週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
「さて」
「スペインはまたも勝って負けなしのグループトップ」 「気味が悪いほどの順調さやな」 「プレーの落ち着きぶりは、デル・ボスケのチームらしい」 「まあそうなんやけど、この試合は、色々と不思議な部分があった」 「理解できそうで理解できないシステムがいくつか出てきた」 「先発はこう」 「トルコはまごうことなき1-4-4-2」 「スペインはというと」 「なんやろな」 「1-4-4-2のいわゆるロンボ、菱形バージョンに見える」 「それにしては、カソルラの位置がおかしいねんな」 「シャビと同じような高さにいることが多い」 「システムとしては、完全に左右非対称で、攻撃においては下のように動く」 「問題のカソルラは、左のウィングのような位置に上がる」 「組み立てが詰まるとシャビがその後ろに下がる」 「右サイドはほぼがら空きで、セルヒオ・ラモスの独壇場」 「サイドや、裏へ長いボールを送るのはシャビ・アロンソ」 「そのような組み合わせやな」 「こうしておけば、セルヒオ・ラモスとシャビ・アロンソの能力は使いやすい」 「デル・ボスケが対称性を崩す時は、選手のベクトルを矛盾なく噛み合わせるためであることが多い」 「しかし、それにしてはこの配置は変で、ビジャは左の方がいいし、カソルラは右の方がいい」 「極めて実験臭のする布陣やな」 「予選で実験とは男前やな」 「それにしても、カソルラは右利きなのかね、左利きなのかね」 「右やと思うけど、フリーキックでは、左で蹴る位置に立っていた」 「いわゆる、アストゥリアス人両効き理論のあらわれやな」 「誰も認めてへん理論やけどな」 「寂しい話やな」 「それはそれとして、上のように組むと、明らかに右サイドにスペースを残す」 「それは別に恐くない、というのが下の絵やな」 「左前にいるアルダは、中に入り、縦にはまったくいかない」 「実際に、トルコのそのスペースは死んでいるので、ビデオをお持ちの方はご確認いただければと」 「おまけに、後ろから上がってくるイブラヒム・ウズルメズは、まったく攻撃に効かない」 「セルヒオ・ラモスに完敗もいいとこだった」 「ラモスに負けたというだけじゃなく、普段からボール扱いに自信がないんやと思うで」 「相手が近づいてきただけで、すぐ半身になってボールを庇おうとするあたりは、そんな気配がある」 「デル・ボスケは、多分、彼の能力の低さを良く知ってこの形に組んだのと違うか」 「そうなんか」 「ハーフタイムの濃厚な挨拶を見る限り、トルコ時代の部下というか、一緒のチームにいたはずやで」 「そうかもしれん」 「以上のように、特殊な布陣で臨んだスペインであったが」 「上手くいったとはいい難い内容だった」 http://www.as.com/futbol/partido/Espana-Turquia-0279_10_08_0163_0650 「たまに現れるASの流れ図で、点が上に来るほど、そのチームが攻めていたと思っていい」 「開始から、スペインは鳴かず飛ばずやな」 「むしろ、5分あたりには、終わったに近いピンチを招いていた」 「前半どうなるかと見ていると」 「30分を過ぎたあたりで動きがあった」 「カソルラが逆サイドに出て、ビジャが左にくる」 「選手を得意な場所で使う、という意味ではこちらの方がいい」 「その後、トゥンジャイのパスからアルダに完全な形を作られるが、トラップミスで事なきを得て」 「前半は0-0で終わる」 「注目の後半」 「うむ」 「元通りやな」 「ビジャが左に来ることが多くなったのは違うが、基本同じやな」 「試合の流れも前半と同じ」 「トゥンジャイに危ない形でシュートを打たれるが、枠をそれて事なきを得て」 「迎えた58分」 「トルコが先に動く」 「セミフを下げてアイハン」 58分: セミフ→アイハン 「これは」 「なんというか」 「一歩引く形で1-4-1-4-1」 「これも難しい変化やな」 「それまでの分かれは、トルコにとって悪くなかった」 「その中で、システムを変える積極的な意味は薄い」 「誰かインタビューできる人に理由を聞いて欲しいところやな」 「トルコが選手を代えた2分後にスペインが先制」 「セットプレーから、セルヒオ・ラモスがミスで膝に当てたボールがちょうどピケの前に転がって得点」 