミス」として扱われるべきプレー
無題
吉田のミス以外にも要因があるとしたら、もしくは、敢えて建設的な指摘をするとしたら、というタイトルであれば納得。
ものすごく鋭い着眼点。 ただしやはりキャプテン吉田。どう頑張ってもミスはミス。 ただしやはりこの場面は吉田のミス |
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