週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
これまで見たように、パター型のインサイドキックは、サッカーをする上でまったく役に立たない、無駄な技術である。
そのような蹴り方が、なぜ正しいとして広まったのか。一つの謎である。 この蹴り方は、少なくとも下の理屈を満たしている。 正確に真っ直ぐ蹴るためには、より広い面を、角度を変えずにボールにぶつければよい。 足で一番広いのはインサイドであり、それを真っ直ぐに動かすために膝を開き、膝を中心として面の角度をなるべく固定して蹴る。 確かに、これは、工学的に正しい。 その、例証的説明として用いられるのがパターである。 ゴルフにおいて、力と直線的な方向をもっとも精密に加減できるのはパターであり、この蹴り方は、それを模したものになっている。 誤った蹴り方が、広まった背景には、この説明の存在がある。 また、不自然であるがゆえに流行したという一面もある。 この蹴り方は、人間の自然な動きに反している。 人がものを蹴る場合、膝を伸ばしながら行うのが、もっとも自然である。 しかし、パター型のインサイドは、膝の角度を固定し、それから下を振るように蹴る。 それが理由で、このキックを行うと、非常に窮屈な体勢になる。 窮屈なのを我慢する、不自然な行動を教えられた通りに行う。これらのことは、”真面目”という印象に転化される。 一所懸命そうな姿、真面目な態度のみが好きなコーチにとって教えがいのある技術である。 コーチは、何かを伝えるために存在する。通常、それは教えると表現される。それならば、教えるものを持たぬコーチは、コーチではないということになる。 協会というものは、コーチをつくらねばならぬ、コーチをつくるには、教えることをつくらねばならぬ。 そこで採用されたのが、一見正当な理論を背景とするパター型のインサイドキックである。 とりあえず、選手に教えることが一つできる上に、理論的背景まで持っている。おまけに、不自然な蹴り方であるがゆえに、それを身につけている子供はまずいない。 偉そうに教えるには、もってこいの技術である。 上の事々が、間違いがペストのごとく世に広まった理由であろう。 しかし、パター型を支える理論は、他の視点から見ると完全にその正当性を失う。 まず、サッカーはゴルフではない。 静まり返った観客の真ん中で、誰にも邪魔されずにボールを打てばいいわけではない。 サッカーでは、必ず相手が存在する。そこでパスを通すためには、駆け引きが必要であり、パターを理想としては駆け引きはできぬ。 蹴る方向を変え、蹴るタイミングを変え、時にはモーションをキャンセルする。 体の自由を奪うパター型のインサイドは、そのような目的に使うことができぬ。 次に、人間という生物の構造を考えても間違っている。 先にも述べたように、人がものを蹴る場合、自然と膝を伸ばす。 パター型のインサイドは、膝の角度を固定し、それから下を振るように蹴る。これが、不自然の源泉であり、それがゆえに自由が効かず、蹴ったあと必ずバランスを崩す。 蹴った後にバランスを崩しては、パス・アンド・ゴーなどやりようがない。 人は、木石ではない。足首を取り外して90度ずらしてつけるわけにはいかぬ。工学的な正しさに沿うために、関節をつけかえるわけにはいかぬのである。 パター型のインサイドキックがいったいどの国で生まれ、いつ教科書に記載されるようになったのか、というのは興味深い問題である。 おそらく、人と人の駆け引きや、人間の自然な動きというものより、理屈や原理を重んじる国で発祥したと考えられる。 そのような国として思い浮かぶのは、ドイツである。 司馬遼太郎著、坂の上の雲に、次のようなくだりがある。 維新なった明治政府は、陸軍の制度をフランス式からドイツ式に変更しようとしていた。このとき、騎兵の馬術も同様にドイツ式にする予定であった。しかし、それは、鞍上の姿勢に威厳があるか否かという点に重点がおかれ、馬を御するという本来の目的のためには、体の使い方に不自然な部分が多く、非常に不都合であった。このため、馬術はフランス式を残すよう具申がなされた。 正確な引用ではないが、大意は上の通りである。 誤ったインサイドキックの例として参照した、メルテザッカー、メッツェルダーはドイツの代表選手である。 人の動きを理屈に押し込める、という点で上の話と共通点が見られるのは興味深い。 ユーロの決勝を戦った、ドイツとスペインで、パター型のインサイドを使う選手と、正しいインサイドを使う選手の割合を調査した場合、おそらく興味深い結果が出るのではなかろうか。 原理好きで真面目とされるドイツの方が、いい加減で窮屈なことを嫌うスペインよりも、パター型の間違ったインサイドを使う選手が多いと予想される。 ひるがえって、日本はどうか。 全体的に、理論が好きで真面目であるという傾向がある。 