「なんというか、デル・ボスケの運を感じるゴールだった」 「逆に、トルコにとっては最悪のタイミングでの失点」 「ここで、スペインはさっさと実験的配置をお終いにする」 64分: ビジャ→マタ 「ごく普通の1-4-2-3-1」 「鉄板システムやな」 「これに対して、点を取らなければならないトルコは再びフォワードを増やす」 72分: アルダ→ゴクハン、 カソルラ→シルバ 「やってることがちぐはぐやな」 「まあ不運な失点ではあったからしょうがない」 「監督としては、こういう形が一番嫌なんやけどな」 「この辺りから、無理に攻めるトルコの裏を取る形で、スペインのチャンスが増え始める」 http://www.as.com/futbol/partido/Espana-Turquia-0279_10_08_0163_0650 「トルコはそれでも行かなければしょうがないので、さらに行く」 85分: エムレ→サブリ 「1-4-3-1-2」 「やられたらやり返す布陣だったが」 「むしろ、一方的にやられそうなシーンを残しつつ試合は終了した」 「しかし、双方、短い時間に色々とチームをいじった90分だった」 「中でもポイントは、スペインの最初の謎布陣と、トルコが58分に引いた理由やな」 「その他の変更は、意味がわかりやすいんやけどな」 「上の二つはよくわからないので」 「何かご存知の方はお教えいただければと」 「あと、個人技術編として、足の甲で後方回転をかける、トゥンジャイ編がありますので」 「そちらもご覧いただければいうところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」
「さて」
「スペインは連勝街道まっしぐら」 「恐ろしいほどに順調である」 「勝ったとはいえ、この試合は、非常に厳しいものだった」 「先発はこう」 「スペインは、いつものメンバー」 「ベルギーは、1-4-1-4-1」 「前回のエストニアと同様やな」 「やはり、1-4-4-X系のシステムに対しては、中盤の守備が抜群に堅いから、スペインを押さえようと思うとこの配置になる」 「守備においては、フェライニ、ベルトルゲンがシモンスのカバーを背景に、セナ、シャビを非常に近い位置で押さえ、自由を与えなかった」 「ソンクもフアニート、プジョルを捨て、セナ、シャビをマークする場面が多かった」 「攻めにおいては、コンパニーからのパスが良く、また、奪ったボールを直接前線に出さず、一度後方でキープした後、長く展開する流れがよく効いていた」 「コンパニーは、チップキックで、フェライニの胸によく合わせていた」 「フェライニは、背が高くて、浮き球の処理が非常に上手く、キープした後に展開もできる」 「調べたところ、194cmで、エバートンへの移籍金額は、ベルギー人史上最高額らしい」 「さもありなんというところやな」 「ベルギーでは、攻撃において、やはり、フェライニ、バンデン・ボーア、コンパニーが目立つ」 「フェライニは、低い位置から組み立てた後、前へ出てボールを受けてはさばく」 「バンデン・ボーアは、サイドでのドリブルからのクロス」 「コンパニーは、最終ラインからの組み立て」 「ボールを回収したコンパニーは、スペインのプレスをいなしながら正確につないでいた」 「おまけに、7分のベルギーの先制点も彼のアシストだった」 「今、右のコーナーキックから、逆サイドのコンパニーにボールがこぼれる」 「画面上の方で、ディフェンスと向き合っているのがコンパニー」 「ちなみに相手は、セルヒオ・ラモス」 「縦に抜けるフェイントから」 「マイナスへ戻す」 「ここで、セルヒオ・ラモスとの押し合いに勝ち、体を前に入れる」 「そして、クロス」 「ソンクの浮かせたヘディングは、逆サイドにふわりと収まった」 「いやまあ」 「おそろしい」 「ラモスの逆を取り、ラモスに競り勝ち、正確なクロスを上げるセンターバックというのはおそろしいな」 「驚異的な性能としか言いようがない」 「そうは言っても、セルヒオ・ラモスは怪我の影響で動きはそんなに良くないんやけどな」 「それを割り引いても凄いで」 「そうやけどな」 「なにはともあれ、コンパニーのボール扱いに対する自信というものは、後方からの組み立てにおいても非常な役割を果たしていた」 「ベルギーの攻撃において目立つのは、下の図で青く囲まれた3人」 