週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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呼び名の問題 (2004/02/06)


スペイン語をカタカナに直すといろいろとややこしいことがおこりますが、今回はそんなこんなについてのお話。
基本的には、表記を現地の発音に合わせればいいようなものですが、それはそれで簡単ではありません。

例えば、マドリーかマドリッドか、セビージャかセビリアか、

まずは、マドリー。Madrid の最後のdはスペイン語では英語の th と同種の発音になります。
つまり舌を歯で挟み空気を抜く「ス」なる音になります。
最後のスは基本的に音として聞こえないので、その前を伸ばして「マドリー」のように呼びます。
マドリー在住の日本人で「マドリッド」と日常的に発音する人は稀で、自然とこの呼び名に統一されています。
というわけで、レアル・マドリー、アトレチコ・マドリー、のように書き表すことになります。
たまにマドリッと最後を跳ねる表記を見かけます。これでも通じるとは思いますが、字面が間抜けかつ攻撃的なのでマドリーの方がよろしいかと。

次にセビージャ。
セビージャというと、一瞬なんのことかわからない方もおられると思われますが、これは所謂「セビリア」もしくは、「セビーリャ」のことです。
Sevilla と綴るわけですが、最後の lla を「ジャ」もしくは「リァ」と読みます。これはどちらでも良いことになります、学術的には。
しかし、現在のマドリーでは「ジャ」と読む人がほとんどで、よほどまれな人でない限り、リャ、リァとは言いません。
よって、べたに「セビージャ」と表記します。
ちなみに paella もパエリア、ではなくパエージャが普通です。

続いて騙されたような「G」について。
バルセロナに Gerard という選手がおり、マラガに Gerardo という選手がいます。
さて、この二人をどう呼ぶのでしょうか。

答えは、前者がジェラール、後者がヘラルド。
所謂スペイン語と呼ばれるのは、カステジャーノと呼ばれる言語で、マドリーを中心とする地方で使われております。
で、そこでは Ga,Gi,Gu,Ge,Go は簡単に言うと、「ガ、ヒ、グ、ヘ、ゴ」と発音します。
ならば、ジェラールはヘラルーであるべきなのですが、彼はバルセロナを中心とするカタルーニャ地方の出身。
そこでは話される、フランス語に近親性を持つ言語では Ge を ジェ と発音するらしく、それにならい、マドリーでもジェラールと呼んでいます。
なんだか、面倒な話ですが。
ちなみにジェラールは Granollers というバルセロナ近郊の出身です。

スペインリーグには有名な、Xavi、Xabi、二人の選手がいますが、どちらがどのチームの所属選手かおわかりでしょうか?
前者の「シャビ」はバルセロナ、後者の「シャビ」はソシエダーのシャビ・アロンソ。
マドリーにおける読みとしては、両者共に「チャビ」よりも「シャビ」の方が近いと思われます。微妙ですが。
ならばなぜ v と b で違うのか。ソシエダーの属するバスク地方では、アルファベットの v を使用せず全て b で表記する為、同じ名前でありながら字面が異なるわけです。
ちなみにフルネームは「Xavier」と「Xabier」。ここでピンとこられた方はお見事。
そうです、あの有名なフランシスコ・ザビエルのザビエルと同じ綴りです。
ザビエルはバスク人なので、教科書で一般的に書かれている「Xavier」ではなく、「Xabier」の方が正しい。はずです。
もののついでですが、カステジャーノではザビエルに当たる名前を「Javier」、つまりハビエールと書きます。
こちらの短縮形は「ハビ」。ハビ・モレーノ、ハビ・ベンタ、ポルティージョ、サビオラ、ガリード等、多数の選手がこの名を持っております。

そしてさらにアンダルシア。この地方では単語の終わりの S が欠落します。
1、2、3は uno, dos, tres, ですが、ウノ、ド、トレ、となり、S が消えます。
その勢いで行くとセビージャ出身のセビージャ監督、ホアキン・カパロス (Joaquin Caparros) はホアキン・カパロ、もしくはホアキン・カパローと表記すべきである、という話になります。
ならばアンダルシアの一角、マラガにいるポルトガル人ディフェンダーのリトス(Litos)はどう表記すべきでしょうか。
アンダルシア風にリトなのかカステジャーノ風にリトスなのか、はたまたポルトガル風の別な読み方で書くべきなのか。

