週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
「さて」
「スペインについてやな」 「前のページまでで、ロシアの中盤のディフェンスがいかにおかしかったかを見てきた」 「そのずれの大きな元は、セムショフがシャビをマークする、ズリアノフがセナを見る、アルシャフィンが戻らない、右サイドが空く、セルヒオ・ラモスがフリーになる、というところにある」 「この状況で、セスクが機能するのは当たり前といえば当たり前になる」 「セスクというかファブレガスやな」 「同じやろ」 「一応、国際表記も乗せといた方がええやろ」 「そういえば、背中はファブレガスやな」 「ビジャが負傷し、34分に彼が入る」 「そのセスク・ファブレガスが、下のような位置でボールを持つとスペインのチャンスになっていた」 「ズリアノフの横の微妙なスペースやな」 「ここを見る選手はいないから、そこでロシアの中盤を引き付けると、より中盤が空いて攻撃が上手くいく」 「最初からそこに入ったというより、入ってから徐々にいい場所を探り当てた形だった」 「ちなみに、主に右でプレーしていたシルバが下がってもよく、同じような形になる」 「セスクとシルバは相性がいいな」 「パスコースがお互いにわかるみたいやな」 「セスクが入ってスペインがよくなったのは、ロシアが中盤にスペースを残していたからで、それならば本質的にフォワードのビジャがそこに下がってボールを受けるより、もともとトップ下を得意とするセスクが受けた方がいい」 「丁度いい場所にスペースがあった」 「ここで一つ問題がある」 「なんや」 「ロシアの守備での大きな問題の一つは、右サイドが空きすぎることなわけやろ」 「それを修整する手を打たなかったのはなぜか、というのが問題になる」 「一応、後半開始から修整が試みられている」 「明らかに、アルシャビンがセナにつくようになった」 「それは、46分から50分までをご覧になればおわかりになるのではないかと」 「しかし、これはあまり意味がなかった」 「なぜなら、アルシャフィンは、左に切り返すセナにまったくついていけなかったからである」 「切り返されると簡単においていかれてしまい、セナは右足のアウトで縦にボールを入れることもできたし、持ちかえてサイドを狙うこともできた」 「パスコースを切る、という意味では、アルシャフィンはなんの役にも立たなかった」 「これはディフェンスとしては困りもので、切ってくれるはずのコースを切ってくれないとかえって混乱する」 「スペインの一点目は、正に中に切り返したセナが縦に入れたことから始まった」 「この試合だけを見ると、まったく守備向きではないように見える」 「そうやな」 「蛇足で付け加えると、セスクが出た後のスペインのシステムは、1-4-1-3-1-1になっている」 「1-4-1-4-1とかいたメディアもあるが、セスクはセマクを見る必要があるので、シャビよりも前に残る」 「それはさて置き」 「次は、トーレスとグィサの動きの差について見てみたい」 「最も単純な方法は、その2人がどういう場所でどのようなプレーをしたかを調べればいい」 「最も単純なのは、2人の移動した軌跡を比べることちゃうかね」 「それを調べるのは困難だから、場所とプレーで代用する」 「そうか」 「プレーの中でも、直接ゴールに向かわないものだけを取り扱う」 「どういうことや」 「中央に入るパスを受けて味方にパスしたり、スペースに流れてボールを受けるような動きで、直接シュートに行ったり、一発を狙って裏に動くようなプレーは含まない」 「ふむ」 「おまけに、ワントップで調べないと意味がないので、トーレスは34分にビジャが退場して69分にグィサと交代するまで、グィサは登場後、ロスタイムが終わるまでを調べる」 「トーレスが35分で、グィサが23分やな」 「まずはトーレスの55分10秒」 「ヘディングで味方に落として、上手く合わなかったシーンやな」 「58分14秒」 「シルバから、いわゆるクサビになるパスが入る」 「おまけに、実によく考えられたパスで、敵のポジションのずれをそのまま利用できるようになっていて、トーレスがコントロールしてそのまま前を向いてもよく、それをフェイントに止めて味方につないでもいい」 「ボールにメッセージが書かれたようなパスやな」 「しかし、コントロールミスでボールを離してしまい、ディフェンスにクリアされる」 「このあたりが、スペインでのトーレスの評価を下げる一つの要因になっている」 「そのゾーンでボールを持ってなにかしてこそ、というところはあるからな」 「次は、61分44秒」 「これぞクサビで、本当にクサビ形になっている」 「トーレスはこの3回やな」 「35分で3回」 「大体、12分で1回ということになる」 「グィサについては、下のようになる」 「なんだこれは」 「一度サイド、特にこの試合では右サイドに流れるというのが特徴だった」 