「逆の意味で目立つのは、トップのソンクと、左のデュフォーやな」 「ソンクは、ワントップとしては、長いボールのキープに難があり、デュフォーは、相手の正面を向くまではいいが、そこから仕掛ける際に自分でバランスを崩すため、有効なプレーができない」 「フェライニを一つ上げて、1-4-4-1-1のような形の方が、ソンクはやりやすいやろな」 「それをやると、中盤の守備が甘くなるから難しいところや」 「ベルギーは、1-4-1-4-1で守備を固めた状態でセットプレーから先制して、願ったりかなったり」 「スペインとしては、苦しい流れの中、16分にアクシデントが起こる」 「トーレスが負傷退場」 「変わってセスク・ファブレガスが入る」 16分:トーレス→セスク・ファブレガス 「1-4-4-1-1で、セスクが後ろ、シャビが前」 「その配置は、エストニア戦と同じ」 「これ、不思議やな」 「何が」 「別に、シャビが後ろで、セスクが前でよさそうなもんやろ」 「そらそうやな」 「その中で、あえてセスクを後ろ、シャビを前にする理由というのは気にならんかね」 「なんやろな」 「色々理屈は考えてみたものの、どうも絵空事にしかならないので、ぜひデル・ボスケ本人に聞いてみたいところやけどな」 「興味は引かれるところやな」 「ちなみに、この交代の後、ベルギーのシモンスの動きが変わる」 「スペインがツートップの間は、センターバックの間に入ることが多かったが、シャビが前に出てからは、中盤にいることが多くなる」 「自然な変化やな」 「そんなこともありつつ、スペインは、堅いベルギーを攻めあぐねていたが」 「ひょんなことから同点に追いつく」 「ベルギーのディフェンダーがヘディングでクリア」 「その浮き球を、フェライニが綺麗にコントロールする」 「そこからバックパス」 「セスクに渡してしまう」 「ありゃ」 「まあ」 「こりゃいかん」 「いかんなんてもんじゃないな」 「ここから、セスクがスルーパス。イニエスタがディフェンスとキーパーをかわしてシュートを決める」 「ここのイニエスタのドリブルはさすがやな」 「さすがやけど、キーパーも早く寝すぎやで」 「スタイネンは、寝癖というか、相手の動きに過剰に反応しすぎるところがあって、その癖は、最後のビジャのゴールでも出る」 「なんにせよ、この失点の責任は、80%以上、バックパスを敵に渡したフェライニにある」 「テクニックがありすぎて自滅した形やな」 「攻撃で上手い選手というのは、えてして状況をなめすぎて軽くパスを出し、えらい目にあうことがある」 「やらないでいい点をやってしまったベルギーとしては痛い」 「1-1のまま前半は終わり」 「後半に入る」 46分:ファン・バイテン→デームス 「ファン・バイテンが下がり、デームスが入る」 「これはどういうことやろな」 「おそらく、スペインがワントップになったことに関係している」 「そうかね」 「トーレス負傷後のスペインは、下のような展開が増えた」 「ボールに触れないシャビが下がってくる現象か」 「そうなると、中盤の真ん中でいくらでもパスはつながるが、ゾーンの間を通すパスというのは出にくくなる」 「1-4-1-4-1を相手にすると、もともと出にくいし、受ける人が下がっていなくなったらますますやな」 「その結果、パス回しの中からタイミングを計って、裏に抜けるビジャにロングボールを合わせることが多くなった」 「ビジャは飛び出すのが上手く、セスク、シャビは落とすのが上手いから、当然といえば当然やな」 「ビジャの飛び出しに対抗するために、センターバックは速い方がよく、それがファン・バイテンからデームスへの交代の理由だと考えられる」 「つまり、左サイドバックからセンターバックの位置に入ったベルメーレンの方が、ファン・バイテンより速いということか」 「ほぼ間違いなくそうやな」 「その後、試合は同点のまま進み」 「64分にカソルラが下がり、シャビ・アロンソが入る」 64分:カソルラ→シャビ・アロンソ 「うむ」 「すごい変化やな」 「トップ下にイニエスタ、シャビ、セスクか」 「みんな中に来て、サイドが消える配置や」 「これでスペインが良くなったかというと」 「そんなこともなく」 「73分にデュフォーが下がり、ダンメが入る」 73分:デュフォー→ダンメ 「そして、スペインの次の交代が興味深い」 