このように、「人の名前を現地の音で表記する」というのはそう簡単ではありません。
そんなわけで、このページにおいては、カタカナ読みをすればマドリーでなんとなく伝わる表記、というものに統一してあります。
ときどき変な、一般的でない名称が出てくるのはこのためです。

以上、くだくだしい話でしたが、記憶の片隅にでも留めておいて頂ければ幸いです。




上手くなる観戦法 (2004/01/29)


このコーナー最初のお題として、サッカーがよくわかるようになる、かもしれない観戦方法なんぞを御紹介しようかと。

ところで、皆さん、年間どの程度の試合をご覧になられますかいね。テレビ、スタジアム観戦を足して。
私が日本にいた頃は、100試合程でした。地上波、WOWOW、NHKBSで放送される試合をさらうようにして見た挙げ句、この数字でした。
1試合を巻き戻したり止めたりして見ると、その所要時間はほぼ2時間、年間200時間、8時間労働に換算すると、25日分の労働にあたるわけです。
おまけに面白い試合は3回以上見るわけですから、その総時間たるや膨大なものになります。
これだけの時を割くわけですから、その1回1回の観戦から最大の情報を得ねば割りにあわん、ような気がするではありませんか。
知り合いには、働きながら年間130試合を観戦するツワモノもおりました。
ならばですな、その各試合最大限に活用し、有用な情報を引き出せば、サッカーをより理解することができ、消費した時間も浮かばれるはずでございます。

よって、年の頭(と言ってももう遅いですが)に効率的な観戦法を考え、今年1年、サッカーを見る時間をより有意義に過ごそう、ってのが今回の企画であります。
なんか趣味のものに対して貧乏性のような気もしますが。

まずは、個人技術を堪能する観戦法。
フィールド上では毎日、おかしなことが起きています。

5m前方でジャストミートされたヘディングシュートを弾くイケル・カシージャス。
自分より遥かに体格で勝るルイス・エンリケをショルダータックルで弾き飛ばすゲオルゲ・ハジ。
180センチの選手を弾き飛ばす160センチ後半のバストゥーク。
シュートを撃つとキーパーが逆に飛ぶことの多いマイケル・オーウェン。

これらは普通、「ありえない」ことです。
これらの現象を、「彼は反応がいい」「彼は当たりに強い」「彼はシュートが上手い」、とまぁ、このように片付けることもできます。
が、そこで「なぜか」を考えて見ると新たな発見があります。
例えば、イケルは「沈み込み」と呼ばれる、シュートの瞬間に重心を下げ地面からの反作用を利用して体を素早く動かす技術に長けており、ハジはエンリケを誘導し片足立ちになった瞬間に当たるからこそ勝ち、バストゥークは敵のイメージする衝突点をずらす技を持ち、オーウェンはインステップからインサイドにキック表面を変える技術を持っているからこそ相手を上回ることができるのです。

おかしな場面の裏には技術が隠れている。

よって、それに疑問さえ抱けば新たな技術を「発見」できるわけです。
問いの設定は簡単で、試合を見て感じる印象になぜという単語をくっつけるだけ。

例えば、「ジダンはトラップが上手い」「バレロンは落ち着いたプレーをする」「ミヤトビッチはこぼれ球への反応が早い」といった印象の頭に「なぜ」をつけ、お尻に「のか?」をつければ疑問が完成するわけです。
後はビデオでそう感じる場面、その技術が使われる場面を繰り返し見ればいつの日にかその解答が見つかり、新たな世界を発見できるはず、なわけですな。

実際にプレーしている人は、その技を次の練習、試合で試してみれば、さらにサッカーが面白くなることうけあいであります。

「疑問だけ見つかって、解決しいひんかったら気持ち悪いやんけ」という突っ込みも予想されますが、それはそれでかめへんのです。
謎を持つことに意義があるし、それを人と話すことにも意義があります。忘れずに悩みつづければいつかほどける日がきます。ほんまでっせ。


