週休たくさんで主にスペインサッカーを分析
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オリベルとベンジー (2004.06.02)


いきなりですが、スペインのテレビには数多くの日本アニメが溢れています。
特にサッカーと関係のあるものは、「オリベル・イ・ベンジー」。
これはあの歴史的漫画、「キャプテン翼」のことで、オリベルは翼君、ベンジーは若林君を指します。
どこをどうやればそのような翻訳になるのか難しいところではありますが。

サッカーの常識を完膚なきまでに無視したこのアニメ、現実にサッカーが盛んなスペインでの受けが気になるところだったが、その視聴率は意外なほどに高いらしい。
草サッカー場に足を運び、出身が日本だとわかると、「おまえ、オリベル・イ・ベンジーを知っているか?」とたまに聞かれる。
当然知っていると答えると、

「あの走っても走っても端にたどり着かない、次元を無視したサッカー場は凄え。」
「足の裏に人間をのせて打ち上げたり、空を飛んでオーバーヘッドをしたり、ボールがネットを破いたり、日本のサッカーはあんなんなのか?」
「いや、小学生の大会で選手生命を賭けてプレーする必要はないと思うぞ。」

といった感想が一般的に返ってくる。実に常識的な反応である。

タイガーショットは「ティロ・デ・ティグレ」、ドライブシュートは「ティロ・コン・エフェクト」と言いますが、たまに子供たちが、「トマ、ティロ・コン・エフェクトォーーーー」と叫びながらボールを蹴る姿を目にする、この点は日本と変わらない。
現在三十前後の人なら、子供の頃ツインシュート(二人で同時にボールを蹴りボールに妙な効果を加える)を練習し、友達の足を蹴って爪先を黒くした経験をお持ちでしょうが、残念ながらその場面をこの地で見たことはない。

ここまでなら、大人気を博す、「シンチャアーン(クレヨンしんちゃん)」、「ドラーイモン(ドラえもん)」、「ポケモン」と対して差がないのだが、「キャプテン翼」は別の場所でスペインサッカー界に影響を与えている。

スペンサッカー協会が主催する監督免許を取得するためのコース(コーチングコース)において、子供の成長に合わせた練習プログラムを学ぶ授業があった。そのプリントの中に、若年層、特に10歳以下では一人に一つボールを渡し、とにかくそれに親しませるべきだ、という主張がなされており、その横に「バロン・エス・ウン・アミーゴ (オリベル・イ・ベンジー)」と書かれていた。

アミーゴとはご存知のように友達、バロンはボール。
そうです、あの有名なフレーズ、「ボールは友達(怖くない)」のスペイン語訳がスペインサッカー協会が主催する授業で使われていたのです。

子供のうちにボールに親しむべきだ、常にボールを傍におきそれになじむべきだ、ボールを手足のように扱うべきだ、等々、これに似通った主張はこれまで多々なされてきたと想像されますが、それを「ボールは友達」という言葉に昇華させた人間はこれまでにいなかった。少なくともスペインにはいなかった。それを日本のサッカーを知らなかった作家が生み出し、遠く距離を越え、この地でプロコーチを養成するための教科書をつくる人間の心を捉えた。

日本漫画、日本アニメの底力を感じさせる出来事ではないでしょうか。

(2021/06/27)


選手の一日 (2004.04.14)


サッカー選手は通常、一日に一度、1時間半から2時間しか練習しない。
そんな彼らの日常はどうなっておるのでしょうか、暇で暇でしょうがないのとちゃいますやろか。
今回はこんな疑問を考えてみようかと。

たまーに、レアル・マドリー・オフィシャルマガジンで「選手の一日」という特集があります。
その情報を平均すると、

09:30 起床
09:45 朝食
10:15 出勤
11:00 練習開始
13:30 ファンのサインに応えながら帰宅
14:15 昼食
16:00 昼寝
17:00 買い物
18:10 家族団欒
20:15 読書
21:30 夕食
23:15 就寝