「その時ベンチにいたのは、レイナ、アルビオル、フェルナンド・ナバーロ、アルベロア、グィサ」 「はたして誰をどこに入れたかというと」 85分:イニエスタ→グィサ 「グィサが左の中盤として入る」 「これは、本当に中盤としてプレーしていて、左に出たフォワードというわけではない」 「びっくりな起用やな」 「少なくとも、見たことはないな」 「さらにびっくりなのは、88分に、そのグィサのクロスからビジャが決勝点を奪う」 「後で見るように、ヘディングからやな」 「凄い起用というかなんというか」 「どうなっとるんやろな」 「おそらく、イニエスタを代えるのに、グィサしかいなかっただけで、それを狙って投入したわけじゃないと思うけどな」 「しかし、ベンチに、レイナ、アルビオル、フェルナンド・ナバーロ、アルベロア、グィサしかいないというのも変な気はするな」 「ディフェンスが、アルビオル、フェルナンド・ナバーロ、アルベロアと3人もいて、普通より1人多い」 「リーエラみたいな、サイドの選手を1人入れておきそうなもんやけどな」 「どこかで守備的な戦いを想定していたのと、セルヒオ・ラモスが怪我持ちであるというのが関係しているのかね」 「どうやろ」 「この試合、スペインはかったものの、決して楽ではなかったというのは、下の図にも見られる」 出展:http://www.as.com/futbol/partido/Belgica-Espana-0279_10_05_0395_0163 「ボールを60%以上保持していたわりに、シュートは多くない」 「50分から75分までは、25分間、一本も撃てなかった時間帯もある」 「その中で、交代がどんぴしゃりのゴールで逆転勝ち」 「デル・ボスケのパワーかね」 「悪い状況で、チームがまったくパニックにならないというのはあるが、それにしても理屈を越えた凄さがある」 「というところで」 「試合内容はこれにて」 「次に、決勝点となったビジャのシュートに対するキーパーの動きに関する文章がありますので」 「よろしければこちらから」 「どうぞ」 おまけ: 2004年のベルギー代表対スペイン戦アウェー *注:ベルギー選手の名前は、下記ページを参照しました http://members.jcom.home.ne.jp/wcup/belgium.htm■■■
「さて」
「相変わらず順調なスペイン代表であるが」 「エストニア戦では、非常に興味深い交代が見られたので、その辺りを見て行こうかと」 「うむ」 「まず、先発はこう」 「スペインは、中盤にシャビが2人並んでいるのが特徴的である」 「相手が引いてくるのは確実なので、そこに組み手の上手い2人を並べるとうことやな」 「それで守備的にも心配ないと」 「そういう判断やな」 「エストニアの試合運びは、予想通りに守備を重視していた」 「プジョルにボールを持たせ、中盤での寄せを早くすることでスペインの選手に技をかける時間を与えず、非常に良い守備をしていた」 「かつ、攻撃では、ほとんどカウンターに出ていかなかった」 「特にサイドの選手の切り換えが非常に遅い」 「ボールを奪ってもまったく前に出て行かない」 「実に消極的だった」 「前半はとにかくしのいで、後半勝負、とうことやな」 「しかし、35分にシャビのフリーキックからフアニートと頭で決めてスペイン先制」 「37分には、カウンターからビジャが右サイドを抜けてクロス」 「中でトーレスが倒されてPK」 「ビジャが決めて、0-2」 「もろくも狙いは崩れさる」 「スペインに回されて崩されたというのではないだけに悔しい」 「最初の得点につながったフリーキックなんか、まったくいらんファールからやったしな」 「攻めなければいけないエストニアであるが、攻撃において下のような特徴があった」 「まず、トップのボスコボイニコフはワントップで苦しい」 「体が大きく、ターゲットに使う選手だが、ロングボールをキープできない」 「コントロール技術もさることながら、読み合いの面でも、フアニートに当たるフェイントから体を引かれてバランスを崩すなど、負ける場面が目立った」 「次に、左サイドバックのクルグロフから良いパスが出ない」 「組み立てで長いパスを出すと通らず、逆サイドに展開するパスもことごとく合わない」 「前半のエストニアは、彼が空く場面が多かっただけにもったいなかった」 