週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
「さて」
「バジャドリーは負けてしまった」 「大敗といえば大敗やな」 「スコアだけ見れば、強いバルセロナが弱いバジャドリーを難なく破ったように見える」 「ところがそうではない」 「というところを見ていきたいわけやな」 「よかろう」 「この試合のバジャドリーは、戦術的に特筆すべき事柄があった」 「先発は以下の通りやな」 「バルサの先発に不満があるなしは置いておいて、バジャドリーはトップ下にあたる位置に、ビバル・ドラドが来ているのが非常に意味深い」 「新聞の予想もそうやったな」 「バルセロナと対戦することを考えると、ここに彼を置くか、シシーやコネを置くかでずいぶんと話が違う」 「下の意味やな」 「最近のバルサは、ビジャレアル戦で見られるようにサイドバックをやたらと上げたがる」 「最近というか、昨シーズンからの癖が復活したというか」 「そうなると、上図の点線のゾーンがあく。押し込まれた状態からそこを突くには、トップ下にスピードに優れ突破力があり、サイドに流れて仕事のできる選手を置きたい」 「それをやるなら、右にシシー、トップ下にコメといった布陣が考えられる」 「ところが現実にはこう」 「トップ下はビバル・ドラドで、右にコメ」 「ビバル・ドラドの一番の弱点は、まったくスピードがないことなわけや」 「そうすると上の攻めは難しいな」 「まず、スペースで受けるためにトゥレを振り切る時点で難しいし、受けたとしても追いつかれて体で潰される」 「当たりにも強くないしな」 「そうなると、このように組んだバジャドリーの狙いは攻撃ではない、ということになる」 「まず守備が狙いやな」 「そりゃ攻撃じゃなきゃ守備やろ」 「攻守の切り換えが狙いかもしれんやんか」 「そんなわけあるかいな」 「ビバル・ドラドの任務は、トゥレのマークが主やな」 「バルサが組み立てている段階ではマンツー気味にトゥレをマークして、エリア近くに運ばれたら、ディエゴ・カマーチョとアルバロ・ルービオのヘルプに行くというのが任務やな」 「それにしても、見事なガード戦法ではないかね」 「いわゆる亀になるという感じやな」 「トップのジョレンテは、中央でロングボールを受ける選手で左右に流れてどうこうできるわけではないので、このような形に組むとまったく攻め手がなくなる」 「ちょっとびっくりするな」 「バジャドリーというチームは、サンチアゴ・ベルナベウでのレアル・マドリー戦で非常に勇敢に攻めて、7-0で返り討ちをくらった戦歴の持ち主やしな」 「監督のメンディリバルは、最近リーガで少なくなった攻撃精神をふんだんに持ち合わせた人やしな」 「それがこれだけ守るとは、さすがに7-0での敗戦がこたえたのかと思いきや」 「途中からえらいことになる」 「まずは、22分で、その1分前にエトーのゴールでリードを奪われる」 「そうすると、突然下の配置になる」 「コメがトップ下に来て、ビバル・ドラドは右に移る」 「これは、要するに、上で検討したバルサを攻めるための配置に近い」 「右にビバル・ドラドはどうなん、という気がせんでもないけどな」 「彼がボランチに近くなることで、左のセスマを押し上げることができるから、それはそれでええやろ」 「そうなんかね」 「コネはビバル・ドラドのようにマメにマンマークなどできないから、トゥレが空く、その代償として、スピードをいかしてスペースを縦に進むことができる」 「ガードを解いたわけやな」 「これは面白いな」 「試合の前から、リードを奪われたら配置を変えろと指示されていたわけか」 「この素早い変更はそうとしか考えられない」 「バジャドリーの変化にバルサは対応できず、押されはじめる」 「結局、テュラムがPKを取られて、前半は1-1で終わる」 「前半1-0でしのいで、後半勝負、という考えも成り立つ中、試合前から殴られたら殴り返せと指示を出していたメンディリバルはさすがの攻撃精神の持ち主やな」 「その心は、後半さらなる形で発揮される」 「46分にボージャンに決められた後やな」 「1-4-3-3に見える」 「見えるというかそのまんまやな」 「その意味は下の図で、攻めるなら攻めて下さい。