こんな感じで書いてあります。
まことに暇そうですな。この時間配分が本当なら、睡眠時間は10時間15分。
嘘っぱちなような気もしますが、イケル・カシージャスはインタビューで「9時間寝ないと調子が出ない」と言っていたので、ちょっと眠りの長い選手ならそのくらいはベットの中かもしれません。

午後から自主トレぐらいはやるんちゃうんかと思うのですが、普通はやらないらしい。
ミゲル・ソレールという選手がレアル・マドリーの選手であった時代、午後、コンプルテンセ大学のグラウンドにやってきて黙々と走りこみをしていた姿は今でも伝説として語り継がれている。
いや、有名な選手がトレーニングをしていたから伝説になったのではなく、「強制でもないのに自らシンドイことをやる変わり者がいる」という意味で伝説であるらしい。
知り合いのレガネス(セグンダA)の選手に聞いても、「午後に練習?しないね、普通」とのこと。
アトレチコ・マドリー下部組織の寮に入っていた日本人も、「あいつら寮に帰ったらウェートなんかほとんどやらないんっすよ」とこぼしていた。

スペインは基本的にそんなものらしいです。

1日2時間働いて数億の給料をもらうサッカー選手。世界で一番おいしい職業にみえます。
そんな意識が、最近のレアル・マドリーに対する激しい非難の奥底に潜んどるのは間違いないでしょう。
昨日も、直訳すると問題が多い横断幕がレアル・マドリーの練習場に出現していました。
やわらかめに訳すと、
「お前さんらにゃ女と金、わしらはそれがむかつくんじゃ」
といった内容でした。

そんなプレッシャーに負けたレアル・マドリーは、首都を逃げ出してムルシアのラ・マンガにある、ホテル・ハイアット・デ・ムルシアへ。
それがまた、サッカーフィールドを8面も持った高級ホテルなのだとか。

金持ちはどこまでいっても金持ちです。

(2021/06/24)


マノ (2004.04.6)

「マノ、マノ、マノ」という言葉はスペインのサッカー場でよく聞かれる言葉の一つですが、これは「手、手、手」と言う意味です。要するにハンドの反則を指し、短く鋭く「マノッ!」と叫ぶか、上記のように三回繰り返すのが正式とされております。
一回で叫ぶ場合は頭にアルビトロ(審判)という名詞をつけて、「アルビトロ、マノッ」と叫ぶとよりスペイン人っぽくなれます。
はい。

足が主役のサッカーですが、時に手がその座を奪うことがあります。
最も有名な手といえばマラドーナの神の手ですが、そのほかにも、日常的に手が活躍しております。

例えば、スペインリーグで気になる手といえばプジョルの手。
ペナルティーエリア内でシュートブロックを行う場合、もしくはセンタリングブロックを行う場合、必ず手を後ろに組んでプレーする。
狡猾な選手になると、ペナルティーエリア内でわざと手をめがけてセンタリングを行い、ペナルティーを奪おうと試みることがあるので、それを警戒してのことだと思われる。
しかし、後ろ手に組んだまま相手のフェイクにも応対せねばらないのであるから、非常に難しい技術といえる。

逆にわざと手を広げてプレーする選手もいる。
例えばミランのネスタはスライディングの時、相手の切り返しに備え意図的に手を広げる。
これは、特に裏に抜けた相手を追う場面でよく見られる。
追いかけながら敵の進行方向前方に大きく足を伸ばしてスライディング、それと同時に地面に近い方の手を顔の前に突き出し、切り返されたボールにちょうど当たるように調整しておく。
これにより前方へのドリブルと後方への切り替えしを同時に防ぐ。
ずるいと言えばずるいのだが、極めて有効な技術である。
スペインではエルゲラがよくやるが、一度裏に抜けられると追いつくスピードがないためネスタよりも目撃例は少ない。

手にはその他にもいくつかの使用法があり、

1 ファールをした後、謝る風に相手の頭をさわり、髪の毛を引っ張る
2 倒れた相手に手を差し伸べ、相手が手を差し出すと、さっと引っ込める
3 味方のシュートを避けるふりをしながら手でボールを叩きコースを変える
4 後方から寄せてくるディフェンスの顔に当たるように肘を振り回す
5 角度によっては胸トラップにしか見えないが、実は腕でボールを止める