「この2点がしっかりしていれば、もう少し押し返しが効いた」 「キーパーと1対1になる決定的なチャンスを一度作ったが、攻め手は非常に少なかった」 「逆に、右サイドバックのヤーゲルは、組み立てが非常に上手い」 「自分の動きに、周囲がどう反応し、どのようなスペースができるのかをきちんと把握している」 「どんな国にも、こういった、いわゆるサッカーのわかる選手が何人かいるのは面白い」 「ただ、守備面では、イニエスタにしろ後半出てくるリエーラにしろ、まったく止めることはできなかったし、スルーパスに対する読みも外れていた」 「まあ、組み立てができて、イニエスタとリエーラをきちんと止められたら、トップクラスのチームでプレーできるけどな」 「そして、中盤の中央に位置する、14番ヴァシリェフと13番ヴンケ」 「きちんと相手を向いてプレーすることができる点で非常にいい」 「前半は、守備に重きを置いていたが、端々にボールをもってよいプレーを見せた」 「その前半は、0-2とスペインリードで終了」 「追いつきたいエストニアは後半どうしたかというと」 「ガードを解いてきた」 「上はボールを持った時の概念図で、ヴンケとヴァシリェフのどちらかがフォワードに近い位置まで上がるようになった」 「スペインには、ある程度スペースを空けた長い展開が有効で、その訳は、ユーロのスウェーデン戦とかわらない」 「これで、徐々にエストニアは良くなっていく」 「そんな中、53分にセルヒオ・ラモスがイラオラに交代」 「これは不思議に思う」 「この状況なら、理屈的には、フォワードとサイドとボランチを代えそうなもんやしな」 「この種明かしは単純で、セルヒオ・ラモスは1週間以上前から怪我を引きずってプレーしていたためなんやな」 「この後、さらにエストニアペースになり、3回連続で決定的チャンスを迎えるなど、雲行きが怪しくなる」 「ところが、69分、シャビのフリーキックからプジョルが押し込んでスペインが追加点」 「ありゃ」 「1点目に続き、またシャビのフリーキックが炸裂した」 「この日の彼のキック精度というのは恐ろしく、フリーキックにしろコーナーキックにしろ、どんぴしゃで味方に合っていた」 「当たり日やったんやな」 「そして、得点直後、デル・ボスケが動く」 「70分、ビジャを下げて、セスク・ファブレガスを入れる」 「その前の59分に、エストニアのキンクがプリエに代わっている」 「これは、56分にキンクがイエローをもらっていたことが関係しており、疲労の他に退場を心配している」 「そういえば、最初、イニエスタを倒してスペインの先制点を呼び込んだのもキンクやったな」 「それはさて置き、ビジャからファブレガスという交代は興味深い」 「まず、その後に採用されたシステムは、1-4-4-1-1だった」 「1-4-1-4-1ではない」 「シャビは、セスクが入った段階で後者だと思っており、ポジションをセスクの隣に下げようとしていた」 「しかし、セスクが、”戻ってくるな、戻ってくるな、いいから前に居ろ”というゼスチャーを見せてそれを制止した」 「その意味は、主に3つある」 「まず、一つは、相手の中盤の三角形に対して、こちらも三角形で対抗する」 「じつは、1-4-4-2で1-4-1-4-1を相手にすると、中盤の中央で数的不利を招く場合がある」 「前者は、ボランチが2人なのに、後者は、それに対応する場所に3人居る」 「上の図では、シャビ、シャビ・アロンソ対ヴァシリェフ、ヴンク、ドミトリイェフで、2対3やな」 「フォワードがきちんと下がっているうちは問題ないが、なにかの拍子にずれることがある」 「典型的な例が、ユーロ2008の決勝やな」 「上の状況で、フリングスはシャビ、ヒツルスペルガーはセスクについて、その前のセナがフリーになっている」 「その状況を避けるには、フォワードの片方を下げて、ディフェンスラインの前に残る1人につけてしまうのが一番早い」 「実は、ビジャレアル対ベティスでも、それは行われている」 「ビジャレアルは、一番目の形でリードを奪った後、二番目の形に変更した」 「ギジェ、イバガサのどちらかが、必ずアウレリオについていた」 「1-4-4-2で1-4-1-4-1を受けるには、フォワードのどちらかを下げて、中盤の1につければいい」 「監督をされる方は、おぼえておかれると便利な定石かと」 