週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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これまで、無回転と楔型のインステップキックについて見た。
ここでは、弓型と回転しないキックの関係を見る。

以前にも見たように、弓型のインステップでは、蹴り足が軸足を巻くように旋回する。



(参考:弓型と楔型インステップキック、それぞれの特徴と比較

このため、楔型と比較して、回転がかかりやすくなる。
しかしながら、後に見るように、弓型でも無回転で蹴ることができる。
その場合のメカニズムには、二種類あると考えられる。

一つは、全体として旋回しながらも、インパクトからボールが離れるまで、直線、もしくはそれに近い軌道を保つ方法である。



もう一つは、斜めに足を入れ、それを相殺する形で抜くことである。



入りの部分で正方向の回転がかかり、抜く部分で逆に回転がかかる。
この二つが打ち消しあえば無回転で飛ぶことになる。

以下は、弓型で回転させずに蹴る実例である。

・バラガン

フィールドポジション


拡大









ボールの回転





・クリスティアーノ・ロナウド

これは、以前に見たキックと同じである。










ボールの回転




以上のように、弓型でも無回転ボールを蹴ることができる。

次回は、インステップを指導する上での注意点や、その他の動きによるインステップを見る。
これまで、楔形の特徴、メカニズムを見た。
次に、具体的な練習法を見る。

1 地面に向かって踏み込み、その力で体の中の筋肉を伸ばす


最初は、筋肉にほとんど力をいれず、筋肉が伸びと反対に縮む反射(伸張反射)をメインとして蹴る練習をするとよい。
弱いキックであれば、それだけで十分蹴ることができる。
この時、無駄な力をいれなければ無回転になりやすい。
蹴る前のボールは、止まっていても、軽く前に転がっていてもよい。

2 筋肉の伸びに同期させて筋肉を縮める


次に、伸縮反射に筋肉の収縮を同期させる練習をする。
最初は、強く縮めようとせず、軽い力で行い、もっともよい結果が得られるタイミングを習得する。
また、一番上の筋肉、つまり、下図のピンクの横線部分を収縮させるタイミングのみに集中するとよい。



タイミングさえ合えば、他の筋肉を意識しなくても、十分に強いキックができる。
また、弓型になれていると、胸から太ももにかけての筋肉を強く引っ張ろうとする傾向が出やすい。しかし、楔型におけるそのような力みは、むしろ動作を阻害する。

その他に注意すべきは以下の点である。


・助走、踏み込みを真っ直ぐに


ボールに対して、真っ直ぐ、もしくはほんの少しずれた角度で助走する。
斜めから踏み込んでも、楔型で打つことはできるが、応用と考えた方がよい。


・体を真っ直ぐに保つ


正面から見て、体を真っ直ぐに保つ。現実には直線になることはないが、イメージとして真っ直ぐに保つ。
蹴り足が窮屈だからといって、中央のように上体のみを傾けてはいけない。弓型をイメージして、手を大きくひらくと、このような状態になりやすい。
体が斜めになるのであれば、全体を斜めにする方がよい。
また、フォロースルーにおいて飛び上がることは、最初意識しなくてもよい。


・ボールを捕らえる位置

以下の図は、「Ossa Pedis(足の骨、足骨)」を参考に、必要な部分のみをやや詳細に描いたものである。
右足の甲であり、図の左が親指をあらわす。



楔型では、赤丸で示された親指の付け根から、オレンジ丸で示された楔状骨の突起部分を結ぶ骨の周りで打つと無回転になりやすい。

最も真っ直ぐに飛びやすいと考えられるのは、以下の楕円部分で蹴った場合である。



この部位で、強くボールを潰すように蹴れば、二回曲がって落ちるような、無回転独特の変化をするボールになりやすい。

該当部位の左右の傾斜を利用すれば、ほぼ同じモーションから左右に蹴り分けることができる。




このキックも、ほぼ無回転で飛ぶ。
これらの部位で捕らえながら、後方回転がかかってしまう場合は、足首が曲がっているか、体が後ろにそっている可能性が高い。

上記の場所の他、親指の付け根や、楔状骨、その周辺で蹴っても無回転に近いキックになる。
反復により、蹴りやすい部位を自得するとよい。

練習におけるキーワードは、真っ直ぐ、リラックス、タイミングだと考えられる。
最初は、キックの強さを目指すより、歩行からの接続がより自然になるように心がける方がよい。