ついで、システム、戦術、チームの長所、短所を知る見物法を少々。

ビデオに撮って2倍速で見る。これに限ります。慣れないうちは1.5倍速でもよいでしょう。
これを実行すると、個々の顔のアップやカメラアングルの変更に悩まされることなくボールの動きだけを追うようになります。とういうか、個人行動の詳細を追うことが不可能なため、大枠であるボールの軌道と選手の配置と移動軌跡、これを追うしか手がなくなります。

ボールを無くす地点とその前のボールの軌跡。ボールを奪った後の狙い、すなわち選手、ボールの動き。どの地点をどのように突破されているのか、もしくはしているのか。
このような事どもに注目することを戦術的に見る、というわけですから、2倍速で見ると必然的に戦術眼が養われます。

面倒でなければ、最初に選手の配置とシステムを把握し、紙に書いておきましょう。そうすれば、動きを速めても、誰がどこにいるのかを容易に把握できます。

最初は辛いですが、騙されたと思ってやってみてください。新たな世界が開けるはずです。

今回は取り敢えずここまで、スタジアムで見る際の見物法についてまたいずれ。
これを機になにか新しいものを発見された方がいらっしゃればご一報下され。

「さて」

「めでたくワールドカップも始まり」

「スペインはオランダに5点とられ」

「ポルトガルはドイツに4点とられ」

「イベリア半島が花火にされてしまった今日この頃」

「皆様いかがお過ごしでしょうか」

「本日はコートジボワール対日本などをお送りしようかと」

「だいぶ時代遅れな話題やけどな」

「それは言わない約束でひとつ」

「試合自体は2-1で日本は負けた」

「それはそれとして、パスについてずいぶんと気になった試合だった」

「気になったかね」

「例えばこういうのがある」

27:41



















「これはかなりのミスパスやな」

「ボールを受ける前の状態はこんな感じや」



「ふむ」

「ボールを触る時はこう」



「だからどうした」

「少なくとも相手からひどいプレッシャーを受けてはいない」

「それでミスったからいかんと言いたいのか」

「いかんというか、そこから取られて危ない状況になったのではわりに合わんのちゃうかね」





「まあ、そこで相手がボケてくれたから大丈夫やってんけどな」










「そうやけどな」

「でも、こういうミスなら一試合に一度はあるのと違うか」

「そうかもしれんが、相手に直接パスするシーンもようけあったで」

05:19
















「びしっとストライクやな」

「そして次はこれ」

32:43



















「これも相手にパスしたことになるのか」

「そもそも、まったく味方に合ってない」

「パスカットされたのとは違うのか」

「相手が努力してボールを奪うのがパスカット、そんなに努力してないのにボールが勝手にやってくるのが相手へのパス」

「努力の差なのか」

「いかにも」

「厳しい世界やな」

「さらに次」

56:39










「これはなかなか」

「さらにもう一つ」

88:25








「これもかなりのストライク」

「実にたくさん相手にパスをしている」

「たくさんいうても4つやで」

「1試合で4つは多すぎちゃうかね」

「そうなんやろか」

「少なくともコートジボワールは1つだけやで」
















「これはひどい」

「イッツオウフルとか言われるやつやな」

「意味不明な英語とかいらんから」

「相手に直接パスを出すというのはゼロを目指すもので、それが4つもあるというのは多すぎる」

「まあ、相手は努力しなくてもボールを回収できるからおいしい話ではあるな」

「ちなみにパスカットはパスカットで沢山ある」

「最初にびっくりしたのはこれ」

21:48










「ぴったり取られている」

「これは非常に良い形でボールを奪った直後だっただけに痛かった」

「続いてこれ」

24:31















「ナイスカットと言わざるをえない」

「ほんで、次はオレンジの最終ライン、画面の上から2番目の選手に注目なんやけどな」

33:31




























「待ってました、いう感じやな」



「ここにパスが来ると、よほどわかっていたように見える」

「さらにこれ」