「二番目の狙いとして、セスクをディフェンスラインの前で左右に大きく動かし、低い位置からの組み立てを担当させるというのがある」 「大きく動くとなると体力を消耗するので、新しく入った選手がやる方がよい」 「おまえけに、受けるスペースを変えながらボールを引き出すというのは、セスクの得意とするところでもである」 「相手が長い展開で押し込んできたとしても、セスクを経由することによりボールを落ち着けて前につなぐという意図がある」 「3番目はシャビで、広がった中盤のスペースでパスを受けて、スルーパスなりサイドへの展開へつなげようということやな」 「組み変えて早々、トーレスに2つスルーパスが出た」 「一つは、トーレスがコントロールミス、もう一つはディフェンスにカットされた」 「まあ、まとめると、中盤にヘルプを増やすことで守備的に安定させ、組み立てで低い場所でセスク、高い場所でシャビを使おうということになる」 「それで非常に上手くいった」 「試合が急に落ち着いたしな」 「しかし、一つ疑問が残る」 「なんや」 「相手が縦に長い展開を仕掛けている時に、ハイボールい強いわけでもなく、長い距離を走ることに向いているわけでもないセスクを入れるのは、守備的には矛盾であり、そのデメリットが出るという理屈も成り立つ」 「例えば、オーストラリア対日本で、小野を入れたときのような話かね」 「そうやな」 「スペインの場合、一人中盤に近づけて、きちんと守備に人数を増やしているというのは大きい」 「シャビか」 「それに、エストニアは、ハイボールからヘディングで勝負していたわけではなく、スペースに送ることで攻めていた。それなら、同じような特徴を持った選手で、より新鮮な選手を入れるというのは守備面で矛盾しない」 「さよか」 「違うか?」 「まあ、70分以降に試合が落ち着いたのは確かやけど、それがセスクのおかげとばかりは言えへんやろ」 「69分のゴールで、エストニアががっくり来たのは確かやしな」 「図にすると、下のようになる」 引用元:http://www.as.com/futbol/partido/Estonia-Espana-0279_10_04_1393_0163 「一応、グラフが上に行けば行くほど、チャンスが多いということになる」 「見ると、後半開始からスペインの攻撃が止まり、徐々にエストニアペースになったことがわかる」 「ところが69分にスペインがゴール」 「70分にセスクが登場して、再びスペインが優位に立つ」 「それにしても、前半、エストニアは良く守ったとはいえ、やっぱりやられてるな」 「そりゃ、戦力差が段違いなんだからしょうがないで」 「そこで思うんやけどな」 「なんや」 「スペインは、エストニアが引くと予想してシャビとシャビ・アロンソを中盤に並べたわけやろ」 「そうやな」 「それに対して前に出れば、後半開始からのように、わりと優位に戦える」 「それがどうした」 「それなら、キックオフと同時に最初から前に出たらどうかと思うわけや」 「奇襲か」 「15分くらいバンバン選手を前に上げて、相手が空けた中盤を攻めていくわけや」 「それで、ビジャへのロングパスを返されて、一発で沈むわけか」 「まあ、その危険はあるけれども、相手のペースにはまらず、こっちから主導権を握りに行くという意味ではええやろ」 「博打やけどな」 「やる価値のある博打やと思うけどな」 「まあ」 「そんなこんなで」 「また次回」 「ご機嫌よう」 おまけ: 先発:スペインのみ 最終配置
「さて」
「スペインは4-0で勝って」 「今日も順風満帆」 「鏡のような」 「黄海を」 「するりするりとすべりけり」 「先発はこうやな」 「セナを凹ませた1-4-4-2」 「実にツートップ」 「まさにその通り」 「前回、おそらくワントップに収束するのではないかと書いた人間は外した責任を取るべきやな」 「おそらくビジャとグィサの相性調査の意味があるのではないかと」 「前半は2-0のスペインリードで終わり」 「56分にグィサがシャビ・アロンソに代わる」 56分 グィサ→シャビ・アロンソ 「ワントップか」 「しかし、65分にカソルラがボージャンに、74分にシャビがセスクに代わるとこうなる」 65分 カソルラ→ボージャン、74分 シャビ→セスク 「ふむ」 「見慣れぬ形やな」 「ボージャンを右のウィングに置いた、1-4-4-2、ひし形だと見ていい」 