さらには、人の話を素直に聞く傾向も強い。 他国では、まず自分の意見を通そうとするが、日本では、まず相手の話を聞こうとする。 このような環境では、間違った教育が、非常な破壊力を発揮する。 あることに対する見方が醸造されない段階で誤った理論が輸入されると、素直にそれを聞き、真面目に練習をする。こうなる可能性が非常に高い。 インサイドキックに関する間違った理論は、確かに日本に存在する。存在するどころか、非常に広く流布されている。 今、手元に、成美堂出版の「サッカー 練習プログラム」という本がある。 このインサイドキックの項目を見ると、パター型が、写真とともに解説されている。説明文は次の通りである。 「つまり、ボールをとらえる部分を、ちょうどゴルフのパットを打つパターに見たてて固定するわけである」 この本の発行日は、1996年1月10日である。 これは、少なくともその時点まで、間違ったパター型の蹴り方が正しいと認知されていたことを示している。 このことに関しては、実際にサッカーをプレーしていた人は、多かれ少なかれ経験があることと思われる。 これは、おそらく、日本サッカーの歴史を考えると、ドイツ辺りから輸入され、それが固着化した結果であろう。 これが、いつもたらされたのか、それを調べるのも興味深いと考えられる。 繰り返しになるが、これまで見てきたように、パター型のインサイドは、サッカーをプレーする上で弊害のみを備えた、間違った技術である。 それを教えることに一点の意味もなく、強制することは、選手の可能性を奪い、未来を潰す。 それを練習することは、可能性を自ら閉ざし、未来を捨てることになる。 一日も早く改善されることを切に望むものである。
プジョルの適正はSB?
毎度拝読させていただいております。
熱意と説得力を感じたので反論には時間と推考が必要と思い自重しておりました。 足を外旋する蹴り方では重心が軸足に残り、 内旋する蹴り方では蹴り足に移動するということに気付きました。 よって、 相手より前でボールを扱おうとする選手、 キック&ダッシュを狙う選手、 インパクトに体重を乗せたい選手には バランスが崩れることで前に出られる蹴り方が都合よいのかもしれません。
ドイツスタイル
ドイツでは一対一の強さが重視されると聞きます。
守備ではマンマーク。 ビルドアップではそれを振り切るランニング。 その受け手の走るスペースへの良いタイミングでのパス。 正確なクロスと力強いシュート。 (最近は守り方など変わってきましたが)そんなイメージです。 そこで求められるのは足元に納めてからフリーの味方へパスをつなぐために目の前の相手を欺くことのできるキックではなく、 どんな体勢でも確実にコントロールできるキックなのだと思うしだいです。 サッカーを楽しむには、こちらで推奨されているようなボールをしっかりコントロールしつなぐことができる技術を身に付けることが不可欠であると十分承知しております。 お邪魔しました。 Re:ドイツスタイル
パター型では、土台が固定されていないときちんと蹴ることができません。
体勢を崩した状態では、正しい蹴り方の方が蹴りやすいものです。 また、パター型は相対的に弱くしか蹴ることができません。 キックに強さを求めるとすれば不向きな蹴り方であり、これを教えるとは不思議なことです。 ユーロ決勝後、ドイツはスペインに比べて技術的に劣っていることを嘆いていたそうです。 それならば、まずインサイドの教え方から変えるべきです。 それをせずに技術不足を嘆くのは、種もまかずに不作を嘆くようなものだと思います。 ただ、パター型の無意味さを知りつつ、様式美のためにそれを押し通すとしたら、 それは確かにドイツらしいことだと思います。
パター型
いつも楽しく拝見させていただいています。
パター型は蹴り方の技術というよりも当てるための技術ではと思います。 力の必要がない、または少ないトラップ、ボレー、ダイレクトキックなどの際に正確に当てる技術なのではないでしょうか? とはいえ、今まで正しいインサイドキックを必要としてこないほど、キックが強く、人に対しての押し合いや、ぶつかり合いで世界のトップレベルにいるドイツの次の世代が当たり前にシュート、パスに正しいインサイドキックを使ってくるのは楽しみだし脅威ですね。 Re:パター型
パター型は、トラップ、ボレー、ダイレクトキックの感覚を養うためには、もっとも不向きな方法です。
パター型は、関節を固め、筋肉を無理にひねるように使います。 このため、やわらかいボールタッチというものが損なわれます。 これは、トラップ、ボレー、ダイレクトキックにおいて致命的な欠陥です。 パター型を練習するとサッカーが下手になるというのは、この点でも言えます。
パター型のトラップ
いつも楽しみに読ませてもらっております。