39:23














「これもジャストタイミング」

「やっぱり完全に読まれている」

59:49













「ここも相手が先か」

「パスカットの中で、これだけは少し高度な間違いという気がする」

「そして再び次のようなものが」

「画面一番右のオレンジの選手に注目やな」

68:41


























「これもだいぶ待ってました感に溢れとるな」

「さっきがこう」



「今回がこう」



「センターバックが空振ると酷いことになるから、よほど自信がないとこのプレーはできない」

「相手のパスを読める、逆に相手のパスが読みやすいという話になる」

「ここでの蹴り方を見てみる」





































「この蹴り方はよほど読みやすいし、スタートが切りやすいらしい」

「パター型かね」

「無理やり拡大しているのであれだが、パター系の蹴り方に見える」

「ちなみに、次のパスカットもかなり読まれている」

77:47

























「パスの距離自体はかなり短い」

「それなのに通らない」

「これの原因は多分わかる」

「ほう」

「体の正面は別方向に向けているんだけど、足や腰の旋回が早すぎて、そこからパス方向がバレるパターンだと考えられる」

「そうなんか」

「体の向きでフェイントをかけている予定なんだけど、それが仇となってパススピードが落ちてやられる」

「ほな次はどうや」

86:37














「これはパスの方向とスピードが悪かったとしか」

「そんなことは誰でも言えるやろ」

「そう言われてもだな」

「頼りにならんやっちゃで」

「取り敢えず、パスカットに関してはこれで全部」

「全部で8個か」

「多くないか」

「多いかね」

「パスというのはこんなに沢山カットされるもんではないと思う」

「ちなみに、コートジボワールは何個や」

「多分4つ」

「ほんまか」

「25分59秒に長谷部が頭でカットしたやつ、29分06秒に香川がスライディングでカットしたやつ、39分38秒に長谷部が読み勝ちでカットしたやつ、88分10秒に内田が読み切ったあげくヘディングで味方につないだやつ、合計4個のはずや」

「それが本当なら、日本は2倍か」

「やっぱり多いで」

「その辺はもうちょっと統計データを出してもらわんと」

「最初に見たパスミス、次に見た相手にパスをしたもの、最後のパスカットされたもの、すべてを合計して13個ある」

「むやみに不吉になりたがる数字やな」

「これを見ると日本はパスをつなげるチームとは言えへんのとちゃうやろか」

「そうかね」

「この試合を見る限り、日本はつなげるはずのパスをつなげないチームである、という疑いを持たざるを得ない」

「次の試合ではそんなことないかもしれんで」

「そう、そこが興味で、ギリシャ戦が楽しみなわけや」

「嫌な楽しみやな」

「いや、この楽しいというのはインタレスティングという意味の楽しみであってやな」

「だからいらん英語はどうでもええって」

「そんなこんなで」

「また次回」

「ご機嫌よう」

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付録
相手が触った後の結末

・ピンチ
PKを取られかける 1回
センターバックがイエローカード 1回
エリア内でシュートを打たれる 3回
計 5回

・ピンチに至らず
ボールアウト 2回
相手ミス 1回
再び回収 5回
計 8回

全計13回
「さて」

「グティに関してやな」

「先週辺りに、グティとフアンデ揉める。フアンデは今後グティを使わない方針、といった感じのニュースが出た」

「ところが、フアンデは、チームから誰かを締め出す気はないと発言」

「グティは、無事、マラガ戦に召集される」

「無事かどうかはわからんけどやな」

「事件はそこで起きる」

「詳細は、ASの、この動画で見ることができるわけやけれども」

「これは、グティの性格や、試合前のスタジアムの雰囲気を見ることができる、という点で、非常に面白いのではないかと」

「まずは、導入部分の訳を」

"Bueno, vamos con el caso Guti. Se nego a calentar, pero antes del partido...."