「全体的に右に歪んでるけどな」 「対称性より選手の特徴と組み合わせを重視するのは、デル・ボスケの得意とするところである」 「この配置の意味を把握するのは、簡単な戦術問題になりますので」 「考えてみていただければと」 「状況は、ホームで2-0とリード、相手はそれまで1-4-5-1で守っていた」 「そんなところで、まずは、先発から見ていこうかと」 「よかろう」 「最初は、1-4-4-2」 「その特徴はというと」 「まず、横からのクロスが入りやすい」 「ツートップの効能であり、このようなボールが良く見られた」 「困った時に、単純にプレーできるという利点がある」 「その他にも次のような特徴がある」 「最前線では、ビジャが左サイドに開きやすくなる」 「これは、選手の特徴をいかすと言う意味では非常によい」 「そのゾーンでボールを持ったビジャは非常に強力やからな」 「特にカウンターからは抜群の働きをする」 「サイドでは、前回右だったイニエスタが左、右にカソルラが入っている」 「この配置では、サイドバックとの関係が問題になる」 「イニエスタは、サイドでボールを持つと、最後は中に切り換えす」 「縦には行かない、というか行けない」 「そうなると、左のサイドバックが外からフォローする場面が多くなる」 「つまり、カプデビラが上がるわけやな」 「前回のように、イニエスタが右から中に入れば、セルヒオ・ラモスが上がる」 「この2人を比較して、上げるならセルヒオ・ラモスの方が圧倒的によい」 「イニエスタ単体としては、左の方がいいのだが、サイドバックとの関係を見ると逆の方がよい」 「スペイン代表として悩ましいところではある」 「もう一つ悩ましいのはイニエスタとシャビの裏の守備やな」 「今の代表は、ユーロと違って前からボールを追っていくのだが、例えば下の形で一つ守備が抜けると、ピンチになりやすい」 「シャビ、イニエスタではスペースができた後、長い距離を速く走るという点で問題が出る」 「この形の方が、その穴は埋めやすい」 「1-4-4-2か、1-4-2-3-1か」 「はてさて」 「どうなるか」 「結局最後は、ワントップちゃうかと思うねんけどな」 「グィサとビジャの組み合わせは、トーレス、ビジャよりも上手くいきそうやけどな」 「ツートップと言えば、この試合の最後もそうやな」 「この形の意図はなにか」 「というのが簡単な戦術問題だったわけですが」 「一番の狙いは下のようになる」 「右に開いたボージャンに長いボールを当ててボールをキープさせる、スピードをいかして一気に縦にぬけ、相手のディフェンスラインを崩す」 「カウンターの種に彼を使うということが最も大きい」 「ボージャンの使い方としては、後半、相手が前に出る段階でのカウンター要員ということになる」 「そこに長いパスを渡すことができる、シャビ・アロンソを合わせて使っている点は注目に値する」 「いくら前に出る選手がいても、そこに球を込める選手がいないと無意味やからな」 「これは、以前にも紹介した、サイドに開くなら、そこに斜めの長いボール、という手筋と一致している」 「デル・ボスケは、選手をその特徴に合ったポジションで使うのみならず、組み合わせで特徴を発揮しやすい状態を作るのもうまい」 「選手を無理なポジションで使わないわりに、大きな組み換えを平気で行う」 「現実と目指す場所のすり合わせが非常に上手いんやな」 「だから、様々な変更を行ってもチームが荒れることがない」 「安定感というのは、デル・ボスケ最大の特徴であるな」 「ぱっと見は、なにもしてないようで、要所ははっきりと押さえてある」 「見事という他にない」 「そんなこんなで」 「また次回」 「ご機嫌よう」
「さて」