楔型のインステップは、無回転で蹴りやすく、むしろ無回転になることが自然である。
もちろん、これは、楔型でしか無回転を蹴ることができないという意味ではない。
弓型でも蹴ることができる。

次に、弓型と回転しないキックの関係を見る。
楔型インステップのイメージを、下の図で考える。



これは、軸足が地面につく直前の姿勢である。
○は関節をあらわし、赤い線はそれをまたぐ筋肉をあらわす。
関節は、一番下から、膝、腰、体内をあらわす。
体内の関節とは、下図のピンクの部分を近似的に関節とみなしている。


(参考:立ったまま蹴る、体幹、ムチ効果、ひねりの利用

着地において軸足を踏ん張ると、軸足から体にかけては上に移動しようとする。



これに対し、振り上げた足の部分は、下に移動し続けようとする。
この結果、この関節をまたぐ筋肉が、瞬間的に引っ張られて伸びる。



瞬間的に伸びる筋肉は、逆に縮もうとする反射をおこす。
これに合わせて、筋肉を縮めることで、短時間に強い力を発揮することができる。



一番上の関節が強く閉じた場合、二番目の関節に次のような作用がおこる。



このずれにより、関節をまたぐ筋肉が、瞬間的に引っ張られて伸びる。
第二関節が鋭く動いた場合、第三関節に同様の作用がおこる。



以上のように、連続的にこの作用が発生し、次のような関節運動が引き起こされる。



短時間に強い力を発生させるメカニズムが、各関節において連鎖的におこる。

全体の動きは下のようになる。



このように動き続ければ、最終的に上体と蹴り足が地面に平行に近づくことが自然である。
これは、以前に見た、エウゼビオのポーズを再現する。



ここまで極端でなくとも、上体と蹴り足が縦に近づく動きは、楔型の一般的な特徴である。






以上のように、楔形は体の中からの動きを利用してボールをとらえる。
いわゆる体幹の力を利用したキックの実例となっている。

また、筋肉が瞬間的に大きな力を発揮する元となる伸張反射をうまく利用するためには、以下の点に注意する必要がある。

参考:
ためになる用語集、プライオメトリックトレーニング (Plyometric Training)
Plyometrics

瞬間的に伸びる筋肉は、逆に縮もうとする反射をおこす。これに合わせて、筋肉を縮めることで、短時間に強い力を発揮することができる。



その詳しいメカニズムは、上記リンクを参照されたい。

この伸張反射を有効に活用するためには、いくつかの注意点がある。

①タイミング



黒い矢印は、時間をあらわしている。
図の左は、筋肉が伸ばされ、急激に収縮した状態をあらわす。
図の右は、筋肉が伸ばされた後、しばらく時間をおいてから筋肉に力を与えた状態をあらわす。
伸縮反射が起こってから間が空く場合、急激な収縮は起こらないとされる。
これは、インステップキックにおいて、体に地面の衝撃を感じてから時間をおいて筋肉を引っ張ても、短時間で強い力を発揮する効果は期待できないことを意味する。

左で発揮される力は、下の赤線に相当し、右は、紫線に相当する。



②力の向き

筋肉が縮む反射を得るためには、その前に、筋肉を急激に伸ばす必要がある。
そのためには、力が筋肉の伸縮方向となるべく平行な方がよい。



図の下のように、力が斜めを向くと、無駄が生じる。

③リラックス

筋肉が縮む反射を得るためには、その前に、筋肉を急激に伸ばす必要がある。



図の左右で、筋肉は同じだけ伸びている。
しかし、左は、より短い状態から、右はより長い状態から伸びを開始する。
一般的に、伸びているものをさらに伸ばす方が難しい。
このため、伸縮反射をうまく起こすためには、筋肉が自然な長さに近いことがのぞましい。
つまり、筋肉は開始において、十分リラックスしている必要がある。
このことは、上手い選手ほど、ピッチ上でリラックスしているように見える一つの理由であると考えられる。