”では、グティの件に行きましょう。ウオーミングアップに出るを拒否したのですが、試合前には……”

"No No ... Calento unos minutos, calento unos minutos.
Despues de calentar, se sento otra vez al banquillo y no quiso volver a calentar. "

”いやいや、数分アップしたんだよ、数分。アップをした後、一度ベンチに座り、再びアップに出るのを拒否したんだよ”

「そんな感じか」

「アクセント記号を抜かすと、こんな感じだ」

「これだけの知識があれば、流れは把握可能なので、一度動画をご覧頂くのも手かと」

「では、動画の詳細へ」

「開始から、スタジオで話す2人の大筋は上の通り」

「次に、15秒くらいから、マドリーのベンチが写り、下に文字が入る」

「写っているのは、右から、グティ、サビオラ、ハビ・ガルシアやな」

「言葉の内容はというと」

”今日は、俺の出番はないな……まあ……出番があるのは、ハビが1番手だな……この点差だと最初にフォワードの後ろの奴を下げる……そんで、中盤に1人入れる……まあ、俺じゃない”

「これは、グティがしゃべっている内容で。読唇術をつかって抜き出している」

「スペインのスポーツ番組では、良くある」

「このグティの言葉を意訳すると、次のようになる」

”あのチキン野郎は、一点リードしたら必死でそれを守るに決まってる。今日は出番ねえな”

「おいおい」

「ん?」

「えらい悪い方向に意訳したもんやな」

「他にやりようがないやろ」

「こうとかやな」

”今日は、私達がリードしておりますので、守備の上手な選手が交代出場することでしょう。残念ながら、私の出番はありませんね”

「気持ち悪いわ」

「そうか?」

「まあ、どちらがよりグティの気持ちに近いかは、読む方に判断していただくとしてや」

「37秒から、ピッチ上の映像へと移る」

「試合前、妙なハイテンションで悪ふざけに興じるグティの姿」

「50秒から、グティがベンチに向かい座る姿」

「そこで、観衆から節をつけた野次が飛ぶ」

「グティマリコン、グティマリコン、グーティーマーリーコーーン」

「これは翻訳すべきなのか」

「グティ・オカマ野郎やな」

「あっさり言いよったな」

「マリコン、というのは、グティの枕詞のようなものではある」

「いや、グティの後につく言葉やで」

「細かいな」

「なんとなくな」

「これは、実に良く使われ、敵が彼を侮辱するためのみならず、マドリディスタも良く用いる」

「グティがへたれたプレーでボールを失うと、すかさずマリコン!」

「試合中に髪を整える仕草を見てもマリコン!」

「チームの調子が悪い時など、練習場で車から降りるだけでマリコン!」

「なにをやってもマリコンやな」

「多分、髪がやたらとつやつやしていて髪型もよくいじる。体が華奢である。すました態度が目に付く、といった辺りが原因やろな」

「多分ではないと思うが」

「ちなみに、グティマリコンコールは、マラガだけでなく、スペインの多くのスタジアムで観測されるらしい」

「1分10秒あたりから、試合中、グティが最初にウォーミングアップに出て行く映像になる」

「この時、プレパラドール・フィジコのジョルディ・ガルシアと軽口を叩くなど、まだ平和な雰囲気が漂っている」

「1分22秒、再びベンチに座り、頬杖をつくグティが映る」

「これは、試合開始から85分の時点で、右は、ミチェル・サルガド」

「そこにコーチが近づいてきていわく」

「もう一回、準備に行くぞ」

「それに答えていわく」

「ベンガ・コーニョ」

「おい」

「再び、ベンガ・コーニョ」

「結局、グティは、後5分しかないのにアップなんかやってられるかということで、コーチを追い払う」

「さすがグティ」

「ちなみに、コーニョというのは女性器のことやな」

「その前のベンガは、まあ、あらゆる意味があり、それゆえに大した意味のない場合も多い言葉である」

「その後、サルガドの顔が、無理やり拡大される」

「ミチェルの顔がすべてを物語っています。グティ、なんてことをいうんだ」

「さらに、コーチの顔が、無理やり拡大される」

「ふう、なんてこったい……どうしよう……もう一回言ってみようかな……それより、フアンデになんて言おう……」

「そして、最後は、”グティは、フアンデと一緒にいる限り、二度とプレーすることはないと知っています。そして、私たちがそれを知っていることも知っています”という言葉で締めになる」