等が挙げられる。

1と2は相手を挑発する常套手段であり、つい先頃のスペイン-デンマーク戦においてもフェルナンド・トーレスが見事、手引っ込めにひっかかってしまった。

3は先週のアルバセーテvsマドリー戦でロベルト・カルロスのフリーキックをフィーゴが手でシュートし、ゴールを決めていた。

4の達人はラウールで、確信的に相手の顔を狙っている。
チャンピオンズリーグ準決勝、ベルナベウでのバイエルン・ミュンヘン戦でリンケの顔面を肘打ちし、鼻血を吹かせたあげくにアシストを決めている。

5についてはサビオラが抜群に上手い。
そのコツは腕を胸と同期させて引くことにある。
腕と胸が一緒に、つまりその相対角度を変えずに動いていれば、遠くの審判からはその二つを区別することはできない。
審判が笛を吹くのは「手を引いて」トラップをした場合である。
手を引くとは、胸のよりも腕の方が大きく動くアクションを指す。
その場合、腕を引くことでボールの勢いを殺した、もしくは、ボールが当たったから腕が大きく動いた、という論理が審判の脳裏をよぎるため、笛が鳴る。
胸と腕が一体となって動いていればそれを避けられる。
サビオラはそれが抜群に上手い。

その他にも色々と面白い「手」の使用法がありますので、よろしければ探してみてください。

(2021/06/23)



Realとはなんぞや?チーム名 (2004/03/03)


今回は、チームの名前についてお届けしようかと。

スペインのチームによくみられる「Real」という単語は、「王室の」という意味です。
つまり、フットボールクラブ、アスレチッククラブ、チェスクラブ等々、どんなクラブであれ王室から認可を受ければレアルを名乗ることが可能です。
どこでどうやって許可を受けるのかは知りませんが。

現在スペインリーグ一部で「王室」を名乗るのは、

ベティス、Real Betis Balompie
セルタ、Real Club Celta de Vigo
デポル、Real Club Deportivo de La Coruna
エスパニョール、Real Club Deportivo Espanyol de Barcelona
マジョルカ、Real Club Deportivo Mallorca
ムルシア、Real Murcia Club de Futbol
ラシン、Real Racing Club de Santander
マドリー、Real Madrid Culb de Futbol
ソシエダー、Real Sociedad de Futbol
バジャドリー、Real Valladlid Club de Futbol
サラゴサ、Real Zaragoza

以上になります。
実に11チーム。リーガ一部の半分以上は王様系なわけです。
これらの中で一際目を引くのはエスパニョールとラシン・デ・サンタンデール。
バルセロナといえば、反中央、反マドリー、カタルーニャの独自性をその精神基礎に置いているのはご存知の通り。
そのカタルーニャ地方でマドリーに王宮を持つ一族を指す「Real」を冠し、スペインを指す「Espanyol」をその名として活動するエスパニョールは、ある意味反骨の人かと。
バルセロナにおいてエスパニョールがマイノリティであり、移住者、移民に人気があるのは名前からも当然と思われます。
そしてラシン。綴りは Racing、スペイン語ではございません。英語で読むと「レーシング」。
と、言うことはですな、設立に英国人が関与し、初めはサッカーを中心としたクラブではなく、車の競争を主として活動していたものと思われます。
それが時代の流れと共にフットボール部門が成長し現在に至ったのではなかろうかと。

レーシングを名乗りサッカーチームを持つクラブがある一方、フットボールクラブを名乗りながら、その他のスポーツ部門を抱えているクラブも多く存在します。
レアル・マドリーとバルセロナにバロンセストことバスケットチームが存在する事実は良く知られておりますし、バルセロナはその他にも、フットサルにハンドボールにローラーホッケー等々、様々な部門を抱えています。