「わかりにくい絵やな」 「グィサの直接ゴールに向かわないサイドでのプレーは、71分12秒、72分39秒、77分15秒、82分35秒、86分7秒に見られる」 「5回か」 「23分で5回、大まかに5分に1回の勘定になる」 「トーレスの12分に1回とはずいぶん差がある」 「この2人の差は、下のように表される」 「中央にボールが入ってきたとき、トーレスは、それと逆サイドに動き、ディフェンスの視界から消えようとする」 「そこから一発で裏を取るような動きを狙う傾向が強い」 「それに対し、グィサはサイドに開いてボールを受け、中央の守備を薄くした後、そこから前に出る傾向が強い」 「トーレスはより直線的にゴールを狙い、グィサはその前にワンクッション置く」 「いわゆるスペイン的なのはどちらかというと」 「グィサの方になる」 「彼の方が代表のフォワードとしてはいいのではないか、という意見が根強いのは、このようなところにも原因がある」 「ただ、グィサのように動くと、ボールは持っているのに、いつまでたってもシュートにいけないような状態に陥りやすいというのもある」 「スペイン病か」 「その辺は注意したい」 「まとめると、セスクが入ってよくなったのは、ロシアの守備に原因があった、グィサが入った方がボールが動くように見えるのは、トーレスとの動きの差があるから、ということやな」 「試合全般としては、スペインより守備が薄いのに、スペインと同じ土俵に立って戦ったら、そりゃロシアには勝ち目がない」 「ロシアのゲームプランの詳細は気になるところやな」 「ほんまやな」 「さて、今回も質問をいただいたので、それに極力答えてみようかと」 「まず、最初は、イニエスタの調子が戻ったようだが、食中毒から回復したと見てよいか?」 「以前より動きはいいが、まだいい時のイニエスタには届いていない、というのと、調子が落ちた原因が食中毒かどうかわからないので回復したと見ていいかどうかもわからない」 「食中毒になって調子が上がる選手はおらんやろ」 「そりゃそうやけどな」 「次は、イニエスタとシルバは、サイドを交換するようになったが、それはベンチからの指示によるものか?」 「ほぼ100%そうです」 「プレビューで、イニエスタを使いながらセスクを使うとこの二人が干渉して上手く行かない、とあったが、この試合は機能したのではないか?」 「中盤に大きなスペースがあったので、両人にとって必要な場所が確保できたというのがある」 「そうかね」 「もう一つは、ボールの動かし方で、スペインは後半開始から意図的に左にボールを動かすようになる、そこでイニエスタがプレーできるようになった」 「ほっておくと、右に右にボールが流れてたからな」 「相手がスペースを潰して来た時に、イニエスタが中に入るとお互いに重なるし、そのような時は、サイドから縦にスペースを狙う選手がいて、そこに上手い選手からパスを合わせる方がお互いのスペースを利用するという意味でよい」 「つまり、変化なしと」 「この試合の後半でも、左に意図的に動かそうとしても、やはりボールは右に流れる傾向が強く、そうなったときにイニエスタは消えている時間が長かった」 「セスク、シルバ、セルヒオ・ラモスが活躍する時間帯やな」 「セルヒオ・ラモスが非常に目立ったというのは、スペインの右にスペースがあったし、そこから攻撃していた、ということになる」 「それについては面白いデータがあってだな」 「なんや」 「これやけどな」 「これはなかなか」 「スペインのパスはシルバからセルヒオ・ラモスが頭一つ抜けている」 「シルバからファブレガスが二番目やな」 「しかし、ファブレガスの登場は34分」 「ということは、一試合にすると29本から30本ということか」 「実に多い」 「仲良しさんやな」 「イニエスタを見ると、セルヒオ・ラモスから16本受けている」 「これは、右サイドにいた時にもらった分やな」 「サイドチェンジが16本も通るとは思えんからな」 「やはり、スペインの右、ロシアの左の守備に問題があったことがわかる」 「データは語るというやつか」 「次なる質問は、ビジャが怪我をしたが、グィサをトップ、トーレスをトップ下のような形で使ってうまくいかないか?」 「原理的に上手くいく可能性はあるけれども、トーレスがトップ下で本当に機能するためには、周囲の選手がその周辺にスペースができるようにできるように動く必要がある。今の代表ではそれを実行する時間的余裕に乏しく、それに向いた選手もいないため、まず上手くいかないでしょう」 「とまあ」 「こんなところかね?」 「おそらく」 「そんなこんなで」 「決勝のプレビューは、できるだけ早くあげたいと思いますので」 「お楽しみに」 「では、また次回」 「ごきげんよう」 |
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