「最後の、”私たちがそれを知っていることも知っている”というセリフがわかりにくいな」

「ここは、グティがカメラを見てる点が重要で、撮られているのを知っているということやな」

「多くの場合、マドリーの選手がベンチでなにか話す時は、手で口を隠す」

「それは、カメラで撮られて唇を読まれ、後からどんな尾ひれをつけて報道されるかわからないのでそうする」

「そういえば、昔、カナル・プルスのニュースかなにかで、マドリーの古い選手が、新しく来た選手に、”おい、あそこにカメラがあるだろ、あれに気をつけろよ、あいつらは映像から俺たちの言葉を読むんだ、だから、こうやって口を隠してしゃべれよ”と教えているのを見たことがある」

「まあ、選手の間では常識やな」

「にもかかわらず、グティが最初のように、監督批判ととられかねない言葉を、隠す気配もなくしゃべったということは、撮られてもかまわん、という気持ちがあることを示している」

「撮られてもかまわん、というより、撮れ、撮ってこれをニュースで流せ、ということちゃうか」

「そういうことも含めて、最後の、”私たちがそれを知っていることも知っている”というフレーズにつながる」

「もう、なんというか、グティはフアンデが大嫌いなんやな」

「そうとしか解釈できない映像ではある」

「選手が、このように反抗すると、どうなるかというと」

「内規で罰金を取られる上に、侘びをいれないと確実に干される」

「さて、今後どうなるものか」

「どうなるもこうなるも、こげんなる前にどげんかせんと」

「ある意味、フアンデがマドリーに向いていない、というのは、この点にもあらわれている」

「グティのような選手を使いこなせるか、どうかが鍵やしな」

「そういうことや」

「それにしても、グティのやってることも無茶苦茶過ぎやけどな」

「明らかな就労拒否やしな」

「駄々をこねる子供じゃあるまいし」

「いや、正にそれと同じ状況やろ」

「よくもまあ、この性格で、今までやってこれたと感心する」

「その性格やねんけどな」

「なんや」

「ちょっと、あることを思い出したんやけどな」

「だからなんや」

「雑談になるけどええか」

「もともと雑談やし」

「昔、ラージョ・バジェカーノが一部にいた時代の話やねん」

「古いな」

「マドリーが、敵地で試合をして、グティもそれに出ていた」

「ふむ」

「試合が終了して、ユニフォームの交換が行われる」

「よくある風景やな」

「グティも誰かのユニフォームをもらい、小走りにロッカールームに引き上げていく」

「テレサ・リベロだと、西側の客席のある方のバックスタンド下に向かうわけか」

「選手入退場用のトンネルの前には、用務員のような人が立っていた」

「見張りやな」

「そこで、グティは、なんと、さっき交換したばかりのユニフォームを、用務員に投げつけてトンネルに消えていった」

「ほほう」

「なかなか凄い話やろ」

「なんというか」

「相手選手と交換したばかりのユニフォームを、投げ捨てて帰るとか聞いたことないで」

「うむ」

「ちょっと目が点になる出来事だった」

「多分、係員に、そのユニフォームくれ、とか言われて、それであげたのではないかね」

「ほんまか」

「ほんまかと言われても困る」

「第一、公衆の面前で投げて渡すことはないやろ」

「それは、こう、合理主義的なだな」

「交換を求めた選手は、グティのユニフォームが欲しかったわけで、それに対して、グティはこんなもんいらん、ということにならんか?」

「倫理を厳しくして見るとそうかもしれんけどやな」

「グティは、そういう性格だろうと思ってはいたが、中々に興味深い出来事だった」

「まあ、こっちは、グティの性格といえば、違う話を思い浮かべるんやけどな」

「どんな話や」

「この稿の前に、バジャドリー対バルサの試合があるけど、バジャドリーのボランチにアルバロ・ルービオがいるやろ」

「一家に一台、アルバロ・ルービオと呼ばれる選手やな」

「彼は昔、アルバセーテでダビー・サンチェス・ロドリゲスという選手とボランチを組んでいた」

「2004年前後の話か」

「この、ダビー・サンチェスという選手は、ボールを触れば抜群の才能があった」

「左足からのドリブル良し、スルーパス良し、組み立て良し、フリーキック良し」

「実にいい選手だった」

「それについては、異議はない」

「ところが、性格に問題があり、味方のミスが許せない。気に入らないことがあるとすぐむくれて止まる。守備を全力でやらない」

「まるで誰かさんやな」

「人を支える、人のミスをカバーする、味方のために走る、といったことを信条とするアルバロ・ルービオは、それが我慢できなかったらしく、ダビーの態度にはいつも苛立ちを隠さなかった」