「デル・ボスケ最初の公式戦」 「1-0で勝利」 「まずはめでたい」 「先発はこう」 「スペインは、1-4-1-4-1」 「ボスニア・ヘルツェゴビナは、1-5-3-2」 「押し込まれると、1-5-3-1-1」 「ちなみに、ボスニア・ヘルツェゴビナの選手名で省略されている部分には、すべてヴィッチが入る」 「その守備での狙いはこう」 「中央を厚くして、スペインの攻撃をサイドに流そう、という腹づもりやな」 「そうなる」 「そのスペインのサイドだが」 「右のセルヒオ・ラモスが持つとこう」 「左のカペルが持つとこう」 「いずれにせよ、イニエスタは中央に入るため、彼がサイドでボールを持つ場面は極めて少ない」 「カペルがサイドでボールを持つのは良いのだが、そこで一つ疑問になる点がある」 「なにかね」 「カペルというのは、サイドを縦に突破してクロスを上げるのが得意である」 「いつも顔が下がり気味なのに、いい所に飛ぶという例のあれやな」 「そのプレーが出たとして、中の具合は次のようになる」 「ふむ」 「これではちと困る」 「空中にクロスを上げた場合、頭で叩く力が弱い」 「全員背が低い、空中での競り合いにも強くない、セスクとイニエスタは密集に飛び込むヘディングが苦手である」 「となると、下で合わせるか、逆サイドまで飛ばしてボレーで叩くしかないかね」 「空中のオプションが使いづらいとなると、せっかくカペルが突破してもなかなか点にならない可能性が高い」 「おまけに、セスクとイニエスタでは、カペルのスピードにもついていけそうにないしな」 「その辺りは、今後とも注目しておきたいところであると」 「ちなみに、この日の得点は、スルーパスからビジャが抜け出して、非常に角度のない場所から決めた」 「実に見事なゴールやったな」 「あれができる選手はなかなかいない」 「決め方としては、0607シーズン、チャンピオンズリーグ決勝のインザーギの2点目と良く似ている」 「脇の下を抜くという点ではインザーギの方が難しく、角度という点ではビジャの方が難しい」 「ぜひ、ネットもしくはニュースで映像をご覧いただければと」 「スペイン代表は、この日の前半がこう」 「1-4-1-4-1やな」 「前のデンマーク戦の後半がこう」 「1-4-2-3-1か」 「この日の交代から、その形のオプションはこう」 「ふむ」 「デル・ボスケのスペイン代表は、ワントップの線が濃厚なのかね」 「トーレスが怪我をしているというのもあるが、その気配が強い」 「となると、フォワードの選択が興味深い」 「誰が一番で、誰が二番三番か」 「ワントップなら、メインはビジャやろな」 「セカンドが、トーレスかグィサか」 「各選手をどのような場面でどう使うか」 「非常に興味深い」 「次にトップ下」 「今ならシャビかセスクだが」 「ここにフォワード寄りの選手を置くことも考えられる」 「ラウールやらルイス・ガルシアやらか」 「そこがどうなるか」 「後は、セナの控えかね」 「ディフェンスラインに入った後の動きを見ても、セナは抜群の働きをしている」 「彼の代わりはちょっと見当たらない」 「怪我でもしたらどうするのか」 「実に悩ましい」 「スペインの場合、キーパーからディフェンスラインに関しては、ほとんどいじる必要がないので」 「中盤から前で、上記のようなことに注目されると今後が楽しいのではないかと」 「そんなこんなでまた次回」 「の前に」 「いくつか雑談など」 「まずは、こちらの写真をご覧いただきたい」 「El Mundo紙の写真であるわけだが」 「なぜかビジャがプロレスのリング上でガッツポーズをしているように見える」 「ちょっとラリアットのようにも見えるな」 「次にこの写真」 「得点の部分を見ると、スペインが14-0で勝ったことになっている」 「いくら、ひいきの引き倒しでもやり過ぎやな」 「こちらのページなのですが、残念なことに現在は修正されてしまっている」 「ネタで置いておいてくれたらええのに惜しいな」 「最後にカシージャスの背番号」 「12番」 「なんでやろ」 「マルカによると、試合前に通達する文章の段階で間違いがあったらしい」 「誰が間違えたんやろな」 「普通は、監督かアシスタントが書くから、その辺やろな」 「これに対してカシージャスは、試合では背番号よりもっと大切なことがいくうもある、として怒っていないらしい」 「さすがやな」 「験をかつぐ選手やと嫌がりそうなもんやしな」 「おまけに自分の背番号には誇りもある」 「ジーコは、ベンチスタートの時、Jリーグの規定で10番以外の番号を強要されたが、試合中一度もウィンドブレーカーを脱がなかった」 「えらい昔の話やな」 「それにしても、キーパーを13番に間違えるならわかるけど、12番というのはよくわからない」 「なんにせよ、二度と見られない貴重な出来事だったというところで」 「また次回」 「ご機嫌よう」 |
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