その一方で、Club Atletico(陸上競技、体育) de Madrid なる名前を持つアトレチコにはフットボール部門しか存在しません。
私の知る限り、陸上競技部門など存在しませんし、バスケット部門もありません。
ちなみにスペインでサッカーの次に人気のあるスポーツはバスケット。
それなのに、レアル・マドリーにはあってアトレチコにはそれがない。
その寂しさを埋め合わせるためか、アトレチにはバスケットチーム「エストゥディアンテス」のファンが多いようです。
一度バスケット・ユーロリーグの準決勝、エストゥディアンテスvsパメッサ・バレンシアを見に行ったのですが、会場の周辺でアトレチコ関係のコーチ達に出会うこと出会うこと。
アトレチコ、エストゥディアンテス、アンチマドリー、以上が正しいアトレチの三大条件かもしれません。

話がそれましたが、クラブの名前には Real 以外にも、Deportivo, Sociedad, Balonpie, S.A.D. などがよくくっついていますが、それらに関して一度考えられると面白い発見があるかもしれません。




ポレミカの行く末 (2004/02/13)


「ポレミカ」とは「論議を呼ぶ問題」といったようなスペイン語ですが、サッカーでは「論議を呼び、かつ、機構が絡む諸問題」といった意味で使用されます。
以下にどのような問題がそれに当てはまるか、具体的な例を挙げて見てみましょう。

例:カンプ・ノウ使用問題

皆さん、覚えておられますでしょうか?2年前の11月、「裏切者」フィーゴの登場に大興奮のバルセロナ・ファンが、トイレットペーパー、子供銀行の札束、携帯電話、ウィスキーの空き瓶、果ては豚の頭までを盛大にピッチに投げ込み、その代償としてカンプ・ノウの二試合使用停止が発表されたことを。

さて、そのペナルティーはいつ果たされたのでしょうか。

誰も知りません。

クラブが規律上の違反を犯した場合、コミテ・デ・コンペティシオン(comite de competicion)という機関がそれを審査します。それに不服が申し立てられた場合、教育文化スポーツ省付随の、コンセッホ・スーペリオール・デ・デポルテ(CSD : consejo superior de deporte)という機関が再び審査します。もし、さらにそれが気に入らなければ普通の裁判所に持ち込んで争うこともできます。

小学校でならった一審、二審、、、といった多審理制を取った非常にまともなシステムに見えます。

しかし、そこでは摩訶不思議なことがおこり、摩訶不思議な事態がまかり通ります。

例えば、7試合の出場停止選手が3試合後にはフィールドを駆け回る。
例えば、免許を持たないピーテルマンが練習を指揮してもなんのお咎めもない。
例えば、大クラブに所属する選手に出たイエローがいつの間にやら消えうせる。

そして、例のカンプ・ノウ事件等々。様々なポレミカが有耶無耶のうちに解決されてしまいます。

システムとはうまくしたもので、一目素晴らしい構成でも人間が係わるとその欲望に従って機能するようになる。
この場合はコミテとCSDの間に秘密があり、まずコミテが審査する、その上訴をCSDが預かり取り敢えず処分保留とし、慎重になるべく時間がかかるように審査する。審査した挙句にコミテに差し戻しなんぞにしてみる。そしてそれをまただらだらと審査して上にあげて差し戻して、、、このようなことを延々と繰り返す。
そして一応結論を下すが、その実行にもなるべく手間がかかるようにダラダラと、、、、、、

人の噂も75日、ならば大体一年も粘れば、どんなに大きな事件も雲散霧消する。
この手で、いくつもの事件が、いつの間にやら、時の彼方に追いやられて来たわけです。

これをこれ政治と言うのでしょうか。
まずは問題を疲れさせ、その後になんとなくカタをつける。
政治は英語でポリティック、ポレミカと同語源、ならばポレミカがそのように処理されるのは理の当然であります。
そういえば、弱者が泣き寝入りを強いられる姿も、また、政治と酷似しております。
をとなの世界です。

最後に以下のような設問を、

問題:
バルセロナのライバル、レアル・マドリーはなぜカンプノウ使用停止問題に対して何も声をあげないのか

回答:
貸しと借りの連鎖の中でカードを一枚増やすため

まっこと、世の中は怖うおすな。


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