「能力の組み合わせとしては、いいコンビやねんけどな」

「能力的には、ピルロとガットゥーゾのような形ではあるが、どうもに性格が合わない」

「そればかりは、どうしようもない」

「ボールを扱う才能において、ダビーはルービオの遥かに上、比較するのが馬鹿らしいほど上だったにもかかわらず、ルービオはリーガの一部でレギュラーを取り、ダビーはルーマニアに流れた」

「ルーマニアか」

「どうやら、そうらしい」

「それはまた、意外な変転やな」

「やろ」

「それで、何が言いたい」

「何がとはなんや」

「グティと関係した話ではなかったのか」

「それはこれから言うねん」

「引っ張ってどうする」

「要するに、グティも一歩間違えば、ダビーのようになっていた可能性が高い、ということや」

「それはあるかもわからんな」

「彼の性格でやってこれたのは、レアル・マドリーという組織の中で育ち、才能を認められてチームに守られたからで、もし、なにかの拍子で他のチームに出されたら、周囲と上手くいかずにスポイルされた可能性はある」

「ふむ」

「圧倒的な天才である、デ・ラ・ペーニャも、バルサでロナウドと組んだ後、非常な苦労をした」

「安息の地を見つけたのは、一度バルサを出て4年後、エスパニョールでタムードと出会ってからやからな」

「才能のある選手というのは、得てして使いにくいものだから、それをどう扱うかに監督の器量が問われると思わんか」

「そうかもわからん」

「最近ではエルゲラなんかもそうやな」

「お茶目な性格が災いして、ウナイ・エメリと大喧嘩。チームを放逐された」

「エメリとは歳も近いし、経歴においてはエルゲラの方が圧倒的に上だから、一緒にやっていくのは元々難しかったのかもしれんけどな」

「エルゲラとグティについては、蹴球計画でも話題になったことがある」

これとか、これか」

「こういうネタになるというのは、それだけ癖のある性格である、ということができる」

「普通やったらネタにならんしな」

「監督というのは、それを使いこなしてこそだと思わんか?」

「どうやろ」

「まあ、そんなこんなを思いながらこの騒動を眺めると、少し違った色合いが見えるのではなかろうかというところで」

「また次回」

「ご機嫌よう」
「さて」

「どうした」

「今日は選手名の発音などについて語って行きたいと思う」

「あいかわらず唐突やな」

「それというのも、ハインツェのせいなんや」

「日本でも有名な選手やな」

「バジャドリーで城と一緒やったしな」

「彼がどないしたんや」

「彼はアルファベットで書くとHeinzeやろ」

「そうやな」

「明らかにドイツ名なわけだから、カタカナにすると、ハインツェなわけや」

「eiの発音はアイに近いからな」

「それは、シュヴァインシュタイガーのつづりが、Schweinsteigerであることを見てもわかる」

「なにも一番長い人をもってこんでもええがな」

「おまけに、スペインのアナウンサーもハインツェのような発音で呼んでいる」

「まあそう聞こえんこともないな」

「ところが、ある日、ガブリエル・ハインツェで検索すると”ガブリエル・エインセ”という文字が一番上に出たわけや」

「エインセか」

「一瞬何のことかと思うやろ」

「Heinzeを真面目にスペイン語で読むと、最初のHを発音しないで、最後で舌を噛むから、確かにエインセではあるな」

「それを見て、実はスペイン人もエインセと呼んでいて、自分が空耳的にハィンツェと聞いていたのではないかと不安になったわけや」

「言語は音も予想で聞くから思い込みがあると空耳は起こりやすいしな」

「外国語で、いちど字幕を見てしまうと、”寿司、鳥、風呂、寝ろ”としか聞こえなくなるのと一緒の原理やな」

「なんの話や」

「そこで、実際にアナウンサーの声を真面目に聞いてみた」

「マメやな」

「それがこれで、エル・カベサッソ・デ・*****、と言っていて、星の部分が選手の名前になっている」