そのかわり、こっちもそちらの残したスペースをいただきますよ、ということになる」 「バルサ相手にほとんどノーガード戦法か」 「普通これはできない」 「ボールを持たせたら天下一品のバルサと叩き合ったら、普通潰れるしな」 「まあ、結果的には、この後2点を追加されて、見事に潰れるんやけどな」 「得点的にはそうやけど、バルサも相当危なかったで」 「バジャドリーのシュートが2回枠を叩いたしな」 「あれはほんの少しのズレでゴールやで」 「まあな」 「それに、2点を取ったバルサばかりが攻めていたわけではない、という一つの証が下のグラフや」 「なんや、これは」 「バジャドリーが守備に徹していた開始から22分まで、ガードを解いた22分から前半終了まで、そして、後半に入ってからのシュート数を、45分に何本打ったかという形で表したものや」 「つまり、シュート数割るプレー分数かける45ということか」 「式はどうでもええねん」 「ずいぶんはっきりと出るもんやな」 「一番左の後半の部分を見ると、バルサとバジャドリーで大して差はない」 「7対6か」 「つまり、バルサを相手にガードを捨てても、十分に勝負になることを示唆しているわけや」 「バルサの側から見ると、あれだけうまい選手を集めていても、スペースを空けて攻めてくる相手を叩き伏せることができないということか」 「これは、非常に不安なデータだと思うんやな」 「というよりや」 「なんや」 「データだけでいえば、バジャドリーは22分からの布陣が一番良かったのと違うかね」 「この形のバルサが下の手に弱いのは昨シーズンで散々証明されてるしな」 「それに、前半1-1で終わった後、バルサの選手たちがテュラムのPKに関してヒステリックに抗議していたのを見ても、精神的な安定も欠けているといわざるをえない」 「別に冷静になってカウンターをかければ、バルサの戦力なら十分に勝てるのにな」 「あんなにキーキー言う必要はないと思うんやけどな」 「そういえば、もう一つ気になることがあってやな」 「何が」 「後半が始まる前、席につく前にクライフとラポルタが笑顔で談笑してた場面がニュースで流れてだな」 「それがどうした」 「話が終わってラポルタは階段を下りるために、クライフに背を向けたんや」 「ほうほう」 「その瞬間に表情が豹変して、下唇をかみしめていたんやな」 「そりゃまた面妖な」 「いったい何があったんか気になるところやな」 「普通、ある人と話した後、表情が一変するのは、相手をとんでもなく嫌いな証拠やけどな」 「非常に気になるやろ」 「そういえば昔、スチュワーデスさんで同じような場面を見たな」 「なんの話や」 「睡眠タイムの時、前の席に呼ばれたスチュワーデスの人をこっそり見てたわけや」 「気持ち悪い奴やな」 「何かを言われて、はいはいと営業スマイルで答えていたんやけど、くるりと振り返った瞬間、”けっ、やってられっかよ”という表情に変わって、またすぐ普通の表情に戻ったんやけど、あの時はゾッとしたで」 「それが今の話と何の関係があるんや」 「我慢できない人とにこやかに対応すると、その反動が別れて顔が見えなくなった直後に出るものだから、クライフとラポルタもそういうことなんではないかということやな」 「回りくどい説明やな」 「すまんこって」 「なんにしても、バルサは、戦術は当然として、心理状態や組織にも問題がありそうやな」 「おかげで、チャンピオンズリーグは一番ぐらいに楽な相手と当ったはずなのに、不安が拭えない」 「とにかく、今のバルサは左前のボージャンかアンリにいい形でボールが入れば押し込めるから、下の形でパスを出せる選手をそれぞれの場所に置くことちゃうかね」 「まずは、攻撃で相手を押し込んでから、ということか」 「3トップはもともとウィングにいいボールが入らないと負債ばかりが目立つシステムやからな」 「ついでにザンブロッタもやめた方がええな」 「左から行くんやったら右はそんなに上げる必要もないしな」 「首位に4ポイント差まで詰めたとはいえ、安定感のないバルサがどうなるか」 「今後に注目というところで」 「今回はこの辺で」 「また次回」 「ごきげんよう」 |
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