上の他の方のコメントに便乗させて頂きます。 私もパター型でない方法でトラップする方法が良くわかっておりません。 インサイドキックのパター型と正しい型の違いで一番大きいのは、股関節の回転で脚全体を振るか、膝下の振りを主に使うかの違いだと解釈しています。 しかし、インサイドトラップのときは、インサイドの面にボールが垂直に当たるので膝下の振りでボールの勢いを吸収するのは不可能だと感じます。 吸収はやはり股関節の回転を使った足全体の動きでやる他ないと考えていました。 一時期膝の振りで吸収できないかいろいろ試しましたがインサイドトラップでは方法が見つかりませんでした。 いつかパター型でないインサイドトラップの体の使い方を解説していただけると嬉しいです。 そもそも私がc60さんの説明の解釈を間違っていましたら御指摘願えればと思います。 Re:パター型のトラップ
後の書き込みで、ライナー性のボールについてであることは把握しました。
グラウンダー、もしくは、地面に近い位置にあるボールのコントロールについては、こちらをご覧下さい。
無題
上の方、フォローありがとうございます。
私の説明の解釈。間違いございません。 ダイレクトキック、ボレーについても同様に、ポストプレーの時などの勢いを殺すようなキックではパター型のキックが正確で、状況に適する場合があるのではないか?と考えています。
無題
そもそも、トラップはキックではない気がします、キックフェイントで無い限り。ダイレクトやボレーはパター型でなくても正確に蹴れれば、正しいインサイドキックの方が効果的なのではないかと私は思います。
Re:無題
おっしゃる通りだと思います。
パター型のトラップ:補足
いつもお世話になっております。記事によるパター型のトラップへの回答、ありがとうございます。
私も今までグラウンダーのボールに対しては逆回転をかけ上から抑えることをやっておりましたが、それにプラスして引く意識が必要なものと考えていました。 引く意識を解説していた書籍もありますし。 今回の解説でより技術イメージが整理できそうです。 ありがとうございます。 さて、実は前のコメントで書き忘れた重要な点があったのですが、再コメントは避けていました。 今回ちょうど良いので書かせていただくと、私がパター型のトラップの質問の際にイメージしていたのは空中をライナーで飛んでくるボールへのインサイドトラップだったということです。 FWをやっているのでたまに敵が背後にいる状態で膝下にライナーの速いボールや中途半端なバウンドボールが来ることがあります。 脱力、バックスピンをかける、脚を引く、などいろいろ試してますが、グラウンダーのボールほどのコントロールができていないので、パター型のトラップの質問をさせていただきました。 Re:パター型のトラップ:補足
その方法だと、
・足に当たったボールがそのまま上に跳ねる ・止めたと思ってもボールが足から離れて失う ・後ろからの当たりに弱くなる といった傾向が出ると思うのですがいかがでしょうか。
Re:Re:パター型のトラップ:補足
>その方法だと、
>・・・ >といった傾向が出ると思うのですがいかがでしょうか。 はい。そのとおりです。 これまでは、パター型インサイドキックのようにトラップ足の股関節を 開き、トラップ脚全体を引きつつ、バックスピンをかけて 止めようとしていました。 あるいは、それでどうしても吸収力が足りずにボールが前にこぼれるので、 トラップ足の股関節を開いた状態でその場で小さくジャンプしてみたり してました。 そのような体勢のトラップだと、次の動作が遅くなるし当たりにも 弱いので、ぴったり止めないと命取りなのですが、前にこぼれることが多く、方法を模索していました。 とりあえず、C60様の記事にあったフィーゴのトラップの連続写真のやり方を、 ライナーのボールに対しても適用してみようかと思います。 背後に敵がいると向きを変えながらトラップするのは難しいですが、 ボールにバックスピンをかけて足首の変形で吸収するやり方を試して見ます。 返信ありがとうございました。 Re:Re:Re:パター型のトラップ:補足
コントロールですが、まだ空中にあるボールについては解決していません。
いずれそこで触れることができればと思います。
そもそも
現代の日本サッカーってドイツサッカーがベースですから、パターキックが広まったんじゃないですかね?
ちなみに、南米の選手は股関節が柔らかいので短い時はパター、長い時はスイングで蹴っていますね。 ちなみに、私は足が外側にハの字になっているので、インステップと同じ振りでインパクトで少し足を開けばインサイドが蹴れる(それも40mクラスで)ので、蹴り方なんて考えた事がなかったです。 |
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