以上のことは、伸縮反射を利用するためには、楔型のインステップの方が、弓型よりも優れていることを示している。



左が楔型、右が弓型であり、着地直前の様子を模式的にあらわしたものである。
一番上の関節をまたぐ筋肉に着目する。
地面を踏む力は、体幹にそって伝わり、該当筋を伸ばす。
この時、楔型の方が、力と筋肉の伸縮方向のなす角度が小さい。
上の②の理由により、楔型の方が伸縮反射をうまく利用できると考えられる。
同時に、弓型の方が全体を弓なりにそらせるため、該当筋の伸びが大きく、楔形の方が小さい。
③の理由により、楔型の方が伸縮反射の利用に向いてると考えられる。

次回は、楔型インステップの練習法について見る。
インステップキックを無回転で蹴るのは、多くの子供の夢である。

メカニズムとして、楔型の方が無回転で蹴りやすい。
楔型では、縦に踏み込み、前に足を抜く。このため、インパクト前からの蹴り足の軌道がより直線的になる。



インパクトから、ボールを潰し、離れるまで、まっすぐに蹴れば回転はかからない。



いわゆる、無回転キックになる。

一方、ボールを潰した段階で足の動きが斜めを向いている場合、回転がかかる。



弓型のインステップでは、蹴り足が軸足を巻くように旋回する。



楔型と比較して、回転がかかりやすくなる。
ただし、後に見るように、弓型でも無回転で蹴ることができる。

次に、楔型による無回転キックの実例を見る。

・クリスティアーノ・ロナウド、ポーツマス戦

以下のキックにおいて、上体は常に前傾しており、キック後、上体と蹴り足が縦に折れる。
これは、楔型の特徴である。

遠景
















拡大





















インパクト後、ボールがほとんど回転せずに飛ぶ様が見える。
ゴールに入る直前は、以下のように、ゆるやかに回転している。






以下は、蹴り足の膝から下が、インパクトにかけて、真っ直ぐに出る様子を示している。








次に、楔形インステップのイメージとメカニズムを見る。
楔形は、弓型に比べ、キックにおける手の動きや、踏み込み動作がより小さい。
これは、以下の長所を生む。

歩行からの接続が自然である
小さな動きで打つことができる
小さなスペースから打つことができる
シュートにタイミングを合わせづらい

また、より上から踏み込むことは、軸足が地表面の影響を受けにくい特性を生む。
以下にその実例を見る。


・楔型を用いた滑りやすいピッチでのシュート
(ペレ、映像出展:Best of Pele

下図の白い丸の中心にボールがある。
その下のピッチの変化に注目していただきたい。





軸足の周囲に白いものが広がる。これは、水が跳ねる様を示している。
つまり、ピッチは冠水している。

-シュート地点



-モーション
























以上は、上体をボールにかぶせるように踏み込み、インパクトの後、上に伸び上がる楔型の特徴を示している。
水の浮いたピッチにおいて、楔形によりシュートを打つ実例である。
もし、このような表面で、下のように踏み込んだ場合、軸足が滑る可能性が高い。





以上が、楔型インステップの特性を次のように規定する理由である。

歩行からの接続が自然である
小さな動きで打つことができる
小さなスペースから打つことができる
シュートにタイミングを合わせづらい
地表面の影響を受けにくい

一方、楔型でフェイントを使った、例えばステップサイドがどの程度可能であるか、といった点については不明である。

次回は、インステップと回転しないボールの関係について見る。
いわゆる無回転キックは、楔型の方が蹴りやすい。


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