「ふむ」

「どう聞こえる」

「ヘインツェかな」

「最初の音は、間違いなく”エ”じゃないやろ」

「スペイン語の”Je”で”ヘ”と表記する発音に近い気がする」

「最後の音は少し破裂するような音になるから、”ヘインツェ”というのが日本語では一番なじみやすい発音での表記ではないかと思うわけや」

「まあ、この辺の発音に関しては色々あるけどな」

「まあな」

「例えば、最近有名なボージャンなんかもそうやろ」

「Bojanか」

「これは、ボージャンと呼んで、カステジャーノ風にボーハンとはよまなんやろ」

「Borjaはボルハなのにな」

「”Bojan”がボージャンで、”Borja”がボルハというのはいかさまみたいなもんやな」

「そうは言っても、カタルーニャ方面の選手に対して、”J”行の音をハ行ではなく、J行で読むことは多いな」

「JordiやJofreなんかがそうで、ジョルディ、ジョフレやな」

「おまけに、ビジャレアルの監督の、Pellegriniは、”ペレグリーニ”であって”ペジェグリーニ”や”ペリェグリーニ”とは呼ばない」

「有名な、Paellaは、パエリアとかパエーリャとかパエージャとかやな」

「これは、先祖の具合が関係していて、Pellegriniはイタリア系で”ペリェグリーニ”と呼ばれると自分の気がしないからだろうし、Bojanも”ボーハン”と呼ばれては自分の気がしないだろうから、もとの言語になるべく近い音で呼んでいるやと思うで」

「つまり、ドイツ系のHeinzeも実はハインツェと呼びたいという話やな」

「ちなみに、ボージャンの苗字のKrkicも”クルキッチ”で、最後は”ク”じゃなくてセルビア風に”チ”やな」

「単純にカステジャーノ読みすればいいというものではないだけに面倒やな」

「同じアルファベットで違うように読めというのは実に難儀な話やな」

「そういえばやな」

「なんや」

「上のエインセという表記よりも納得の行かない選手が一人いてだな」

「だれや」

「メシなんやな」

「メシか」

「メッシならともかく、メッシーはないと思わんかね」

「どうやろな」

「とりあえず、下の音を聞いてみてくれ」



「うむ」

「どうや」

「メシーかメシやな」

「最初にメシーとなっているのは、語尾で調子を取るためやし、どう聞いてもメッシーにはならんやろ」

「まあ、アルゼンチン風に発音するとメェシィに近くなるけどな」

「そこまで行くともはや収集がつかんけどな」

「そんなことを言うたら、ベティスの Edu なんかもっと大変やで」

「彼がどうした」

「Eduをなんと読む」

「エドゥーやろ」

「ところが違うねん」

「そんなアホな」

「本人が言うから間違いない」

「だって、前にフリューゲルスにいた選手もEduでエドゥーやったやろ」

「懐かしいな」

「鬼のフリーキッカーで、センターサークルのすぐ前くらいから直接決めてたな」

「いや、そんな昔話はおいておいてだ」

「うむ」

「本人に言わせると、エドゥーじゃなくて、エ↑ドゥらしいんや」

「エにアクセントがあるのか」

「エで上がって後ろで落ちるのが本当やから、エドゥーとは呼んで欲しくないそうなんやなこれが」

「また微妙な注文やな」

「それで、アナウンサーも一時期はエ↑ドゥと呼んでいたんやけどや」

「どうした」

「下の2週間程度前の音声を聞いて欲しいんや」



「うーむ」

「うーむやろ」

「どう聞いてもエドゥーやな」

「もとに戻ってしまったということや」

「きっと、エ↑ドゥやとスペイン語のリズムに合わんのやろな」

「なんにせよ、名前の呼び方は、かくも非常に難しいといわけやな」

「とはいえ、エインセやメッシーなどの、明らかに違う表記は修整したほうがいいのではないかというところで」

「今回はこの辺で」

「また次回」

「ご機嫌よう」


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